本文中にある褐色字は、書籍ならばルビを振りたい語句です。マウスポインタを合わせて下さい。ツールチップでその読みが表示されます 〔必ずしもその漢字本来の読みではないことに注意〕。
神保町の夜~師走'08
第2回 校正終了、お疲れさま。
あっ、どうも……お疲れさまでした、M さんも……。最後の3章分、まだデータ入力 残ってますけど、よろしくお願いします。
2週間で3章っていう今のペースだと、第4稿ゲラまで出して最終チェック、第5稿ゲラで校了、ってところかな。入稿まで……まあ、充分 余裕ってわけじゃないけど、それほど忙しなくもないでしょう。大丈夫だよ。
そうですか……。
ただ K くんの場合は、装幀や表紙のカバー絵、それに各章扉の挿絵も全部 自分でやるわけだから、そのぶん校正のペースは普通よりも少しタイトに……他の作業と平行してやれるように予定 組んであるからね。ちょっときついかもしれないけど、頑張って続けてください。
はい。なんとか出来てます。きつくはないですよ。……今のスケジュールだと、作業時間としては全く無駄がないですね。今日だって、毎回ノルマにしてる三読目が終わったの、アトリエを出る15分前ですから……。ぼくとしては日常生活がものすごく充実してるというか、濃密なんで、精神状態はむしろ良好です……適度の緊迫感があって……。
それはよかった。
まあ、全く無駄がないっていうのは、裏を返せば、全ぜん余裕がない、ってことでもあるわけですけど………。
神保町の夜~霜月'08
広すぎないし窮屈じゃない……いい店ですね、ここ。
そうでしょう。……それと、靖国通りのこっち側は大手の出版社が多いから……集英社とか小学館とか、それに岩波とかね……あっち側にある飲み屋と違って、うちみたいに小さな会社の社員 ・編集者と鉢合せすることがない……。気が楽なんだよね。
同業者と会いたくないんですか?
弱小出版社どうし、境遇が似たようなものだから、くだらない内輪話や愚痴を聞かされるのが落ちなんだよね。あっち側では、とてもじゃないけど落ち着いて飲めないんだ。
大手の社員にもお知合いはいるんでしょ?
もちろんいるけど、関係がよりフォーマルだからね……お互いに一線を越えない……。たとえ顔を合わせても、せいぜい会釈をかわすくらいさ。
あっ、M さんは何にします?
僕は中生……。
じゃ、とりあえず中生ふたつ……。