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やっぱりキース・エマーソンの話を書いたら泣いてしまった

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3月12日。朝起きて最初に見たのは信じられないニュースでした。しかし、詳細を確認すると、キース・エマーソンがどんなに辛かったか分かってしまったのでした…。会ってお話をしたことがあるわけじゃないけど、キースは僕の人生の大事な一部でした。振り返ってみます。

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中学生の頃に学校(中高一貫)の図書館で発見し、夢中になって眺めた本がある。この「楽器」という本だ。あんまりにも印象深くて高校を卒業して10年以上たってから遂に自分で買ってしまった。

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ご覧の通り、見開きでピンク・フロイドの1972年頃のライブ写真は載っているわ、ここには写真がないがジミ・ヘンドリックスの絵も載っているわ。

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そして、シンセサイザーの説明に使われている図はモジュラーのMOOGシンセサイザーとキース・エマーソンだ。きっと1970年代に初版が出た本なのだろう。現在も版を重ねており、書店で入手することが可能だ。この本を起点にキース・エマーソンのことを振り返ってみたい。

僕はなんとなくぼんやり認識していたシンセサイザーという楽器をこの本で認識したのであった。実際にELPの音楽を聴き始めるのは、この本を見た少し後のことになったと思う。キング・クリムゾンは80年代の編成のライブを収めたLD(!)から入っており、後日ELPのグレッグ・レイクがキング・クリムゾンで歌っていると知ってビックリしたものだ。
ELPを知って、初めて見た映像は塾をサボって入り浸っていた今は無き西新宿のエアーズでのことだ。たぶんこのライブの映像だ。ベルギーだと思っていたけどスイスだったか。

もう、あまりのカッコ良さにノックアウトされてELPのバックカタログを集め始めることになった。そしてインタビューが掲載された本なども。

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キーボードマガジンを買い始めたのは、キースの右手は調子が悪くなって尺骨神経移植手術を受けた頃だ。同誌の編集後記では「それにしても、今月のキースも冴えなかった」などと書かれていることも多かった。

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1994年、僕にとっては初めてリアルタイムでの発売となったELPのアルバム「イン・ザ・ホット・シート」は往年のアルバムに比べるとやっぱり薄味だなと思ったのだが、同時期に発売されたキーボードマガジン(上図)のインタビューによると弾いていない曲さえあったのが余計にショックだった。ちなみにそのキーボードマガジンではライブ・セッティング特集というのが載っていて、そこにあったカッチョいいセッティングを観たくて行ったすかんちですっかりやられてしまったのが今に至る源流になっていたりもする。その時にキース・エマーソンになったりリック・ウェイクマンになったりグレッグ・ジフリアになったりしつつ野太いモジュラーMOOGの雄叫びを聞かせてくれた文明さんも、すでにこの世にいない。天国でキースと再会できていると僕は信じている。

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ちなみに、僕は1996年にminimoogを買うのだが、じつはその前年にリボンコントローラーを先に入手している。夜な夜なKeithや文明さんがリボンを擦っている映像にあわせて、繋ぐminimoogもないリボンコントローラーを一緒に擦って口三味線ならぬ「口moog」をしていたもんだ。

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で、そんなこんなで手の調子が非常に悪かったキースのこと。ツアーが組まれなかったのは無理もないし、もう観る機会はないと思っていた。しかし1996年、ELPは来てくれた!大学で仲良くなったロック好きの友達が誘ってくれたのだ!今は無き(こればっかりだ…)厚生年金会館で、座って観ているお客さんをよそにひとりだけずっと立ちっぱなしで曲に合わせて飛び跳ね、曲を一緒に歌い、ひたすら「キース!キース!」と叫んでいたことが、つい先日のようだ。そんな日からもう20年も経っているんだなぁ。書いていたらちょっと涙腺が緩んで来た。
そうそう、2000年のKORG新作発表会のことも書かない訳にはいかない。当時、小川文明さんも参加するとのことでお話したかった(当時、文明さんのサイトで掲示板を通して交流していたので)のと、新バージョンのCX-3が楽しみだったので。会場で、どうやらキースが出演するという話を聞いたのでライブスペースへ。「大先生(もちろんキースのこと)、耳がちょっとアレなんで爆音になりますよ」なんて聞かされて余計に楽しみになっていたのだ。石黒彰さんやバカボン鈴木さん等豪華なメンバーで奏でられる、門外漢置いてけぼりのプログレ名曲連べ打ちに続き、いよいよKeith登場。CX-3を2段重ねた(まだBX-3は発表されてなかった)セッティングで「ホウダウン」を演奏。シンセサイザーソロの部分はハーモニカに持ち替えていた。初めて観るKeithのハーモニカは上手くはなかったけど(笑)新鮮だったなぁ。そして初めて聴く「ケイジャン・アリー」。「Occasionallyを捩ったタイトルだよ」と本人弁。それで「ああ、『Karn Evil 9』もそういうことか!そういえばあそこがカーニバルっぽいな!」と納得したのだった。あとは「ロンド」も演奏した。1972年の来日以来かもしれない日本刀を刺すパフォーマンスを披露した(これは愛すべき友人の都築さんが現在も継承している)。文明さんが質問コーナーで何を質問してたっけかな(知人の追悼コメントで思い出した。「ホウダウンの運指を教えてください!」だった)。文明さんは飛び入り演奏もしたと思うんだけど、残念ながらその辺の詳細を覚えていない。しかし、とびきり贅沢な、最高の一日だった。

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(お写真はKUMANO MIX様より拝借)
時は流れて2008年。1996年のELPがカッコ良過ぎて、キースのソロを観に行くか迷っていた。2005年もスルーしていたし…。でもその数年前からオルガンを取り扱うサイト「The Rock Organ」掲示板で知り合って仲良くさせていただいている都築さんに背中を押されて、D屋さんだったか当日券だったかで券を入手して観に行った。Keithの右手がまた不調だという話は聞いていたが、右手の薬指と小指が動かないのは痛々しかった。でもマーク・ボニーヤをはじめとするメンバーの演奏も素晴らしく、1996年には持って来られなかったモジュラーMOOGもあり、さらに僕の隣ではおひとりさまで来ていた20歳くらいの女の子が「キース!キース!」と昔の僕のようにずっと黄色い声援を送っていて、まだまだ現役のキースを堪能することが出来たのであった。

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そして2015年。キング・クリムゾンを観に行ったとき、翌年に再び来日することが発表されていた。彼は引退するものだと思っていた僕はとても驚いた。しかしまたも観に行くべきか迷ってしまってもいた。行けるのは4/17のみ。前日にはワンマンライブだ。「そうだ。ライブ翌日だけどまだ体が動けば、会場の周りでD屋さんを探すなりヤフオクでチケットを入手して行こう。当日は余裕をもって演奏しなくちゃな。ただでさえ翌日にメロトロンを車に積むんだから…」などと考えていた。

そんな矢先の訃報でした。未だに気分が重く、周期的に眼が潤んできます。正直、この文章を昨日最初にFacebookで書いたとき、涙が止まらなくなって30分以上泣いてしまいました。ここのところ、兄のように慕っていた叔父や同い年の友人を立て続けに亡くし、デヴィッド・ボウイ、ジョージ・マーティンなど敬愛していた人も次々鬼籍に入っています。世の中がどんどん寂しくなって行くようです。
とりあえず、セーブしなくて良くなったから4/16のライブは全力で演奏することにします。またお会いしましょう、キース。

Dear Keith,
I don't want to believe it yet, but just when I learnt you had a gunshot wound in your head, I could understand how much you had been suffering for more than 20 years. You were my super-hero. Thank you for everything. You gave me my life. Today you've made this world much lonelier.
But anyway, now you're free from your worn fingers, and in heaven, you can play like you could before. Enjoy the jam session with Jimi, Jon Lord, Jack Bruce, Chris Squire, John Entwistle, Cozy Powell, Keith Moon, John Bonham and everyone there.
I'm looking forward to seeing that show that never ends after completing my life. See you again, Keith Emerson.
12, Mar. 2016

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