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「あんたそれでも医者か」と暴言を吐いた患者

2015/03/30
尾内康彦

 通常、私は患者トラブルを3つに分類している。3層からなるピラミッドを頭に思い浮かべていただきたい。最も上の層にいるのが「モンスターペイシェント」だ。この層が引き起こすトラブルでは、 暴言や暴力のリスクが高く、警察沙汰になることも多い。ただ、私のところにやってくる相談件数からいうと既に“高止まり”の状態にある。

 ピラミッドの中層部は「困った患者群」、つまりハードクレーマーたちだ。警察沙汰まではいかないが、とにかく自己中心的な態度で、各種の迷惑行為を長期に渡って繰り返す。時に、モンスターペイシェントを相手にするより解決が厄介なこともある。そしてピラミッドの下層部は、クレームを付ける普通の人。ただ、この普通の人も、以前に比べると寛容さが大きく失われているような気がしてならない。

 さて、今回紹介するのは、ハードクレーマーの典型のような事例である。ハードクレーマーはモンスターペイシェントに比べ実態がやや分かりにくい上、警察沙汰にはならないように、あの手この手を用いて自己の欲する要求に従わせようと攻撃を仕掛けてくる。院長も職員も人柄が良く、基本的に「性善説」で物ごとを考える人ばかりの医療機関に、こういったタイプの患者が現れるとどういうことになり、どのように追いつめられていくのか。実例を紹介する。

著者プロフィール

尾内康彦(大阪府保険医協会事務局参与)●おのうち・やすひこ氏。大阪外国語大学卒。1979年大阪府保険医協会に入局。年400件以上の医療機関トラブルの相談に乗り、「なにわのトラブルバスター」の異名を持つ。著書に『患者トラブルを解決する「技術」』(日経BP)がある。

連載の紹介

なにわのトラブルバスターの「患者トラブル解決術」
病医院を構えている限り、いつどんな患者がやって来るかわかりません。いったん患者トラブルが発生し、解決に手間取ると、対応する職員の疲弊、患者の減少という悪循環を招き、経営の土台が揺らぎかねません。筆者が相談に乗った事例を紹介しながら、患者トラブル解決の「真髄」に迫ります。
著者の最新刊『続・患者トラブルを解決する「技術」』好評販売中

 ますます高度化、複雑化する患者トラブルに、医療機関はどう対峙していけばいいのか。ご好評をいただいた前著『患者トラブルを解決する「技術」』の続編として、解決難易度の高い患者トラブルの対処法を体系的にまとめました。前著が基礎編、本書が応用編の位置づけですが、本書だけでも基本が押さえられるように構成しています。(尾内康彦著、日経BP社、2052円税込)

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