今回は、これまで私の心の片隅にずっとありながら、なかなか文章化できなかったことを書いてみようと思う。患者の自殺が原因で、患者家族と医療側がトラブルとなるケースである。
心療内科や精神科では、患者の自殺は避けて通れない。しかし、そうした悲劇が起きたとしても、通院歴が長ければ、患者家族とトラブルになることはあまりない。というのは、患者の病状や処方される薬について、患者家族に詳しく説明しているケースがほとんどで、医療側と一定レベルの信頼関係も生まれるからだ。
問題なのは通院歴が短いケースだ。付き合いが短いと、当然、患者家族と医療側の信頼関係も希薄で、患者の自殺という強烈な出来事が起きると、患者家族のやり場のない鬱積した感情が病医院側に向けて発散されることもある。今回紹介する事例も、それに該当すると思う。
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著者プロフィール
尾内康彦(大阪府保険医協会事務局参与)●おのうち・やすひこ氏。大阪外国語大学卒。1979年大阪府保険医協会に入局。年400件以上の医療機関トラブルの相談に乗り、「なにわのトラブルバスター」の異名を持つ。著書に『患者トラブルを解決する「技術」』(日経BP)がある。
連載の紹介
なにわのトラブルバスターの「患者トラブル解決術」
病医院を構えている限り、いつどんな患者がやって来るかわかりません。いったん患者トラブルが発生し、解決に手間取ると、対応する職員の疲弊、患者の減少という悪循環を招き、経営の土台が揺らぎかねません。筆者が相談に乗った事例を紹介しながら、患者トラブル解決の「真髄」に迫ります。
著者の最新刊『続・患者トラブルを解決する「技術」』好評販売中
ますます高度化、複雑化する患者トラブルに、医療機関はどう対峙していけばいいのか。ご好評をいただいた前著『患者トラブルを解決する「技術」』の続編として、解決難易度の高い患者トラブルの対処法を体系的にまとめました。前著が基礎編、本書が応用編の位置づけですが、本書だけでも基本が押さえられるように構成しています。(尾内康彦著、日経BP社、2052円税込)
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