インフルエンザワクチンを接種した病院職員と接種しなかった職員を比べたところ、接種者でインフルエンザの罹患率が有意に低かったことが示された。聖マリアンナ医科大学病院感染制御部の三田由美子氏らが、第28回日本環境感染学会総会(3月1~2日、開催地:横浜市)で報告した。
聖マリアンナ医科大学病院では、毎年10~11月に全職員を対象にインフルエンザワクチン接種を行っている。また、例年、インフルエンザ流行時期の終了時に、全職員を対象にアンケート調査を実施。接種時期、接種場所、未接種の場合の理由、インフルエンザ罹患の有無などを把握している。
2011年度のアンケート結果によると、2252人が調査に回答。接種したと回答したのは1941人で、接種率は89.3%だった。接種率の推移をみると、2006年度以降、75.8%、82.8%、90.2%と連続で上昇し、新型インフルエンザが発生した2009年度は94.5%に達した。翌2010年度は86.3%に低下、今回報告の2011年度は上昇に転じた。
接種率を職種別にみると、医師が72.5%、事務部が81.7%と低かった。一方、薬剤師が96.9%で最も高く、リハビリテーション部が96.2%、臨床工学士が95.5%、臨床検査技師が94.4%、看護師が91.8%で続いた。
ワクチンを接種した場所は、同病院が83%と高く、他施設が11%だった。医師の場合は、外勤先などでの接種も多く、同病院での接種率は50.9%と低かった。
調査では接種しなかった理由も明らかにしているが、「罹患したことがない・罹患しない」が15件(20.5%)、「体調が悪かった」も15件(20.5%)と多かった。「時間がとれない」も12件(16.4%)と目立っていた。
インフルエンザの罹患率は、全体で6.5%だった。前年度は4.9%であり、2011年度は上昇していた。
ワクチン接種の有無とインフルエンザ罹患率を検討したところ、接種者の罹患率は5.9%、非接種者の罹患率は11.2%で、接種者のほうが有意に低いという結果だった(P=0.00271)。
演者らは職種間で接種率に差があったことから、今後は接種率の低かった職種・部署における対策を強化する必要があると指摘した。
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