年齢が年齢で体のあちこちに衰えがきているのですが中でも厳しいのが視力。Google Docsの表示は必ず125%にする。この下書きもまず125%にしてから書き始めたこの頃みなさんいかがお過ごしでしょうか。所属先で新卒採用に関わることが多くあったので、思うところなど書いていこうかと思う。まずこの記事は職場の方針や選考とは関係がない一般論であることを明言しておく。一般論というと大げさかもしれない。IT業界では〜くらいの話だと思ってほしい。
「最近の若い奴は〜云々」といった前時代的テンプレート言説があるが、自分はこういった場面に遭遇したことがない。何ならこれまでみてきた若者の中で自分が一番ダメなやつだった自信がある。学生だけでなく職場の若手をみていてもそうだがみんな努力しており優秀だ。セレクションバイアスだと言われたら否定はできないが、こういった前時代的テンプレートに汎用性などなく、むしろ都市伝説なのだと私は思っている。大きな主語で若い人の自信を挫いて自分の言うことを聞かせる洗脳の初手といってもいいかもしれない。
ここからはこれから(これまで?)就職活動をしたわかものに対する親父の小言のようなものだと思ってほしい。
企業と学生は対等
自分の学業や経験に自信がなく、いくつかの会社からお祈りを受けて自信をなくしている人も多いと思う。個人の尊厳の問題でもあり簡単に「まけるな」とか「がんばれ」とか言えるものでもないが、世間の大原則として、学生と企業の採用担当者は対等である(自然人と法人の法的関係はわからないが多分自然人のほうが偉い)。どちらかが偉いということもないし、どちらかが媚びなければいけないということもない。売り手市場、買い手市場どちらの年もあるが学生であっても企業と学生は絶対に対等なので自信を持って対等に企業の担当者と接してほしい。自分が偉い人間だと勘違いしているような担当者がいたらその企業はやめておいたほうがいい。
レジュメは盛るとよいが情報量が大切
新卒で応募するにはまず書類を書くことになる。テンプレートの履歴書で書く人もいると思うが、あのテンプレートはやめておいたほうがよい。顔写真、住所、電話番号、経歴など無駄な情報が多い。住所・電話番号などは個人情報保護法がなかった時代の遺物で、現在は連絡手段や連絡先の管理方法が発展しているので素直に技術やシステムを使ったほうがよい。住所は面接などの段取りを考えるのに必要なこともあるが、○○県在住くらいで十分だ。
次に困るのが顔写真だ。本人確認に使える可能性があるが法的には役に立たない(要出典)。また、顔写真は性別・年齢・人種など選考に不要な情報が入る(不要どころかバイアスになって嬉しくない)ことになる。正直なところ氏名は人種性別などのヒントになってしまうので何かしらブラインドにしてほしいと思うこともある。経歴も大学からで十分だろう…と思ったが、高専か普通科くらいの区別はあってもいいかもしれないからやっぱり書きたい人は書いたらいいのかもしれない。でも大学名もバイアスになるからいらないかもしれない(Publicationみたら所属研究室まで分かっちゃうけど)。
応募書類のなかでも一番大事なのはいわゆるレジュメというやつで、A4 数ページくらいにフリーフォーマットで経歴や持っている技能、これまでの実績を書くものがある。これが個性が出るので一番情報量がある。レジュメで大切なのは適度な長さで必要十分な情報が含まれていることだ。長すぎてもよくないし、短すぎてもよくない。
レジュメのなかでもっとも大切なのは本業の学業だ。学校で規定されたカリキュラムをきちんとこなしたことが分かるようになっているとよい。大学であれば研究までやるので、発表した学会や論文などがリストになっているものが望ましい。ベストペーパーなど賞がとれたのであれば是非書いてほしい。学会の賞は個人の箔付けのためのものなのでどんどん利用すべきだ。
他によく書かれる内容としてはインターンやアルバイトの経歴だろう。首都圏のインターンシップカリキュラムは数が多く、学生にも選択肢が多いが選考も厳しい場合がある。インターンシップの面接に通るためのレジュメに書くインターン経歴が必要で、「インターンのためのインターンに行かなければならない」といった皮肉冗談をわたしも毎年話している。こういった状況は個人的には苦々しく思っており、前述したとおりレジュメでは学業を最も重視することにしている(ここは一般論ではなくてかなり個人の嗜好)。ただし研究室配属などで運がなく学業が芳しくない場合もあるだろうから、一概にインターンシップの成果を無視するべきとも思わない。
これは業界によるとおもうが、もうひとつレジュメで効く内容として趣味がある。単に「読書、ゲームなど」と書いても大した情報量ではないしプライベートを詮索したいわけでもない。しかしながら、個人が持っている熱量を判断するのによい材料になる。もし好きな(コンピュータ関連の)趣味があってどこにも発表していないということがあればそれは勿体ないと思うので、OSS活動、ブログ、IT勉強会などで積極的に発信してほしいと思う。趣味を仕事にしたいかどうかは人によると思うが、それができたらやってみたいという人は、これまでやってきたことを是非書いておくべきだ。
レジュメに書くことがないと思っちゃう場合は…
わたしはこっち側の人間だった。学業を特に真面目にできたわけでもないし、わたしが就職活動をしていた頃はインターンシップカリキュラムを公開している企業はそんなになかった(いや私が能動的に調べなかっただけかもしれない。それだけやる気がなかったということ)。なので履歴書をいざ書く段になって何も書くことがなくて驚いたことを覚えている。当時はレジュメを出すといった習慣がわたしの周りにはなかったが、当時の年齢で社会人みたいなレジュメを書ける気がまったくしない。なので、今の時代に当時の年齢で転生したら生き残れる気がしない。
企業は自分たちがほしいと思っている技能を候補者が持っているかどうか知りたいので、それが判断できない内容のレジュメは基本的に見ない。なので、候補者がやるべきことは以下の2点だけだ。
1. 企業がほしいと思っている(いそうな)技能・潜在能力を調査する
2. 自分にその技能・潜在能力があれば、それがあるということをレジュメで紹介する
レジュメに書くことがないということは、 1.2. のどちらかが足りないということなので、それを身につけるなり調べるなりしよう。多くの場合は単に言語化できていないだけだと思うので、ハッタリでもいいので何か書こう。分量が足りないと思った場合は情報密度が高いと思うので、情報密度を下げて関連情報を書き足すとよい(というと抽象的すぎてわからないかもしれないが、そういうものだと思っている)。
志望動機
これはこまりますよね〜いや本当に。「初任給高いから」「儲かりそうな業界だから」「かっこいいから」「ラクそうだから」みたいなのがあるだろうと思う。で、そういうことを正直に書いてきたり、オトナ語でそれっぽく書いてくる人もいるが、ご推察の通りこういう汎用性の高いことを書いても情報量が少ない。
なので、志望動機は汎用性を下げて業界なり企業にフィットしたことを書くのがよい。中の人が志望動機をみることによって、入社してから楽しくやれるかどうかを判断したり、やりたいことがあったときにこれは叶えてやれる、これは叶えてやれない、みたいなことを考えるための欄や質問だ。なので自分の経験でいうと「自分はパソコンいじるしか能がないんです」「チームで仕事してみたいんです」的なことを言ったと思う。
やる気のないやつはゴメンだぜ!俺たちは社畜がほしいんだ!みたいなことを試すところもあるかもしれないが、そういうところは単純にやめといたほうがいいだろう。
GitHub
個人の GitHub に草を生やすのはとても効果的だ。ただやっぱり天然芝と人工芝は見たら結構わかるものである。私は細かいところまで気になっちゃうので、実際にコードやコミットログを漁ったりしちゃうのである。昔Joel on Softwareで紹介されたビル・ゲイツのエピソードの中に「マネージャーに対して不必要なまでに現場のディテールを細かく聞き出そうとする」というものがあった。これは適当な細かいトピックをチェリーピックすることによって、マネージャーが現場をどれくらい細かく把握しているか調べるテクニックの応用だ。また、綺麗な天然の芝生が生え揃っていなくても、濃い緑のマスがあったら期待して見に行ってしまう。それくらい情報量が多い。
「GitHubに出せるようなプログラミングをしたことがない」という人もいるだろう。別にGitHubが全てではない。プログラミングができることをどこかで証明できればよい。AtCoderのレートでもよいし、学会発表のコード公開でもよい。選考過程でプログラミングのテストをする会社もある。
中途と新卒採用の連続化
就職活動を続けても全然内定がでず自信をもてない人もいるかもしれない。「〜なところはやめたほうがいい」と何度か書いたが、人によっては自分は選べるような立場じゃない、と思う人もいるかもしれないが、人間扱いされないような会社にいくくらいならやめたほうがいいと思っている(とこんなことを言うと Voluntas の声で「お前は底辺を知らない」が脳内再生される)。就職浪人という選択肢もあるだろう。卒業後もアルバイトしながら就職活動を続ける人もいるかもしれない。それでも全然いいんじゃないのと思うし、ブランクがあっても特に気にされない時代になったんじゃないかと思う。今後しばらくは少子化に伴う売り手市場が続くと思うのでなおさらだ。
といっておきながら売り手市場ってなんだ??となった。売り手市場ではなく二極化である( 「売り手市場」?「二極化」?キャリアセンターの視点で見た23卒の就活 ) という説もあるが、単にキャリアの多様化でいいだろうと思った。
まとめ
この記事はPySpa Advent Calendar 2024 の記事として書かれました。明日はWetとDryでモードを使い分けるという考えがうまい、 id:otiai10 です。