源平戦乱の余燼さめやらぬ鎌倉初期、京都の摂関家・藤原基房の娘伊子を母に、村上源氏の流れを汲む名門家の歌人・久我通具を父に生まれた道元は、瞳が二重の「重瞳の子」のため天下人か大聖人になるとの予言を受ける。幼少のうちに母を失い世の無常を身に染みて感じた道元は、真実の道を求めて出家。建仁寺で栄西の弟子・明全に師事したが、正法を求める思い止み難く宋へと向かった。(Amazon)
面白いか面白くないかそれが重要だ。
道元は,日本の禅に欠かすことの出来ない人物だろう。
私が禅宗の中で1人名をあげろと言われれば,おそらく彼の名をあげるほどに。
この本は,そんな彼の生涯を綴った歴史小説だ。
私は歴史小説をあまり読まないせいなのか,
どうもこの本をあまり楽しむことが出来なかった。
いきなり坊さんの歴史小説というのはハードだったか。
道元のいた時代,その時代何が起こり彼がどのように行動したか
そういうのを知るには中々良かったなと思うが,
思うんだが如何せん小説として面白くない。
作者の道元に対する深い思いというのは伝わってくる,
そうじゃないとこんな本書けないだろう。
修証一如なんて私が思ってたよりかなり早く道元は
意識していたのかなどという新しい発見もあった。
けれど面白いか面白くないかは別として。
私が道元の生涯をこの小説を読む以前に,
ある程度彼の生涯を知ってるということもあるんだろうけど,
次何が起こるのか知ってるのがダメだったのかも。
読んでる最中に次こういう事が起こるんだろうなぁという事が
そのまま起こってしまうだよなぁ。
それと作中に出てくるありがた~いお話。
後ろの参考文献を見れば分かるけど,
これ道元の物語だから正法眼蔵や随聞記なんかの有名な話が
もう何のひねりもなしにそのまま出てくるもんだから,
ああこれこの本からもってきたまんまだというのが丸わかり。
参考文献の現代語訳のニュアンスがそのままなんだよねぇ。
一般人用の道元関係の本なんて,
そうはないからそうなってしまうのは無理もない話なんだけどね。
まぁそれ以上にダメだったのが,
道元の周辺の人物,というか登場人物ほぼすべて,
みんな道元をすごいべた褒めで持ち上げて行く↑↑↑↑↑。
いや,最多登場人物の語り部・右門だけでなく
もうホント母親から叔母,先達の坊さん,道行く人
みんなもう道元が好きすぎて読んでいて
こっちはどんどん引いてしまって辛かった。
あれだよ,子供が生まれた父親が
居酒屋なんかで同僚に永遠と自分の子供が
可愛いんだ話を聞かなければならないやつの心境。
もっとあからさまな敵がいても良かったような気がするんだが
(宋から帰国した後なんてそういうの出来そうだが,
いやもうその頃の道元と並び立たせようというのはキツイか・・・),
でも歴史的事実にある程度忠実に作られれば,
こんな物語になるだろうなという感じではある。
どういうふうに読めば楽しめたんだろうか,それが最後まで分からなかった。
☆☆☆
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- 2013/04/10(水) 23:54:02|
- 本 ☆☆☆
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