AI(人工知能)の発展による大失業時代に思うこと
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AIが流行っても失業が増えないとかいう考えを持った人の話がちょくちょく話題になりますが、こういうのはどこかのAI研究者も言ってましたが、長期的には正しくもありますが短期的には失業者は増えます。少なくとも今の段階でその技術を職業としている人は失業してしまいます。
AIという技術だけみるのではなく、新技術が実用化されたときに労働環境がどのように変化するかという文脈で考えてみます。すると産業革命以降では同様なことが何度も起こっています。それら事例を挙げていけば人工知能が一般化される未来でどのような職種がなくなりどのような社会現象が発生するかが予想できると思います。
産業革命時代に一番有名な運動がラッダイト運動です。
ラッダイト運動(イギリス英語: Luddite movement[1])は、1811年から1817年頃、イギリス中・北部の織物工業地帯に起こった機械破壊運動である。
産業革命にともなう機械使用の普及により、失業のおそれを感じた手工業者・労働者が起こした。
それまでは鶴の恩返しじゃないですが、服をつくったりする生地を作るためには機織りを手作業でしなくてはなりませんでした。それが産業革命により自動織機が生まれて、人手で機織りをする必要がなくなりました。すると何十年もそれを職業にしてきた人は、それまでの経験も仕事も全部失ってしまうわけです。何十年も機織りしかしていない人がまた今までと関係のない職業に同じ給料で転職できるかという問題があります。当人はそれが不安になります。今までは経験豊かでたくさん稼げたのに、全然関係のない経験も知識もない仕事しかできないのです。給料や賃金も当然大幅に下がります。家族を食わせることができません。しかも今まで周りから機織り職人として尊敬を勝ち得ていたものがなくなってしまうのです。
もちろん若い人であれば、新しい職業を一からやり始める、例えば自動織機のメンテナンスなどをすることはできると思います。でも年齢を重ねた人がそのようなことを一から始めるのは能力的にも給料的にも非常に困難です。
この機織り職人の人たちが機械を壊したというラッダイト運動をどう思いますか?時代に逆行するバカらしい行動と思いますか?
現代では、機織りは趣味や伝統工芸以外のごく一部を除き産業としては絶滅しています。近い将来に起こると考えられる自動運転でタクシードライバー、バス運転手、トラック運転手がどうなるかというのは、人工知能がもたらす影響について考えるよい事例です。
自動車の自動運転が本格的に実用化されると、移動だけを目的とした職業ドライバーという職種はほぼ絶滅するでしょう。一部の高級ハイヤー、リムジン、レースなどのスポーツなどごく一部以外の職業ドライバーは存在価値がなくなります。一部には今までのタクシー運転手はスキルを上げて高級ハイヤーで食っていけばいいという人もいます。しかし下記のリンクをみて考えてください。
http://www.taxi-japan.or.jp/content/?p=article&c=113&a=9
この全国ハイヤータクシー連合会のページをみるとタクシードライバーの数は37万1,245人が運転者で(平成22年3月末現在)、平均年齢が56歳とあります。高級ハイヤーだけで37万もの需要を受け止められるとは到底ないでしょう。ハイヤーならエグゼクティブ向けの高級志向もありえますが、バスドライバーならどうでしょう。高級バス?自動運転の時代になったとき、好き好んで人が運転するバスに乗りたいと想像の範囲外です。(あくまで運転手が人かどうかなので、切符などの販売のためにバス車内に人がいるのとは意味が違います)
http://www.mlit.go.jp/common/001038072.pdf
この経産省のページでは平成23年度に8万5千人のバスドライバーがいることになってます。これらの人がバスの自動運転化でバスドライバーが8万人も失業する可能性があります。新しいIT産業や介護業界が受け取るという人もいますが、IT産業はIT技術もない元ドライバーを高級で雇いたいと思うしょうか?介護業界は薄給で重労働ですが、大量の元ドライバーの受け皿になるでしょうか?
こういったドライバーの職業は高齢化も問題になっていますが、今職業を選択しようとしている若い人がわざわざ選ぶのはちょっと考えてしまいます。もう10年もしないうちに自動運転が一般的になり、ドライバーという職業がなくなってしまうのですから。高齢ドライバーはそのまま失業するか、知識も経験もない低賃金の職業に移動することになるでしょう。
ドライバーが分かりやすいし自動運転は話題なので事例として挙げてみました。しかしそれ以外にもさまざまな職業が人工知能によって代わられ、今までその業界や職業で経験を積んでいた人たちが失業していくと思います。実際、今知り合いの会社で深層学習使ったあるサービスを実用化をしようとしてますが、これがうまくいくと、XXXのバイトがなくなるな。それを生業にしてる会社も無くなるかもな、と思わずにいられません。
そういった長年同じ仕事をしていた人がすぐに全然違う職種の業界に転職できるでしょうか? 産業革命で同様な問題が発生しましたが、結局はその職種に入る新しい若い人たちがいなくなり、古くから働いている人たちが失業するなり低賃金な別の職業につくなりして消えてしまいます。人工知能が発展する問題は、そういった人工知能に代替された職業をしていた人たちが急激に大量に発生し、それに伴う人心の荒廃、社会不安などが予想されていることが大きいと思います。
産業革命以降、さまざまな技術が発明され、実用化され、今まで人でしかできなかった職業が数多く機会に代替されました。人工知能もその一つといえますが影響範囲が非常に大きいです。人工知能は素晴らしい技術ですが、このような人の心と人生を大きく左右する状況を理解せずに、無邪気に礼賛するものではありません。
できる人や資本家はAIを十分活用できると思うんですよ。でも市井の人は皆がそんなできる人じゃない。特に私も含め今すでに何かの職業についている人は。皆が最先端の技術を仕事にできるわけじゃないし、単純労働しかできない人のほうが大勢いる。そういう弱い人にどれだけ寄り添うことができるかが政治的には重要なんだと思うんです。
P.S.)
最後に技術の進展でどのような職業がなくなったか、私が知ってることをいくつか事例を書きたいと思います。
私は、絵画鑑賞の趣味が多少あるのですが、日本人のみなさんよろしく印象派が好きなんですね。でも印象派が生まれた理由しってますっか? 一般的に言われているのは、19世紀半ばに写真が発明され、今まで人物画を描いていた職業画家が大量に失業しました。職業画家は人物をできるだけ正確にいわゆる写実的に描くのが重要でした、その人のイメージを残すには写真のない時代は絵画しかあっりません。でもどんなに写実的に書いても写実をするなら写真にはかないません。
じゃあ印象派となにが関係するのかというと、印象派の画家は写実的でない、写真では表せない印象を絵に描きました。でもそれは芸術として消費されるものであり画家の数はしれています。一般の人が肖像画を残したいという需要は写真が担うようになりましたので、職業画家が大量に失業しました。
浮世絵ってありますね、版画ですが江戸時代の大量印刷技術として発展しました。当然浮世絵にかかわる人も大量にいました。明治になり浮世絵が廃れましたね。これも実は写真と印刷技術の発展があります。浮世絵で色塗りしていた人が、浮世絵がなくなったことで白黒写真の色塗りをしていたというのは有名ですね。浮世絵の色付けと似たような仕事として、白黒写真の色付けをしていたんでしょう。でも版画による大量コピーの技術はもう活版印刷では意味のない技術です。こうして版画の技術は一部の芸術で使われるのみになり実用性はなくなりました。
私は小学生のとき、親に言われてソロバンを習ってたんです。ソロバン塾に通って上手くなると暗算が早くなるので学校のテストでの計算が高速にできるため、算数、数学、化学、物理などは大変役に立ちました。でも昔はソロバンを習う理由の一番大きな理由は、経理事務に就職できることだった、ということは案外忘れ去られています。経理事務は日々のお金の計算が必要ですので、ソロバン技術を持った人は重宝されました。銀行に就職するにももちろん必須技術でした。でも今の時代で経理事務でソロバンができることが採用条件なんて会社ないです。
就職という意味では、私のソロバン技術の習得は無駄だったとも言えます。経理として仕事してないですし。。。
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| ―IT・コンピュータ | 12時32分 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑