3/21 守谷市・柏市周辺を汚染した放射能プルームについて
0.イントロ: 3月15日と21日に観測された放射能雲
福島第一がメルトダウンを起こして数日後、二つの放射能雲(以下、プルーム)が東京にて観測された。以下はその現象の詳細と、放射能雲がどこに着地したかについての考察。


Fig. 1 環境放射線測定結果 <測定場所:新宿百人町、横須賀泊局>
15日と21日に大きな放射線量が観測されている。
参考:(左)原子力ニュース。nu , (右)美浜の会
1.15日と21日の放射性堆積物の比較
・どんな放射性物質が来たか?
Fig.1から15日は非常に大きなピークを観測していることがわかる。しかし野菜汚染など世間をにぎわせている放射性物質のセシウム、ヨウ素はどちらかと言うとピークが小さい21日の方が多い。実際核種分析してみると、15日はキセノンXe-133、21日はセシウムやヨウ素が主成分だったことがわかっている(Fig.2)。

Fig. 2 日本分析センター による核種分析結果
<測定場所:千葉市稲毛区>
キセノンは希ガスであり、半減期も短く、エネルギーも低い特徴がある。そのため病院の核医学検査(呼吸検査)でも使用されるほどである。参考:肺換気シンチグラム⇒ http://halibm.digi2.jp/Xenon.htm
15日に到来した放射能雲はその内容がキセノンであり、ほとんど人体に吸収されなかったと考えられるため、市民の被ばく量は比較的軽微だったと言える。しかし3月21日の放射能雲はその成分がガラリと変わり、セシウム・ヨウ素など、人体や土地に堆積しやすい核種が大量に飛来していた。この21日の放射能雲は関東一帯を汚染し、いま話題の汚染野菜の原因となっているほか、これから人体へ未知なる影響をもたらすことが考えられる。
2.3/21に何が起こったのか
観測
・3月21日午前4:00 東海村近辺に現れた放射能雲
午前4時、東海村付近で観測されたプルームは南西に移動した(Fig.3)。このときの福島第一は南東方向に強い風が吹いており、プルームは海を迂回して茨城県内へ侵入したものと見られる。このとき西から低気圧が接近しており、風は吸い込まれるように南西に吹いていた(Fig.4)。プルームの移動速度は当時観測された風速に近いため、その移動方向も風向きに準じている。

Fig. 3 巨大放射能雲の観測
参考:http://www.chitaro.com/src/chitaro1526.gif_VpumIIAC3MgHrfI8LrEG/chitaro1526.gif
(作成:理化学研究所仁科加速器研究センター専任研究員
板橋健太 様 http://ag.riken.jp/u/mon/show.cgi?2011-03)

Fig. 4 (左)5時~7時の風向き、(右)4時~8時の降水量
雨雲を伴う低気圧が西から接近、風(地表)は南西に変化し、風速は平均3~5m/s
を観測した。風速については局所的なデータで7m/sを記録している。参考:tenki.jp
移動速度考察
・水戸市通過後、南へ時速20~30km/hで移動
観測されたプルームは水戸~鉾田市を通過後、南西に向かったと思われる。そこで関東各地でのそのときの空間線量率をグラフにプロットし、その移動方向について考察した。
Fig.5は日立市の大沼から各地線量率の上昇を追跡したグラフである。午前3時20分に大沼で観測された上昇が東海村、水戸、鉾田、つくば市へ伝播していることがわかる。これはプルームが伝播された結果と考えられる。鉾田市などでは瞬間的な上昇が観測されている。これはプルームの「核」が通過したと考えられ、通過後は減少している(簡易説明図および補足Fig.1を参照)。しかしどの地点でも通過後は倍以上の上昇が見られる。よってこの放射能雲は「核部」を有し、各地に放射能をばら撒きながら通過したものと考えられる。

Fig. 5 各地空間線量率のプロット(日立大沼~つくば市、21日0時~10時)
到達時刻: 日立市大沼 3:20、東海村 4:00、ひたちなか市(勝田) 4:10、
水戸市南部(茨城町) 4:30、鉾田市 4:30、つくば市産総研 6:00~7:00

補足Fig. 1 つくば市KEK による21日の空間線量率(γ線)
21日以降、長期間にわたって徐々に減少している。そのためこれは
堆積した放射性物質が半減期によって減少したものと考えられる。
3.南へ行ったプルームはどこに着地したか?
着地場所についての考察
・空間線量率の上昇と降雨の関係
Fig.6は空間線量率の上昇と降水量の関係を示している。これによればプルームによる上昇は非常に急峻である一方、降雨による上昇は比較的緩やかである。午前8時の降雨と同時に線量率が福島~横浜まで広く上昇しているが、これはプルーム通過後、上空に溜まっていた放射能が降雨によって一気に落とされたものと考える。降雨による増加は日常の降雨でも見られる。そのほとんどの原因はラドン(ビスマス214)であり、降下した放射性物質はほとんど堆積しない(補足Fig. 2)。

Fig. 6 放射能雲と降雨による上昇の違い
午前8時の降雨によって各地の放射線量が増加していることがわかる。

補足Fig. 2 ビスマスBi-214のγ線と降水量の関係について
図中赤線がBi-214、下の青線が降水量。
上空にある放射能は降雨によって落とされたと推測できる。
(図:財団法人日本分析センター)
落下ポイント考察
・放射能雲の進路、降雨による柏付近への落下
Fig.7のチェーンプロット(左上)によればプルームは午前7時につくば市に到達しているので、時速20~30kmで移動したことを考えると、午前8時の降雨時には取手~柏の上空にあったと考えられる(つくば市~柏:距離およそ30km)。そうするとFig.7のように西からきた雨雲と衝突し、その後降雨によって落とされたと考えられる。おそらく柏~取手周辺には降雨によって落とされたプルームの「核」になった放射能が大量にあるはずである。
実際、柏市周辺の空間線量率は0.2~0.5μSv/hと比較的高めで、ホットスポットと呼ばれている。多くの一般市民によってこの事実は確かめられた。また茨城県が最近測定した資料(補足Fig.3)において、汚染地域とプルームの予測軌道は一致している。この理由は3月21日プルームの着弾によるものと考えられる。

Fig. 7 プルームの軌道と着弾点
サイドワインダー(AIM-9x) のような軌道を描き、西から到来した雨雲(低気圧)と衝突

補足Fig. 3 茨城県全域 空間線量率マップ 平成23年5月11日
http://www.pref.ibaraki.jp/important/20110311eq/20110526_01/index.html

補足Fig. 4 有志によって作られた空間線量率のマップ
柏・我孫子・取手方面は相対的に線量率が高い。
最新の調査結果(Google mapに市役所の調査結果を表示したもの)
⇒ 守谷市・柏市・我孫子市周辺の空間線量率 を表示

補足Fig. 5 日本共産党による東京の線量マップ
これによれば3/21のプルームは世田谷区以西には届いていない。
4.役所は至急調査せよ
このプルームの「核」となった放射能は何か。おそらくまだ未公表のストロンチウムSr-90(およびイットリウムY-90)はその候補の一つだろう。チェルノブイリ事故ではストロンチウム90 5.55 kBq/m3以上で汚染区域と判断された。イットリウムはストロンチウムが壊変してできる娘核種だが、そのβ線は2.3MeVの高エネルギーであり、人体への影響が危惧される危険な核種である。
・21日午前4時~8時の危険性
ストロンチウムのほか、セシウムのような沈着しやすい放射性物質が空気中を大量に汚染したため、午前4時~8時に外出していた人々の健康が危惧される。降雨による放射性物質の降下では、放射能は地面に落ちるし、人も好きで雨に打たれる人はいないので雨に濡れる人も少なく、よって被ばくは軽微だったと思われる。しかし降雨前、いつもと同じように新聞配達をしていた労働者、物資輸送や開店準備で朝早い出勤をしていた方は違う。空気中から放射性物質を吸入した可能性が高い。
さらに最近「メルトダウン」「格納容器破損」について東電は認めている。この放射能雲の発生にはいまだに謎が多いけれども、格納容器内の放射性物質が混入してる可能性が大いにあるわけだ。核分裂生成物の中でもサマリウムSm、ランタンLa、ポロニウムPoなどは特に危険性が高い。それらはロシアスパイ暗殺にも使われたことがある。⇒ リトビネンコ暗殺事件
以上のことを考えると、3/21の放射能雲が着弾した柏・取手・守谷・龍ヶ崎・稲敷の各市町村は早急にそれを人が吸入した可能性について検討すべきであり、土壌汚染検査などを行ってその核種分析を実施すべきである。
福島第一がメルトダウンを起こして数日後、二つの放射能雲(以下、プルーム)が東京にて観測された。以下はその現象の詳細と、放射能雲がどこに着地したかについての考察。


Fig. 1 環境放射線測定結果 <測定場所:新宿百人町、横須賀泊局>
15日と21日に大きな放射線量が観測されている。
参考:(左)原子力ニュース。nu , (右)美浜の会
1.15日と21日の放射性堆積物の比較
・どんな放射性物質が来たか?
Fig.1から15日は非常に大きなピークを観測していることがわかる。しかし野菜汚染など世間をにぎわせている放射性物質のセシウム、ヨウ素はどちらかと言うとピークが小さい21日の方が多い。実際核種分析してみると、15日はキセノンXe-133、21日はセシウムやヨウ素が主成分だったことがわかっている(Fig.2)。

Fig. 2 日本分析センター による核種分析結果
<測定場所:千葉市稲毛区>
キセノンは希ガスであり、半減期も短く、エネルギーも低い特徴がある。そのため病院の核医学検査(呼吸検査)でも使用されるほどである。参考:肺換気シンチグラム⇒ http://halibm.digi2.jp/Xenon.htm
15日に到来した放射能雲はその内容がキセノンであり、ほとんど人体に吸収されなかったと考えられるため、市民の被ばく量は比較的軽微だったと言える。しかし3月21日の放射能雲はその成分がガラリと変わり、セシウム・ヨウ素など、人体や土地に堆積しやすい核種が大量に飛来していた。この21日の放射能雲は関東一帯を汚染し、いま話題の汚染野菜の原因となっているほか、これから人体へ未知なる影響をもたらすことが考えられる。
2.3/21に何が起こったのか
観測
・3月21日午前4:00 東海村近辺に現れた放射能雲
午前4時、東海村付近で観測されたプルームは南西に移動した(Fig.3)。このときの福島第一は南東方向に強い風が吹いており、プルームは海を迂回して茨城県内へ侵入したものと見られる。このとき西から低気圧が接近しており、風は吸い込まれるように南西に吹いていた(Fig.4)。プルームの移動速度は当時観測された風速に近いため、その移動方向も風向きに準じている。

Fig. 3 巨大放射能雲の観測
参考:http://www.chitaro.com/src/chitaro1526.gif_VpumIIAC3MgHrfI8LrEG/chitaro1526.gif
(作成:理化学研究所仁科加速器研究センター専任研究員
板橋健太 様 http://ag.riken.jp/u/mon/show.cgi?2011-03)


Fig. 4 (左)5時~7時の風向き、(右)4時~8時の降水量
雨雲を伴う低気圧が西から接近、風(地表)は南西に変化し、風速は平均3~5m/s
を観測した。風速については局所的なデータで7m/sを記録している。参考:tenki.jp
移動速度考察
・水戸市通過後、南へ時速20~30km/hで移動
観測されたプルームは水戸~鉾田市を通過後、南西に向かったと思われる。そこで関東各地でのそのときの空間線量率をグラフにプロットし、その移動方向について考察した。
Fig.5は日立市の大沼から各地線量率の上昇を追跡したグラフである。午前3時20分に大沼で観測された上昇が東海村、水戸、鉾田、つくば市へ伝播していることがわかる。これはプルームが伝播された結果と考えられる。鉾田市などでは瞬間的な上昇が観測されている。これはプルームの「核」が通過したと考えられ、通過後は減少している(簡易説明図および補足Fig.1を参照)。しかしどの地点でも通過後は倍以上の上昇が見られる。よってこの放射能雲は「核部」を有し、各地に放射能をばら撒きながら通過したものと考えられる。

Fig. 5 各地空間線量率のプロット(日立大沼~つくば市、21日0時~10時)
到達時刻: 日立市大沼 3:20、東海村 4:00、ひたちなか市(勝田) 4:10、
水戸市南部(茨城町) 4:30、鉾田市 4:30、つくば市産総研 6:00~7:00

補足Fig. 1 つくば市KEK による21日の空間線量率(γ線)
21日以降、長期間にわたって徐々に減少している。そのためこれは
堆積した放射性物質が半減期によって減少したものと考えられる。
3.南へ行ったプルームはどこに着地したか?
着地場所についての考察
・空間線量率の上昇と降雨の関係
Fig.6は空間線量率の上昇と降水量の関係を示している。これによればプルームによる上昇は非常に急峻である一方、降雨による上昇は比較的緩やかである。午前8時の降雨と同時に線量率が福島~横浜まで広く上昇しているが、これはプルーム通過後、上空に溜まっていた放射能が降雨によって一気に落とされたものと考える。降雨による増加は日常の降雨でも見られる。そのほとんどの原因はラドン(ビスマス214)であり、降下した放射性物質はほとんど堆積しない(補足Fig. 2)。

Fig. 6 放射能雲と降雨による上昇の違い
午前8時の降雨によって各地の放射線量が増加していることがわかる。

補足Fig. 2 ビスマスBi-214のγ線と降水量の関係について
図中赤線がBi-214、下の青線が降水量。
上空にある放射能は降雨によって落とされたと推測できる。
(図:財団法人日本分析センター)
落下ポイント考察
・放射能雲の進路、降雨による柏付近への落下
Fig.7のチェーンプロット(左上)によればプルームは午前7時につくば市に到達しているので、時速20~30kmで移動したことを考えると、午前8時の降雨時には取手~柏の上空にあったと考えられる(つくば市~柏:距離およそ30km)。そうするとFig.7のように西からきた雨雲と衝突し、その後降雨によって落とされたと考えられる。おそらく柏~取手周辺には降雨によって落とされたプルームの「核」になった放射能が大量にあるはずである。
実際、柏市周辺の空間線量率は0.2~0.5μSv/hと比較的高めで、ホットスポットと呼ばれている。多くの一般市民によってこの事実は確かめられた。また茨城県が最近測定した資料(補足Fig.3)において、汚染地域とプルームの予測軌道は一致している。この理由は3月21日プルームの着弾によるものと考えられる。

Fig. 7 プルームの軌道と着弾点
サイドワインダー(AIM-9x) のような軌道を描き、西から到来した雨雲(低気圧)と衝突

補足Fig. 3 茨城県全域 空間線量率マップ 平成23年5月11日
http://www.pref.ibaraki.jp/important/20110311eq/20110526_01/index.html

補足Fig. 4 有志によって作られた空間線量率のマップ
柏・我孫子・取手方面は相対的に線量率が高い。
最新の調査結果(Google mapに市役所の調査結果を表示したもの)
⇒ 守谷市・柏市・我孫子市周辺の空間線量率 を表示

補足Fig. 5 日本共産党による東京の線量マップ
これによれば3/21のプルームは世田谷区以西には届いていない。
4.役所は至急調査せよ
このプルームの「核」となった放射能は何か。おそらくまだ未公表のストロンチウムSr-90(およびイットリウムY-90)はその候補の一つだろう。チェルノブイリ事故ではストロンチウム90 5.55 kBq/m3以上で汚染区域と判断された。イットリウムはストロンチウムが壊変してできる娘核種だが、そのβ線は2.3MeVの高エネルギーであり、人体への影響が危惧される危険な核種である。
・21日午前4時~8時の危険性
ストロンチウムのほか、セシウムのような沈着しやすい放射性物質が空気中を大量に汚染したため、午前4時~8時に外出していた人々の健康が危惧される。降雨による放射性物質の降下では、放射能は地面に落ちるし、人も好きで雨に打たれる人はいないので雨に濡れる人も少なく、よって被ばくは軽微だったと思われる。しかし降雨前、いつもと同じように新聞配達をしていた労働者、物資輸送や開店準備で朝早い出勤をしていた方は違う。空気中から放射性物質を吸入した可能性が高い。
さらに最近「メルトダウン」「格納容器破損」について東電は認めている。この放射能雲の発生にはいまだに謎が多いけれども、格納容器内の放射性物質が混入してる可能性が大いにあるわけだ。核分裂生成物の中でもサマリウムSm、ランタンLa、ポロニウムPoなどは特に危険性が高い。それらはロシアスパイ暗殺にも使われたことがある。⇒ リトビネンコ暗殺事件
以上のことを考えると、3/21の放射能雲が着弾した柏・取手・守谷・龍ヶ崎・稲敷の各市町村は早急にそれを人が吸入した可能性について検討すべきであり、土壌汚染検査などを行ってその核種分析を実施すべきである。