Krugmanがおもしろい記事を書いている。「日本経済は悪い悪いというが、その原因は労働人口が減っていることだ。労働者ひとり当たりのGDPをアメリカと比較すると、80年代とそんなに変わらない。2000年代の成長率はアメリカより高い」。


Noah Smithは「なぜ日本はこれほど力強く成長しているのに悲観しているのか?」と問いかけているが、その答はシンプルだ:問題は経済全体のサイズだからである。企業にとっては、売り上げが労働人口比で伸びても意味がない。毎年0.7%ずつ現役世代が減っていく国の活力が乏しくなるのはしょうがない。

問題は、これをどうすべきかということだ。Krugmanの求める財政刺激は、この統計と整合性がない。労働人口比でみると2000年代初めのGDPギャップはほぼ埋まっているから、今は定常状態に近い。したがって「デフレ脱却」なんて意味がなく、金融政策も財政政策も必要ない。必要なのは、まだアメリカに比べて25%ぐらい低い労働生産性を上げる改革(主として労働市場)だけである。

ただ人々が日本経済の実力を実態以上に悲観しているのはよくないので、「日本はそれほど悪くない」と知ることは重要だ。アベノミクスは偽薬だが、「病は気から」だから、偽薬にもそれなりの効果がある。