o0540042310455951689全国のラジオ局が放送を同時にネット配信するradiko.jpのサービスが、本格的に始まった。いま配信しているのは関東と近畿の局だが、ウェブサイトでは、東京からは関東の局しか見えない。大阪の局に直接アクセスすると「サービス地域外のためラジオを聴くことができません」というメッセージが出る。

これはユーザーのIPアドレスから、その地域を判別してアクセスを拒否しているらしいが、かなり面倒な作業である。ほとんどのユーザーはISPからDHCPでアクセスしているので、IPアドレスと地域は対応していない。おそらく中継ルータのアドレスから地域を推定しているのだろうが、このためには全国の数万のルータのアドレスとその地域を対応させる膨大なデータベースが必要である。実際には、かなりエラーが出るようだ。

ネットラジオはiTunesに登録されているだけでも世界で1000局以上あり、私はいつもアメリカのジャズ系ラジオ局を聞いている。ところが日本では一部のコミュニティFMしかなく、それもJASRACが禁止しているため音楽はほとんどかからない。ラジコも2007年に検討が始まったが、その時間の大部分はいかに地域を限定するかの問題に費やされた。

インターネットで音声を放送するのは簡単で、普通にやれば全世界に配信できるが、それを地域に限定しようとすると大変な手間がかかる。これはNTTが地デジの再送信を「当該放送区域内」に限定するために、県境のルータに細工しているのと同じだ。その理由は著作権だが、実際の目的は地方民放の電波利権を守ることだ。まねきTVのような零細な業者を放送局が執拗に訴訟で駆逐しようとするのも、同じ理由である。

国境のないインターネットに、わざわざコストをかけて県境をつくるのは、日本の放送局だけだ。特にラジオはコストが低くローカル局の自主制作も多いので、制作能力のある局は全国に(あるいは世界に)配信すれば、新しいメディアとして発展する余地もある。別に全局が同じサイトでやる必要もなく、アメリカのように各局が勝手にウェブサイトをつくって放送すればいいのだ。

それを全国の局が集まって「協議会」をつくって利害調整し、電波利権を守るために膨大なコストをかけて地域限定で放送するのは、仲よく横並びで沈没する日本的構造の典型だ。そんな身内の都合でつまらない番組を流しても、視聴者にそっぽを向かれてビジネスとしても失敗するということに彼らが気づくのが早いか、それともラジオ局が消滅するのが早いか・・・