」で書いたように、Financial Independence & Early Retirement、経済的な独立とアーリーリタイアのこと。FIRECalcは、早期リタイアに特化したweb計算器です。米国にリタイア計算サイトは数多くあれど(バンガード社も提供してる!)、早期リタイアに特化してるのは珍しいと思います。
FIRECalcのシンプルな使い方
一番簡単な使い方は、トップページの中央右側にある「Start Here」のボックスに3つの変数を入力するだけです。
・Spending : 年間支出額
・Portfolio : 現有金融資産額
・Years : リタイア後の年数
もちろんすべてドル表示ですが、今ちょうど1ドル100円計算ができますので、円の額を100で割って入力すれば良いだけなので簡単。
年間生活費100万円!なら、10000となります。
さて、ここで
ハッピーリタイア計算ツール・ケース1.で登場した中年独身妄想男を召喚してみましょう。
・年間支出額は205万円=20,500ドル
・45歳時の金融資産額はだいたい5500万円=550,000ドル
・45歳から90歳まで生きる予定なので、リタイア後は45年間
これをStart Hereのボックスに入力すると、結果はこうなります。
Here is how your portfolio would have fared in each of the 96 cycles. The lowest and highest portfolio balance throughout your retirement was $-492,662 to $10,761,285, with an average of $1,968,592. (Note: values are in terms of the dollars as of the beginning of the retirement period for each cycle.)
For our purposes, failure means the portfolio was depleted before the end of the 45 years. FIRECalc found that 4 cycles failed, for a success rate of 95.8%.
96回試行し、リタイア生活を通じた金融資産額は-492,662ドルから10,761,285ドルまでの幅にあり、平均は1,968,592ドルとなる(価値はリタイア開始当時のもの)。
うち4回の試行でリタイア終了前に資産額がマイナスになる。リタイアの成功率は95.8%。
アーリーリタイアweb計算機の結果をどう読むか
この結果を見てどう思いましたか?
中年妄想男「おう、俺のポートでリタイアの成功率は95.8%か、悪くないな。あわよくばビリオネアにもなれるらしいしいっちょリタイヤすっか!」
と安直に取るのも悪くないんですが、この中年妄想男さんはどうやってこの計算がなされているか解っているんでしょうか。せめて前提条件だけでも理解しておいた方がよろしいかと。
ここでFIRECalcはどういう前提で計算をしているのでしょうか。
・米国株式75%、米国債券ファンド25%の「カウチポテト」ポートフォリオを持っていた場合の運用成績(手数料率は0.18%)。
・1871年以降の毎年をスタート地点と仮定して、このポートフォリオが運用期間中どのようなパフォーマンスを示すのかシミュレーションする。
・支出額も同様に、米国消費者物価指数でインフレ調整を行う
・年金は考慮に入れない
といった条件で、96回シミュレーションを行なっています。1871年から1965年までということでしょうかね。(45年間のシミュレーションが必要なためか)
1929年の大恐慌とか、1973年のオイルショックあたりにスタートさせるシミュレーションだと赤字になる計算かな、と想像します。
実際の過去のデータを使って、リタイア成功の可能性を確率で示してくれるのが非常に有用だと思います。ただ、注意しなくてはいけないのは、FIRECalcトップページにも書いてある以下のことです。
How can FIRECalc predict future returns from past performance?
It can't. And it doesn't try. In fact, it tries to predict what will not happen. This might sound confusing, but it's really simple.
FIRECalcはどうやって過去のパフォーマンスから将来のリターンを予測しているの?
FIRECalcにはそんなことできないし、しようともしていません。むしろ、起こらないようなケースを予測しようとしています。
1871年以降、というよりもここ数十年でアメリカ経済の構造も非常に大きく変化しているので、この結果をそのまま鵜呑みにするのは危険です。あくまでも参考情報の一つとして利用してください、と作者は警告しています。
しかも、このブログを主に読んでいると思われる日本人のリタイア・シミュレーションにとっては、この運用成績も残念ながら、本当に参考程度にしか使えません。私を含めて多くの日本人は、円建てで資産運用を考えていますし、米国株と米国債券だけに投資している人(しかも75:25で)はほとんどいらっしゃらないでしょう。
ただ、このFIRECalcは、いろいろな条件を付けてのモンテカルロ・シミュレーション(ランダム・シミュレーション)が可能になっているので、これを利用して我々にももう少し有用な形でこのweb計算機を使う方法がありそうです。
とりあえず今回はご紹介まで。そのうちもう少し詳しく見たいとおもいます。