ハウツーだけじゃダメかしら?(ダメです)
何か問題が起こったときに、じゃあどうすればよいのかという
ハウツーだけを求める傾向が強いです。
それは会社だけでなく、社会全体にも見られる傾向だと思います。
だからなんでもハウツー本が流行る。
恋愛でも自己啓発でも、キャリアでも勉強でも。
でもハウツーは役に立つときもあるけれど、あくまでもその効果は短期的です。
別の角度から考えると、それは自分に何も残さないし、与えない。
このブログを書いてるleMMonさんは、サンノゼの小さなスタートアップの会社で働いてるということですが、なるほどなと感じます。
というのは、僕も会社で事業やサービスのスタートアップが1つのミッションだったりするので、leMMonさんがなんでハウツーを疑問視してるのかに共感できる気がするんです。ようは、スタートアップという環境に身を置くと、そこにはほとんど確証のある答え=ハウツーなんてないのは、ごく日常的に感じることなんですよね。
とにかく社内でははじめたばかりでノウハウなんてあるわけないし、かといって外部を探してみても、自分たちとは状況が違う場合の先行例はあってもそれはそのまま使えるわけはない。結局、参考になるものはあっても、そのままずばりの答えなんてないわけです。
自分の専門領域以外の先人の知恵を参考に
でも、実はスタートアップに限らず、実際には確証のある答えなどないんですよね。それがさっきの「未来を考えるならいまの気分だけで無用とか無意味とかを判断しないこと(あるいは多和田葉子『ふたくちおとこ』)」で考えたことでもあるわけです。
色即是空。諸行無常。いまたとえ確証があってもそれはいつ塵となって消えるかはわからないというわけ。
僕の専門分野であるWebのビジネス活用だって、まだ見つかっているといえそうな答えなんてほんの一部だと思います。そこを考えようとすれば、Webにこだわっていられないし、ビジネス領域にだってこだわっていられません。
やっぱり自分の専門領域以外の先人の知恵なども参考にさせてもらいながら、自分で答えを見つけていくしかないんだろうなと思ってます。
未来への宣言とハウツーの弊害
leMMonさんは、こんなことも書いてます。でもこういう無駄を無駄と思わずにやれるかどうかで、
その人の可能性は無限となるかもしれないし、
逆に今見えるところから出られなくなるかもしれない。
いま、いくつかの会社のブランディングに関する相談にのらせていただいているんですが、ここでleMMonさんが書いていることって、個人に限らず企業にもいえることだと感じます。企業全体としてもそうですし、企業内で働く個人個人の意識、そして、その意識付けとしての企業文化といいますか。自分たちの小さな殻のなかに閉じこもって、外に向かって自分たちの未来を語ることもなく、ましてやそうした宣言がないだけでなく、実際の未来への準備も怠られてしまっている。ブランドが宣言するから、まわりは期待することができるわけで、そうした宣言なくブランドを構築することなど、できるはずがありません。
でも、実際、そうした未来への夢を語ることができない企業は少なくないんですよね。間違いを恐れているんでしょうか? これも何か確実な答えがあると思い込みが抱かせる無駄な恐れですよね。ハウツーの弊害ともいえますよね。
いまはそれなりの業績はあげているとしても、市場環境は常に変化しているわけで、すでに成熟した市場であれば、この先はどんどん先細りで、市場自体が急激に縮小することだって考えられるわけです。そのとき、どうするかということは当然、手持ちのハウツーではどうにもならないわけです。だって、それを使う環境=前提が大きく変わってしまっているのですから。
そうなれば「今見えるところから出られなくなるかもしれない」んです。
そして、出られなかったら、その場合は終わりです。
アリとキリギリス
まぁ、アリとキリギリスの童話ですよ。いま一生懸命働くという意味を取り違えてはいけないと思うわけです。
もしかして、こういう話って経営者が考えればいい問題だと思ってます?
そんなわけないですよね。あなたはただの働きアリじゃないわけで、ちゃんと自分の会社の未来を考え、そして、行動しなくてはいけない立場にあるはずだと思いますから。もし、自分にはそういうミッションはないとお思いでしたら、それは大きな勘違いだと思いますよ。
会社の未来とまでいうと大げさすぎるかもしれないので、自分の仕事の未来としたほうがいいかもしれませんね。それを考え、生み出していくのは自分のミッションだということには異論はないんじゃないでしょうか?
そのためには他人がつくったハウツーに従ってるだけじゃ、やっぱりダメだと思います。もちろん、それはハウツーがまったくダメだということではなくて、それだけじゃダメでしょという意味で。
ブランドデザインプロセスがハウツーから脱却させる
日本在住のボブ・スリーヴァさんが書いた『ブランドデザインが会社を救う!』は、ものづくり主体の日本企業にとってのブランディングを考える本ですが、そこでもものづくりしてるだけじゃダメで、ブランドをデザインしないとダメですよってことが書かれてます。結局、このブランドをデザインするって思考、行動そのものが、ハウツーに頼らないオリジナルの考え方自体をデザインしてくれるプロセスになり、それがブランドを育て上げる原動力にもなっていきます。その過程が「今見えるところから」の脱却を可能にしてくれるわけで、それ以外のどこかに「今見えるところ」以外の何か別の場所があるということを事前に想定すること自体が間違った前提です。ようするに答えが先にあるわけではなく、答えは思考と行動のプロセスの中で生み出されるものだということを誤解してはいけないんだと思います。
そして、考えてみればブランドこそ、色即是空です。
人の五蘊にいかに働きかけ、識としてのブランドを形作れるかということ。これに関してはまた今度。
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この記事へのコメント
leMMon
「好奇心を活性化するための受容器官の鍛錬」のエントリ、全く同感です。論理ではなくて感覚で、色々なものを拾えるかどうか。そういう鍛錬として、座禅も一つかもしれませんね。私も、ここサンノゼで、今いる会社の仲間達と一緒に出来る方法を考えていきたいと思っています。
tanahashi
感覚を養うことも、論理的な思考法を養うのと同じくらい重要だと思います。
両方ないとダメなんでしょうね。