2013年 03月 18日
ヨーロッパで高まる戦争の予感?その1 |
今日のイギリス南部は朝からずっと雨です。
どうやら午前中に日本の会社が冠スポンサーになっているマラソン大会があったようで、宿泊先の目の前の道路ではランナーたちが観客たちの声援と拍手を受けて必死に走っておりました。
さて、こちらでもちょっと話題になっていた論説記事の内容を、二回にわけて要約します。
イギリスではドイツを中心としたユーロ体制には不満が大きいようで、イギリスはユーロから離れるべきだという意見が私の周辺でもけっこう聞かれます。
======
ドイツが再び大戦争を勃発させる?
by ドミニク・サンドブルック
●世界は歴史の曲がり角に立っている。莫大な経済力が国際政治の風景を作り替えているからだ。イギリスでは首相が何度も迫る危機に翻弄されており、海外ではヨーロッパの中心からアジアの端にいたるまで経済力を持った大国が台頭している。そして歴史上最大の新しいドイツ帝国の誕生もささやかれているほどだ。
●上のような言葉は今日の新聞から抜き出してきたようなもののように聞こえるかもしれない。しかしこれは1913年、つまり今から100年前の世界の状況について描いた話なのだ。
●1913年と現在のイギリスは、一見すると途方もなく違うように思える。大英帝国は世界中に広がっており、世界的にも銀行家と製造業は最高だとみなされていたからだ。
●そして階級でしっかりとわかれていた国内では、保守党には人がおらず、労働党は第三党の少数派、そしてハーバート・アスキスに率いられていた自由党は八期目の政権を担当しはじめるところであった。
●しかし当時の人々が水面下で直面していた問題は、実は驚くほどわれわれが直面しているものと似ており、とくにヨーロッパのバランス・オブ・パワーの変化は特筆すべきだ。
●今週ヨーロッパの深い亀裂を見せたのは、欧州理事会の議長を長年つとめた人物が行った、「第一次大戦直前の百年前の状況と2013年はそっくりである」という驚くべき内容のスピーチであった。
●ジャン=クロード・ユンケル氏は、ユーロを下支えするための緊縮政策が進められているおかげで国家間の長期的な緊張が明らかになり、ドイツにたいする不満が高まっていると主張している。
●彼は「悪魔は撃退されたわけではなく、ただ眠っているだけなのです」と警告しており、それに加えて「ヨーロッパで戦争と平和という恒久的な問題が永遠に葬りさられたと信じている人はとてつもなく大きな間違いをしています」と述べている。
●これが十年前だったら、彼は単なる「オオカミ少年だ」として全く問題にされなかったであろう。ところが今日のヨーロッパでは政治的なムードが、長年にわたって全く考えられなかったのと対照的に、劇的に変化している。
●伝説的なアメリカの投資家であるジョージ・ソロスは去年行ったスピーチで、もしドイツ首相のアンゲラ・メルケルがドイツ以外の国々に今のままの経済面での要求をつづければ「ドイツが他の国々から帝国主義的な国だと見られて、嫌われて尊敬されることなく、憎しみと反抗の対象になるでしょう。なぜなら抑圧的な国だと見られてしまうからです」と述べている。
●イギリスの左寄りの雑誌であるニュースステイツマン誌は、メルケル首相のことを「ヒトラー以来の最も危険なドイツの指導者だ」としている。
●このような言葉は煽動的に見えるが、ユーロ内の地中海地方の国々は、ドイツがここ百年以内に三度目のヨーロッパ支配を行おうとしていると主張している。
●もちろんドイツ側は、ただ単に自分の能力以上に使いすぎてしまう国々の財政を安定させようとしているだけだと言うだろう。
●しかしドイツがヨーロッパの人々にたいしてさらに厳しい経済面での制限を行えば、外交面での孤立や紛争、それに政治における過激主義の台頭などは劇的なものになるだろう。
●われわれはすでにアテネやローマ、そしてマドリードなどで、ドイツの経済面での圧政にたいする血塗られたプロテストを目の当たりにしている。
●これはギリシャの超民族主義的で右派の「黄金の夜明け」党のような政党が伸びてくる最適な環境であり、暴力の増加と外国人労働者排斥にとって好都合な状態が毎週進んでいるのだ。
●そしてこの危機の争点になっているのは偉大な「ヨーロッパ統合」というプロジェクトそのものなのであり、傲慢な形で創設されたその経済体制そのものなのだ。しかしこれはいま破滅的な崩壊に直面している。
=====
長くなったので続きは後ほど。

(隣町の様子)
どうやら午前中に日本の会社が冠スポンサーになっているマラソン大会があったようで、宿泊先の目の前の道路ではランナーたちが観客たちの声援と拍手を受けて必死に走っておりました。
さて、こちらでもちょっと話題になっていた論説記事の内容を、二回にわけて要約します。
イギリスではドイツを中心としたユーロ体制には不満が大きいようで、イギリスはユーロから離れるべきだという意見が私の周辺でもけっこう聞かれます。
======
ドイツが再び大戦争を勃発させる?
by ドミニク・サンドブルック
●世界は歴史の曲がり角に立っている。莫大な経済力が国際政治の風景を作り替えているからだ。イギリスでは首相が何度も迫る危機に翻弄されており、海外ではヨーロッパの中心からアジアの端にいたるまで経済力を持った大国が台頭している。そして歴史上最大の新しいドイツ帝国の誕生もささやかれているほどだ。
●上のような言葉は今日の新聞から抜き出してきたようなもののように聞こえるかもしれない。しかしこれは1913年、つまり今から100年前の世界の状況について描いた話なのだ。
●1913年と現在のイギリスは、一見すると途方もなく違うように思える。大英帝国は世界中に広がっており、世界的にも銀行家と製造業は最高だとみなされていたからだ。
●そして階級でしっかりとわかれていた国内では、保守党には人がおらず、労働党は第三党の少数派、そしてハーバート・アスキスに率いられていた自由党は八期目の政権を担当しはじめるところであった。
●しかし当時の人々が水面下で直面していた問題は、実は驚くほどわれわれが直面しているものと似ており、とくにヨーロッパのバランス・オブ・パワーの変化は特筆すべきだ。
●今週ヨーロッパの深い亀裂を見せたのは、欧州理事会の議長を長年つとめた人物が行った、「第一次大戦直前の百年前の状況と2013年はそっくりである」という驚くべき内容のスピーチであった。
●ジャン=クロード・ユンケル氏は、ユーロを下支えするための緊縮政策が進められているおかげで国家間の長期的な緊張が明らかになり、ドイツにたいする不満が高まっていると主張している。
●彼は「悪魔は撃退されたわけではなく、ただ眠っているだけなのです」と警告しており、それに加えて「ヨーロッパで戦争と平和という恒久的な問題が永遠に葬りさられたと信じている人はとてつもなく大きな間違いをしています」と述べている。
●これが十年前だったら、彼は単なる「オオカミ少年だ」として全く問題にされなかったであろう。ところが今日のヨーロッパでは政治的なムードが、長年にわたって全く考えられなかったのと対照的に、劇的に変化している。
●伝説的なアメリカの投資家であるジョージ・ソロスは去年行ったスピーチで、もしドイツ首相のアンゲラ・メルケルがドイツ以外の国々に今のままの経済面での要求をつづければ「ドイツが他の国々から帝国主義的な国だと見られて、嫌われて尊敬されることなく、憎しみと反抗の対象になるでしょう。なぜなら抑圧的な国だと見られてしまうからです」と述べている。
●イギリスの左寄りの雑誌であるニュースステイツマン誌は、メルケル首相のことを「ヒトラー以来の最も危険なドイツの指導者だ」としている。
●このような言葉は煽動的に見えるが、ユーロ内の地中海地方の国々は、ドイツがここ百年以内に三度目のヨーロッパ支配を行おうとしていると主張している。
●もちろんドイツ側は、ただ単に自分の能力以上に使いすぎてしまう国々の財政を安定させようとしているだけだと言うだろう。
●しかしドイツがヨーロッパの人々にたいしてさらに厳しい経済面での制限を行えば、外交面での孤立や紛争、それに政治における過激主義の台頭などは劇的なものになるだろう。
●われわれはすでにアテネやローマ、そしてマドリードなどで、ドイツの経済面での圧政にたいする血塗られたプロテストを目の当たりにしている。
●これはギリシャの超民族主義的で右派の「黄金の夜明け」党のような政党が伸びてくる最適な環境であり、暴力の増加と外国人労働者排斥にとって好都合な状態が毎週進んでいるのだ。
●そしてこの危機の争点になっているのは偉大な「ヨーロッパ統合」というプロジェクトそのものなのであり、傲慢な形で創設されたその経済体制そのものなのだ。しかしこれはいま破滅的な崩壊に直面している。
=====
長くなったので続きは後ほど。

by masa_the_man
| 2013-03-18 01:29