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北九州市長が瓦礫試験焼却に前のめりになったことに関する二、三の理由

ブログ記事を書くときは、実際に書く時間より、それに至るまでに使う時間のほうが圧倒的に多い。疑問点をネットで検索しまくったり、参考とすべき資料を書棚から漁り、それに読みふけってしまったりしているうちに時間が立って、あ~もうこんな時間か、明日は早い、もう寝ようということになってしまう。

ここ2~3日は、震災瓦礫受け入れ強行とそれに伴う騒動で、わが町北九州が全国的にクローズ・アップされてしまった。こういうときこそ、正真正銘の市民たる僕が詳細にこのことを記事にしなければならなかったのかもしれないのだが、仕事の合間に、ムカつくままにツイートするのみになってしまった。

瓦礫の広域処理の背後には、「助け合い」とか「分かち合い」とか「絆」とかいう表向きの美辞麗句とは無縁の、ただただ、「利権あさり」という本質以外に何もないということは、賢明なる読者諸兄には、早い段階からお気づきのことだろう。この国のお上が、翼賛的なかけ声で行った行為に、今までろくなものはなかった。

事故で発生した放射能は現地で封じ込めるのが鉄則なのに、わざわざ汚染されてない地域に汚染の可能性大の物質を持ち込んでくる。これで、北九州は「汚染地域」「危険地域」と「風評」されるだろう。焼却場のすぐ隣にある中央卸売り市場から流通される野菜を食べさせられなければならなくなる我々市民も、それを否定はできない。

さっそく、愛媛だかどこかの学校が修学旅行先が北九州だったために取りやめたらしい。忸怩たる思いがあるが、少しでも生徒の健康が損なわれる事態を避けようとする学校の判断は、実に正しく、賢明な処置と言わざるを得ない。とにかく、九州は安全ですと胸を張って言えなくなったのは間違いない。

60年代~70年代に工場から排出する煙で空を汚し、排水で海を汚してきた北九州市は、その負のイメージから脱却するために「環境都市」への生まれ変わりを数十年かかって追求してきた。今ではその「先進的」と自賛する「エコ推進事業」を以って他市への優越を誇ってきた筈だ。

それが、この件で灰燼に帰してしまった。北九州市はふたたび、「汚染された町」としての第一歩を踏んでしまった。そこまでのリスクを背負ってまで、どうして北橋市政は、「瓦礫受け入れ」に前のめりになってしまったのか。警察を動員して反対派を蹴散らかしてでも、瓦礫焼却を強行してしまったのか。

それを解くキーワードは、北九州に古くからあったいくつかの大企業の名なのかもしれない。そのひとつは「東芝」である。北九州市の小倉北区にある東芝北九州工場は、国内に現存する同社の、最古の工場だ。それが昨年末に北九州からの撤退を表明したのだ。このことが市に与える甚大な影響は計り知れないものがある。

取引先は北九州市内だけで80社を数え、二次請けや三次請けまで含めると影響を受ける企業の実数は数倍に膨れ上がるものとみられる。東芝本体だけでなく、これだけの企業からの税収が見込めなくなるわけだ。また、雇用が激減し、市外への人口の流出に、ますます歯止めがかからなくなる。

それでなくても、市の経済状況は深刻だった。前市長の放埓な各事業はどれも結果が思わしくなく、規模の大きな商業施設、ハコモノをつくっては誘致に失敗し、駅の近くに巨大な空家を無駄に存在させているまま。また、日本でも有数の高齢化率は、市の福祉予算を圧迫し続けている。

そのしわ寄せが「北九州方式」と呼ばれる「生活保護受給阻止」政策というかたちであらわれる。とにかく、水際で受給を食い止めようというわけで、本当に生活に困窮している者までもが受給を断られ、ついには餓死者が出て、全国ニュースとなった。わが町には「最後のセーフティ・ネット」は存在しなかったのだ。

そんななかでの東芝撤退である。また、同じ北九州の古い工場、「住友金属小倉」が、新日鉄に吸収・合併されるということも、北九州市にとっては深刻な事態だといわれている。まさに泣きっ面に蜂の集団が襲い掛かってきているようなものだ。そんな逆風を少しでもやわらげる朗報が飛び込んできた。それが瓦礫の広域処理だった。

北九州市は新日本製鐵の企業城下町と言われてきた。小倉は古くからの城下町だが、その隣の八幡は、貧しい寒村だった。そこに明治初年、官営の八幡製鉄所が建設されたのだ。八幡は、製鉄抜きには存在し得ない町として歴史を刻んできた。今でも、新日鉄の存在は、巨大なままである。

この新日鉄の会長・三村明夫氏が、実は「震災瓦礫の広域処理」の言いだしっぺなのだ。巨大な利権が見込まれる「瓦礫処理」は、おそらく港湾設備があり、焼却施設もある新日鉄にとっては、ぜひとも奪い取りたい事業ではなかったのか。新日鉄が儲かれば、北九州市も潤うことになる。

ましてや、北橋市長は新日鉄の労組出身だ。労使一体となった「企業選挙」で北橋氏は衆議院議員となり、また北九州市長となることができた。最大の票田のご機嫌を損ねることは、自らの政治家としての死を意味する。走狗となってご主人様のために働かなければ、自らの存続が危うい。

国家の暴力装置を使ってでも、瓦礫焼却を強行したかった動機は、ここにあるのだろう。いずれにしろ、こういう自己の都合で、われわれ市民、未来ある子や孫の健康が損ねられるかもしれないことは、断じて許しがたいと言わねばならない。そして、この焼却強行によって、他の困窮せる各自治体にその累が及ぶことを、憂慮せざるを得ない。

これに関連することは、まだ言い足りないが、夜も更けきったので、続きはまた今度ということでお許し願いたい。


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