正体のレビュー・感想・評価
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原作をブラッシュアップした映像化作品の成功例
横浜流星主演の原作付き作品ということで気合が入り、公開日を聞いた時期に染井為人の原作を読んだ上で観に行った。
(原作の内容と結末にも触れる感想になるので、これから原作を読みたい方はご注意ください)
最近キャスティングの上手い邦画が増えてきた気がして何だか嬉しい。特に、実力とビジュアルで鏑木役に横浜流星以上の適任はいないのではないだろうか。ビジュアルというのは、原作の鏑木もくっきりとした二重に通った鼻梁、ネットで写真を見た舞(映画では酒井杏奈)に「わりとイケメンじゃん」と思わせる容貌だからだ。
そんな彼が、背中を丸めたベンゾーからおだやかな佇まいの桜井まで、七変化ならぬ五変化の姿を演じる様は見応えがあった。逃亡中、世を忍んだ生活でほとんど喜怒哀楽をあらわにしなかった彼が、沙耶香(吉岡里帆)の言葉に泣き、井尾(原日出子)と対峙して感情をほとばしらせる姿には胸が詰まった。
他のメインキャストのジャンプこと和也(森本慎太郎)、又貫(山田孝之)、舞や沙耶香に関しても置かれた環境や心情が過不足なく描写されており、彼らの鏑木との出会いが終盤に集約されていく展開を、限られた時間の中で自然に見せていたように思う。
原作からの変更部分も、よい改変が多かった。
一番驚いたのは、鏑木が死ななかったことだ。原作では、介護施設に立て篭もった鏑木は警官に撃たれて死ぬ。死後にかつて彼と出会った人々が集まって、裁判で名誉を回復するというラストだ。冤罪の理不尽さを描こうという意図は伝わってくるが、あまりに救いがない。
また、原作では鏑木を追い詰めるただの敵対者のようだった又貫が、組織の論理と個人的な良心の板挟みになる人物として描かれていたのもよかった。社会的権力を持つ組織の問題を描く時、その中にいる個人を単純に悪魔化してステレオタイプの批判的描写をしても意味がないと常々思う。組織の構造にスポットを当てる必要がある。本作では松重豊がその説明役を担っていた。
終盤に又貫が組織の意向に逆らい再捜査を宣言する場面は、ラストの無罪判決と並んで希望を感じさせるシーンになっていた。
沙耶香は父淳二の痴漢冤罪と闘っている設定だったが、原作では沙耶香と淳二は赤の他人だ。別の時期に鏑木が遭遇した2つのエピソードを映画ではひとつにまとめた形になるが、これはとてもよいアレンジだと思った。
原作の沙耶香は、映画と同じくライターの那須を自宅に住まわせ、彼が鏑木であると察してもなお彼を守るが、その動機が知り合って数ヶ月の那須への好意や恋愛感情以外に見当たらず、犯人隠匿という危険を犯すには弱いような気がしていた。
それが、淳二を父親にして冤罪の理不尽さと向き合っている人物にすることで、彼女の行動の説得力が格段に増した。
この改変、なんと吉岡里帆のアイディアだという。吉岡里帆すごい。
改変「されなくて」ちょっと残念だった部分もあった。
鏑木が現場で逮捕された時の状況はほぼ原作通りの描写なのだが、特殊な状況すぎてちょっともやもやしてしまう。
それなりに分別あるだろう高校3年生が、室内が血の海とわかっても通報せず入っていくのか? 足利(山中崇)は涎垂らして血まみれのまま出ていく感じだったけど、そんな犯人が全く指紋や足跡を残してない、目撃者も全くないなんてあり得るのか? などなど(他にも言いたいが省略)。
警官現着時に現場で鎌持って血まみれになってたけど犯人ではありません、という超レアケースで冤罪の理不尽さを語るのは適切なのか疑問に思った。
原作では鏑木が現場を通りかかった理由など、さらに不自然な説明がなされていて、悪の組織警察が色々と握りつぶしたことになっていて萎えてしまったのだが、その辺の細部を省いて映像の力で押し切ったのはよかった。
また、事件の設定などの惜しい部分を横浜流星の熱演がカバーしていた。原作の鏑木はあまりにただの善人で実在感がなかったのだが、映画で生きた鏑木を感じられたのは彼のおかげだと思う。
原作の残念ポイントを緩和したこと、鏑木や沙耶香に関する効果的な改変で、個人的には非常によい原作映画化作品だった。星の数は、原作由来の不満点を除いて、脚色の妙と俳優陣の素晴らしさで多めに付けた。
原作についてちょっときつめに書いてしまったが、鏑木を狂言回しにしたオムニバス小説としてはさくさく読めて十分面白い作品。冤罪問題を真剣に考えるたたき台としては物足りないが、エンタメとしてはお勧め。
ハッとする言葉に感動した
引き込まれるような話の始まりだった。そこから転々と職を変えながら,自分の目的に向かって進んでいく。高校生で死刑囚となった彼は,逃亡生活の中で初めて仕事をしたりお酒を飲んだらするのだ。出会った人たちから受ける優しさや言葉は彼の中に宝物のように積もって力になった。
最後に刑事である山田孝之に語る言葉に涙が出た。
彼は確実に人生を生き直すことができるだろう。
冤罪の恐ろしさを訴える社会派の面と、人を信じて正しいことをしたいと動くヒューマンドラマの面,どちらも併せ持つ良い映画だった。横浜流星の熱い演技も素晴らしかった。
冤罪の怖さと信じる者の強さを描いた作品
一家惨殺事件の犯人に仕立て上げられ、裁判で死刑判決を受けた主人公が自身の冤罪を証明すべく、逃走を図り、容姿や職を変えながら潜伏先を転々とし、最終的に判決の決定打となった証言を翻して逆転無罪を勝ち取る。大筋としてはそんな物語です。
この映画を見て袴田事件を思い浮かべた方も多いかもしれません。わりとタイムリーな話題ですし、被害者一家が惨殺された点、警察が袴田さんを犯人と決めつけ、それに基づいて証拠を捏造した点など、いくつも類似点があります。
映画のなかの話とはいえ、警察幹部の意向ひとつでこれほど簡単に冤罪が作られ、ひとりの人生が狂わされるのかと思うとゾッとします。
『この世界を信じたかった』
真実を明らかにし、誤解が解ければ世の中はきっと自分の無罪を信じてくれる。そんな主人公の強い信念が、彼を逃避行へ駆り立てる原動力となっていたわけですが、心から無実を証明できると信じ、それを行動に移せる強さと行動力にはただただ感服します。もし自分が同じ立場に置かれたら、裁判で死刑判決が出た時点で司法と警察を恨み、絶望して心を失ってしまうだろうなと。
また、この映画では潜伏先で主人公と関わった人々が、自身のリスクを顧みず、自宅に匿った主人公を警察から守ったり、互いに連絡を取り合い冤罪の署名活動をするなど、主人公の味方となる場面がいくつか見られます。
心根が優しく、人が好きで、人を信じている主人公だからこそ周囲から信頼され、自然と人が集まり、味方となり助けてくれる。簡単そうで、なかなかできることではないのですが、この主人公はそんな資質を備えた人なのかなと思います。
そして、生身の主人公と接し、冤罪を信じて我が事のように味方をしてくれる者がいる一方で、メディアが伝える事実の表層だけを見て主人公を犯人だと決めつけ、SNSで誹謗中傷する者もいる。そんな対比も今の社会に対する警鐘なのだと思います。
我々が日々接している情報は、あくまでひとつの側面から見た事実の断片に過ぎませんし、部外者である我々には裏側にある事実を知る術もありません。だからこそ、断定的に人を非難してしまうことに対しては、より慎重であるべきだと思うのです。
突っ込みどころは色々あるのですが、映画に込められたメッセージ、抑揚をつけながらテンポ良く進む物語、俳優陣の演技力の高さなど、全体的によくまとまっていて4.0という高評価にも納得の内容でした。
以下、あらすじ(備忘録)
当時、東村山に住んでいた18歳の高校生・鏑木(横浜流星)は、悲鳴を聞いて駆けつけた家のなかで3人の遺体を発見する。遺体は無残に鎌で切り殺され、家中が血塗れになるほど凄惨な現場だった。鏑木はまだ息のあったひとりの被害者を助けようと、遺体に刺さった鎌を抜くものの、その瞬間、通報により駆け付けた警察官に取り押さえられ、現行犯で誤認逮捕されてしまう。
鏑木は一貫して無罪を主張し、事件の捜査責任者である捜査一課の又貫刑事(山田孝之)も、当初は鏑木が犯人であることに疑問を抱いていた。しかし、上司である川田部長(松重豊)の『犯人は鏑木で決まりだ!さっさと終わらせろ!』という圧力もあり、鏑木の線で強引に捜査を進めてしまう。
そして、決定打となったのは、被害者家族で唯一の生き残りである井尾(原日出子)の目撃証言だった。井尾は事件のショックから心神喪失の錯乱状態にあり、警察はそこに付け込んで誘導尋問を仕掛け、井尾から『犯人は鏑木だ』という事実とは異なる証言を引き出す。
そうして始まった裁判では警察の思惑通り、鏑木の死刑が確定。鏑木は一貫して無罪を主張したものの、現場の状況と井尾の証言が決め手となり、それが聞き入れられることはなかった。
鏑木は刑務所の独房で刃物のようなもので口を切り、口から血を吐いて警察病院に搬送されることになるのだが、警備が手薄な搬送中の救急車からの脱走を試みる。
その目的はもちろん冤罪の証明である。事件で唯一の目撃者である井尾の居場所を探し出し、警察の誘導尋問によって歪められた証言を覆し、自らの冤罪を証明する。
脱走に成功した鏑木は姿や雰囲気をガラリと変え、土木作業員やウェブライター、介護士などの仕事をしながら潜伏先を転々と変え、巧みに警察の捜査の手から逃れていく。
また、鏑木はもともと心優しく聡明な少年であり、潜伏先で出会った人々にその人柄を慕われ、味方につけていく。のちに彼ら彼女らは鏑木の味方となり、鏑木の冤罪を信じ、互いに連絡を取り合って再審請求の署名活動などを行うようになる。
鏑木が逃走を続けるなか、西東京市でとある事件が起こる。家に侵入した犯人が鎌で一家を惨殺。犯人である足利(山中崇)はその場で現行犯逮捕された。
捜査一課の又貫は、犯行現場の状況や犯行に使用された凶器が鎌であることなど、鏑木事件と類似点が多いことに気付く。また、鏑木事件が起きた当時、足利が東村山の事件現場付近に住んでいたことも突き止めた。
さらに取り調べでは、足利が不気味な笑みを浮かべながら『これは鏑木事件の模倣じゃない』と話したことも引っ掛かった。まるで『あの事件は俺がやったんだよ』とでも言わんばかりの話しぶりだった。又貫刑事は鏑木の冤罪の可能性を感じ始める。
そんななか、鏑木はとうとう井尾の居場所を突き止める。井尾は長野の介護施設に入居しており、鏑木はその介護施設の職員として働きながら、井尾との接触に成功する。
そして、こう語りかける『思い出してください!あの時、何があったのか!お願いします!僕には時間がないんです!』と。そして、とうとう井尾は記憶を取り戻し、鏑木の無罪を裏付ける証言を引き出すことに成功する。それをSNSのライブ中継で配信し、鏑木は世間に自身の冤罪を訴えた。
鏑木事件が世間で注目を浴びていたこともあり、この配信は瞬く間に世間の関心を集めた。有罪の決定打となった井尾の証言が覆されたこともあり、又貫刑事は記者会見を開き、誤認逮捕である可能性を示唆。再捜査することを公表した。
そして、始まった再審。そこで鏑木は逆転無罪を勝ち取ることに成功したのだった。
期待はしてなかったけどおもしろかった
正直、横浜流星さんは暗い役が多いのもあってかどれ観ても似たような演技だと思ってましたが、この映画はそんな横浜流星さんの演技がちょうどハマってたのか気になりませんでした。
吉岡里穂さんに関しては1年ほど前に観た怪物のきこりを彷彿とさせるような役でなんでいつも訳あり男を好きになってしまう幸薄役ばかりなんだろうと少し笑ってしまいました。
思い出したのは朽ちないサクラで、ああいう結末のほうがリアリティがあって面白いと感じる反面、フィクションならではのご都合主義でそんなに簡単に警察は誤認を認めないし再捜査もされないとは思いつつも結局は救われる結末にも感動するもので全体的には良かったです。
時間がある時に亀梨和也さんのドラマ版も観て比較してみたいです。
隠れた傑作
あまり世間では話題に上がらないなと思いつつ、前から気になっていたので鑑賞。結論から言えば見てよかった、隠れた傑作だった。
主演の横浜流星の演技はもちろん良かったが、やはり目を惹くのは吉岡里帆と山田孝之の演技だった。吉岡里帆の演技をあまり見たことがなく、上手な印象はなかったが、こんなに上手かったっけ?と思ってしまうくらいには良かった。特に再度捕まった鏑木と面会するシーンでは思わず泣いてしまったし、最後の判決が言い渡されるシーンでは判決を無音にし吉岡里帆の表情で伝えるなど、監督の演技に対する信頼感すら感じた。
ストーリーとしては冤罪を主張する死刑囚が逃亡の中で関わった人達の人生に良くも悪くも影響を与えていくといった、悪く言えば今までにもありそうな内容だったが、昨今SNSでの誹謗中傷が激化する中で、臆さずに「正しいことを正しいと主張する」ことの大切さを改めて気付かせてくれる、社会風刺にも富んだものだったと思う。
2024年の邦画傑作と名高いミッシングにも、勝るとも劣らない隠れた傑作である。
脇が甘いのも若者らしくてよかった
日にちが経ってしまって忘れかけているので簡単に書く。
とてもおもしろかった。
主人公が警戒心を持ちきれていないところや矛盾をマイナスに感じる人もいそうだけど、世間知らずのままこの境遇になってしまった純粋な少年という感じがして私は良いと思った。
内容に入り込んで泣いたし、俳優さんたちの演技もとても良かった。
終わり方は、冤罪が認められてさっぱり終演しその後のことは何も触れられずちょっと物足りなく感じてしまったが、純粋に彼の逃亡劇を描きたかった作品なんだなと思った。
後に亀梨さんがドラマをやっていたことを知った。要となるような逃亡の理由は、少年がまだ若かったからこそ響くようなものだったけど、ドラマでは成人男性の設定のよう。(見てはいない)
そこは同じ理由にしてるのかな、ちょっと気になる。
このテーマをこう描ききるのすごい
横浜流星はすごいね。
ラスト近くで山田孝之と重要なシーンを一対一でやるけど、全く引けをとらない。
もとからすごい役者さんだったけど、一段と良いね。
吉岡里帆もすごい。
これまではコメディを頑張ろうとして今一つだったり、シリアスな話は穴だらけの設定でやらされたりで今一つだったりしたんだけど、この作品の役は良かった。はじめて吉岡里帆を良い役者だと思いました。
松重豊は憎々しかったね。ちょうど《孤独のグルメ》の予告編観たあとで観ることになったから「いくら腹減っても、飯食わせねえぞ」と思った。
あと前田公輝やっぱり良かった。画面に出てくるだけで締まる。
作品のテーマは冤罪なんだけど、冤罪って絶対に起こるんだよね。なぜなら人間はミスを犯すから。でも、それ認めちゃったら警察の権威が失墜して治安が守れないっていう松重豊の考え方も一理ある。
「誰かが罪を犯したら、誰かがそれを贖わなくてはならない」っていうのが、法律というか、司法というかの基本的な考え方だよね。罪を犯した人と贖う人は同一でないと困っちゃうけど、でも実は、治安維持だけ考えると同一でなくても良いんだよね。
僕らニュースで「犯人が捕まりました」と聞くと安心するよね。そこで「冤罪なんじゃないの?」とは思わない。「悪いことしたら捕まるんだ」と思う。これで治安維持ができるよね。
だから警察にとって大事なのは犯人を検挙することなんだと思う。罪を犯した人でなくても良いから速やかに検挙しないと。松重豊の「鏑木慶一が犯人です」もそういう考え方だね。
社会全体として考えるとそうかも知れないけど、じゃあ、そのシステム維持のために自分が冤罪で捕まったらどうするのさ? っていうと、全く納得できない。国家権力と戦うね。たぶん負けるけど。
そういうテーマを、うまく描いてきたなと思うの。大上段にテーマについて語らないもんね。
横浜流星と山田孝之がさしで話した後で「どうなるんだ?」と思うと、山田孝之が良心に従って行動するね。実際にはあり得ないでしょう。ここまで権力に染まって行動してきたら、最後までやり切るはず。
でも、そのあり得ない選択で、この作品は面白くなった気がすんの。
ラストシーンを『主文……』で無音にするのいいね。
そして吉岡里帆のアップに賭けた。吉岡里帆も応えた。
そしてエンドロール。
色々な造りがいいから、これは必見と思うよ。
これはひどい作品だ
なぜこの作品が高く評価されるのか全く理解出来ません。「映画はフィクションだから細かいことは言うな」というような意見も聞きますが、ここまでリアリティがなく、細部のツメが杜撰な作品も少ないと思います。
どうやってあの刃物を持ち込み、どんな傷で病院に運ばれたか分からず、あの状況で救急車から逃げられるとは思えないことから始まって、①大阪から逃げた後、吉岡里帆の会社の契約ライターになる経緯が全く分からない。②いくら心を許したとはいえ、逃走中なのにいきなり吉岡里帆に素顔をさらして食事し、飲酒までするのは無警戒過ぎる。③吉岡里帆がいきなり横浜流星を同居させるのは幾らなんでも無理。④捜査一課長の山田孝之が平刑事のように現場の最前線で聞き込み調査などしないと思います。⑤吉岡里帆のアパートに踏み込む時に、普通は周りを警官で堅めると思います。⑥部屋を調べる時には天井裏も調べるでしょう。⑦川に飛び込めばそれで逃走成功になるのか?⑧身分証明書や保証人も無しに水産会社や介護施設に就職出来るのか?⑨介護施設に踏み込んだ際、警官が威嚇発砲もせずいきなり犯人に発砲することがあるのか?⑩死刑囚に面会出来るのは許可された親族のみ。⑪いったい横浜流星の死刑判決はどの時点だったのか?最高裁迄行っていたのか。それとも二審あたりだったのか?それによっては最後の無罪の出る場面の解釈が変わります。
それ以外にも細かなツッコミ所はたくさんありますが、とにかくここまでご都合主義で作られた作品を、横浜流星の演技がいいとか、テーマが冤罪問題を扱っているからなどというだけの理由で、評価することは全く出来ません。
監督始め製作サイドの真摯な作品作りを望みます。
現代日本を舞台にしたイケメン逃亡者のファンタジー映画
レビューが良かったので期待していきましたが、もっと沢山のレビューを読めば良かったと後悔しています。
良いレビューは主演の横浜流星さんのファンの方々が多いよう。彼の魅力は存分に発揮されている作品でした。
ただ、特に彼のファンでもなく、ただの映画好きとしては美男子逃亡者という時点で大体展開が読めてしまう。
更に不潔で不気味な見た目の真犯人が出てきた時点で悪=醜いという古来より使い古されたルッキズム思考でつまらない。
ただ真犯人役の山中崇さんはこういうキモメンを演じさせたら一級品です。爽やかな役も演じれるのに底辺キモメンもリアルに演じられるのでとても尊敬できる俳優さんです。台詞が少ないのにいつも通り雰囲気をかなり作り込んできています。
高評価なので予想の斜め上を行く展開を期待してみたもののありきたりな終わり方でした。
彼に同情するレビューも多かったですが外見も中身も良いお陰で沢山の人々の支援を受けてハッピーエンドなので幸運な逃亡者に見えてしまい冤罪の苦しみに共感できない。
寧ろ痴漢冤罪の弁護士の方が悲惨。
事件直後の主人公の行動もなぞ。悲鳴が聞こえたからって他人の家の中に入らないし、普通の高校生が息も絶え絶えの人に深々と刺さった刃物を引き抜いたりしない。もっと納得できるストーリーが必要。
警察の冤罪でっち上げの理由も薄っぺらい。
女性陣が知り合って間もないのに何故ここまで信じれるのか共感できません…イケメンで恋に落ちていたとしても関係が短期間過ぎて逃亡中の凶悪殺人犯という報道を覆せるほど信用で来ないと思います。
逃亡した理由もとてもファンタジーですね。
他のレビューにもありましたが、現代日本を舞台にしたイケメン逃亡者のファンタジー映画なんだと思いました。
感動えぐかった!!!!!
藤井監督と山田孝之さんが大好きなのでみに行きました。
これはもうやばいです。今年1番を余裕で更新しました笑笑
まず、横浜流星くんの芝居がヤバい。もう言語化出来ないレベルで上手すぎます!!
いろんな顔を持つ同じ人物ってこれ大丈夫か?って気持ちが最初あったんですけど、軸がブレずにあって、それを守りながら一人の人生を描いている感じ??がしました。
森本慎太郎くんも以前、山ちゃんの完コピしてる芝居が話題になっていましたが、今回普通に鳥肌立ちました。
わかった途端の震えというか、「どうしよう、」っていう不安と恐怖におびえてる芝居が最高でした。私までゾクゾクしてきました。
吉岡里帆ちゃんの「いって!!」の所で涙ダバー(泣)
このシーン、めちゃめちゃ好きです。
人を信じることの大切さというか、。
私も誰かを心から信じられる、偏見だけで決めつけないような人になりたいなって強く思わさせられました。
藤井監督の作品が大大大好きなので!!!
また新作待ってます^_^
感動作
鏑木慶一役を演じる横浜流星さんをはじめとするキャストの方々の演技が素晴らしかったです。始まりのシーンは慶一が逃亡するところから始まりその後様々な仲間に出会っていきましたが、どの慶一も見た目に違いはあれども心の芯の部分が優しいことには変わりはなく、映画は中盤以降まで冤罪かそうではないかは明確に書かれていなかったけれど自分の中で冤罪に決まってるから絶対に逃げ切ってほしい!って思ってました。また終盤の施設での警察と慶一の対峙にはとてもドキドキハラハラでした。最後の裁判シーンも音声はなかったけれどまるで声が聞こえてくるかのような演出でそれもまたよかったです!
役者の演技は5星ですが。作品の出たタイミングが…
今年は特に、冤罪や逆転無罪のリアルな事件が多く報道された印象が
あり、よく言う「事実は小説より奇なり」…フィクションが事実に勝てない
タイミングだったかもしれません。原作もこの作品も。
TV番組でも月に1、2は実際の冤罪事件の経緯、人物像、なぜくつがえり
過ちが正されたのか(どんでん返しの山場)の
「クオリティの高い再現ドラマ」を多く目にした中、
今回の映画は、犯人扱いされた人物と逃亡中に接した人々の「彼」への印象
でほぼ8割で組まれた事で「2時間完結エンタメとしての物足りなさ」を
感じた私がいました。私はいつの間にか現代の「わかりやすい派手な起承転結
を求める毒」に侵されているのかもしれません。
演者さんは素晴らしかったと思います。このフラット気味な本で2時間
「もたせる」のには有名なキャストしか難しかったのかもしれません
(住之江の現場の社長?だけ少し誇張しすぎな台本、演出、表現に感
じました。私は関西人ですがあそこまで「訳あり人」を煽る社長は、
あの現場なら⚪︎されるだろうと思います。大阪人をステロタイプの悪人
に色付けしたのは安直かと。冷めました)
動員が見込めるキャストで製作しなければならないのは理解できますし、
横浜流星さんの芝居は他の作品でも好きなのですが、
顔が綺麗すぎて、劇中人物の鏑木ではなく、時折横浜流星さんとして
変装がコスプレに見える時も。商業邦画の特徴で仕方ないですが。
全体的にTV鑑賞用なのか、絵(画)にあまり変化がないのは残念に感じました。
演者は5です。総合的にはすみませんが私には…
正体過去1でした(^^)!
横浜流星くんデビュー当時から大好きで、正体の公開が発表されてから凄く気になっていて1人で観に行きました。始まってすぐに映画館に来るべき映画だと直感で感じました。流星くんの演技がリアルで迫力全開で振り切って演じてると感じました。初めから終わりまで釘付けでスリルがあって感情を揺さぶられて、感動して自然と涙がこぼれました。流星くんと山田孝之くんとの掛け合いも凄い迫力満開です。吉岡里帆さんもいい仕事してますよ。会う人みんなにおすすめしてます。2回1人で観に行きましたが、2回共最後まで釘付けの映画でした。流星くんこれからも益々の成長を楽しみにしてます。ありがとうございました。
客観的な正しさと主観的な正しさ
横浜流星の演技が素晴らしいのはもちろん、彼と関わる人たちの行動も、それぞれの立場がうまく反映されていた。また、関わった人たちは、最初は客観的な正しさで鏑木を見ていたけど、彼と関わることで彼の主観的な正しさを信じた。展開は彼の思っていた通りではなかったけど、彼を信じる人の存在は、まさに彼が信じたかった世界の形なんだろう。
ただ、酒井さんは恋していたとはいえ、安藤さんたちと活動する動機まであったのは少し不思議。他の2人と違って普通の境遇だけど、それだけ当事者になるということの影響は強いんだろうな。
あと鏑木にフォーカスするのはわかるけど、ストーリーが進むにつれて、亡くなった家族が忘れられている感覚になった。鏑木は亡くなった人のことはどう思ってたんだろう。考える余裕はなかったのかもしれないけど。遺族の記憶が戻った後の第一声が謝罪なのも都合よすぎる感じが。
でも面白い作品だったし、映画館で1人で泣いてました。横浜流星はかっこよすぎ。逃げるたびにかっこよくなる能力でもあるの?
原作に触れています!
原作を読んでから観ました。
ラストの改変⁈にはビックリしました。原作と映画では印象が大分違ってくると思います。
個人的には映画の方が良かった。登場人物の役割を上手く変更して、良くまとまっていたし、ラストすごい感動だった😭
終盤の又貫刑事の男気もすごく良かった!山田孝之さんがハマり役でした。
横浜流星さんも素晴らしかった。日本アカデミー賞主演男優賞は彼で決まりでは。と思えるほど良かったです。
初の横浜流星さん作品
原作未読、WOWOWドラマは見ていました。
横浜流星さんはテレビドラマでは見たけど映画は初めて。
正直見た目はカッコいいよね、くらいの印象しかありませんでしたが…
高校生、埃まみれの労働者、物書き、介護職員。背中を丸めた陰気な感じから清々しい感じまで見事に演じ分けておられました。素晴らしかったです。
吉岡里帆さん、山田孝之さん、脇を固める役者さんも皆さん素晴らしい。
テーマは重いですね。現実に起こっている冤罪。警察組織がこうでないことを真に願います。
原作未読でWOWOW版のドラマは見ていました。
WOWOW版の半分の時間ということでちょっと心配していましたが、違和感なくまとめた感じがします。
宗教がらみのところがカットされていて、舞ちゃんとの絡みもちょっと減らされていた感じかな。WOWOW版だと明確に舞ちゃんに対して好きな人がいるって話をしていたし。
ただWOWOW版の堀田真由ちゃんは可愛すぎて、私なら・・・。
あとドラマ版だと最初の所は、110番したけど結局裏切れなくってそのまま電話を切っていたような記憶ですが・・・。
原作側の終わり方は情報としてみましたが、ドラマ版や映画版の終わり方のほうがモヤモヤしなかったかもね。
きれいごとと言われればきれいごとなんだけど。
あと元々の事件以外の罪状がついていると思うけど、そのあたりはどうなるんだ・・・とかはまあ蛇足でしょう。
吉岡さんもうすぐ32歳なのか・・・相変わらず可愛らしい。
正しき行動
見応えあった。
18歳の少年が冤罪により死刑判決を受ける。
その根拠が、精神錯乱状態の目撃者の証言と警察上層部の思惑だ。
松重さんがめちゃくちゃいい仕事してくれてた。
おそらくならば年に数万件起こる事件の1つで、組織としてはどの案件に対しても時間を割きたくないってのは本音なのだろう。
ただ、僕らは数万分の1の人生など歩んではいないし、人生を謳歌してもいない少年が国家によって殺される謂れはないと思われる。
この、ある瞬間から世間と隔離された少年を横浜氏は熱演してた。
純真で臆病で孤独で、何も戦う術を知らない心優しき少年だったと思う。
彼は脱獄し逃亡した理由を「正しき世界だと信じたかったから」と言った。
ファンタジーだとは思う。
正しき世界は推奨はされるものの容認はされないものだと思われる。作中同様、正しき事より都合が優先される。ただ…足掻く事は出来るんじゃないかと思う。
正しくない世界で正しく生きようとする為に。
今作においても発端は「発言」だ。
状況や立場は異なるも、それが何に由来してるかで未来は変わる。鏑木がそうであるように、彼は僕ら自身が置かれている境遇の極端な一例である。
風評や噂、思い込みで真実は変わるし揺らぐ。
作中、マスコミの報道が度々流れる。それを視聴する市民の反応は御多分に洩れず一律だ。
当然だと思う。
アカの他人だ。
いい人だろうと悪い人だろうと関わりがない。
報道の真偽に関しての興味など湧く訳がなく、公の機関が貼り付けたレッテルに疑問を抱く事もない。
たぶんコレは日常的に起こりうる。
その本質よりも発信した誰かとの信頼度に委ねられる。非対面故に起こりうる事だ。
今作は「対面」による交流を色濃く描く。
見も知らない誰かを知る事の大切さ、でもある。
その本質は偏見や先入観に左右される事なく、ある程度は肌で感じないと分からないのだ。
SNSとかで声高にに主張する個人の主観に踊らされる程愚かな事はない。
本作のメッセージはまさにソコにあるのではないかと思われる。誰かの価値観に追随する事の愚かさを描いているように思う。
流布された印象を疑わない大衆と、目の当たりにした人達の印象の差。
その差は人1人の命をも左右する。
そんな時代にもう突入している自覚を持たねばと思う。
だけど、自分も含め人は嘘をつく。そして騙された経験がない人は皆無だろうと思う。
偏見や先入観をもつ事はある種の防衛本能でもある。その人の本質よりも自分達の方が大事なのは自明の理であるが、その天秤が常に付き纏う事も忘れてはならないのだと思う。
本作ではそういう現代が陥っている脅威と共に、人間の内面的な普遍性のあるテーマが上手く融合していると思われる。
アクションの面においても、ベランダから飛び降りた鏑木が、川にダイブするまでを1カット風に描く事に見事に成功している。
アクセントとして申し分ないし、自分を封じ込めようとする社会を振り切って必死に逃亡する主人公の心理を見事に表していたと思える。
惜しむらくは、痴漢の冤罪から立ち直ったであろう父親のエピソードが足りなかった事と、裁判で孤児院の院長のカットがなかった事だ。
鏑木にとっては母親同然なんじゃなかろうかと思う。あの編集だと鏑木はその存在に目もくれてないように思えてしまう…鏑木的に重要な人なのに、作品的には重要ではないのだろうな。介護施設の同僚よりは遥かに深い繋がりのはずなのに…残念だ。
疑問なのは、刑事と鏑木の面会がどのタイミングだったのだろうかと、ふと思う。
おそらくは会見の前で、鏑木との面会を通して、上層部の意向を無視し再捜査を発表したのだと思うのだけれど、そうであるなら鏑木の態度が不可解に思う。
なぜあんなに晴れやかで、刑事に対し感情が180度変わったのだろう?
「何を話しても信じてくれないだろう」
包丁を突きつけた時の感情は、再逮捕された時も変わってないんじゃいかと思う。
彼と刑事がなんらかの邂逅があったシーンもなかった。編集上は鏑木との面会は分断されていたので流れを損なう事はなかったのだけれど、少し気にかかる。
後は…その後の又貫の行動が気になる。
彼は冤罪が確定した後、真実を彼に話すのであろうか?
実質的に彼を犯罪者に仕立てあげたのは又貫だ。
上層部の意向に逆らわず、錯乱する被害者から言質をとった。その内情を全て知る又貫は、彼に何を語るのだろうか?
それともやはり語れはしないんだろうか。
方向転換したとはいえ、鏑木を処刑台に送る先鋒を務めていたのは間違いない。
彼をすんでのとこで正しき行動に導いた彼の良心はどんな決断を下すのだろう。
…そう、組織に良心などはない。
あるのは滞りなく業務を遂行する為のシステムだ。個人の良心はこのシステムに踏み躙られる。
また良心の呵責があったとしても、それを英断にすり替える文法や理念も装備し、同僚や上司という共犯者にも事欠かない。一連托生な構造。
又貫はその良心を潰させなかった。
つまりは、この正しくない世界は個人の良心によって是正する事もできる。
でも、その良心を屈服させるシガラミや都合は魑魅魍魎の如く溢れているのが現状だ。
ただ1つ。
人の命を左右する局面においては、正しき行動がとれる勇気を持っていたいと思う。
SNSで誹謗中傷を繰り返す輩に言ってる。
肩書きに乗せられて賛同する輩に言ってる。
長い物に巻かれ過ぎて麻痺している輩に言ってる。
鏑木になってから気づいても遅いし、鏑木を作る側に立っているのは間違いだと思う。
自分の目で見て感じたものを、まずは吟味するべきだと思われる。
終盤、沙耶香が彼の名を呼ぶ。
「鏑木慶一くん」
その一言に涙する。
なぜ逃げるのか
もっととてもサイコパスじみた話かとおもったら、意外と救いと再生の話だった。
横浜流星さんはもちろん、山田孝之さんの実直で骨太な感じがとても新鮮だったし、俳優のみなさんはだれもかれもみな地に足がついている感じがしてとてもよかったです。
きれいにまとまりすぎた気がするし、あまりにも善人がおおすぎるし、森本慎太郎をかんたんに許しちゃうのかよ、と思うし(きみ通報しようとしたよね!と根に持って私なら許さない)、気になるところもあったけど、全体的にとてもよくストーリーが練られていて、緊張感のあるいい映画でした。
あとやっぱりどうしても、主人公をとりかこんで拍手するラストをみるとエヴァンゲリオン・・・て思ってしまうという点では庵野秀明は罪深いと思ったりしました。
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