週末にお台場の
グレゴリー・コルベール「
ashes and snow」展を見てきました。
建物に興味があったのと、いろんなところで良さげな評判を聞いていたので。
道に迷いつつ着いた
ノマディック美術館は長蛇の列。
おいおい!気温30度なんすけど!みんなそんなに見たいのか!?
これは有名なモノが来たときの上野レベル。
「そんなに人気なのかぁ…」とびっくりしながら一旦ビーナスフォートに避難し、夕方もう一度出向きました。
で、感想です(
※長いし毒吐くので、嫌な人はスルーしよう)。
建物は、イイ!凄いイイ!
コンテナっていう素材を市松に組んでる、その意外性とか危なっかしさもいいし、
外と中のギャップもいい。
紙管の高くそびえ続ける館内は大聖堂のようで、入り口から奥を見渡したときは寒気がしました。
展示方法も、いい。額に入れず吊るすのはあの作品に合っているし、ごわごわした和紙を使ったのも正解だと思う。
でも、内容。
テーマが「人間と動物の交歓」なのは知っていたし、演出過多でわかりやすい心休まる系なんだろな~と一応は警戒してました。
だがここまでとは。
肌すべすべの黒人の子が、目をつぶって胸に手を当てて小首を傾げてゾウやらチータやらに寄りかかってたり。
オランウータンと人が木の上で一緒に本を読んでいたり。
はたまた一緒に船に乗っていたり。
大体べったりくっついて。
作品の中の人間たちは、皆一様に目をつぶって瞳をさらさない。
まるで「何も言うことなどありません」と言っているように。
ん~なんだなんだ?この何とも言えない嫌悪感は。
前半は構図の良い写真を探したりしてどうにか
「これはよいものだ、これはよいものだ」と思い込んでいたのですが、
中盤のオランウータン船で決定的に居心地の悪さが勝ってしまい、あとは駆け足になってしまいました。
中央の映像作品のクジラのシーンは良かったようですが、私は見れませんでした。
いつもは一つの展示に2,3時間かけることもざらなのですが、このときは30分もいなかったと思います。
一緒に行った友人も、自分と同じような意見だったのでホッとしました。
観賞後友人と、この作品について話しました。
まず、このプロジェクトは演出であることが明白なのに、
それを強く押し出そうとしないところがおかしい。
あんなに肌つやの良く下っ腹の出ていない子どもは現地にいない。
あんなに毛艶がよく目ヤニひとつないチーターもいない。女の人のワキもつるつるだし。
なのに「10年間作家は音信不通で」だの「現地では今でも動物と人間の距離が近く」だのキャプションやパンフレットで書きつづけたら、一般の人の中には勘違いする人も出るのではないか?
また、合成なしで何回も撮り直ししたその努力は認めるけど、
それがなんだというのか?
そんなことはお金と時間でどうにか出来る問題で、
その方法をとることに思想的な深みは感じられない。
それは人を感心させる為「だけ」の努力だ。
いい絵が撮りたいのなら絵画でも合成でもいいじゃない。
どうせ訓練された動物なんだろうから。
大体人間と動物の関係性なんて、あんな甘いもんじゃない。
実際に動物の近くで暮らす人間たちは、縄張り争いや食うか食われるかのシビアな生活をしているはずだ。
なんでそういう厳しい面は描かず、宗教雑誌に出てきそうな甘ったるい構図しか撮らないのだ?
美しい構図しか撮らないということは、鑑賞者の自然観を歪めやしないか?
などなど…
う~ん。毒吐いてるなあ…
私は、芸術の役割は「社会への批評」「新しい価値観の提示」だと思っています。
様々なメディアの中でも最も力の弱い媒体だからこそ、他のメディアが言いたくても言えないことや忘れていることを「こんな見方もあるんだよ」と言えるんだと思います。
なのに、この展示は何も教えてくれなかった。
せっかくこんなに良い場所で、こんなに沢山の人が来て、建物なんか本当に素晴らしいのに、
「ちきゅうにはどうぶつもいるよね」「いっしょにくらしてるよね」程度のメッセージ性でいいのか!
それならNational Geographicチャンネルで十分だ。
とにかく何より、この展示の動員数の多さと高評価に違和感を覚えます。
彼らは何に感動しているのでしょう。合成一切なしなとこ?映像が美しいとこ?
美しいだけの作品はわかりやすくて受け入れやすいけど、その分本当に意識したい部分は見せず考えさせないというのは、危険だと思う。
編集しまくりのTV番組と同じで、見続けると考える力が麻痺する気がする。
白いものつながりということで、この日記には
「suger&drug」というタイトルをつけてみました。
付け加えとくと、あくまでも「コマーシャルフォト」「コマーシャルフィルム」としては、これは超一級の作品だと思います。ユニセフの広告とか、全部これでいいんじゃないかな?
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画像も今日は在庫品ではなく、この文章のために描いたものです。
友人と「あの写真の構図で、オランウータンが勃起してたら楽しいのに」「あとゾウに踏み殺されたりとか」と話したのが楽しかったので。
さすがにそこまで過激なものは描けませんでしたが、やんわり描いてみたら意外としっくりきてしまった。
二つとも元ネタが公式サイト上で見られるので、暇な人は探して比べてみよう。
長文&批判的な文でごめんなさい。
あくまでも自分の見た感想なので、他の方がどう感じるかは自由だと思います。
あと絵は
落書きだけど作品のパロディなので、まずかったら取るかも。
ここまで読んでくれた人がいたら、どうもありがとうございました。