2014年11月28日金曜日

防衛技術シンポジウム2014 「直巻マルチセグメント・ロケットモータ」

公開された防衛省技術研究本部の新しいパンフレットに、03式中距離地対空誘導弾(改)こと、中SAM改の写真が載っている事が話題になっていますね。


週刊オブイェクト「03式中距離地対空誘導弾(改)」


このパンフPDFは防衛技術シンポジウムの会場でも配られたものと同じなので、未見の方は是非読まれると良いと思います。

さて、今日は防衛技術シンポジウムで公開されていた技術で、中SAM改にも関連するミサイルのロケットモーター技術について紹介したいと思います。



直巻マルチセグメント・ロケットモータ

ミサイルの推進方式は、ジェット推進、ロケット推進の2方式(あるいは両方)に大別できます。このうちジェット推進が外気を酸化剤に利用するのに対し、ロケット推進では搭載された酸化剤を推進剤と燃焼させて飛行します。

現在使われている固体ロケットは、点火後の推力変更が容易な液体ロケットと比べ、点火後の推力調整が難しいという問題があります。このため、固体ロケットは推進剤内部に「光芒」と呼ばれる星形の切り込みを成型しており、ロケットに求められる推力の変化をこの光芒を拡げたり、狭めたりして実現しています。光芒により、燃焼する速度や面積を調整しているのです。


光芒の説明

ところが、この方法には問題があります。推進剤は金属あるいはCFRP製のケースに充填されていますが、光芒として削った分、推進剤は減る事になり、当然ロケットの飛翔距離が短くなるのです。

もう一つの問題として、推進剤の熱収縮による応力緩和の為のスリットの問題があります。

熱収縮と応力緩和スロット

ロケットの製造時、推進剤は熱せられて液状でケースに充填され、時間を置いて推進剤を冷却・固体化します。推進剤が充填時に摂氏60度で液状化していた場合、それを充填したロケットモーターが気温マイナス30度の高空を飛行すると、推進剤には90度分の熱収縮が発生します。この収縮で推進剤にクラック・隙間が発生し、燃焼に問題が出る可能性があります。これを防ぐために、あらかじめ推進剤に応力緩和スリットを設け、クラックの発生を予防します。このスリット分の隙間は、推進剤は詰められませんので、これも飛翔距離が短くなる原因となります。

この2つの問題を解決できる研究が、直巻マルチセグメント・ロケットモーターです。ここでは2つの技術が使われていますので、それぞれ見て行きましょう。



推進剤のマルチセグメント化

まず、光芒の問題に対しては、推進剤のマルチセグメント化が解決策としてあります。

カットモデルの説明
上のパネルでは炭素繊維 の束を巻き付ける直巻加工について触れていますが、そこは後で説明します。

このマルチセグメントとは、燃焼特性の異なる推進剤を分けて充填することで、点火後の推力変化を可能にする技術です。これにより、推進剤間の耐熱材(サーマルバリア)のスペースは増えますが、複雑な光芒は不要になりケースに充填出来る推進剤の量が増加する事になります。

カットモデル

直巻Filament Winding技術

前述しましたが、従来の固体ロケットモーターは、金属・CFRP製のケースに熱して液体化した推進剤を充填し、固体化させる製法をとっていました。この製法は充填時の温度と、高空で想定される温度に大きな差があり、温度差による熱収縮対策に応力緩和スロットを設ける必要がありました。

直巻FW製法の説明
この熱収縮の問題を解決するための技術が、直巻Filament Windingです。これは常温で固体化している推進剤を、樹脂を含んだ炭素繊維で巻いて樹脂を硬化させて、ケースとして用いるという製造法です。
直巻FW法により、熱収縮が小さくなる
これにより、20度の気温で製造したロケットモーターは、外気温マイナス30度の環境でも熱収縮は50度分で済み、応力緩和スロットが不要または小さくなります。これにより、充填率が向上し、飛翔距離が増大します。

直巻ケースの外観
拡大。繊維が巻きつけられているのが分かる

この2つの技術が用いられているのが直巻マルチセグメント・ロケットモータで、両技術は着火後の推力変更を可能にしつつ、ケース内部の推進剤充填率を上げる事になります。推進剤を詰めるため、僅かな隙間を削る涙ぐましい努力とも言えるでしょう。

まだこの技術が装備に応用されるのは先のことですが、同サイズでより長射程化が達成できそうです。

全般説明
その他聞いたこと。

Q.燃焼特性の異なる複数の推進剤を詰んで、トータルの飛翔距離は悪くなったりしないのか?
A.トータルで悪くはならなかった。所定の推力パターンも実現できた。

Q.ケースが金属製 or CFRP製から炭素繊維+樹脂製になるが、強度的に問題なかったのか?
A.問題は無い。

Q.製造方式が従来と異なるが、製造期間に差はあるのか?
A.従来と同じくらい。充填した液体を硬化させる手間等は無いが、巻きつけや樹脂の硬化で時間はかかる。



【関連】




2014年11月26日水曜日

1990年代後期から2000年代前半的に正しい「どうして解散するんですか?」のホームページを作ってみた

経緯

「どうして解散するんですか?」が炎上案件として世を賑わせておりますが、小4が作ったと思えないプロの作りに対して、同じくプロたるIT強者が様々突っ込んでいらっしゃいます。



【「どうして解散するんですか」分析】

フォントから分析
【プロの犯行をプロが解説】フォントオタクな4.5Pさんによる「どうして解散するんですか」分析結果。

ドメインから分析
【顛末追記】謎ドメインはwhoisする。それは世界の鉄則…

ソース等の総論として
【顛末追記】小4『どうして解散するの?サイトつくったからおしえて』民主くん『天才少年現る!』→仕込みっぽすぎて炎上 ➡結果NPO運営でした


しかし、ソースを見たり技術的な知見を持たずとも、「あ、これ小学生やったなんて嘘やろ」とは多くの人が直感的に思ったでしょうし、そのクオリティの高さが逆に炎上を加速させた面もあるかもしれません。

ところで、この「どうして解散するんですか?」は、まだ二十歳前後の若者が作ったそうです。そういう若者世代の多数がネットに初めて触れた頃には、高機能ガラケー(ひょっとしたらスマホ)があったでしょうし、YouTubeもSNSもあったでしょう。そういう世代にとっては、「どうして解散するんですか?」くらいリッチでクオリティの高いサイトでないと、「リアル」でなかったのかもしれません。

ですが、90年代後半から2000年代前半にインターネットに触れた方にとっては、「どうして解散するんですか?」は小学生が作ったサイトのイメージからかけ離れていたのではないでしょうか。その世代がイメージする素人製作の個人サイト(というより「ホームページ」)とは、テキストにちょっと装飾しただけの、極めてプアなリソースで作られた貧相なものだったはずです。

奇しくも、ちょうど先ほど、私と同年代で、畏敬するはてなダイアラー・ツイッタラーである、a_park氏と、現在と過去のネットについて、こんなやりとりをしておりました。





よしやろう(決意)。



製作過程(30分)


やると決めたからにはすぐやろう。

90年代から00年代のサイトは、html直打ちかホームページ・ビルダー的ソフト製作かに決まっている。ここはホームページ・ビルダーで作ろうと決め、早速ググるとJustsystemのページに飛ばされる。えっ、今のホームページ・ビルダーって、日本IBMが提供しているんじゃないの……? 

Justsystem提供になっている事に驚きつつ、Justsystemサイトからホームページ・ビルダー19(体験版)をダウンロード。インストールして初めて気付いたが、今どきのホームページ・ビルダーはデフォルトですら比較的リッチなコンテンツで、00年代風テキスト・サイトを作るには、ホームページ・ビルダー・クラシックという別ソフトでやらないといけない仕様になっていた。クラシックか……。

また、モバイル契約していただけのSo-netで、ページ立ち上げの手続きをする。もちろん、設置するアクセスカウンタは、プロバイダ提供のCGIに決まりだ。これも手続きして、すぐに載せる。

そして、全角で"Sorry! Japanese Only!"と書き込んでから、侍魂風にテキストの装飾を行い、トップはそれらしい無料素材の小学生を配置する。これだけで完成。思いついてから30分くらい。



若者よ、これが00年代のリアルだ――。









作ってて胸が痛かったです(小学4年生並の感想

※追記:「どうして解散するんですか?」が文字点滅するようにしたんですが、 点滅タグのBLINKは主要なブラウザで廃止されているので、現在のブラウザでは点滅しないそうです……。俺の90年代を返せ。


【関連】

ネタにしたけど、現行のホームページ・ビルダー19、とても取っ付き易くリッチコンテンツも製作可能で、昔の「いかにも」なサイトを作るのが逆に出来なくなってました。同梱のクラシック版で作りましたよ……。





中身は知りませんが、「新時代の町人文化」という帯にシビレましたので載せます。


2014年11月22日土曜日

「トップをねらえ!」+「宇宙戦艦ヤマト」と思ったら……映画「インターステラー」レビュー

先月の話になるんですが、ダークナイトやインセプションクリストファー・ノーラン監督の新作、「インターステラー」の試写を観る機会があったのですよ。

ところが「観る?」って言われるその時まで、この映画の事知らんかったのです。で、どんなもんかとYouTubeで1本だけ予告観てから試写会に行きました。その時観た予告が下のバージョン。





で、この予告観た時、「ハハァン、これはアレだな。「宇宙戦艦ヤマト」的に地球にタイムリミットが迫る中、父親が娘を置いて宇宙に人類を救う旅に出るけど、ウラシマ効果で娘との時間がどんどん乖離していく「トップをねらえ!」展開という、本邦アニメでもお馴染みのテーマの合わせ技だな」と思ったんです。予告等の公開されたイメージからそこまで推測は可能だし、ペーパー等の情報は公開前に書いちゃっていいという条件だったんだと思うんですが、試写会時にサインさせられた守秘誓約書の原本は回収され、コピーも渡されなかったもんだから、守秘条件を再度確認しようにも出来なかったので、唯一記憶がしっかりしてる情報公開解禁日(正式公開日の今日)だけに合わせました。

で、予告観た時に抱いた「ヤマト×トップをねらえ!」という予測ですが、おおむね当たってたけど、さらに挙げるべき作品が本邦にあった。まあ、大元は海外SFに遡れるんでしょうけど、日本人にはこっちが馴染みやすいだろうし。

そういう予想を踏まえてあらすじ&レビュー。ごっついネタバレは避けるけど、あまり知りたくない人はスルーが吉。

【あらすじ】

人類の進歩がどん詰まった近未来。天変地異に疫病その他で食糧難が世界を覆い、工業よりも農業優先、各国の軍隊も予算難から解体されているような世界。

元空軍パイロットのクーパーも今は農家として、父と男手2人で息子と娘を育てている。そんな娘の部屋では、このところ怪奇現象が続いている。その怪奇現象が誰かからのメッセージと気付いたクーパーは、メッセージの導きにより荒野に向う。何もないはずの荒野には厳重に隠蔽された施設があり、人類を救うためのプロジェクトが秘密裏に遂行されていた。そこでクーパーは地球が娘の世代で滅亡する事を告げられ、第二の地球を探す宇宙機のパイロットとして協力を求められる。子供たちを残しクーパーは宇宙へと旅立つが、宇宙行きに猛烈に反対する娘とは最後まで和解出来ないままの出発だった……

そこからは地球滅亡までの時間との戦いと、主観時間と地球時間との乖離という、「ヤマト×トップをねらえ!」展開になるのは予想の通り。

ノーラン作らしくCGに頼らない特撮シーンが多く、最近の宇宙モノの代表作「ゼロ・グラビティ」と対称的。未知の惑星の描写でも、極寒の惑星は「バットマン・ビギンズ」と同様にアイスランドでの撮影を多用している。だからと言ってCG部に手を抜いている訳ではなく、未知の宇宙、異なる次元は表現法と相まって面白い。次元やブラックホールを描いた映画って、意外と少ない気がするけど、これではみっちり出てくる。

進み方が異なる時間が生み出す人間のすれ違い、葛藤から来るドラマが描かれるが、全体的に話が平坦なのは否めず、まあこういう話なのかなあと思いつつ観ていたのですが、終盤になってヤマト・トップ展開に換えて、別の2作の話になって印象が激変。溢れる涙で鼻水ずるずるに。これ、まさかの「トップをねらえ2! 」と「成恵の世界」展開だよ!

ノーランと言えば理詰めというか頭でっかちな作風という印象あったし、この映画も現にそうだと思うんだけど、最後は力技で決めて、かつこの力技がクる。この力技の鍵がまさにトップ2と成恵で示された鍵なんだよ……。この2作に思い入れがあると、共振現象がすごい。

というわけで、肝心のレビュー部が薄いですが、インターステラーがこの2作+2作であるという以上の事を、自分には語れんのですよ。これらの作品にピンと来た人は、劇場に観に行った方がええですぜ。オススメしますよ。






2014年11月20日木曜日

防衛技術シンポジウム2014レポ 「軽量戦闘車両システム」

防衛技術シンポジウムから1週間経ってますが、ようやく崩してた体調が上向いたので、ぼちぼちレポートを消化したいと思います。まずは「軽量戦闘車両システム」です。



軽量車両システムは、C-130輸送機で1両、開発中のC-2輸送機で2両輸送可能な戦闘車両システムについての研究です。まず第一に、この輸送機に搭載可能という条件が設定され、そこから約15トンという重量が求められています。







軽量戦闘車両システムは大口径火砲を搭載する火砲型と、人員を輸送する耐爆型の2タイプが構想されています。技術的特徴としては、火砲型にデュアルリコイル、耐爆型に耐爆構造、2タイプ共通なものにインホイールモーターがあります。

それぞれ、防衛省技術研究本部の展示パネルや、実際の展示物を交えて解説しましょう。



低反動砲搭載の火砲型


デュアルリコイル

通常、火砲の径が大きい程、発射できる弾の重量を増やせる為、高威力化します。しかし、大口径・高威力化で発射時の反動が強くなるので、車両に搭載するには反動を緩衝する機構が必要になります。軽量戦闘車両システムの火砲型では、反動を2段階で緩衝する機構を設ける事で軽量車両への大口径砲の搭載を可能にしています。

上図のように1段目で砲の軸に沿って後座する事で緩衝し、2段目で水平方向に後座する事で反動を抑えます。これにより、従来は射撃に8輪装甲車が必要だった砲が、6輪装甲車でも撃てるようになったとのことです。

このシステムの問題としては、緩衝にかかる時間が1段式より長い為、弾を発射した後に次弾を発射するまでの間隔が1段式より長いということです。この事について説明にあたっていた技官に質問した所、「緩衝にかかる時間が従来より長いのは事実だが、次弾発射までの手順の一部にしか過ぎない。仮にデュアルリコイルの部分が従来の倍時間がかかっても、次弾発射までの時間が倍になるという事は無い」とのことでした。また、開発中の機動戦闘車と比較して、想定目標は低脅威であるため、発射速度はそこまで求められるものではないとのことです。

なお、この低反動砲は試作されていますが、砲身部は機動戦闘車用の流用で、105ミリ口径の砲となっています。仮にこのコンセプトが装備化された場合、砲は機動戦闘車と共用化するのかと尋ねた所、機動戦闘車より低脅威の目標を想定しているので、もっと短い砲身長になるだろうとのことでした。機動戦闘車と同じ砲を流用しているのは、あくまで現物があって都合が良かったからとのこと。

火砲には大別すると、直接照準して低い弾道を描く直接照準射撃と、観測情報に基いて山なりの弾道で射撃を行う間接射撃の2通りの射撃法がありますが、この軽量戦闘車両システムでは1両で直接・間接射撃双方行えるようになっています。

ところが、流用した機動戦闘車の砲は、低い弾道を描く直接照準射撃に主眼を置いており、山なりの弾道を描くには向いていません。そのため、砲弾の側に工夫がなされています。下の写真がその砲弾です。

105ミリ試験弾


この砲弾の先端部を見てみましょう。

抵抗板


先端部に空気抵抗を増大させる抵抗板を付けており、これにより意図的に弾道を山なりにしています。もっとも、今回試験に用いたほうが機動戦闘車の砲だっただけで、仮に装備化されるのならば、山なりの弾道を描くのに向いた短い砲身長の砲になるだろうとのことで、この抵抗板付き弾が出るかどうかは分かりません。


人員輸送の耐爆型

人員輸送を目的とした耐爆型では、大型地雷や即席爆発装置(IED)から人員を守る構造の研究が行われます。

耐爆車箱と呼ばれる構造では、底面をV字型にして爆風を側面に逃す構造にするだけでなく、爆発の衝撃で車内の人間がどう動かされるかについてもシミュレーションを重ねています。下の写真は爆発時に車内の人間が上に突き上げられた状態だそうで、頭や膝の保護についても考えなければなりません。


耐爆型の内部シミュレーション


また、先ほど底面がV字化する事で爆風を側面に逃す構造としましたが、それを更に有効化する機構があります。

耐爆型のV字型構造

底面のV字形状をより有効化するため、耐爆型では車高を高めに変化させる事が可能です。これにより、爆風が側面に逃れるための空間が増し、より効率的に爆発の威力を逃がす事が可能になります。

この車高可変機構については、車体の重心を上げる事になる為、爆発物の埋設の危険性が高い地域のみで使用する等が想定されているそうです。



共通技術 インホイールモーター

火砲型と耐爆型の2タイプごとの技術的特徴を述べましたが、最後は2タイプに共通する技術です。

インホイールモーター

従来の装輪車両では、エンジンからの動力を車輪にシャフト等を通じて機械的に伝達していました。インホイールモーターでは、各車輪にモーターが内蔵され、発電機からの電力によりモーター駆動します。これにより、軸が破損すると走行出来なくなる従来の車両と比べ、各車輪が独立したインホイールモーター式では一つの車輪が破壊されても残りの車輪で走行可能で、車両の生存性を大きく向上させます。また、車内に軸が通らない事により車体設計の自由度が増す事、より複雑な車輪制御による走破性の向上や、発電機を停止させてバッテリーの電力のみによる静音走行が出来る等の利点もあります。

写真はインホイールモーターの実物で、小松製作所の名前が貼ってありますが、小松製作所はプライムのためで、実際のモーター製作は日立とのこと。

試作試験は各要素のみ、試作車両は仮想空間で試験

この軽量戦闘車両システムの研究では、砲システムや耐爆車箱等の構成要素は試作して試験が行われますが、車両全体としては試作されません。従来、技術研究本部の戦闘車両システムの研究、例えば10式戦車の原型とも言える将来戦闘車両の研究では、90式戦車の試作車両を流用して試作車が製作されていましたが(この将来戦闘車両の研究については、拙著「10式戦車データ大全」に書いています)、今回の研究では各構成要素の試験データを元に、車両システムそのものはコンピュータ上のシミュレーションで組み立てられ、試験が行われます。


車両をシミュレーション


このシミュレーションにより、試作車両製作にかかるコストを抑え、様々な試験を行う事が可能となっています。今後、研究予算が限られていく中で、このようなシミュレーションを用いた研究がますます盛んになっていくものと思われます。


その他説明していた技官との会話で得た話。

「軽量車両システム」は陸上幕僚監部からの要求ではなく、技術的に提案可能なプランとして独自に立ち上げた。

デュアルリコイルと耐爆車箱を一つの車両に導入は出来ない。別個の車両になる。

火砲型・耐爆型で車両のファミリー化のように見えるが、ファミリー化と言えるほど共通部分は無い。足回り(インホイールモーター)が同じくらい。

オーストラリアから購入するブッシュマスター装甲車を使って、耐弾・耐爆試験もするかもしれない。



【関連】

「10式戦車データ大全」

本文中でも触れましたが、10式戦車開発に先立つ「将来戦闘車両の研究」について、唯一に近い本を夏コミで同人誌として出しましたが、このたびキンドルで電子書籍として配信しています。10式と将来戦闘車両の話ですね。


「陸上防衛技術のすべて (防衛技術選書 兵器と防衛技術シリーズ)」

航空と比べて本が少ない陸上装備開発については、こちらの本を。インホイールモーターについては、ちょっと少なめですが……。




2014年11月13日木曜日

防衛技術シンポジウム2014 「将来戦闘機に向けたエンジンの研究実施状況と今後の展望」

将来戦闘機セッションの中で、エンジンについては単独の発表が行われました。






1970年代から研究され、実用機ではT-4練習機に搭載されたF3エンジンに、アフターバーナーを追加したXF3-400エンジン。


その2次元推力偏向ノズルの動作の様子は下記の動画にて。




動画のコメント見ると、将来戦闘機向けの開発と見ている人がいるようですが、これだいぶ昔の研究のはずです。要注意。


さきほどの二次元推力偏向と異なり、実証エンジンでは推力偏向パドルは三次元です。

また、エンジン前方のストラットの形状を、レーダー反射を返さない形状にしています。


ハイパワー、かつスリムなエンジンを追求しているようです。F/A-18E/Fに積まれているF414や、ユーロファイターのEJ200のようなアプローチ。


ご覧の通り、エンジンのスリム化によってレーダー反射面積を減らす、あるいは空いた容積に燃料やウェポンに割く事も出来ます。

でも、エンジンのスリムかつ高出力化って、排気速度向上がその手段になるけど、「騒音増す事になるんじゃ……」と訊いた所、「まだ実際に作った訳でないので、騒音は分からない」とお茶を濁されました。音響ステルスの問題もあるし、日本の基地環境で大丈夫なんだろうか。


あとはエンジンの高温化。より強い耐熱材料が必要になるとともに、排気温度の高温化に伴う赤外線放出量の増大は熱ステルス性の低下を招くので、これはこれで対策が必要という話。



また、流量を増大させるためのファンの大流量化も行う。


アフターバーナ部の保炎器は、実証エンジンでは環状の部分があり、ここが圧力の低下を招いていたけど、次世代ハイパースリムエンジンでは環状部分を無くして損失を抑えている。


こちらも平成30年度前後に要素技術と試作機エンジンの運転が行われる。


2014年11月12日水曜日

防衛技術シンポジウム2014 将来戦闘機セッション 「将来戦闘機に向けた航空機システムの研究実施状況 と今後の展望」

続いて、将来戦闘機の研究実施状況と今後の展望について。こっちの方を将来戦闘機セッションの一番最初に持ってきた方が良さそうな気も……。




将来戦闘機の概要について。赤枠が20年後に実現、青枠が30~40年後に実現されるとみられる要素技術。このうち、F-2後継機の開発で考慮されるのが赤枠。



要素技術のうち、電子戦に強いフライ・バイ・ライトは、既にP-1哨戒機で世界で初めて実用化しており、将来戦闘機に積むものも実用レベルにある。ここでは赤枠の3点を紹介。



クラウド・シューティングは高速かつ秘匿性に優れたデータリンクにより、戦闘機間で情報共有を行うことで、レーダーを照射する機体とミサイルを発射する機体を別々にする事が出来る。



ステルス性については、武装の内装化とダクトを曲げる事でよりステルス性を高める。


クラウドシューティング を実現する為、統合火器管制システムが研究される。

従来の戦闘機では、自分でロックオンして自分が撃つのが基本だが、将来戦闘機は別の機体がロックオンしていれば、両機の中で最適な発射位置にある機がミサイルを発射する事が出来る。



質問をした所、この僚機間のデータリンクは、ミリ波通信が有力であるということ。別のセッションでレーザー通信の話があったが、将来戦闘機用のデータリンクでレーザー通信は技術的問題が多いという話。 また、赤外線や相手側レーダー波を利用したパッシブ測位も行う。



続いてウェポン内装技術の詳細。ウェポンベイを開く際に衝撃波が発生するが、その気流を解析する事で最適な形状・構造等を決める。





また、ウェポンの短時間かつ確実 な分離を行うための機構についても研究。



ステルスインテークダクトの研究。

従来の戦闘機は吸気口からエンジンに至るまでストレートなダクト形状だったが、電波の大きな反射源となっていてステルス化には不利。そのため、ダクトを曲げることでレーダー反射波を散乱させる事でステルス性を高める。



ストレート形状でないため、流れを制御する必要がある。インテーク付近、ダクト付近で気流の一部を外に出すなどの制御を行う。



軽量化構造の研究。ステルス機は重くなりがちなため、従来より複合材率を高め、複合材・金属の接合に用いるファスナを削減する事で軽量化を図る。



これらのキー技術について、平成30年前後までに研究し確立させる。F-2後継機が開発される事になる場合、平成30年度開発スタート、平成40年度に開発完了となる見通し。


クラウド・シューティングを実現する統合火器管制システムは、平成30年ごろに飛行試験を行う。飛行試験に用いる機材は、現用戦闘機に搭載する形で行うものとされる。

「出来たばかりの先進技術実証機(心神)はどう関連するの?」と質問したところ、心神の実測データをフィードバックする形になるという話。