[読書] シニアの脊柱管狭窄症―痛みと不安を解消する! （紺野愼一/著・NHK出版）感想

2018

Jan

[読書] シニアの脊柱管狭窄症―痛みと不安を解消する! （紺野愼一/著・NHK出版）感想

【おススメ度】★★★★☆

私が読んだ20数冊の中で、一番良心的でﾊﾞﾗﾝｽが良い本

「脊柱管狭窄症」を書いた本はたくさんあるが、私が読んだ約20冊の中で一番基礎的で全体のバランスが取れた本だ。まあ、書店や通販で人気の本は所謂「自分で治す」類の内容だ。ただ、残念ながらそれらの多くが著者の病院への誘引目的だったり、西洋医学に於ける根拠に欠ける怪しさが漂う本だ。

しかし、本書は『痛みと不安を解消する！』のサブタイトルそのままに、まず自分が脊柱管狭窄症を診断されたら「どのタイプ」であるかを見極め、タイプに合った治療法を学んでいくスタイルになっている。とにかく、自分でなくても、家族が狭窄症の疑いがありそうな家族も、一度読んでおくのを薦める。

基本的に「完全治癒」でなく、「歩けること」を目指す

さて、私が本書の中で最も読んで欲しいのは、「第2章あなたに合った治療の選び方」だ。脊柱管狭窄症の治療の目的が必ずしも「完全治癒」ではなく、「歩けること」を目指すこと。

まず、薬物療法と運動療法を組合せて、歩ける距離と痛みをコントロールしながら、自分が望む QOL（Quality Of Life＝生活の質）を目指すことが、狭窄症の最初の治療。

狭窄症の治療は、1人1人のゴールが違う

この「保存療法」を3か月続けても改善しない場合は、次の段階「手術」を考えることになる。要は、「保存療法」を試行錯誤しながら生活の質を維持するか、「手術療法」に吹き切って更なる生活の質の向上を目指すか。狭窄症の治療は、1人1人のゴールが違うのだ。

「ｼﾆｱ」でも､年齢､仕事､立場で治療のｺﾞｰﾙは変わって来る

「シニア」の区分が曖昧だが、仮に60歳前後またはそれ以上とすると、仕事も現役バリバリの50代半ばなら、手術をして30年近くはある老後を楽しく過ごしたいと思う人もいるだろうし、若いだけにもし手術が失敗したら困るから保存療法を頑張ろうと言う人もいる。

また、狭窄症はロコモティブシンドローム（運動器症候群＝加齢によってあちこちが動かなくなる）であり、70歳以上の患者さんも多い。そうなれば、残りの人生と手術のリスクを考えての治療の選択になる。このように、、1人1人治療のゴールが違うことを、ここまで明瞭に書いてある本はあまり見かけないから薦めたいのだ。

あとがき

「手術はいつ頃、どんな術式を選ぶべきか？」と言う部分も、本書は丁寧に書かれています。また、術後のこと、患者の家族はどうすべきか？などについても書かれています。
自分や家族や知り合いに「脊柱管狭窄症」の人がいる人は是非読んで、治療の目的は「完全治癒」ではなく「歩けること」を目指すことを知って頂きたいです。シニアの脊柱管狭窄症の治療は、奥深い世界なのです…