ユーザーテスティングに関しては WCAN の益子さんのセッションで話されていましたが、テストは重要ではあるものの過度にやってもそれほど意味がないと仰っていましたね。統計学の視点から見たとしてもユーザーテストは何の証明にもならない みたいですからね。
ユーザーテストを、いわゆるアンケートと同じように統計学的手法、定量的な手法だと思い込んだ時点で「意味がない」んです。それは別に過度にやらなくても、そう思い違いした時点で「意味がない」。
むしろ、ユーザーテストを行う理由は、ヤスヒサさんが書いてらっしゃるとおり、自分の直感や予測を重要視する優秀なデザイナーがその直感や予測をさらに研ぎ澄ませるためだと思います。デザインという創造性が求められる仕事をするわけですから、自分の直感や予測を重要視するのは当たり前です。そして、直感や予測への追及への努力はいくらあっても多すぎるということはありません。
(cf. 創造性は「過去の経験×意欲」という掛け算であらわすことができる by 茂木健一郎氏)
というわけで、ユーザーテストをテストを実際に担当する人だけが出ても意味はなく、むしろ、本当に参加すべきはデザイナーというわけです。
本当のユーザー中心デザインはユーザーの声を聞いたりしない
ユーザー中心のデザイン(UCD)という言葉で誤解されているのは、まさにこうした点です。UCDは、何もユーザーの意見を聞いてデザインの方針を決めることではありません。素人であるユーザーがデザインのことなんてわかるわけないのですから、意見なんて聞いても仕方ないのです。
ユーザーがなんとかわかるのは自分の目的くらい。いや、実際はそれだって怪しいわけです。だって、そうですよね。自分で何かを使うときのことを考えてみてください。いちいち自分がそれを使う目的なんか明確にしたりしますか? しないでしょ。なんとなく使ってる場合が多いわけです。
しかし、そのあたりのあいまいなところをユーザーに代わって理解してあげるのがデザイナーの仕事。そして、ユーザーの目的、ニーズを適えてあげられるデザインに具体的に落とし込んであげるというのがUCDです。
ユーザーテストはデザイナーが自分自身の直感や予測を発見する場
ただ、デザイナーだって、ユーザーが誰か、どういう人か、どういうライフスタイルを送ってるかもわからなければ、直感や予測も働かせようがないから、フィールドワークや、師匠と弟子などのインタビュー手法、それにプロトタイプを使ったユーザーテストを行って、そこから直感や予測を得ることが必要だったりするわけです。ここを勘違いしてユーザーテストは「意味がない」といっても、そんなの使い方が間違ってるのだから当たり前なわけです。使い方を間違っておきながら使えないなんていうのは、ユーザーテストに対してあんまりな仕打ちです。
繰り返しますが、素人であるユーザーにデザインのこと聞いても得るものはないのです。
あくまでユーザーテストはデザイナーが自分自身の直感や予測を発見する場です。
詳しくは『発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法』や『イノベーションの達人!―発想する会社をつくる10の人材』などのIDEO関連の本を読むとわかります。
その意味で、ヤスヒサさんが紹介してくれているAdaptive Pathの8つの項目ってふむふむと頷けました。
ようは、UCDを「ユーザーの声をたくさん集めること」と勘違いした時点で負けということです。
P.S.
もちろん、ユーザーテストには、大人数を集めて定量的なパフォーマンス測定を行うものもあります。
その場合は、定量的にデータを集めたいので、タスクの達成率やタスク達成時間なんかを測るわけですね。通常のユーザーテストがユーザーが実際にどう使うのか(どこで迷うかなどを含め)を質的なところを見るのとは大違いなわけです。
あとWebサイトなら、とっとと公開しちゃってアクセスログから定量的な考察を行うってのも手ですね。
そもそもISO13407の人間中心設計なんかはそういう循環的なプロセスを示唆しているわけですし。公開して終わりなわけじゃないですから。
(2007/03/25 15:43追記)
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