FUJIFILM X-Pro1【第1回】

気になったところをピックアップ

Reported by 大浦タケシ


 私のFUJIFILM X-Pro1が手もとに届いたのはリリース開始初日の2月18日。封を開けるやいなや行なったのが、同月27日に掲載した新製品レビュー用のブツ撮影であった。実は、あのレビュー記事に写るX-Pro1は、私個人のカメラであり、作例の撮影もそれで行なっている。今になって考えれば、“プレ”長期リアルタイムレポートであったといえるものである。第1回目となる今回のレポートでは、一部そのレビューと重なるところがあるが、本格的に使い始めてあらためて気になったところを“○”と“×”でピックアップしてみようと思う。

使い始めて約1年となるFUJIFILM X100と。こうやってみると、FUJIFILM X-Pro1のボディシェイプが随分とモダンなことが分かる。今後、交換レンズをゆっくり揃えていこうと考えている。

 ○といえば、何といってもローパスフィルターレスのイメージセンサーによる描写だ。階調再現性や絵づくりなど、どれをとっても満足度は高くフィルムメーカーらしいこだわりも感じさせる。なかでも解像感の高さは特筆すべきもので、パソコンの画面で見るとつい等倍拡大して見たくなる。

 プライベートユースで購入したつもりだが、作品撮りや仕事の撮影でも積極的に使いたく思えるほどだ。実際、これまで一度仕事(簡単なポートレート)で使用している。カメラ誌ではないのだが、編集者からモデルの着ているセーターの質感や髪の毛の再現性がいいとの言葉を頂いている。

 画素数にしても個人的にはまったく不足を感じるようなことなどなく、むしろ高感度特性や階調再現性を犠牲にしてまで画素数を上げなかったことは好感の持てるところである。

 ボディのつくりも○。質感、精度とも高く、価格以上に思えるつくりだ。ボディシェイプは、FUJIFILM X100やFUJIFILM X10にくらべ今風で、好み。大柄のボディはビミョーに感じられなくもないが、ホールディングがしっかりできることもあって許せる範囲である。外装の塗装もしっとりと落ち着いた印象で、個人的には○と感じている。

 もちろんシャッター速度、絞り、露出補正をダイヤルによるアナログ操作とし、直感的な設定ができるのも○。それぞれのクリック感も上々で、シャッターダイヤルにロック機構が備わったものうれしい部分である。

発売開始初日に手に入れたのが、X-Pro1本体にXF 35mm F1.4 R、それに予備バッテリーとプロテクトフィルター。当初、XF 18mm F2 RとXF 60mm F2.4 R Macroも購入する予定であったが、仕事でも使うフルサイズのデジタル一眼レフが発売されたため断念した。予約購入の特典として、パーカー製のボールペンが購入時に付いてきた。X-Pro1に対するメーカーの気合いの入れ方が伺い知れる。
いわゆるプチプチで包んだだけの梱包と違い、カメラもレンズもクション材を使った贅沢なつくりの箱に入る。また捨てられないものが増えた!かぶせ式のキャップも付属する。取れやすいので、紛失には注意。ちなみに、現在紛失中。フードは金属製だが、レンズに装着すると固定が緩くカタカタと小さく動くのは残念。

 一方×はといえば、まずプッシュボタン機能も備えるコマンドダイヤルの扱いである。レビューでも書いているが、プログラムAE時のプログラムシフトは、なぜか十字キーの左右ボタンで行なうようになっている。シャッター速度優先AE時とマニュアル露出時に可能となる1/3段ステップのシャッター速度の設定も十字キーの左右ボタンだ。これではカメラを構えたままの操作が非常にしづらいし、直感的に設定できない。しかも、そのときのコマンドダイヤルといえば、何ら仕事を与えらず遊んでいるのである。なぜコマンドダイヤルを活用しないのか、意図的とも思える機能の割り振りは大いに理解に苦しむ。

仕事をさせてもらえないコマンドダイヤル(画面中央)。こんなにも一等地にあり、しかもプッシュボタン機能を備えているにも関わらずだ。せめてプログラムシフトはこのダイヤルでやりたい。シャッターダイヤル、露出補正ダイヤル、コマンドダイヤルはカメラをホールドした状態で操作しやすい位置にある。この操作性を活かしきっていないのは、X-Pro1の大きなウィークポイント。

 ホワイトバランスやISO感度の設定変更が、メニューから入らないとできないのも×。Fnボタンに設定すれば直接設定画面が呼び出せるし、クイックメニューからも設定できないわけでもないが、この2つは設定を変更する頻度が比較的高いことを考えると、それぞれに対応する専用ボタンがほしい。前述したように撮影時における十字キーの左右ボタンの役割をコマンドダイヤルが担うようになれば、その左右ボタンにWBとISOの機能を与えることができるが、どうだろうか?

 これもレビューで書いたが、連続撮影モードにするとファイル名の先頭4文字が変わり、再生画像もデフォルトでは最初のコマしか表示されないのも×。カメラで再生すると撮影した時系列どおりに表示されないし、パソコンのフォルダに撮影した画像を入れても時系列に並ばない。

 さらに、カメラの液晶モニターでの表示では、連続撮影した1番目のカットしか見られず、画面の右下には撮影した画像がパラパラ漫画のように表示されるのも×。再生開始時に、十字キーの下ボタンを押せば、連続撮影したカットも順番に一応見られるようになるが、余計なことなどせずに、全てのカットが一枚撮影のカット同様に見られるようにしてほしい。

連続撮影モードで撮影した画像の再生画面。最初の1コマ目が大きく表示され、右下にはパラパラ漫画のように撮影した画像が繰り返し表示される。連続撮影モードに設定すると画像のファイル名が変わることも含めて、このようなことはしなくて結構。

 ファインダー関連でいえば、視度調整機構を省いたことが個人的には×だ。初めて視度補正レンズを買ってみたが、やはり簡便さでは及ばない。さらに、時間帯や体調によって視力は変化するので、その都度可変できる視度調整機構は無くてはならないように思える。伝え聞くところによると、視度調整機構を入れるとアイピースがカメラ背面よりも後に伸びるから付けなかったらしいが、もし本当にそうだとしたらまったく頂けない。視度調整を入れてアイピースが伸びれば、顔の皮脂が液晶モニターに付着することも抑えることができるはずだ。

生まれて初めて視度補正レンズなるものを買った。高価なものではないものの、やはり視度調整機構が備わっていたらと思わずにはいられない。時間で視力も変わってくるので、つらいことも多い。

 以上のようなことが、現時点で思う○と×の主なところである。×のほとんどは操作性だ。このカメラは、イメージセンサーなど優れたデバイスを採用しているにも関わらず、チグハグとした操作性で損をしているといってよい。先のX100もそれに近いものがあるが、ファームアップで徐々に操作性は改善されてきている(今でも使い勝手が悪く感じるところは残っている)。一部物理的に改善できないものもあるものの、X-Pro1でも今後ファームアップでの対応に期待したい。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
FUJIFILM X-Pro1 / XF 35mm F1.4 R / 約6.2MB / 4,896×3,264 / 1/350秒 / F6.4 / -0.3EV / ISO200 / WB:オートFUJIFILM X-Pro1 / XF 35mm F1.4 R / 約2.9MB / 4,896×3,264 / 1/150秒 / F2 / +0.3EV / ISO200 / WB:オート
FUJIFILM X-Pro1 / XF 35mm F1.4 R / 約6.6MB / 3,264×4,896 / 1/180秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO200 / WB:オートFUJIFILM X-Pro1 / XF 35mm F1.4 R / 約4.3MB / 3,264×4,896 / 1/140秒 / F2.2 / -1.0EV / ISO200 / WB:オート
FUJIFILM X-Pro1 / XF 35mm F1.4 R / 約6.9MB / 4,896×3,264 / 1/400秒 / F8 / +0.3EV / ISO200 / WB:オートFUJIFILM X-Pro1 / XF 35mm F1.4 R / 約4.0MB / 4,896×3,264 / 1/4,000秒 / F1.4 / -0.3EV / ISO200 / WB:オート
FUJIFILM X-Pro1 / XF 35mm F1.4 R / 約6.2MB / 3,264×4,896 / 1/350秒 / F9 / -0.3EV / ISO200 / WB:オートFUJIFILM X-Pro1 / XF 35mm F1.4 R / 約5.5MB / 3,264×4,896 / 1/420秒 / F7.1 / +0.3EV / ISO200 / WB:オート





大浦タケシ
(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。

2012/4/5 00:00