新しいネットサービスが真っ先に普及する中国・北京では今、フードデリバリーが一気に普及しつつあります。

ネット業界の3巨頭がフードデリバリーに乗り出した

複数の業者のバイクを同時に見かけることも珍しくなくなった
複数の業者のバイクを同時に見かけることも珍しくなくなった

 中国の首都である北京は、さまざまなIT企業の本社があることから、IT先進都市という一面も持っている。そんな北京をおよそ1年ぶりに訪れた筆者が気付いた変化は、商業地でフードデリバリーのバイク便が目に見えて増えたということだった。

 以前、路上でよく見かけたのは、「淘宝網」や「天猫」や「京東」といったショッピングサイトの配達用バイク、軽トラックだったが、今となってはフードデリバリーのバイクのほうが多い。

食堂のテーブルに貼ってあった百度外売の広告
食堂のテーブルに貼ってあった百度外売の広告

 フードデリバリーのサービスは数多いが、最もよく目にするのが「百度外売」「美団外売」「餓了me」の3社だ。百度外売はポータルサイト「百度(バイドゥ)」のサービスで、後発ながら資金力にものをいわせて「百度騎士」という物流団体を設立し、配達用バイクの多さで認知度を上げている。フードデリバリーの先駆けである餓了meの親会社は、電子商取引サイト「淘宝網(タオバオ)」を運営する阿里巴巴集団(アリババジダン)。美団外売は、騰訊(テンセント)が運営するクーポンサイト「美団」が始めたサービスだ。百度、阿里巴巴集団、騰訊の3社は、「BAT」と呼ばれる中国のインターネット業界の巨頭であり、フードデリバリー業界もこの3社が牛耳っているというわけだ。

注文は「店舗へ電話」からポータルサイトへ

ネットからの注文を待っているフードコートのデリバリー係
ネットからの注文を待っているフードコートのデリバリー係

 フードデリバリーのことを、中国では「O2O(Online To Offline)外売」または単に「外売」と言うが、フードデリバリー自体は以前からあり、ケンタッキーフライドチキンやピザハット、吉野家などのファストフード店ほか、大学内外の食堂などでも電話注文を受け付けていた。今どきのフードデリバリーは、ポータルサイトで店舗を選択して配達してもらうネット注文が特徴だ。

ファストフード店はネット注文に加えて電話注文もOK
ファストフード店はネット注文に加えて電話注文もOK

 使い勝手は百度外売も美団外売も餓了meも似たようなもので、飲食店の口コミサイトのように、和食や洋食、各種中華などのジャンル別に、価格や評価、予想配達時間で並べ替えることができる。多くの店舗は実店舗と同様の価格設定をしているが、デリバリーしてもらうには一定額以上の注文が必要で、数百円程度の配達料が上乗せされる。

 当初はフードデリバリーに何の規制もなかったため、既存のレストランや食堂だけでなく、個人で料理を出前する人もいた。しかし現在では、食の安全への配慮から、ライセンスが必要となっている。餓了meではネットワークカメラを契約店舗に配置し、いつでも厨房の様子を見られるようにするなど、手探りながらもサービス改善の試みが行われている。

複数のポータルサイトからの注文に対応している食堂
複数のポータルサイトからの注文に対応している食堂
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フードデリバリーは地方都市では普及しない!?

透明なプラスチックケースに入った激辛四川料理が届いた
透明なプラスチックケースに入った激辛四川料理が届いた

 北京で普及したといっても、内陸の省都クラスでフードデリバリーを始めるとなると事情は異なる。筆者が中国の拠点としている成都で試してみたところ、北京、上海などと比べるとフードデリバリーに対応している店舗が圧倒的に少なく、選択できるメニューも限定される。しかも、商業地ではなく住宅地にあるわが家が配達エリアに入っている店舗はさらに絞り込まれ、結局、数店舗しか選べない状態だった。

 辛いものが苦手な筆者が、汗と涙を流しながらサービスを体験
辛いものが苦手な筆者が、汗と涙を流しながらサービスを体験

 消去法で激辛の四川料理を選び、注文から30分ほどでバイクが到着。マンション入り口のゲートでガードマンに止められて中に入れないと言うので、建物を出てゲートまで行き、料理と引き換えに代金を支払った。

 普通のオンラインショッピングは、北京や上海と較べても、価格や品質、配達期間などに大きな違いがないため、地方在住者でも多くの人が利用している。しかし、フードデリバリーに関しては、まだしばらく沿岸部の大都市限定のサービスになりそうだ。

「百度外売」で、北京で利用できる日本料理、韓国料理を検索したところ
「百度外売」で、北京で利用できる日本料理、韓国料理を検索したところ

(文・写真/山谷剛史)

著者/山谷剛史(やまや たけし)

 海外専門ITライターとしてライター業を始めるものの、中国ITを知れば知るほど広くそして深いネタが数限りなく埋蔵されていることに気づき、すっかり中国専門ITライターに。連載に「山谷剛史のアジアン・アイティー」、「山谷剛史のチャイナネット事件簿」、「華流ITマーケットウォッチ」など。著書に「日本人が知らない中国ネットトレンド2014」(インプレスR&D)「新しい中国人 ネットで団結する若者たち」(ソフトバンククリエイティブ)など。最新刊は「中国のインターネット史 ワールドワイドウェブからの独立 (星海社新書) 」。
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