8月5日、スカイマークの債権者集会で2つの再生計画案が激突する。当事者不在の再生プロセスで、関係者間の相互不信は一気に増幅。いずれの案に決定しても、今後の再生に禍根を残すことは必至だ。

(写真=TK/アフロ)
(写真=TK/アフロ)

 8月5日、民事再生手続き中のスカイマークの再生を巡って債権者集会が開かれる。スカイマークと投資ファンドのインテグラル、ANAホールディングス(HD)らがまとめた「債務者案」、最大債権者の米航空機リース会社イントレピッド・アビエーションと米デルタ航空による「債権者案」のいずれかを、債権者が選ぶことになる。

 債権者集会で再生計画案が可決されるには、「投票した債権者の過半数」と「議決権総額の2分の1以上」の両方の賛成が必要。前者の頭数ではスカイマークらの債務者案が優勢とみられる。

 7月下旬、ANAHD幹部は「債権者の過半数の賛同は得られた」と明かした。それまで同社は、全国のANAの支店から社長の片野坂真哉まで、総力戦で取引関係のある債権者の説得に奔走した。その結果、200社弱ある債権者のうち、100社強の賛同を取り付けたという。

 今後の焦点はイントレピッドを除く大口債権者が議決権額でどちらの案を支持するか。欧エアバスについては、「ANAHDが説得にほぼ成功したようだ」と関係者は明かす。ANAHDがエアバスの超大型機A380を複数機買う条件で合意をしたというものだ。だとすれば、次のカギは米リース会社のCITと英エンジンメーカーのロールス・ロイスの動向となる。ただしデルタ側もエアバスと交渉しているほか、CITは議決権を2分割、ロールス・ロイスは12分割しており、決着は当日まで分からない。

CIT、ロールス・ロイスは議決権を分割
●大口債権者の議決権額シェア
<span>CIT、ロールス・ロイスは議決権を分割</span><br />●大口債権者の議決権額シェア
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スカイマーク案が「数」を押さえたとすると…
●大口債権者の議決権額シェア
<span>スカイマーク案が「数」を押さえたとすると…</span><br />●大口債権者の議決権額シェア
*:大口債権者が議決権のすべて、もしくは一部を棄権して両案とも議決権総額の2分の1以上に満たない場合
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「ノーサイド」にならず

 本誌はスカイマークが経営破綻し、インテグラルが支援を表明するまでを「スカイマーク劇場」の第1幕とし、対立していたインテグラルとANAHDが手を組み、東京地裁に再生計画案を提出するまでを第2幕と位置付けた。

 「ノーサイド」。5月29日に再生計画案を提出した後、インテグラル代表の佐山展生とANAHD社長の片野坂はそれぞれこう語り、劇場は幕を下ろしたはずだった。しかし今も再生の道筋は見えず第3幕の緞帳(どんちょう)が開くという「前代未聞の珍事が起きている」(関係者)。

 5月29日、債務者案に反発したイントレピッドは、独自の案を地裁に提出。同案には、事前の相談もなく出資者にインテグラルの名を載せた。これを受け、監督委員の多比羅誠はインテグラル側に180億円をフルエクイティー(すべて出資金)で出せるかを問い、その可能性を確認した。

 債務者案の出資総額は180億円。多比羅は、債権者案にも登場したインテグラルが債務者案と遜色のない資金を出せるかに関心を寄せた。それが実現可能と判断できたことで、債権者案も正式に認められ、2案が競ういびつな構図が出来上がった。「当事者のスカイマークが同意していない案が債権者集会に付議されるのはおかしい。監督委員の恣意性を感じる」とスカイマーク側の関係者は疑念を募らせる。

 別の関係者は、事の成り行きがそもそもおかしいと指摘する。なぜ債務者案を推進すべき立場にあるインテグラルが、債権者案を拒絶しないのか、だ。

 7月6日。スカイマークらによる債権者説明会の前日に、ANAHD取締役の長峯豊之は一通の書面を佐山に手渡した。内容は債務者案を明確に支持するよう迫るものだ。インテグラルはANAHDらと債務者案を推進する株主間契約を結んでおり、同社が債権者案に加担すれば契約違反に当たる。違約金の存在もチラつかせて、佐山にクギを刺した。

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