バイデン米大統領は1月3日、日本製鉄によるUSスチール買収に対する中止命令を出した。「米国の安全保障を損なう恐れがあると信じるに足る証拠がある」として、30日以内に「完全かつ永久に」買収を放棄することを求めた。日本製鉄とUSスチールは共同で、「バイデン大統領の政治的思惑のためになされた。法的権利を守るためにあらゆる措置を追求する」との声明を発表した。
米連邦議会で安全保障分野の政策に携わった経験を持つ関係者は、「最も重要な関係者は、労働組合だった。安全保障への懸念というのは建前で、実際は国内の労働問題だ」と語った。
バイデン氏は声明で、鉄鋼産業は米国のインフラや自動車産業、防衛産業を支える「米国の基盤」と強調しつつ、「USスチールは米国が所有し、米国が運営し、米国の組合労働者が働く、世界最高の米国企業であり続ける」と記した。全米鉄鋼労働組合(USW)による買収反対が、大きく影響したと見て間違いないだろう。
大統領選と重なる対立構図
「デビッド・ブリット(USスチール最高経営責任者、CEO)は、(買収が実現して一定の条件を満たしたときに)7200万ドルのボーナスを受け取り、株主は多額の利益を得る。幹部と株主にとって良い取引でも、従業員にとっては同じではない」
USWのデービッド・マッコール会長は2024年11月、地元テレビ局のインタビューでこう語った。経営陣と株主というエスタブリッシュメント(支配層)と、日本製鉄という外国勢力が利益を得て、米国に住む労働者の利益が無視されているという論理は、トランプ次期大統領が選挙期間中に駆使してきた対立構図と重なる。24年4月にUSスチールが開催した臨時株主総会では買収自体は承認されたが、買収に伴って発生する役員報酬は反対多数となっていた。
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