ちょっと前にJonas Erikssonさんというデザイナーのつくった「76-Synthesizer」という架空のiPhoneアプリのUIデザインがめちゃくちゃセクシーで驚いたんですよ。色っぽいとしか表現しようがない。
最近のiPhone/iPadアプリのデザインとか見てると、ものすごくよくできているものがたまにあって、フォトリアリスティックなんだけど真俯瞰でUIっぽさを担保している...みたいな独特の質感になってる。こういうデザインって、UIデザインの歴史としてとらえると、まず、OSで描画できるグラフィックが32ビットになったことからはじまり、Photoshopの機能の充実、デザインのメソッド化、Illustratorのグラデーションマップ芸の成熟なんかも影響して、結構自然な流れのように感じちゃうんだけど、グラフィックデザイン史として見るとかなり特異な状況になってきているんじゃないかという気がする。
かつてジョブスはOSXのAquaインターフェイスを発表した際、つやつやしたボタンを指して「思わずなめたくなるだろう。」と言ったとか。ボタンは「クリックできるもの」であることが自明であるように、でっぱりがあったり、ざらざらしていたり、枠がついていたり、「クリックをアフォードする設計」が行われていくのはまったくもって当たり前の流れなんだけど、ここに「なめたくなる」つまり「セクシーである」という価値観を持ち込んだのはやっぱりすごい。全体のアートディレクションも大切だけど、ボタン一つづつの質感ひとつひとつを大切にすることもやっぱり大切だなあ。官能は細部に宿る。
新しいUIデザインの潮流、なんていっちゃうけど大げさだけど、なんというか、いままでわりと「ベターッ」としてたものに、最近豊かな質感や光の表現が入り込むようになってきた。海外のサイトとかをチェックしてると、こういったセクシー派のデザインに敏感な人たちがいることがわかったので、いくつかサイトを紹介しておく。動向がきになるひとは観測しとくといいんじゃないかな。
Beautiful Pixels http://beautifulpixels.com/ タイトルの通り美しいUIデザインを紹介するサイト。iPhone/iPadアプリが多い。紹介されているアプリはどれも本当に細部まできれいにつくりこんであるものが多くて素敵です。
House of Buttons
http://houseofbuttons.tumblr.com/
とにかくセクシーで手のこんだボタンのデザインばかりあつめているブログ。どのボタンもついマウスオーバーしたりクリックしてみたくなっちゃうようなデザインばかり。ボタンのデザインをしっかりやるって、ユーザーにクリックさせるおもてなしの一つとしてやっぱり有効だなと感じる。
TappGala
http://www.tappgala.com/
このサイトは割と有名かな。iPhoneアプリにフォーカスして、美しさ優先で職人芸的インターフェイスデザインを紹介してる。アプリつくっている人なんかはここをざーっとみとくだけで色々浮かんできそう。
Dribbble
http://dribbble.com/
デザイナー向け作品投稿SNS的なもの。12万ピクセル以内で制作途中のデザインエレメントなんかをアップしてみんなにいいね!をもらったりコメントをもらったりできる。招待性ということもあって総じてレベルは高いけど、時々ハッとするぐらいぶっちぎりにキレイなやつがあったりする。
以下メモ:
ウェブデザインの視点から見ると、Flashベースドなサイトのデザインのトレンドと、CSSベースドなサイトのトレンドが全く違うものになってきてる気がする。なんとなく無責任な言い方になっちゃうのだけど、Flashは徐々に映画美術的な作り込みの世界になっていてウェブデザインバロック派みたいな雰囲気もある(FWA派?)、一方でCSS派はタイポグラフィーに自覚的なデザイナーも増えてきて、グラフィックデザインとウェブデザインの有機的な融合を感じる。ウェブデザインミニマリズム派といった様相。(Styleboost派?)もちろん両方をうまくクロスオーバーしている人たちもいるし、いつだってアウトサイダーデザインはその外側に燦然と輝いているわけだけど。