阿良々木月火。
あいつは、髪が伸びるのが速過ぎる。
ウィッグを使っているわけでもないのに、
ヘアスタイルを数ヶ月単位でああもころころと変えられるのは、
考えてみればそのためじゃないか――
ついこないだまでボブカットだったはずなのに、
今やそのワンレングス風の毛先は肩まであって、既に僕よりも長くなっている。
一ヶ月やそこらで、前髪が肩まで伸びるわけもないではないか。
立ち返ってみれば、神原はエロいから髪が伸びるのが速い―なんて、
そんな冗談で済まされるようなレベルの話じゃないのだ。
は。
笑えもしない。
異常なスピードである。
再生能力。
無論、髪を切ったところで命に別状はないわけだから、
そこまで劇的な再生能力を備えているわけではなかろうが―
しかしこと新陳代謝という意味合いにおいて、きっと月火は、
爪が伸びるのも、相当に速いはずだ。
あいつは。
代謝が―良過ぎるのだ。
今日だって昼からシャワーを浴びていたし、
なるほど、確かに月火は、頻繁に爪を切っているような気がする―
これは言われてみればというような話で、本来そんなこと、
疑問を差し挟むべきことでもない、
些細なエピソードではあるけれど、
思い当たることが多過ぎる。
心当たりが―あり過ぎる。
結局。
ただ、それは―家族であるがゆえに、
僕が目を逸らしていただけのことなのかもしれない。
違和感は、そうと気付かなければ違和感ではないのだ―とうしたところで、
偽物は、本物と区別がつかないからこそ―偽物なのだから。
本物さながらであることだけが。
偽物であることの存在証明。
あいつは、髪が伸びるのが速過ぎる。
ウィッグを使っているわけでもないのに、
ヘアスタイルを数ヶ月単位でああもころころと変えられるのは、
考えてみればそのためじゃないか――
ついこないだまでボブカットだったはずなのに、
今やそのワンレングス風の毛先は肩まであって、既に僕よりも長くなっている。
一ヶ月やそこらで、前髪が肩まで伸びるわけもないではないか。
立ち返ってみれば、神原はエロいから髪が伸びるのが速い―なんて、
そんな冗談で済まされるようなレベルの話じゃないのだ。
は。
笑えもしない。
異常なスピードである。
再生能力。
無論、髪を切ったところで命に別状はないわけだから、
そこまで劇的な再生能力を備えているわけではなかろうが―
しかしこと新陳代謝という意味合いにおいて、きっと月火は、
爪が伸びるのも、相当に速いはずだ。
あいつは。
代謝が―良過ぎるのだ。
今日だって昼からシャワーを浴びていたし、
なるほど、確かに月火は、頻繁に爪を切っているような気がする―
これは言われてみればというような話で、本来そんなこと、
疑問を差し挟むべきことでもない、
些細なエピソードではあるけれど、
思い当たることが多過ぎる。
心当たりが―あり過ぎる。
結局。
ただ、それは―家族であるがゆえに、
僕が目を逸らしていただけのことなのかもしれない。
違和感は、そうと気付かなければ違和感ではないのだ―とうしたところで、
偽物は、本物と区別がつかないからこそ―偽物なのだから。
本物さながらであることだけが。
偽物であることの存在証明。
しでの鳥。
ホトトギスの怪異。
怪異としてのホトトギス―しでの鳥は人間に托卵する習性を持つ。
子を孕んだ母親の胎内に転生…今回の場合は、阿良々木母が胎内に怪異を宿し、そうして生まれたのが月火である。
しでの鳥は人間に擬態することしかできない、人間の偽物としての怪異である。
そして、不死身である。
どんな怪我でも回復し、どんな病気もすぐ治癒し、寿命まで生ききる。
そして死に、また転生する。
しでの鳥の存在理由は、言うならば不死であることだけ。
生存し実存することだけを目的とし、人と同じように生き、人と同じように暮らし、人と同じように喋り、人と同じように死ぬ。
帰ってきた火憐ちゃんに地獄の門番ケルベロス役を託し、僕は月火ちゃんの様子を見に行った。
斧乃木ちゃんに上半身を吹っ飛ばされて、それが何事もなかったかのように回復した月火は―しかしそれから、意識を失ったままだった。
そして僕は、眠る月火の唇めがけて、キスをした。
「何すんじゃあ!」
童話に出てくる眠り姫のごとく、王子様のキス一発で目覚めた。
月火ちゃんと、それに火憐ちゃんの初ちゅーを奪っておいてなんだけど、別に何にも感じない。
ドキドキもしないし、嬉しくもない。
「お前やっぱり、僕の妹だよ」
阿良々木月火は生まれた時からずっと僕の妹で、火憐ちゃんの妹だった。
そうじゃなかったときは一時もない。
火憐ちゃんは言った。
僕のために死ねるし、月火ちゃんのためにも笑いながら死ねると。
僕だってお前達のためなら死んでやるよ。
何度でも何度でも―不死身のドラキュラみてーに、死ぬまで死に尽くしてやる。
忍に僕の血を吸わせ、吸血鬼としての力を一時的に取り戻させる。
そして僕も、その副作用的に吸血鬼と化す。
戦闘準備を整えた僕らは、影縫さんらが待つ学習塾跡の廃ビルへと乗り込んだ。
「招かれざる客ちゅうとこやな―忍野くんなら『やあ、遅かったね。待ちくたびれたよ』とでもほざきよるんやろうけど、うちはあそこまで他人に対してオープンにはなれへんな」
忍野はそもそも一度としてそんな殺気を出しませんでしたよ。
「そこまでパワーアップしたところで、未だあなたは僕より下だ。
敬老の日はまだ一ヵ月ほど先だけど、老骨に鞭打ってまで僕に年期の違いを思い知らせてくれるというのなら、折角だから付き合ってあげるよ、お婆ちゃん―僕はキメ顔でそう言った」
「かっ……資料も文献もロクに残存しておらん、極東のマイナー妖怪が。
二度とキメ顔などできなくしてやるわ」
そうして、斧乃木余接とハートアンダーブレード―怪異同士の殺し合いと、
影縫余弦と阿良々木暦―人間同士の殺し合いが始まった。
ところで。
忍野メメ、影縫余弦、そして貝木泥舟は、大学時代の同期だそうだ。
もう一人先輩を交えて、よく四人将棋とかをやっていたらしい。
オカルト研究会の同期として、やはり貝木は影縫さんの事を知っていたのだ。
てゆーか。
そもそも貝木が影縫さんに月火ちゃんの怪異の話をしたのが原因なんじゃねえか!
「本物や思うてた妹が実は偽物やゆうて知ってもても、おどれはこれまでと同じように、その妹を愛せるんかいな?」
愛せるさ。
むしろこれまで以上に愛してやる。
義理の妹なんざ―萌えるだけだろうがあ!
そんな風に啖呵を切っておきながら、僕は影縫さん相手にボロボロにされていた。
しかし一方、余接ちゃんも忍相手にズタボロだった。
「これから大逆転するところだったんだよ、余計な世話を焼かないでくれるかな、お姉ちゃん―僕はキメ顔でそう言った」
いや、キメ顔どころか涙目じゃないか。
しかし戦いは、忍と影縫さんの決勝戦にはなりはしない。
なぜなら僕はまだ、影縫余弦の拳にも言葉にも屈していないし納得していないのだから。
他人なんかじゃない。
家族なんだ。
家族には、僕は理想を押し付ける。
家族なんだから、嘘もつきます。
騙します。
迷惑もかけます、面倒もかけます。
借りを作ることもあるでしょう、恩を返せないこともあるでしょう。
でも、それでいいと思ってます。
偽物であることが悪だと言うなら、その悪は僕が背負います。
偽ることが悪いことなら、僕は悪い奴でいいんです。
性悪説。
人が善行をなすならば、それは本性ではなく偽りによるしかない。
偽善によるしかない。
偽―つまりは人為だ。
本物と、それとまったく同じ、区別のつかない偽物とでは、どっちの方が価値があるか。
影縫さんは、本物の方が価値があると言う。
忍野は等価値だと言っていたらしい。
対して出題者の貝木は言っていたらしい。
そこに本物になろうという意志があるだけ、偽物のほうが本物だ。
「それが今回の件からうちが得るべき教訓っちゅうとこか」
例外のほうが多い規則―月火ちゃんは彼女らの正義の例外として認められた。
「……大体、おどれ。最初っからうちとのバトル、どっか本気やなかったよな」
それはあなたが、僕を人間扱いしてくれたからですよ。
あなたは僕と忍を、人間と怪異のコンビと言った。
こんな状態の僕を人間と呼んだのは、今まで忍野一人だったのに。
そこで変な気分にさせられて、僕は気が抜けてしまった。
そして影縫さんも、そんな僕を相手にしらけてしまったそうだ。
「うちとしたことが、期せずして忍野くんとキャラがかぶってもうたか―やってもたちゅう感じやな。
ふん、情けない。
ほんだら最後には、忍野くんなら絶対言わへんやろっちゅう台詞で締め括ろか―」
「さようなら」
こんな感じで、怪物みたいな人間と、人間みたいな怪物―正義の味方と戦ってきたんだよ。
好きでやってるんだから、無理させろよ。
「夏休み明けにさ。僕の彼女を紹介してやるよ」
「何それ。お兄ちゃん、彼女いたの?」
「うん。実は五月あたりから」
「プラチナむかつく」
らしくもなくだらだらと出しゃばっちまったが、いつまでも月火ちゃんの部屋に長居していてもつまらない。
色々やっているうちにすっかり夜も更けてきたことだし―気の利いた化物は、そろそろ引っ込む時分である。
☆☆☆☆☆☆☆
今回のエンドカードはぽよよんろっく渡辺明夫さん。
ぱないの!!!
ボクは真綾姉さまのロリ声も好きだけど、でもやっぱりこのキャスティングは忍(大)の為ですよね。
次回に続く。
つまりどういうことだってばよ?
『偽物語』の原作は同じように終わっています。
つまり、西尾維新アニメプロジェクトとしての映画『傷物語』に続くとか、
もしくはEDで髪を切ったガハラさんも出てきたことだし、『猫物語』に続くとか、
そういった意味合いでしょうか。
何にせよ、公式発表があるまでwktkしながら待ちましょう―僕はキメ顔でそう言った。
『偽物語』公式サイト
http://www.nisemonogatari-anime.com/
よろしければ1クリックお願いします。
ホトトギスの怪異。
怪異としてのホトトギス―しでの鳥は人間に托卵する習性を持つ。
子を孕んだ母親の胎内に転生…今回の場合は、阿良々木母が胎内に怪異を宿し、そうして生まれたのが月火である。
しでの鳥は人間に擬態することしかできない、人間の偽物としての怪異である。
そして、不死身である。
どんな怪我でも回復し、どんな病気もすぐ治癒し、寿命まで生ききる。
そして死に、また転生する。
しでの鳥の存在理由は、言うならば不死であることだけ。
生存し実存することだけを目的とし、人と同じように生き、人と同じように暮らし、人と同じように喋り、人と同じように死ぬ。
帰ってきた火憐ちゃんに地獄の門番ケルベロス役を託し、僕は月火ちゃんの様子を見に行った。
斧乃木ちゃんに上半身を吹っ飛ばされて、それが何事もなかったかのように回復した月火は―しかしそれから、意識を失ったままだった。
そして僕は、眠る月火の唇めがけて、キスをした。
「何すんじゃあ!」
童話に出てくる眠り姫のごとく、王子様のキス一発で目覚めた。
月火ちゃんと、それに火憐ちゃんの初ちゅーを奪っておいてなんだけど、別に何にも感じない。
ドキドキもしないし、嬉しくもない。
「お前やっぱり、僕の妹だよ」
阿良々木月火は生まれた時からずっと僕の妹で、火憐ちゃんの妹だった。
そうじゃなかったときは一時もない。
火憐ちゃんは言った。
僕のために死ねるし、月火ちゃんのためにも笑いながら死ねると。
僕だってお前達のためなら死んでやるよ。
何度でも何度でも―不死身のドラキュラみてーに、死ぬまで死に尽くしてやる。
忍に僕の血を吸わせ、吸血鬼としての力を一時的に取り戻させる。
そして僕も、その副作用的に吸血鬼と化す。
戦闘準備を整えた僕らは、影縫さんらが待つ学習塾跡の廃ビルへと乗り込んだ。
「招かれざる客ちゅうとこやな―忍野くんなら『やあ、遅かったね。待ちくたびれたよ』とでもほざきよるんやろうけど、うちはあそこまで他人に対してオープンにはなれへんな」
忍野はそもそも一度としてそんな殺気を出しませんでしたよ。
「そこまでパワーアップしたところで、未だあなたは僕より下だ。
敬老の日はまだ一ヵ月ほど先だけど、老骨に鞭打ってまで僕に年期の違いを思い知らせてくれるというのなら、折角だから付き合ってあげるよ、お婆ちゃん―僕はキメ顔でそう言った」
「かっ……資料も文献もロクに残存しておらん、極東のマイナー妖怪が。
二度とキメ顔などできなくしてやるわ」
そうして、斧乃木余接とハートアンダーブレード―怪異同士の殺し合いと、
影縫余弦と阿良々木暦―人間同士の殺し合いが始まった。
ところで。
忍野メメ、影縫余弦、そして貝木泥舟は、大学時代の同期だそうだ。
もう一人先輩を交えて、よく四人将棋とかをやっていたらしい。
オカルト研究会の同期として、やはり貝木は影縫さんの事を知っていたのだ。
てゆーか。
そもそも貝木が影縫さんに月火ちゃんの怪異の話をしたのが原因なんじゃねえか!
「本物や思うてた妹が実は偽物やゆうて知ってもても、おどれはこれまでと同じように、その妹を愛せるんかいな?」
愛せるさ。
むしろこれまで以上に愛してやる。
義理の妹なんざ―萌えるだけだろうがあ!
そんな風に啖呵を切っておきながら、僕は影縫さん相手にボロボロにされていた。
しかし一方、余接ちゃんも忍相手にズタボロだった。
「これから大逆転するところだったんだよ、余計な世話を焼かないでくれるかな、お姉ちゃん―僕はキメ顔でそう言った」
いや、キメ顔どころか涙目じゃないか。
しかし戦いは、忍と影縫さんの決勝戦にはなりはしない。
なぜなら僕はまだ、影縫余弦の拳にも言葉にも屈していないし納得していないのだから。
他人なんかじゃない。
家族なんだ。
家族には、僕は理想を押し付ける。
家族なんだから、嘘もつきます。
騙します。
迷惑もかけます、面倒もかけます。
借りを作ることもあるでしょう、恩を返せないこともあるでしょう。
でも、それでいいと思ってます。
偽物であることが悪だと言うなら、その悪は僕が背負います。
偽ることが悪いことなら、僕は悪い奴でいいんです。
性悪説。
人が善行をなすならば、それは本性ではなく偽りによるしかない。
偽善によるしかない。
偽―つまりは人為だ。
本物と、それとまったく同じ、区別のつかない偽物とでは、どっちの方が価値があるか。
影縫さんは、本物の方が価値があると言う。
忍野は等価値だと言っていたらしい。
対して出題者の貝木は言っていたらしい。
そこに本物になろうという意志があるだけ、偽物のほうが本物だ。
「それが今回の件からうちが得るべき教訓っちゅうとこか」
例外のほうが多い規則―月火ちゃんは彼女らの正義の例外として認められた。
「……大体、おどれ。最初っからうちとのバトル、どっか本気やなかったよな」
それはあなたが、僕を人間扱いしてくれたからですよ。
あなたは僕と忍を、人間と怪異のコンビと言った。
こんな状態の僕を人間と呼んだのは、今まで忍野一人だったのに。
そこで変な気分にさせられて、僕は気が抜けてしまった。
そして影縫さんも、そんな僕を相手にしらけてしまったそうだ。
「うちとしたことが、期せずして忍野くんとキャラがかぶってもうたか―やってもたちゅう感じやな。
ふん、情けない。
ほんだら最後には、忍野くんなら絶対言わへんやろっちゅう台詞で締め括ろか―」
「さようなら」
こんな感じで、怪物みたいな人間と、人間みたいな怪物―正義の味方と戦ってきたんだよ。
好きでやってるんだから、無理させろよ。
「夏休み明けにさ。僕の彼女を紹介してやるよ」
「何それ。お兄ちゃん、彼女いたの?」
「うん。実は五月あたりから」
「プラチナむかつく」
らしくもなくだらだらと出しゃばっちまったが、いつまでも月火ちゃんの部屋に長居していてもつまらない。
色々やっているうちにすっかり夜も更けてきたことだし―気の利いた化物は、そろそろ引っ込む時分である。
☆☆☆☆☆☆☆
今回のエンドカードは
ぱないの!!!
ボクは真綾姉さまのロリ声も好きだけど、でもやっぱりこのキャスティングは忍(大)の為ですよね。
次回に続く。
つまりどういうことだってばよ?
『偽物語』の原作は同じように終わっています。
つまり、西尾維新アニメプロジェクトとしての映画『傷物語』に続くとか、
もしくはEDで髪を切ったガハラさんも出てきたことだし、『猫物語』に続くとか、
そういった意味合いでしょうか。
何にせよ、公式発表があるまでwktkしながら待ちましょう―僕はキメ顔でそう言った。
『偽物語』公式サイト
http://www.nisemonogatari-anime.com/
よろしければ1クリックお願いします。