ビールを飲みながら考えてみた…

ポータルサイトにポイントプログラムを導入する目的はあくまでも「顧客ロイヤリティの向上」であって、「割引」ではない。この場合のロイヤリティとは、サイトへの来訪であり、商品の購入や、サービスを享受してもらえる、ということである。そういう意味で、先日も書いたとおり、「楽天スーパーポイント」はポイント制をうまく利用している例だといっていい。

「楽天スーパーポイント」にみる、「ポイント流通」という仕掛け

楽天が実施している、ユーザーのアフィリエィトの対価報酬を「ポイント」で還元する、というのはユーザーからすると単純に「得をした」というだけでなく、「思わぬ収入を得た」という「感動」を提供されたことになる。「感動」や「いい意味での期待の裏切り」といった「偶然性の演出」はこれだけ情報やモノのあり溢れた社会にとっては一番手に入れにくいものだ

例えばリアルなショッピングであれば、A店で買うかB店で買うかというのは、「場所の移動」や「時間」といった手間がある分、"なじみではない"店で購入するための「スイッチングコスト」が高い。お気に入りの店、便利な店、ポイントがたまっている店という単純な理由でその店へのリピート率(ロイヤリティ)の向上が期待できるが、インターネット上では、「時間」や「移動」といったコストはないに等しい。瞬時にあらゆるサイトへの移動が可能となる分、こうした「思わぬ収入を得た」といったサプライズが持つ意味ははるかに大きくなる。

例えばGoogleが提供している「AdSense」などもこうした感覚と手軽さをうまく利用している例だろう。これを個人のHPやブログなどに設置しておけば、そのページのオーナーが通常通りに記事を書いていても、本文中の単語などから内容と近い広告を類推して表示するというアフィリエィト広告で、HPやブログのオーナーからすれば、普通にページを運営しているだけで、何もせずに収入が得られるというもの。但しこちらはポイントのようなものではなく、銀行口座への振込となり、オーナーとGoogleの結びつきは弱い。

例えばフリーメールやブログ、HPなどを提供しいる総合ポータルサイトであれば、このアドセンスのような仕組みを利用して、ポータルサイトの商品やサービスを他者に紹介する、「楽天スーパーポイント」で実施しているアフィリエィトプログラムを展開するということも可能であろう。そうなればただ便利だから利用しているといった状態から、さらに一歩深い関係を築くことが可能となる。ユーザーはサイトのサービスを利用するだけでポータルサイトの営業マンとなり、また普通にサービスを利用しているだけで「思わぬ」収入を得ることになる。このサプライズが更なるサービスの利用を招き、ロイヤリティを高めていく。

このモデルは何もこれに閉じたものではない。

○ポータルサイト内の広告をクリックする、あるいはアンケートに答えるとポイントが加算される

○フリーメールやブログにサイトの商品だけでなく、アドセンスのような広告を掲載し、その報酬としてポイントが加算される

○商品やサービスの感想欄・コメント欄に書き込むと加算される

○ポータルが紹介しているホテルや商店、そのクーポン券を利用するとポイントが加算される

など、いくらでも応用は可能のはずだ。とくにこれらのモデルの基本としてあるのが、「成果報酬」「全てのプレイヤーにメリットがある」ということだ。店舗側・サイト側の負担ばかりが増える「割引系」ポイントプログラムとはその視点が大きく異なることになる。

いずれにしろユーザーの参加意識を高めるであろう「思わぬ収入を得た」という感動をうまく利用することが必要だ。もしサイト内に「通帳」といったコーナーがあり、そこに「今日の入金　○○○ポイント(1ポイント＝1円です)」という記載があったりすると…それだけでサイトに来ることが楽しみになり、もっとメールやブログを利用することになるだろう。

さらい言えば「ポイントがたまるもの」ではなく、「貯めていくもの」、「収入として稼ぐもの」となれば、ポータルサイトへのロイヤリティは飛躍的に向上するであろうし、また貨幣の代替として「ポイント」が流通する可能性も大きくなる。
これまでに何度か書いたが、ポータル内の貨幣としてポイントを流通させること、貨幣の延長としてのクレジットカードではなく、事前に貨幣をポイントに交換（購入）させ、ポイントで決済させることが目的であり、そのための手段であることは忘れてはいけない。その意味でも、ポイントは「割引」ではないのだ。