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yusukenakamura.hatenablog.com
現場か回らなくなってから、登録システムを変える、全例報告義務なしにするなどと言っている。呆れたコロナ対策だ。コロナウイルス感染症を科学的に考えて、対策を練ることができないままに、場当たり対策の連発だ。数週間前に、感染力が強く、医療機関で欠勤者(コロナ陽性者・濃厚接触者・子供の濃厚接触者の家庭内ケアのための親の欠勤)が増え、医療供給体制が崩れ、悪循環に陥ることは予測されたはずだ。十分に配慮している医療従事者でも、医療機関の運営に支障をきたすような事態になるのだから、一般の企業でも同じような状況が起こっていてもおかしくはない。 今の分科会や政府のコメントを聞いていて、「やはり科学がないのだ」と思う。下図は前回のコロナ拡大の波を3か国で比較したものだ。 米国・韓国・ベトナム(その他の多くの国)で、ピークが急峻であるのに対して、日本だけがダラダラとした下降曲線となっている。当然ながら、このような違
コロナ感染症陽性患者の急激な減少にも関わらず、専門家と称する人たちは、第6波に備えて病床確保が重要だと言う。一部の自称専門家は、感染者数の予測を大きく外してきたにもかかわらず、今も専門家と称して滔々と述べている。8月末には東京都だけでも1万人を超えるとの予測は大外れで、8月下旬から想像を超える減少となった。「学校が始まるので急速に子供の感染が拡大する」といったリスクの声もかき消すような信じがたい激減だった。 政府としては、ワクチン接種が進んだことを強調したいのだろうが、ワクチン接種が進んでいない国(たとえば、インドネシア、バングラデシュ、マレーシアなど)でも急速に減少している。日本の専門家は、欧米ばかり見て、アジアの動向などをちゃんと見ているのかどうか疑わしいもので。6-8月にかけての急増はデルタ株の影響が大きいが、急減した科学的な裏付けははっきりしない。今回の激減に対しての「人流の抑制効
2014年の6月21日にこのブログを書き始めて7年間が経過した。7年間に950回投稿し、560万回を超えるアクセスをいただいた。平均年間80万回以上のアクセスをしていただき、私の駄文に目を通していただいたことには感謝の一言しかない。 1年数ヶ月、コロナ感染症対策に苦言を呈してきたが、最近の動きは、日本は破滅に向かって一直線の感がある。政治家から、言葉の重みと責任が消え、まるで漂流国家のようだ。「勝負の3週間」「短期・集中で」という言葉がシャボン玉のように軽く、消滅していく。何を質問されても、「責任を取る」姿勢が皆無に映る。質問とかみ合わない回答を繰り返して、日本という国のいい加減さをさらけ出しても支持率が30%を切らないのは不思議だ。この理由は、野党に対する信頼感の低さの裏返しだ。総選挙になっても期待する候補がいない人が多くなるかもしれない。 国に明確な戦略・ビジョンがなく、目の前の課題に
コロナ感染症が驚くべき広がりを見せている。ある分科会の専門家が「異常な増え方だ」と説明しているが、そんなことは素人でもわかることだ。 なぜ急速に拡散しているのかを洞察しない限り、この異常事態は継続し、さらに指数関数的に拡大し、欧米と同じ経緯をたどる。 この専門家は若者が検査を受けるようになったからでは?と馬鹿な推論をしていたが、インフルエンザを見れば1-2月に急増するのは教科書にも載っている常識だ。問題はそれ以外の要因がないかどうかを科学的に考察すべきなのだ。 この事態を解決するには イギリスや南アフリカで起こった変異株を追跡するだけでなく、日本国内でウイルス変異が起こっていないか大至急調べることが不可欠だ。これによって対策は大きく異なるはずだ。米国では感染率が2倍高い変異ウイルスの可能咳が示唆されている。英国型、南アフリカ型、ブラジル型の変異株を心配するのなら、日本国内で変異が起きていな
木下賢吾なる人物が、バイオバンクジャパン批判の文章を書いて配布している。 東京大学医科学研究所にバイオバンクジャパンのデータアクセスを批判する文章が私に手元に届いた。2020年の基準で、2002年に計画したバイオバンクのデータアクセス権を批判するなど、アホ以外の何物でもない。2002年、バイオバンクジャパン計画を作成したのは私だ。当時、ゲノムそのものに対する理解も今と比べればはるかに低く、「ゲノム=究極のプライバシー」といった感じで、ゲノム研究のための大型研究を進めようとする私には、暴風雨が吹き付けていた。絶対にプライバシーを守るのだという刃がのど元に突き付けられていた。 データの第3者利用とでもいえば、プロジェクトそのものが立ち行かないくらいだった。そこで、データを保存するコンピューターはスタンドアロンと呼ばれる外部との接続をできない形で始めた。第3者に利用できるようにするなどと言えば、
今、医療界で最も話題となっているのが、いわゆる「乳腺外科医冤罪?事件」である。手術直後の女性患者の胸を舐めたなどとして準強制わいせつ罪に問われ、東京地方裁判所では無罪となったが、東京高等裁判所においては「被害者が診察だと信頼した状況を利用した犯行で、刑事責任は軽視できない」として懲役2年の実刑判決が出されている。日本医師会長と日本医学会長が、この判決に対して抗議を表明している。 https://www.med.or.jp/nichiionline/article/009505.html 医師の常識としては、被害者の訴える状況は考えにくい。麻酔によってせん妄状態になり、性的被害を受けたと訴えた例は少なくない。特に、このケースでは他の入院患者もいる部屋で起こったとされるので、なおさらに、考えにくい状況である。日本医学会長の門田守人先生は抗議声明のなかで、ご自身の外科医としての経験として、起こり
クルーズ船内の新型コロナウイルス感染症者は、一気に倍近くの135人となった。合計439名の検査を実施したようなので、なんと感染者の割合は被験者の30%という驚くべき高値となる。飛沫感染で広がるにしては感染者数の増加は異常だ。北京で操業を開始した企業では、空気感染を懸念して、暖房をしていないようだ。寒い北京の環境では暖房なしで働くのは厳しい。 テレビのコメンテーターが「寒くて風邪を引くのでは?」と言っていたが、「危機管理は最悪のケースを想定して行う」という基本的原理をわかっていないようだ。可哀そうという気持ちで、このような感染症の抑え込みはできない。日本では空気感染には否定的だが、急速に感染が広がっている実情を考えると、これも想定した対策が必要ではないのだろうか?幸いにも致死率は、当初報道されていた数字より一桁小さいようだが、船内における感染の急拡大を説明する科学的な理由の解明が必要だ。 オ
第4回がん撲滅サミットが11月18日に東京ビッグサイトで開催される(午後1時スタート)。https://cancer-zero.com/ 内閣官房・厚生労働省・国立がん研究センター代表が「がん撲滅への戦略」を語り、その後、私を含めた3名が「がん撲滅への戦術」を語ることになっている。その後、公開セカンドオピニオンが行われる。メンバーを眺めていると、話がまとまるのか不安になってくるが、このメンバーでどんな議論が展開されるのか興味津々である。 米国では、「がんの治癒に向けた」ムーンショット計画が進められている。再発進行がんでは「延命・緩和ケア」が標準医療化されている日本で、「がん撲滅に向けた」戦略がどのように語られるのか?禁煙問題ひとつでさえまとまらないこの国で、大きなビジョンを描き、それを実行していくことは難題中の難題である。是非、国を代表する3名の方の国家戦略を拝聴したいものだ。 私は、がん
日本の夏は本当に暑い。7年ぶりの東京の夏は、「とにかく暑い」の一言しかない。昨日、シカゴ大学の友人から、東京はドイツと同じでエアコンがないから(???)、今年の熱波は大変だろうとメールが送られてきた。思わず吹き出しそうになったが、日本の認知度はこの程度なのかと寂しくもあった。 この暑さに加え、シカゴの時と比べて数倍の忙しさとなり、本当に目が回りそうだ。「人工知能ホスピタル」関連の説明会で、「医療関係者は忙しすぎて、新しいことを勉強する時間が取れないので、人工知能が必要最低限の情報を医療関係者にわかりやすく正確に伝えて、知識ギャップを埋めていくことが重要」と言っている私自身が、勉強する時間が取れなくなってきているのは悪いジョークのようだ。 今日は、午後に大阪市立大学医学部で講演会をするために、今、羽田空港から大阪に向かうところである。大阪市立大学附属病院は約50年前に足の複雑骨折で3か月間入
今週の月曜日から、がん研究会・がんプレシジョン医療研究センター所長として勤務している。内閣府のプロジェクトもあり、自宅・内閣府・がん研究会のトライアングルの通勤はかなり体に堪える。シカゴと比較すると気温は少ししか変わらないが、この纏わりつくような湿気はかなり厳しいものがある。移動だけで、日に3時間も使い果たし、想像していたより過酷な日々だ。 しかし、懐かしい顔に出会うたびに、「頑張ってください」と言われ、自分の気持ちを奮い立たせるしかない。でも、少なからずの人に、「プレシジョン医療って、オーダーメイド医療とどこが違うのですか?」と聞かれると、答えに窮する。「同じような意味だけど、オバマ大統領には勝てないのです」としか、返事ができず、気持ちは凹んでくる。一市民の言葉など、米国大統領の前では無力だ。 20年以上前に「オーダーメイド医療」と命名した際に、築地から「オーダーメイドは英語ではないから
目が回るほど忙しい日が続いている。「シカゴ便り」でなくなることを契機にブログをどうしたものかと悩んでいたが、昨夜、食事をした友人から、「中村先生は、人が言いたいことを、よくあれだけズケズケと言えますね。他の人は怖くて言いたいことが言えないのですよ。でも、ブログを読んでスッキリしている人がたくさんいると思いますよ」と言われた。 そして、昨日の朝に、以前から相談を受けていた19歳のがん患者さんをお見舞いに行って(様子を見に行って)来た。直後に、お父様から連絡をいただき、感謝の言葉を頂いた。電話の向こうで泣いている様子が伝わり、私ももらい泣きしてしまった。少しでも多くの患者さんに希望を提供することが重要だと思い、これからもできる範囲で情報を発信していくことに決めた。もちろん、最終的なゴールは希望を提供するだけではない、希望を現実にすることが私の人生の目標だ。 日本に戻って1週間、もっとも辟易とし
NHKニュースが、米国臨床腫瘍学会では免疫療法が中心的話題だと新しい流れを大々的に報道する一方で、クローズアップ現代では、免疫療法の大半をエビデンスがないと否定するような報道をした。クローズアップ現代冒頭で「詐欺師まがいの遺伝子治療」の例を紹介したが、免疫療法とは全く無関係の話なのだ。しかし、後段の部分とつなげると、明らかな「免疫療法の大半は悪だ」という印象を与えるような番組の構成だ。画面の背景として樹状細胞ワクチンが大きな文字で示されてされていたが、これは強烈な印象操作である。 多くの人たちは、「エビデンスのない治療法」という言葉を使って、新しいことをすべて否定する傾向にある。特に、国の中心にいる人たちにこの傾向が強い。国内外の製薬企業の下請けをすることが世界と競っていることだと誤解しているから、日本のがん医療が遅れてきた現実を直視して欲しいものだ。 歴史を振り帰ってみよう。国立がん研究
標記の記事が、7日の毎日新聞に掲載された。内容は「内閣府が今年度から5カ年で行う「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」第2期事業で、研究開発課題の責任者を公募したにもかかわらず、実際は事前に候補者を決め、各課題の詳しい内容を伝えていた。12課題のうち10課題で候補者がそのまま選ばれ、うち9課題は候補者1人しか応募がなかった。」とあった。 私が、名指しで、事前候補者と異なっていた一人であると記事に掲載されていた。まさに、「和をもって尊しとなさず」を地で行く行為になってしまっている。しかし、応募すれば、公正に評価されるという証にもなっている。採用後に知った「上記にある課題の詳しい内容」と「私がヒアリングの際に提案した内容」は、もちろん重複はあるが、異なっている部分がある。私の提案は、「人工知能によって、医師が患者さんと面と向かって話ができる時間を確保すること」や「人工知能が、病気のこ
遺伝的な危険因子を定義することは簡単ではないので、まず、わかりやすい例から紹介したい。食道がんには、喫煙と飲酒がリスク生活要因であることがよく知られている。これに、遺伝的危険因子が組み合わさった時に、食道がんのリスクがどのようになるのか図で示す。 まず、基礎知識として、アルコール(正確にはエチルアルコール;C2H5OH)は消化管から吸収された後、肝臓で、ADH(アルコール脱水素酵素)によってアセトアルデヒドに変換され、引き続いて、ALDH2(アルデヒド脱水素酵素)によってアセトアルデヒドから酢酸に変換される。そして、酢酸は水と二酸化炭素に分解され、体外から排出されます。エチルアルコールより、メチル基が一つ少ないメチルアルコール(CH3OH)も飲むと酔いを生ずるそうだが、決して飲んではいけない。これは、メチルアルコールが、分解されてホルムアルデヒド、蟻酸になり、この蟻酸が有毒だからである。特
京大研究不正問題で、山中先生を支援する声は大きい。是非、踏みとどまって、患者さんの期待に応えて欲しい。 しかし、この種の問題が起きるたびに、研究者や大学の管理体制が問われ、管理の厳格化が求められるが、私は、これは間違いだと思う。大学の教官は、委員会業務や書類作成などの雑務(あえて、雑務と言いたい)で、すでに多大な時間を取られ、本来の教育・研究、そして診療(病院・医学部の場合)に身を削る形で取り組んでいる。 2時間で一つの製品を作ることのできる職人がいるとする。1日8時間で4個、1週間で20個、1か月で80+アルファ個、これは小学生でもできる計算だ。超過勤務を減らす方向であるにもかかわらず、種々の業務が増えて、1ヶ月に150個、200個の製品を作ることを強いているのが大学の現状だ。これに定員削減が重なり、さらに悪化する。仕事量が増え、人が減れば、当然、それぞれの質は低下する。しかし、みんな必
山中伸弥先生の記者会見の様子をビデオで見た。「不正を防げず、無念」とのコメントだったが、私は不正など、組織がとてつもない努力をしても、防げるはずがないと思っている。性善説に経てば、努力によって防げるはずだが、世の中から犯罪がなくならないのと同様に、絶対にこのような不正はなくならないように思う。偉そうに言っているメディアでも不祥事は起こっているではないか! そして、どう考えても、この件の一義的な責任は、研究者とその直属の上司にある。山中先生が所長を辞職しなければならないような理由はどこにもない。この立場にとどまって、日本で、そして、世界で、山中先生に期待している患者さんや家族のために尽くすべきだと思う。 それにしても、「論文の見栄えをよくしたかった」という理由が述べられていたが、幼稚すぎて唖然とするしかない。とても、30歳を過ぎた大人の発言ではない。見やすい図や表を作ることと、数字や図を改竄
ネットニュースで「京大iPS研で論文不正 山中伸弥所長が謝罪」という標題の記事を目にして、急いで記事を読み、論文を調べた。 産経新聞には「所長を辞職するか報道陣に聞かれ、『その可能性も含め、どういう形が一番良いのか、しっかり検討したい』と話した」とあった。山中先生は、この問題となった論文の著者ではない。研究所長として管理責任はあるとしても、大学の組織上、研究所長がそれぞれの研究室が発表する論文の内容に立ち入ることは、普通はない。論文に関しては、筆頭著者を含め、全著者が責任を取るべきである。 大きな研究所のトップは、自分自身の研究室の研究内容について全責任を負うのは当然だが、他者の研究室の内容・運営に口出しする事はない。研究の内容・指導・予算管理は研究室単位で独立して管理される。常識的に考えても、研究所長が多くの研究室の細かい生のデータまですべて目を通すことなど不可能だ。山中先生は日本の宝で
IBMのワトソン(人工知能)のコマーシャルで、開業医が遺伝子解析結果を扱っている場面が紹介されている。人工知能は、専門的な知識を持たなくても、最先端の結果をユーザーが利用することを可能にする。日々更新されていく新しい技術や情報を入手する事は、最先端研究の場にいるわれわれでさえ厳しい状況なので、臨床現場で忙しくしている医師や看護師・薬剤師がそれを行うことは不可能と言っていい。しかし、最先端技術や治療法は、続々と医療現場に応用されるようになってきており、これに対応した医療システムの構築が待ったなしの状況である。 人工知能は、非常に難解な生データを解析し、ユーザーの理解が簡単な解釈をつけて提示できるので、専門家と一般ユーザー(すべての医師・医療従事者や患者)の知識ギャップを埋める架け橋として機能する。個別医療の推進には不可欠な道具である。人工知能が広く利用されるようになれば、最先端研究者・医療従
膵臓がんは最も予後の悪いがんであり、5年生存率は依然として一桁台である。一般的にはステージ1で診断された場合には予後はいいが、膵臓がんに関しては約3分の2が再発する。11月23日号のNatureに長期生存膵臓がん患者の特徴を調べたデータが掲載されていた。 結論から言うと、長期生存がん患者は、変異数が多い=ネオアンチゲン(遺伝子変異によって生み出される、がん細胞の表面に存在する、がん特異的抗原)が多いことに加え、がん組織内にCD8Tリンパ球が多い特徴が見つかったのである。ネオアンチゲンが多いだけ、あるいは、CD8Tリンパ球が多いだけでは不十分で、この両方の要素が存在している必要がある。 これ以外にも、実験データが示されていたが、腸内細菌の話も出てきて、何を言いたいのかよくわからなかった。特に、腫瘍マーカーとして利用されているCA125(MUC16)とMUC16の遺伝子変異によって生ずるネオア
今週号のNature誌に、まれな遺伝子多型(非常に少数の人で見られる遺伝暗号の違い)が、遺伝子の発現レベルに影響しているという論文”The impact of rare variation on gene expression across tissues”が報告された。Genotype-Tissue Expression (GTEx)(遺伝子多型とヒトの臓器での遺伝子発現の関連を調べる研究)プロジェクトの成果である。タンパク質の情報がある部分で見つかった遺伝子多型は、タンパク質の性質の変化を推測することを通して、その重要性が明らかになっていたが(もちろん、ほんの一部だけだが)、タンパク質情報がない部分、特に、遺伝子の発現量に関係すると考えられる部分の遺伝子多型が、遺伝子の発現にどのように影響するのかという情報は限定的であった。449人44組織のデータをもとに、特定の遺伝子のへ発現が、極端
またまた、馬鹿メディアがやらかした。NHKが「厚生労働省が地域のがん治療の中核に指定している拠点病院のうち全国の少なくとも12の病院が、がん治療の効果が国よって確認されておらず保険診療が適用されていない免疫療法をおととし実施していたことが、NHKの取材でわかりました。厚生労働省は『拠点病院の治療としてふさわしいかどうか議論を始めたい』としています。」と報道した。今頃、何を寝とぼけたことを言っているのだ。取材力不足か、誰かの意図に沿ってこの報道をしたのか?民間では十年以上にわたって免疫療法が実施されているのに、今、何を問題としているのか理解不能だ。玉石混交の免疫療法の内容にも触れず、自らの無知をさらけ出しているような報道だ。本当に救いようのないメディアを象徴している。 また、「一部のがんの拠点病院が国が効果を確認していない免疫療法を実施していることについて、拠点病院の指定を議論する厚生労働省
前回に続き、日本のメディアに欠ける科学的素養について、子宮頸がんワクチンをテーマに述べたい。8月26日付けの毎日新聞が「 子宮頸がんワクチン ウイルス感染に9倍の差 再開求める」との日本産科婦人科学会の声明を報道した。一方、NHKは「子宮頸がんワクチン訴訟 原告代表『被害認めて』」と副反応に苦しむ人たちの声を8月23日に報道した。 このワクチンに関しては、痛みを訴える被害者の声が大きく伝わる一方、子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)の有用性を科学的に伝える報道はほとんど見当たらない。そもそも、歴史を紐解いても、副作用・副反応が皆無のワクチンなど存在しない基本的な理解にかけている。 副作用があってもいいと言っているわけではなく、人間の多様性から生ずる結果の多様性を、永遠に理解しようとしないメディアの姿勢が問題なのだ。ワクチンは効果と副作用を比較して、公共の利益が副作用を明白に上回る場合、それ
民間クリニックが他人の臍帯血を国に無届けで投与していた問題で逮捕された。面白いことに、メディアによって取り上げる角度が微妙に異なる。「再生医療安全性確保法」違反には間違いないが、無届けで行われたことが問題なのが、白血球の型(HLA)が合わないことが問題なのか、外国人相手に大金を巻き上げていたことが問題なのか、どのように臍帯血を入手したのか、臍帯血利用の手続きが公正に行われていたのか、視点が少しずつ違っているのだ。 これまでは法律がないので取り締まれなかったと言っていた官僚もいたが、どこからみても「詐欺罪」だし、有害事象や死者が出ていたなら、立派な「傷害罪・傷害致死罪」と思うのだが?そして、以前にも触れたが、このような行為は国の恥である。「日の丸」に泥を塗る行為である。他人の細胞を注射や皮下などに注入すれば、異物の侵入を感知した免疫系細胞がそれらを排除しようとするのは、少しでも医学を学んだ人
Nature誌に「Correction of a pathogenic gene mutation in human embryos」という論文がオンラインで公表された。受精卵に存在する遺伝性疾患の遺伝子異常部分を、ゲノム編集という手法を利用して正常遺伝子に置き換えることに成功したという話だ。私は、科学的に可能であったとしても、「受精卵や胎児の遺伝子に手を加えて治療する」という考えには反対である。今回の論文で、著者たちは、他のゲノムには影響を与えずに、病気に関連する遺伝子を正常に置き換えることが可能であると主張している。私は、どのような方法にせよ、外来遺伝子を導入する際には、リスクゼロにはならないと考えている。しかし、たとえ、彼らが正しく、リスクゼロであっても、このような方法で治療する必然性があるとは思えない。 異常遺伝子を、ゲノム編集という方法で置き換えて正常にする以上、母親、あるいは、
タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(Times Higher Education)が世界大学ランキングを公表した。日本では意図的かどうかわからないが、THE世界大学ランキング日本版がメディアで取り上げられているようだ。目を背けたくなる気持ちもわからないわけではないが、日本の大学の世界ランキングは目を覆いたくなるような状況となっている。 1.オックスフォード大学 (イギリス) 2.カリフォルニア工科大学 (アメリカ) 3.スタンフォード大学 (アメリカ) 4.ケンブリッジ大学 (イギリス) 5.マサチューセッツ工科大学 (アメリカ) 6.ハーバード大学 (アメリカ) 7.プリンストン大学 (アメリカ) 8.インペリアルカレッジロンドン(イギリス) 9.スイス工科大学―チューリッヒ(スイス) 10.カリフォルニア大学バークレー校 (アメリカ) 10.シカゴ大学 (アメリカ) と多少の上下はあ
オンコセラピーサイエンス社を通して抗議したところ、下記の返答がきたとのことだ。 (1)辞任した場合には、辞任した側の話を聞けば十分 驚きの回答だが、これが日経の方針だそうだ。会社関係の皆様、この言葉を重く受け止めて対応する必要があります。私が医療イノベーション推進室長を辞めた時、当時の官房長官は「給料がいいからアメリカに行くのでしょ」と私にとっては腹立たしいコメントし、それが記事になった。この場合、辞めた側(私)のコメントはありません。見事な二重基準ですね。メディアに対する不信はこのようにして醸成されるのです。 しかし、会社を辞任しようとしている人、辞任するかもしれない人にとっては朗報です。あなたの言い分だけを記事にしてくれるメディアがあるのです。大いに活用しましょう。 (2)すでに私の下記ブログの批判があったので、削除するとそれが理由と思われる。すでに掲示板に出ているので、ブログでの批判
今年の締めくくりも、また、新たな免疫療法だ。今日発刊の「New England Journal of Medicine」に「Regression of Glioblastoma after Chimeric Antigen Receptor T-Cell Therapy(キメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法によるグリオブラストーマの縮小効果)」という論文が掲載されていた。IL13Ra2というグリオブラストーマ(最も悪性度の高い脳腫瘍)で特異的に発現している分子を標的にした新規免疫治療法の速報だ。バイデン副大統領は、このグリオブラストーマによってご子息が亡くなられたことで、がん対策「Moonshot」計画を率いることになった。 キメラ抗原受容体T細胞とは、がん細胞特異的な分子を認識する抗体分子を、T細胞の表面に発現すると共に、T細胞の持つ細胞傷害機能を保持したT細胞だ。図には黄色と赤色の二つ
今、羽田空港にいる。ようやくシカゴに戻ることができる。今回は、がんプレシジョン医療を実現化するために、多くの人たちに会って、協力をお願いした。しかし、具体化してきた場合には、シカゴから指示を出すだけでは済まない。この5年間、物理的に離れていることによって、多くの問題に直面した。一たび、軌道がずれると、それを修正するには、とてつもない大きなエネルギーが必要となる。したがって、お願いした人たちにすべて任せることなく、陣頭指揮を執る覚悟で臨んでいる。しかし、連日の外食で、体重が増えてしまった。血糖を調べるのが怖いくらいだ。明日からは、しっかりとダイエットしなければ。 そして、表題の話題に移りたい。シカゴに移った後も、友人・知人や患者さんから、がん治療に関して相談を受ける機会は多い。そして、この出張中には、中国の知人から、彼の友人が日本で受けようとしている免疫療法に関しての相談があった。その医療機
一昨日午後は、がん研究所の研究発表会と忘年会に参加してきた。プレシジョン医療研究センターの特任顧問としての参加だ。1989-1994年の5年間生化学部長として在任していたので懐かしい。私の知っている人たちはかなりの年齢となっているが、顔を見ると当時のことが脳裏に浮かぶ。 当時、元旦以外は働き続けるという密度の濃い生活をしていた。今で言えば、完全なブラックだが、この姿勢が日本の戦後を立て直してきたのだし、私たちは世界と競ってきた。その当時は、猪突猛進で走ることのできる若さがあった。周辺には、今でもそうだという声があるが、昔の馬力は猪だったが、今の馬力は、せいぜいミニピッグ程度だ。 がん研究所時代に辛苦を共にした(自らはそれを望んでいなかった人もいるだろうが、私の研究室で生き残った人は、辛苦を共にしたと思っていると信じたい)研究者の多くが、今は教授や研究室のトップとなり、全国で頑張ってくれてい
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