サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
iPhone 16e
www.spf.org
トランプは、ロシア・ウクライナ間の停戦合意を実現し、中東紛争も収束させたいと、たびたび訴えてきた。できるだけ早く、ロシアとウクライナ双方による殺し合いを終わらせたいということも毎度強調している。出口が見えないまま、無期限に軍事援助を提供し続けるというバイデンの政策に対する忌避感だけではなく、利害不一致のために大規模な殺戮が続けられることに対する嫌悪感があるように思われるし、ノーベル平和賞を意識した言動の可能性もある。 トランプは、外交の文脈においては「アメリカファースト」という言葉よりも、「力による平和」という言葉を好んで使う。ここでいう「平和」は、第一義的にはアメリカの平和であり、アメリカが圧倒的な軍事力をもつことによって外敵からの武力攻撃を抑止することを意味するが、それはアメリカが関与している現在進行中の欧州と中東の武力紛争を終結させ、アメリカの関与を終わらせることも含んでおり、一国主
2023年6月の民間軍事会社ワグネルによるモスクワ郊外での反乱からおよそ一年後の2024年7月28日、マリ北部でワグネルの残党50名以上が反政府組織の襲撃を受け死亡した[1]。ワグネルは創立者プリゴジンの指揮下でシリア・ウクライナからアフリカへ版図を広げ、軍事支援から情報操作、選挙介入、鉱石採掘、そして飲食産業までと多岐に活動を展開してきた[2]。このハイブリッド戦の代表的な存在は、プリゴジン亡き後アフリカでどのように変革してきたのか。そしてそれは今後のアフリカの情勢にどのような影響を及ぼしていくのか。本稿は2023年後半以降の情報をもとにロシアのアフリカ介入の今後を読み解く。 ワグネルから「アフリカ部隊」へ ロシア政府にとって、ワグネルのような民間軍事会社は、人権侵害など国際法に触れる行為を犯しても公的責任を逃れられる利便性があった。しかしワグネルの活動が拡大し、その扱いをめぐって軍部と
11月5日に行われた2024年米大統領選挙は、予想外に短期間で決着がついた。大統領選挙は接戦状態にあったことから、筆者を含めて多くの識者が、選挙後に混乱が起こる可能性を指摘していた。大統領選挙の結果を決めるとされた接戦7州についてみると、たしかに州ごとの得票率の差は多くの場合は2%未満で接戦だった。だが、7州全てを共和党のドナルド・トランプがとった結果、勝者総取り方式の故に選挙人数で予想外の差がついた。出口調査の結果を見ると、9月、10月に投票先を決めた人は民主党のカマラ・ハリスに投票する比率が高かったものの(9月:54%対42%、10月:47%対40%)、前週に投票先を決めた人は42%対54%、直前の数日に決めた人は41%対47%で、トランプに投票した人が多く、選挙直前の動員の点でトランプ陣営の方が勝っていたのかもしれない1。 ハリスが敗北した理由については様々な仮説が提起されている。そ
(詳細)2016年10月25日開催/動画公開:2016年12月9日 The Honorable Cliff Stearns Former Member of the United States House of Representative (R-FL, 1989-2013) The Honorable Jason Altmire Former Member of the United States House of Representative (D-PA, 2007-2013) Dr. Toshihiro Nakayama (Professor, Keio University)
今年8月に、ここ「アメリカ現状モニター」で公開した拙稿の最後で、「ハリスが政治家として絶対に譲れないものは何なのか。なぜ検事から政治家になったのか。どうして大統領になりたいのか。「哲学」と「物語」が見えないまま、「反トランプ」目的のためだけに神輿に担がれることは、彼女のためにもアメリカの民主主義のためにも、望ましくない。シカゴの民主党大会でその真価が問われる」と書いた1。 しかし、民主党大会で十分にそれは可視化されず、ハリス陣営はその後の本選でも無理に可視化させない戦略をとった。そこからは、ハリスが3つの内的な悩みを抱えながら本選を強いられている姿が見える。①予備選を経ていないこと ②人種属性問題 ③ バイデン政権である。これらは相互に複雑に絡んでいる。 予備選挙のない日本ではアメリカの予備選は「予選」程度に思われることが少なくない。しかし、予備選は単純な勝敗以上の重要性がある。それは政策
筆者にとっては恒例の共和党支持者同窓会が8月に中西部アイオワ州で開かれた。今回も同じく、主流派、キリスト教右派、トランプ支持者のMAGA派、さらにリバタリアンとの会合である(前年の会合についてはこちらを参照)。 今回の最大の話題は、隣接州ミネソタの州知事が民主党副大統領候補に選ばれた件だったが、共和党内のゴシップは一通り包み隠さず共有し合う慣例で、今回もここに書きにくい話ばかりだった。「オバマが痩せているのは麻薬中毒に違いない」という類の滑稽な話から(ケニアのルオ族は痩せ型の遺伝子)、鋭い連邦政府批判まで彼らの議論には幅がある。議論は知的で陰謀論の飲み会ではない。主催者はプリンストン大学卒・イェール大学ロースクール出身の弁護士で、ロースクールではクリントン夫妻と同級生だったが党派は正反対だ。ティム・ウォルズについては「ハリスの父親同様、共産主義者だ」から「中国の代理人だ」まで、飛び出す情報
(前回論考から続く) 前回述べたようカマラ・ハリスの3つ目の悩みは「バイデン政権」の現職の責任者であるということだ。現職は新規の政策案を訴えると相手側に「それなら今、お前の政権でそれを実行すればいいだろ」と攻撃されるのは常だ。現職大統領なら実績を示した上で「さらに時間が要るのでもう1期」と反撃できる。しかし、副大統領は政権で何の力もないのに一蓮托生にされる。TVディベートで有利に運んだはずのハリス陣営が不愉快だったのはトランプの最後の一撃だった。 「彼女は、こうする、ああする、素晴らしいことをすべてするつもりだ、と言っていた。なぜ彼女はそれを実行しないのか?彼女は3年半も政権にいる。国境を修復するのに3年半あった。雇用や、私たちが話したすべてのことを実現するのに3年半あった。なぜ彼女はそれを実行しないのか?彼女は今すぐ退陣すべきだ」 党大会でのヒラリー・クリントンの登壇もハリスには可哀想だ
大統領選挙でハリスが勝利した場合、ティム・ウォルズはジョージ・H・W・ブッシュ副大統領(後に大統領)以来、中国に住んだ経験のある初の副大統領となる。「父ブッシュ」は米中国交正常化前に米中連絡事務所長として北京に赴任し「自転車に乗る大使」の異名もあるが、年齢はすでに50歳で外交的な駐在であった1。 ウォルズは25歳の若き教員として中国に住み中国人の教え子を受け持った。多感な時期の「国益抜き」の一市民の交流であり、人格形成に多大な影響を与えた。中国経験はウォルズの人生を定義する「物語」になった。ネブラスカ州の高校教員に戻ってからも、中国に生徒を送り出すプログラムを夫人と二人で作り上げ引率で中国を頻繁に訪れた。まさに生活に根ざした中国通で、米中双方に中国に絡んだ教え子がいる。 連邦下院議員になってからのウォルズはペローシ下院議長に抜擢されチベット訪問議員団の「案内役」も務めた。その中国経験には、
「物語候補」には熱狂と胡散臭さが同居する。オバマもそうだった。だが、それは「物語候補」の宿命であり、「物語」が前提になっていることの爆発力を毀損するほどの懸念材料ではない、はずである。「はず」というのは、強い「物語」を持つ候補者には、「苦悩」➡︎「成功」への脱皮方程式にモデルの違いが存在するからだ。オバマのケースで上首尾にいったからといって他の政治家でもそうとは限らない。 オバマの場合、「物語」の苦悩の核心は人種をめぐる苦境(根無草の多人種・多文化の悩み)だった。その末に、シカゴでのコミュニティ活動で黒人社会に包まれ、ハワイやインドネシアを捨てて「シカゴ人」になることを決める。また、白人祖父母に育てられ、アジア人や白人と恋愛してきたオバマは、サウスサイドの黒人女性ミシェルとの結婚により「はれてアメリカ黒人になることを選ぶ」。だからオバマの成功への「脱皮」は共感を集めた。 共和党副大統領候補
2024年は世界人口の半分以上が投票すると言われる「選挙イヤー」である。アフリカでも全54カ国のうち約3分の1にあたる19カ国で選挙が予定されている。近年アフリカ諸国では、過激派組織の台頭、クーデターの多発・再発、そしてマリなどの不安定地域から撤退した国連平和維持活動(PKO)や旧宗主国フランスに代わるロシアの進出などが顕著となっている。これらは民主制度の後退とも捉えられる。そうした状況のアフリカで、何が選挙の焦点となり、その結果はどのようなものが予測されるだろうか。そしてそれはアフリカの安定化と世界情勢にどのような影響を与えるだろうか。本稿では今年のアフリカでの選挙の動向と、地域紛争や国際政治との関わりを論ずる。 図1:2024年に選挙が予定されているアフリカ諸国 出典:Joseph Siegle and Candace Cook, “Africa’s 2024 Elections: C
スーダンでは、2023年4月にスーダン国軍(SAF)と準軍事組織(RSF)との間で軍事衝突が発生した。以降、15ヶ月が経過するが、収束の目処は立たず、過去40年間で最も深刻といわれる人道危機が発生している。しかしながら、国際社会のスーダンに対する関心は低く、深刻な人道危機が放置された状態が続いている。現在、スーダンで何が起こっているのか、また解決の道はあるのか。スーダンにおける軍事衝突と人道状況の現状と紛争解決の阻害要因に触れるとともに、今後の対応策について検討する。 軍事衝突から現在までのプロセス 2023年4月のSAFとRSFの軍事衝突は、政府の軍事組織に属する両者の統合問題をきっかけに発生した。SAFとRSFでは、兵員や武器の量および質の点でSAFが圧倒的優位に立つと考えられたため、戦闘は数週間、長くても2~3ヶ月以内にSAF優位で終結するとみられていた。しかし、予想に反し、RSFの
日本とフィリピンは歴史的に緊密かつ友好的な関係を構築してきたが、防衛レベルの関係は近年になって加速度的に強化した[1]。2024年7月8日に行われた第2回日比安全保障閣僚会合(2+2)の結果について、日本の防衛政策にとって特筆できる事項は、部隊間協力円滑化協定(RAA: Reciprocal Access Agreement)への署名に加えて、防衛装備・技術協力、政府安全保障能力強化支援(OSA: Official Security Assistance)の継続と強化について合意したことだった。すでに日本はフィリピンに、2014年に見直された防衛装備移転三原則の初のケースとして、2023年10月にFPS-3ME対空監視レーダー・システム(Air Surveillance Radar System、以下「警戒管制レーダー」)[2]、2024年4月には移動式の警戒管制レーダーであるTPS-P1
長らくアメリカ民主党内でくすぶっていた新しい指導者への待望論は、バイデンという蓋が取れたことで溢れ出し、内部で混乱すると思われていた民主党がハリス支持で結束した。2019年暮れに民主党予備選から早々と撤退したハリスには、副大統領就任後もポジティブなイメージが乏しかったが、いまや党内にある種の熱狂の渦を巻き起こし、ヒトと資金を引き寄せている。民主党が担げる大統領候補の中で一番バイデンの選挙基盤を引き継ぎやすく、その意味で他の候補より勝算が相対的に高いと目されるハリスに民主党幹部や有力支持者らが相次いで支持を表明し、民主党の指名を獲得した。 勢いを得たハリスがティム・ウォルズを副大統領に指名し、トランプと渡り合えるのではないかという期待が高まって、一部の接戦州では巻き返しも伝えられているが、本選挙で勝てるかどうかは引き続き予断を許さない。ハリスが本選挙まで現在の熱狂を沸点で維持できるかどうかは
昨日までハリスの悪口しか言ってなかった民主党関係者が鮮やかなまでに一転して、ハリスが最高の大統領候補だと言い出したことは諸外国に戸惑いを与えている。ハリスがバイデンの手前、有能さを隠していたのか、ハリスの魅力に突然民主党とリベラル・メディアが目覚めたのか。一糸乱れぬ「切り替え」は唖然とするほどのものだ。だが、カマラ・ハリスへのバイデンからの大統領候補「禅譲劇」、いわばハリス一本化とハリス盛り上げ(ハリスをめぐる否定的言説のタブー化)は以下の3つの理由により成立している。 バイデンを最後まで支え続けた左派の民主党ハイジャック継続の計算 打倒トランプの接着剤効果(特に暗殺未遂による神格化とヴァンス指名) 予備選なし本選からの突如スタートによる全党およびメディアでの盛り上げ 先入観を排除しておく必要があるのは、候補者個人の実力と誰が候補者として民主党(あるいは党内イデオロギー的、政策的に多様な各
2021年1月20日、大統領就任式で司会のエイミー・クロブシャー上院議員が宣誓に臨むバイデン政権の副大統領をこう紹介した。 アフリカ系と共に「アジア系」という文言が入ったことは、小さいようで大きな進歩だった。ハリスがインド系移民一世の娘でもあることが、黒人社会に動揺を与えていたからだ。かつてバラク・オバマにかけられたのと同じ嫌疑、すなわち「十分に黒人か(ブラック・イナフ)」という問いが一部黒人社会では首をもたげた。筆者はバイデン政権がこの「マルチレイシャル(多人種)」問題をどう扱うのか固唾を飲んで見守ってきた。 オバマは母親が白人だった。黒人の血が一滴でも入ると白人に見做されることはない。オバマは青年期まではハワイとインドネシアで「無人種」的な感覚で過ごし、大学進学で本土に移ってからは「黒人」に覚醒していった。それに対して、両親が共にマイノリティのハリスは、両親の人種ルーツに平等に価値を見
試しに「ラストベルト」と検索してみると、次々と検索結果が表示される。「錆びた工業地帯」とも訳されるこの語は、2016年の米大統領選挙を説明するキーワードとして一気に認知度が上がった。トランプ現象の震源地。ラストベルトに住む「忘れられた人々(forgotten people)」の叫びをただ一人聞き取ったのはトランプ候補だったという説明。この言説を説得的に裏づけたのがラストベルトの叙事詩、J・D・ヴァンスの『ヒルビリー・エレジー(Hillbilly Elegy)』(2016年)だった。 同書冒頭には次のような一節がある。「僕は白人かもしれないが、北東部のワスプの一員とは違う。僕は大学をでていない何百万といるアイルランドからきたスコットランド系白人労働者階級のアメリカ人の一員だと感じている。彼らはずっと貧困のうちに暮らしてきた ... 普通のアメリカ人は彼らをヒルビリー、レッドネック、もしくはホ
モディ常勝神話の終焉 ナレンドラ・モディが初めて負けた。しかしモディ率いる与党連合は辛うじて勝利を収めた。2024年6月4日に開票された第18次インド連邦議会議員選挙(総選挙)の結果を端的に表現するならば、こういうことになるだろう。 これまで、選挙におけるモディの強さは折り紙付きのはずだった。2001年に西部グジャラート州の州首相に就任すると、翌2002年の州議会選挙から3回連続で、自らのインド人民党(BJP)を州議会の単独過半数に導いた。2014年総選挙において、国政で10年間野党に甘んじていたBJPの首相候補として登場すると、BJPは党史上最多の282議席を獲得した。2019年に現職首相として戦った総選挙では、その記録をさらに更新する303議席という圧勝ぶりだった。今次総選挙直前の2月の連邦議会でモディは、「BJPだけで370議席、与党連合の国民民主連合(NDA)で400議席を獲得する
当財団の「台湾海峡危機に関する机上演習」事業(2022年度)では、米国の研究者による台湾海峡危機に関するシナリオを基に日本において机上演習(Table Top Exercise:TTX)を実施し、台湾海峡危機が起こった際の課題抽出を行いました。特に、日本を含む関係国の安全保障政策の決定プロセスや軍事作戦上の問題点を洗い出し、その政策的示唆について報告書としてまとめました。 報告書のダウンロードはこちらからできます。
ネットワーク境界機器を狙う中国によるサイバー攻撃 2019年末に中国武漢から始まった新型コロナの流行により、多くの国で緊急事態の宣言やロックダウンが行われ、世界中で働き方が大きく変わることとなった。ロックダウンにより外出制限が行われ、また、緊急事態宣言により外出自粛が促されたため、多くの国でビジネスを継続するためにテレワークが一般化した。テレワークは、組織内部のネットワークをインターネット側にさらすリスクもあるため、政府機関等は導入に慎重であったが、コロナ禍で出勤ができない以上、背に腹はかえられなかった。各企業や行政機関では、テレワークを実施するために、VPN(仮想専用通信網)を構築することによって、家庭や組織外からインターネットを経由して組織内の専用ネットワークにアクセスする場合においても一定の安全性を確保することにした。 このようなIT利用の変化を、サイバー攻撃者も見逃すはずはなく、2
2023年10月以降の中東でのテロや紛争の激化などの結果、国際社会におけるウクライナへの関心は顕著に低下したようにみえる[1]。国際世論の支持とそのもとでの支援が頼みの綱だったウクライナにとっては危機的な事態だといえる。 さらに、ウクライナへの武器支援を主導してきた米国では、共和党と民主党の対立により、バイデン政権が提案したウクライナ支援の予算を連邦議会が承認できない状況が続いている。EU(欧州連合)においても、ウクライナ支援パッケージへの合意がハンガリーの反対により難航した。「支援疲れ」が深刻化しているとの指摘も多い[2]。 日本では岸田文雄政権が、特にG7の枠組みにおいて米欧諸国と足並みを揃え、「今日のウクライナは明日の東アジア」[3]かもしれないとの認識のもと、世界のどこであっても力による現状変更は認められないとの立場を明確にし、大規模な対ウクライナ支援と厳しい対ロシア制裁を続けてき
2016年大統領選挙で多くの予想を裏切って当選したドナルド・トランプは、選挙戦の最中から移民問題とアメリカ=メキシコ国境地帯の治安問題を取り上げ、南部国境地帯に壁を建設すると発表した。民主党側はこれに強く反発し、2020年大統領選挙で勝利したジョー・バイデンは就任演説で壁の建設は断じて行わないと宣言し、トランプ政権期の移民政策を撤回する姿勢を明確にした。だが今日、バイデン政権がトランプ流の移民政策を採用し、予期せぬ形で移民制度改革が実現するのではないかとの予測もなされることもある。実際には、2024年大統領選挙に出馬しているトランプが移民問題を争点として積極的に取り上げる姿勢を示しているため、二大政党の政治家は、あえて対立的な姿勢を示し続けると考えられるので、移民制度改革の実現には困難が予想される。とはいえ、1986年以降進展の見られなかったこの問題について変化の兆しが見えたことは、米国政
12月10日-14日に行われたニューヨーク・タイムズとシエナ大学の共同世論調査で、イスラエル・パレスチナ衝突におけるバイデン政権の政策については支持が33%、不支持が57%という結果が示された。しかも同世論調査によるバイデンとトランプの比較で、イスラエル・パレスチナ衝突をどちらがうまくやると思うかについて、バイデン38%、トランプ46%とトランプが優位な結果が出た。そして、同世論調査で、大統領候補として投票する先は、トランプ49%、バイデン43%とトランプがリードしている。共和党優位の米国の選挙人団制度の仕組みを考慮すると、全米の世論調査が同じでも共和党候補が優位になる傾向があり、選挙は約1年後とはいえ、バイデン陣営にとっては、厳しい調査結果が示されたといえる。 この世論調査では、回答者の44%が、その時点ですでに2万人を超えるガザの民間人の死者が出ていた状況について、イスラエルはハマスに
台湾は中国にとって重要な戦略的、軍事的価値を有している。多くの信望者により支えられるこの自明の理は、台湾を武力あるいは狡猾な手段で統一するという中国政府の断固たる政策を合理化する大きな構想に資するものである[1]。こうした地政学的教義は、なぜ習近平が中華民族の偉大な復興のための前提条件が「統一」であると信じているのか、という問いにも部分的に答えるものである。これは中国の指導者達が台湾を巡っていかに強固に戦うつもりであるのかを明らかにし、また、万が一台湾が共産主義の手に落ちた場合は、中国がどのように台湾を軍事化するかという示唆を含めた信念でもある。 中国は台湾の民主主義に対する軍事的圧力を強め続けており、また、台湾海峡有事への懸念が増しつつあるため、台湾統治のための中国政府の追求を支える地理空間を理解することがきわめて重要である。これは米国政府やその他の同盟国政府の政策立案者が台湾の地理的重
2024年アメリカ大統領選挙の予備選挙のスタート(共和党アイオワ党員集会:2024年1月)が3ヶ月後に迫っている。2024年予備選挙目前報告シリーズの3本目以降は共和党の動向について確認する。なお、民主党の予備選挙改革については「報告①」、民主党の動向については「報告②」、さらにトランプ再出馬の含意と共和党各候補については「報告④」をご覧いただきたい。 ハマスによる対イスラエル大規模攻撃に端を発する中東情勢はアメリカ政治の大きな「ゲームチェンジャー」となっている。攻撃以前(before)には、下院外交委員会の上級幹部曰く、アメリカの主要な外交課題は1.ウクライナ、2.中国、3.イランだったように、共和党党内の関心事もこれに概ね沿っていた。ハマスによる攻撃後(after)は言うまでもなく、その限りではない。他の事象の報道量が低下している「量的問題」だけでなく、後述するように共和党内のウクライ
2024年アメリカ大統領選挙の予備選挙のスタート(共和党アイオワ党員集会:2024年1月)が3ヶ月後に迫っている。本稿では民主党の動向について確認する。なお、民主党の予備選挙改革については「報告①」、共和党の動向については「報告③」をご覧いただきたい。 アメリカの9月第1月曜日は「レイバー・デー(労働者の日)」だ。政治的には「選挙の季節」キックオフの日でもある。本選挙年なら夏の党大会後、11月の投票前の本選挙のスタートを意味する。本選前年なら党員集会や予備選挙のキャンペーンの本格化の節目だ。労働者の祭典なので民主党側でのイベントが多いが、「レイバー・デー」の土日(レイバー・デー・ウィークエンド)は、共和党でも大統領候補だけでなく地方政治の候補者が顔見せをする政治イベントが目白押しになる。 今回、筆者は中西部のイリノイ州、アイオワ州を行脚し、久しぶりにアイオワのシーダーラピッズ空港から南下し
近年、安全保障のフィールドで陰謀論が一つの脅威として注目を集めている。本稿では、海外および日本の陰謀論の情勢を概観し、陰謀論がなぜわれわれの安全保障を脅かす運動とみなされているのか、なぜ対策を講じねばならないのかを認知戦の観点から分析する。 相次ぐ体制破壊的事案 2022年の末から2023年の年明けにかけて、陰謀論の影響を受けたと考えられる体制破壊的な事案がドイツとブラジルで連続して起こっている。 2022年12月7日、ドイツ連邦検察庁は、テロ組織のメンバー22名と支援者3名の容疑者を逮捕した。この組織は複合的なグループから構成されていたが、主に極右組織ライヒスビュルガー(Reichsbürger:ドイツ語で帝国臣民を意味する)や反コロナ政策運動グループのクエルデンカー(Querdenker:英訳するとLateral thinkerとなる。ドイツ語で、型にはまらない考え方をし、それによって
米国防長官が2022年に米議会に提出した「中国をめぐる軍事力と安全保障の進展に関する年次報告書(以下、「年次報告書」)」は、それ以前の年次報告書に比べ、中国人民解放軍(中国軍)の着上陸侵攻能力に関する評価について警戒感を高めた。数年にわたって固定化していた評価(用語の使用)に変化の兆しが現れたのは2021年版であったが、2022年版では行数は少ないものの、大きな変化を読み取ることができる。 本稿では中国の水陸両用作戦能力(両用戦能力)の最近の進化について、1990年代以降の中国海軍の艦隊編成の変化を軸に考察していく。 中国軍の台湾侵攻能力は向上している 後に第3次台湾危機と呼ばれる1995年7月と1996年3月の中国軍による一連の軍事演習の後も、クリントン政権が中国への関与方針を維持した一方で[1]、米国議会は中国軍事力強化への関心を高めた。米国議会が国防長官に中国の大戦略、安全保障戦略、
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『ホーム | 笹川平和財団 - THE SASAKAWA PEACE FOUNDATION』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く