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大そうじへの備え
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<昨今のいわゆるウォーキズム(日本の文脈に合わせると意識高い系とでも訳すべきか)へのカウンターとして「贅沢品としての信念」(luxury beliefs)という概念が話題だ。ようやく米国の右派が、左派と勝負できるだけのナラティヴを手に入れつつある......> 米国で「贅沢品としての信念」(luxury beliefs)という概念が話題になっている。元は2019年ごろににちょっと話題になったらしいのだが、私は見逃していた。それが提唱者のロブ・ヘンダーソンが最近自伝「Troubled」を出したこともあって見直され、昨今のいわゆるウォーキズム(日本の文脈に合わせると意識高い系とでも訳すべきか)へのカウンターとして持ち出されているようだ。 ヘンダーソンの顔を見ると分かると思うが、ヘンダーソンという欧米系の姓の印象に反して、彼はアジア系米国人である。彼の母親は韓国からカリフォルニアに渡り、大学を中
マスクの強制に激しく抵抗する反マスク派の一部の主張が変わってきた...... REUTERS/Henry Nicholls <反マスク・反ワクチン派がソーシャル・ディスタンスを主張しはじめた。マスクやソーシャル・ディスタンスを正当化するような別の「陰謀論」が意図的に流されたのか?> 最近VICE誌に面白い記事が載っていた。「反マスク論者、マスクをする準備中──ワクチン接種者から身を守るために」(Anti-Maskers Ready to Start Masking--to Protect Themselves From the Vaccinated)と題するもの。 反マスク・反ワクチン派が主張しはじめたソーシャル・ディスタンス 新型コロナウイルス対策としてのマスクの強制に激しく抵抗する反マスク派、そしてワクチン接種に強く反対する反ワクチン派がいて、この二つがかなりかぶっていることはよく知ら
<匿名性を保つのは容易ではなく、本気でやるなら偏執的な配慮が必要だ。そして、その上で匿名を使う場合は、いわば「伝家の宝刀」として使ってもらいたい> 私はTorやI2Pを始めとする、ネット上での身元を隠す匿名化技術に関心があり、開発したり実際に使ったりもしているが、一方私自身がオンラインで何か情報発信するときは、基本的に実名で通している。それは、幸か不幸か個人的には匿名で書く必要があまりないということもあるが、どちらかと言えば倫理というより自衛の問題である。なまじ匿名だと思うと心理的なガードが下がり、不用意なことを書きがちだからだ。 しかし、権力者の不正を内部告発する場合など、本当に匿名性が必要な局面というのもある。匿名化技術はまさにそういったケースのために開発されているのだが、それでもユーザの素性がばれてしまったことが無いわけではない。ただ私が知る限り、これまで技術的な欠陥のせいで素性が暴
2011年、ウォール街で行われた「ウォール街を占拠せよ」運動。半年ほどで沈静化した。 REUTERS/Joshua Lott <ネットが社会変革をもたらす、とはかねてから言われてきたが、ネット発の社会運動の実体について研究が進んでいる......> 一昔前、TwitterやFacebookを始めとするソーシャル・メディアが社会変革をもたらすのではないかと考えられていたことがあった。例えば、2011年前後には「アラブの春」が訪れ、長年鉄の支配を布いてきた中東の長期政権が次々と倒れていったが、その背景には、ソーシャル・メディアによる反政府運動の動員や組織化が影響したのではないかと言われていた(これには懐疑的な意見も多々ある)。 その後10年近く経って分かることは、ある意味当たり前かもしれないが、ウェブが社会を動かすこともあれば、動かさないこともあるということである。私の個人的関心事で言えば、ア
<ウェブやインターネットは単一で万国共通のもの......という状況は、ここ数年で大きく変化しつつある。国単位で分割されつつ> www.yahoo.co.jp のようなアドレスを、我々は毎日目にしている。先頭のwwwが何を示しているのか、もはや気にもしないだろう。もちろんWWWというのは、World Wide Webの略である。 我々は最近まで、ウェブがワールド・ワイドであることを疑いもしなかった。日本にいようが、アメリカにいようが、ドイツにいようが、シンガポールにいようが、www.yahoo.co.jp とウェブブラウザに入力すれば、同じヤフーのウェブサイトを閲覧できると確信できたのである。 中国ではTwitterやFacebookが使えず、トルコも...... しかし、ここ数年で状況は大きく変化しつつある。有名な例として、中国でWikipediaを見ようとすると、政治絡みの一部のページ
<近年の行動経済学や認知心理学の発展は、人間の思考が偏っていて扇動に引きずられてしまいがちであることを明らかにしたが、そろそろ民主主義のあり方を真面目に議論すべき時期に来ているのではないだろうか> イギリスの元首相ウィンストン・チャーチルは、民主主義に関して有名なコメントを2つ残した。よく知られているのは1947年に議会で演説した際の、「民主主義は最悪の政体と言える。これまでに試された他の全ての政体を除けば」というものだが、あまり知られていないもう一つは、「民主主義への最強の反駁は、平均的な有権者と5分間会話すること」だった。 チャーチルも喝破したように、民主主義が最善と考える人はあまりいない。ファシズムや独裁よりはマシ、という程度の消極的支持が大半であろう。そして、「平均的な有権者」である我々の(意志決定)能力は甚だ低い、というのが以前のコラムの結論であり、チャーチルの結論でもあった。
<我々は本来的にどうしようもなく偏っていて、インターネットがこの傾向を加速している。その我々が選挙権を行使する民主主義は ......> 前回のコラムで、「従来、子供は知的に成熟しておらず意志決定能力が低いという理由で投票権の年齢制限が正当化されてきたわけだが、実は大人もまともな意志決定能力があるか甚だ怪しいということが、データで立証されつつある」と書いた。これを読んで、では「まともな」意志決定能力とはどのようなものなのか、という疑問を抱いた方がいたと思う。 どういう条件が整っていれば「まとも」と納得できるのか ポイントは、「正しい」ではなく「まとも」というところである。宮崎駿は漫画「風の谷のナウシカ」の中で、登場人物の口を借りて「失政は政治の本質だ!」と喝破したが、残念ながら政治に限らず、間違った意志決定というのは往々にして生じるし、完全に避けることは出来ない。失敗は意志決定の本質なので
ベネズエラ - コロンビア国境で人道支援物資を搬入させたいベネズエラの野党支持者らとベネズエラ軍が衝突 2月23日 Marco Bello-REUTERS <ベネズエラはネット検閲と言われて思いつくようなことをすべて施行している。日本の今後を考えても、ネット検閲の危険に極めて鈍感なのは、重大な問題だと私は思う> 世界各国がどのように、あるいはどの程度インターネットの検閲を行っているかを調査しているプロジェクトがある。2012年に始まったOONI(Open Observatory of Network Interference)がそれだ。ちなみに、OONIはThe Tor Projectの一部である。 オープンと名乗ることから分かるように、OONIはOONI Probeというオープンソースのテストスイートを開発していて、これを調査対象の国にいる協力者が実行して調査を行っている。これにより、
<子供にも選挙権を? 「我々有権者の多くは政治に関してほとんど何の知識も無い」 という調査結果が出されている> アメリカにおいて、21人の子供が政府を訴える訴訟が始まった。 トランプ政権が地球温暖化を否定していることはよく知られているが、それによって被害を受けるのは子供世代であるとして、地球温暖化を促進する石油燃料の生産に必要な機材のリースの一時差止を求めるといった内容のようだ。ノーベル賞経済学者のジョゼフ・スティグリッツも、原告側を支持する意見書を提出している。 この種の訴訟は、裁判の勝ち負けよりも、ある社会問題に目を向けさせることを重視した、いわゆるパブリシティ・スタントであることが多いわけだが、それはそれとして、現時点の子供たちの未来の権利に関して、それをどう民主主義に取り込むかということについては、様々な議論がある。 子供に投票権を付与して、親が代理で投票する「デメーニー投票」 と
<トランプの演説の無意味な繰り返しの多さ、語彙の貧困さは、しばしば小学生並みと揶揄されてきたが、むしろそれこそが彼の強みなのではないか? 幾多の政治演説を分析した研究が発表された> ドナルド・トランプがビジネスの達人かについては議論の余地がある。しかし、おそらく史上最もローコスト・ハイリターンな投資の一つをやってのけたことだけは間違いない。 トランプが「Make America Great Again」というフレーズを商標登録申請したのは、ミット・ロムニーがバラク・オバマに敗れた2012年の米大統領選挙の直後のことだった。その4年後、わずか325ドルの登録料が、おなじみの赤い野球帽に代表される膨大なトランプ・グッズの売り上げや、世界最強の国の大統領の座に化けたのだ。 レーガンが大統領選で使った「Let's Make America Great Again」 今では短縮形のMAGAや様々なパ
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