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『マッドマックス:フュリオサ』75点(100点満点中) FURIOSA: A MAD MAX SAGA 24年オーストラリア/アメリカ 148分 2024/05/31公開 ワーナー・ブラザース映画 PG12 監督:ジョージ・ミラー 出演:アニャ・テイラー=ジョイ クリス・ヘムズワース アリーラ・ブラウン ≪『怒りのデス・ロード』から一転、スカッと復讐劇、ではない≫ ジョージ・ミラー監督による『マッド・マックス』シリーズの30年ぶりの復活となった前作『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(17年)は、デジタル時代にガチスタントとアナログスペクタクル、電車道の単純ストーリーによる一点突破型エンタメ映画として、世界中で大ヒットとなった。 その実質的な主人公、隻腕の女戦士フュリオサの若き日の15年間を描いたのがこの最新作『マッドマックス:フュリオサ』。シャーリーズ・セロンからアニャ・テイラー=ジョ
『オッペンハイマー』80点(100点満点中) OPPENHEIMER 23年アメリカ 180分 2024/03/29公開 配給:ビターズ・エンド ユニバーサル映画 R15+ 監督:クリストファー・ノーラン 出演:キリアン・マーフィ エミリー・ブラント マット・デイモン ≪映画史に残る重要作≫ 2023年の北米市場で『バービー』と並んで興行収入を押し上げる要因となった大ヒット作『オッペンハイマー』は、日本人にとってデリケートな問題である原爆をSNSの気軽なネタにした映画会社およびそれへの対処ミスにより、日本市場では公開前から「要注意案件」として扱われてきた。 配給会社はどこも手を挙げず、結局興収1400億円を超える大ヒット作なのに23年中の公開はかなわず。それどころか日本公開未定が長く続く異常事態となった。 やがて炎上を恐れぬ会社ビターズ・エンドが引き受けたものの、さすがに原爆投下の8月(本
『ゴジラ-1.0』90点(100点満点中) 23年/日本/125分 公開日:2023/11/03 配給:東宝 監督:山崎貴 出演:神木隆之介 浜辺美波 山田裕貴 ≪『シン・ゴジラ』を超える、タイムリーかつ熱いドラマ≫ ハリウッドとの間に大人の事情があるなどと言われるが、『シン・ゴジラ』から7年間も国産ゴジラ映画が作られなかった最大の理由は、あまりに『シン・ゴジラ』の評判が良すぎて、下手なものを作るわけにはいかなかった東宝サイドの責任感によるものだろう。 そして、それだけのことはあった。『ゴジラ-1.0』は『シン・ゴジラ』と比べても劣らない、むしろ部分的には上回るほどの映画作品であり、世界中のゴジラファンやハリウッド版のスタッフらに、日本の映画人の矜持を見せつけた恰好となっている。 戦後数年がたち、ようやく復興し始めた日本。特攻隊の生き残りである敷島浩一(神木隆之介)は、戦中の混乱の中で出会
『君たちはどう生きるか』55点(100点満点中) 2023年日本 124分 2023/07/14公開 配給:東宝 監督:宮﨑駿 ≪秘密主義がどんな結果となるか≫ 宣伝なし、予告編もあらすじも含めて事前情報なしという、宮﨑駿監督の長編復帰作品「君たちはどう生きるか」は、いかにも近年の宮﨑作品らしいパーソナルかつ静かな一本であった。 母親を火事で亡くしたマヒトは、戦争がはじまって4年目に父に連れられ、再婚相手が暮らす郊外の屋敷へと越してきた。軍需工場を営む父親は裕福で、屋敷には多くのベテラン使用人がおり、マヒトは戦中ながら何不自由なく暮らすことに。 そんなとき、妙に動きが人間臭いアオサギに導かれるように沼の近くまで歩いて行ったマヒトは、そのほとりに謎めいた塔を発見する。聞くと、亡き母の大叔父が建てたらしいが、その大叔父も含めてこの近辺では神隠しが続いているという。そんないわくつきの塔に魅せられ
『国家が破産する日』90点(100点満点中) DEFAULT 韓国/114分/ツイン/映倫:G 監督:チェ・グクヒ 出演:キム・ヘス | ユ・アイン ≪韓国の話だと思っていたら……≫ 韓国映画の『国家が破産する日』。なんだか、「韓国経済や中国経済が破綻する」系のトンデモ本を愛するネトウヨが喜びそうな邦題である。 現実は、どう考えても中韓より先に日本経済がぶっ壊れる勢いなのだが、率先してそれをやってる総理大臣を支持するくらい彼らの認知機能は衰えているのでどうにもならない。 一方韓国は『国家が破産する日』を作り、自分たちの現在の経済的苦境の遠因が97年の通貨危機にあり、それどころかそこで行われた売国的経済政策は、韓国のみならず現在の先進国に共通する問題であることまで示唆している。 まったくもって知的レベルも志の高さも現実の認識能力も段違いで、しかもあろうことかこのレベルの映画を、あちらは長編2
『スペシャルアクターズ』45点(100点満点中) 監督:上田慎一郎 出演:大澤数人 河野宏紀 ≪邦画界の悪いところが凝縮されている≫ 上田慎一郎監督は、300万円の製作費で31億円を稼ぎ出した『カメラを止めるな!』(18年)の生みの親である。『スペシャルアクターズ』はその次作と喧伝されている(間に「イソップの思うツボ」が公開されたが)が、これが『カメ止め!』を撮った監督の次の映画だとしたら、日本の映画界は厳しく批判されても仕方があるまい。 俳優の仕事だけでは食えずに困窮していた和人(大澤数人)は、弟の宏樹(河野宏紀)から「割のいい仕事をやらないか」と誘われる。じつは宏樹が所属する「スペシャル・アクターズ」なる俳優事務所は、演劇のスキルを生かした何でも屋。今回彼らはカルト集団に買収されそうな旅館を守るため「洗脳された女将を救ってほしい」との依頼を受けていたのだ。さっそく和人と宏樹は信者のふり
『ジョーカー』90点(100点満点中) 監督:トッド・フィリップス 出演:ホアキン・フェニックス ロバート・デ・ニーロ ≪現代社会への深刻なる警告≫ 『ジョーカー』は特殊な成り立ちの作品である。まず背景として、大成功を収めているマーベル・シネマティック・ユニバースに対抗したDCの似たような試みが、どうもうまくいってない状況があった。 そこでいったん、まずは独立した映画として完成度の高いものを作ってみようとの機運が関係者の間で高まり、本作の企画にゴーサインが出たのである。 題材として選ばれたのはバットマンシリーズの悪役ジョーカーだが、「とにかくいい映画作品を」ということで、この映画にコミックの原作はない。何度もだめだしされながら1年かけて書いた脚本があるだけだ。 中身は一応ジョーカーの誕生秘話ではあるが、漫画版にある「もともと売れないコメディアン」との設定も捨てた。だからこの映画のジョーカー
『ダンスウィズミー』85点(100点満点中) 監督:矢口史靖 出演:三吉彩花 やしろ優 ≪発想は100点≫ 矢口史靖監督は、日本映画界の中では突出してエンタメの才がある監督である。男子生徒にアーティスティックスイミング(シンクロ)をやらせたり、女子生徒にジャズをやらせたり、挙句の果てには航空機が離陸して着陸するだけの話を、圧倒的エンタメに仕上げてしまう。そのようなアイデアと演出力あふれる監督は世界的にも稀有であり、私のみならず多くの人が新作に注目している。 そんな彼が今回手がけたのはミュージカルコメディ映画。正直、ベタすぎてパッとしない。最初に聞いたときはそう思った。主演の三吉彩花が歌い踊る写真も、どこかチープで見る気を起こさせない。そんな風に感じていた。 しかしその思いはすぐに覆された。『ダンスウィズミー』はまぎれもない傑作であった。やはり矢口史靖監督作品にハズレなし、だ。 一流企業に勤
「note」 Facebookページ X @maedayuichi_ Instagram 週刊アサヒ芸能 隔週連載中 Front Japan 桜 出演中 時空旅人 連載中 最新更新分 5/30更新(5月第5週公開作品) 『マッドマックス:フュリオサ』←今週のオススメ 『FARANG/ファラン』 3/14更新(3月第5週公開作品) 『オッペンハイマー』←今週のオススメ 11/2更新(11月第1週公開作品) 『ゴジラ-1.0』←今週のオススメ 7/18更新(7月第4週公開作品) 『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』 7/14更新(7月第3週公開作品) 『君たちはどう生きるか』
『天気の子』40点(100点満点中) 監督:新海誠 声の出演:醍醐虎汰朗 森七菜 ≪元に戻った≫ 『君の名は。』は250億円という空前のヒットを記録したアニメ映画で、新海誠という、それまであまり知られていなかったアニメ作家の名前を一躍スターダムに押し上げた。 芸術性という意味でも、商業的な意味でも宮﨑駿やスタジオジブリの後継者を探していた東宝の関係者にとっては、まさに最高の"メジャーデビュー"だったといえるだろう。 その新作ともなれば、もう成功は約束されたようなものだ。 だが私のように、一抹の不安を感じていた人も少なくなかったろう。むろん、客は入る。それは間違いない。だが一方で映画は、製作期間や予算がしっかりつけば傑作ができるというものでもない。普段からそれを痛感する者にとっては『天気の子』は「やっぱりな……」と不安が的中した形になる。 高校1年生の帆高(声:醍醐虎汰朗)は、離島から東京へ
「シン・ゴジラ」90点(100点満点中) 監督:樋口真嗣 出演:長谷川博己 竹野内豊 ハリウッド版をすら凌駕する、これぞ2016年の日本にふさわしい新ゴジラ 私は「シン・ゴジラ」が完成した直後、その事をある制作スタッフから聞いた。やがて試写予定についても別会社のスタッフから知らされていた。だが結局、公開までに通常の大々的なマスコミ向け試写会は行われなかった。 あの庵野秀明総監督の事だから、完成といいつつポスプロの沼に嵌ったか、あるいは初号試写を見た宣伝チームが急きょ事前に我々に見せることをやめる判断をしたのか。いずれにしても映画ライターの間ではこういう場合、ろくな結果にならないとの経験則がある。 しかも、たまたま見に行った都心の映画館の入りがきわめて悪かった(上映10分前の段階でなんと私一人)事もあり、不安は増大する一方だったが、なかなかどうして、「シン・ゴジラ」は期待をはるかに上回る大傑
『ボヘミアン・ラプソディ』95点(100点満点中) 監督:ブライアン・シンガー 出演:ラミ・マレック ルーシー・ボーイントン ≪本年度ナンバーワン≫ クイーン最大のヒット曲「ボヘミアン・ラプソディ」を私は、以前から人類の最高到達点の一つと思っていた。そんな題名の映画が公開されるとなれば、いち早く試写室に見に行くほかはないわけだが、多くの批評家は本作が傑作になる可能性は低いだろうと見ていた。 なにしろ監督ブライアン・シンガーが問題を起こして最終盤に降板したというのだからひどい。こういうトラブルは作品にとって致命傷になることが少なくない。 ところがどうだ。この映画は、1年以上休んでいた当サイトを再稼働させる強烈なモチベーションを私に与えるほどの、とてつもない傑作であった。もちろん、2018年の『超映画批評』ナンバーワンである。まあ、更新じたいしていないので1位もクソもないだろという気もするが、
「テラフォーマーズ」5点(100点満点中) 監督:三池崇史 出演:伊藤英明 武井咲 原作を改変してわざわざダメにする愚 コミックス累計発行部数1000万部を超える超人気コミックの、満を持した実写映画化「テラフォーマーズ」は、私があるツイートをしてしまったせいで公開前から大荒れ模様となってしまった。誰も見ていないようなフォロワー数なのに瞬く間に何千もリツイートされ、いくつものメディアに引用されるとはツイッター初心者の私は予想もしなかった。 そもそも、別に映画の中身を具体的に批判したわけでもネタバレしたわけでもないのに、いつの間にか「前田が「テラフォーマーズ」を酷評した」などと報道されているのは大変心外である。私はツイッター上でこの映画を酷評などしていない。酷評するのは、今からこの記事で、である。 人口が増え続ける21世紀の地球。人類は火星移住のため、テラフォーミング計画を実行する。それはある
「トランスフォーマー/最後の騎士王」35点(100点満点中) 監督:マイケル・ベイ 出演:マーク・ウォールバーグ ローラ・ハドック 3歩進んで3歩下がる 「トランスフォーマー/最後の騎士王」は、「シリーズ最終章三部作の一作目」だそうだが、もはや変形メカたちがなんでここにいるのか、最終的に何をしたいのか、映画館に見にいく人の多くはすっかり忘れているのではあるまいか。 トランスフォーマーの故郷であるサイバトロン星が地球に接近、人類はいよいよ滅亡の危機を迎えた。頼みのオプティマス・プライムもあろうことか人類の敵となった。ケイド・イェーガー(マーク・ウォールバーグ)はオートボットのリーダーとなったバンブルビーらと最後の戦いに身を投じるが、すべてのカギを握っていたのは謎めいた英国紳士のバートン卿(アンソニー・ホプキンス)であった。 人類は何度助けられても機械生命体を信用せず、ディセプティコンもオート
「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」85点(100点満点中) 監督:ジョン・リー・ハンコック 出演:マイケル・キートン ニック・オファーマン 兄弟の直営店のハンバーガーを食べてみたくなる ファウンダーとは創業者、といった意味。つまりこの映画はマクドナルドの創業秘話を描いた企業ドラマである。日本の宣伝会社はその意味では「マクドナルドのヒミツ」みたいな副題をつけてもよかったし、その方が内容にも即しているわけだが、残念ながらそれはある理由から不可能である。 52歳になってもなかなか目が出ない野心家のレイ・クロック(マイケル・キートン)は、あるとき全く売れない自社のシェイクミキサーを大量発注してきたドライブインレストランに興味を持つ。さっそくマクドナルド兄弟が経営するそのレストランに出向いてみたレイは、彼らが発明した画期的な調理システムに衝撃を受ける。これは絶対ウケると見たレイは、しぶる兄弟
「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章」70点(100点満点中) 監督:三池崇史 出演:山崎賢人 神木隆之介 奇妙な映画ではあるが 「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章」は、実写映画化の発表からはじまり一つ一つビジュアルが発表されるたび、原作ファンの間では不安しか湧きあがらない話題の大型企画である。もっとも、誰が見ても東方仗助の髪型はじめ、静止画で見るとひとつも納得できるものがなかったのだから、それもやむなしであろう。 杜王町で暮らす高校生の東方仗助(山崎賢人)は、母(観月ありさ)と祖父(國村隼)の3人で仲良く暮らしている。あるとき彼の前に甥を名乗る年上の男、空条承太郎(伊勢谷友介)が現れ、仗助がジョセフなる老人の息子であり、自分と同じくジョースターの血統を継ぐものだと伝える。さらに承太郎は仗助のそばに立つ「悪霊のようなもの」の正体を彼に教えるのだった。
「ハクソー・リッジ」85点(100点満点中) 監督:メル・ギブソン 出演:アンドリュー・ガーフィールド テリーサ・パーマー 日本人必見 価値観を揺るがされる戦争映画 「プライベート・ライアン」(98年)並の衝撃だと業界人の間で話題沸騰の戦争映画「ハクソー・リッジ」は、歴史に残る大激戦となった沖縄戦・前田高地の戦いにおける、奇跡の実話の映画化である。 汝、殺すなかれ──聖書の教えを忠実に守り生きてきたデズモンド(アンドリュー・ガーフィールド)は、戦争が起き仲間や弟が次々戦場に向かうのをみていてもたってもいられず自分も志願する。自然の中で遊び育ったデズモンドは運動神経がよく、訓練でも抜群の成績を残したが、小銃訓練の時にトラブルを起こす。彼には「人殺しの道具である銃には触れない」という、絶対に曲げられない信念があったのだ。 映画の冒頭には戦場の場面。次々映る遺体の山。とくに目を引くのは、生気を完
「BLAME!」85点(100点満点中) 監督:瀬下寛之 声の出演:櫻井孝宏 花澤香菜 Netflixとポリゴン・ピクチュアズの挑戦 弐瓶勉の定評あるサイバーパンクコミックをアニメ化した「BLAME!」は、極めて新しい挑戦に満ちた映画作品である。 ネットワークが極限まで発達し、その中でシステムが暴走した近未来。星全体を覆わんばかりに増殖を続ける階層都市の片隅に、あるものを探す男がいた。その男キリイ(声:櫻井孝宏)は、旅路の途中で電基漁師の村人たちと出会う。人類の生存者を発見しだい攻撃する「セーフガード」の攻勢により居住エリアを狭められつつある彼らは、武器や食料にも事欠くありさまだった。重力子放射線射出装置という貫通力の高い武器を操り、とてつもない戦闘力を持つキリイは偶然村人の一部を助け、それをきっかけに彼らから救いを求められるが……。 「BLAME!」を一目見れば、誰もが面白いと言うだろう
「T2 トレインスポッティング」50点(100点満点中) 監督:ダニー・ボイル 出演:ユアン・マクレガー ユエン・ブレムナー ダメ若者がダメ中年になった 前作「トレインスポッティング」は、当時オサレ人が集まる渋谷ミニシアターの中心だったシネマライズで連続33週ロングランの最高記録を叩き出した大ヒット作。「T2 トレインスポッティング」は、それから現実と同じ約20年が過ぎた設定の、正当なる続編である。 麻薬の売買で得た大金を持ち逃げしたレントン(ユアン・マクレガー)が20年ぶりに故郷スコットランドのエディンバラに戻ってきた。悪友4人組の中で、レントンがその人柄の良さから唯一深い友情を感じていたスパッド(ユエン・ブレムナー)を訪ねると、驚くべきことに彼は今まさに自殺を図ろうとしていた。 前作には、ヘロインに溺れるダメ若者たちが、それでもあがきながら停滞感を打ち破る痛快さと、ほのかな希望を鑑賞後
「グレートウォール」75点(100点満点中) 監督:チャン・イーモウ 出演:マット・デイモン ジン・ティエン チャイナマネーの力 「グレートウォール」はまごうかたなき中国プロパガンダ映画の超大作だが、その出来たるや隙のないまさにお手本というべき傑作であり、その点は高く評価せざるを得ない。 弓の名手で傭兵のウィリアム(マット・デイモン)は、仲間とともに黒色火薬を求めて中国大陸にやってきた。彼らはやがて異民族に追われ万里の長城の警備隊に助けを求める。完全武装の中国軍の大軍勢に圧倒されるウィリアムらは、かれらが60年に一度遅い来る、饕餮(とうてつ)なる獣への迎撃準備をしていることを知るのだった。 万里の長城を「人類を守ってきた最後の防壁」と位置づけ、中国伝統の怪物=饕餮と決死隊のド派手なバトルの連続で見せる熱いストーリー。 チャン・イーモウは五輪開会式を手がけるなど、中共政府にも好意的な大作を手
「ゴースト・イン・ザ・シェル」40点(100点満点中) 監督:ルパート・サンダーズ 出演:スカーレット・ヨハンソン ビートたけし 白いブラックウィドウ 「攻殻機動隊」は、日本よりも海外で話題になりそうなタイトルなのだが、その実写版「ゴースト・イン・ザ・シェル」は、肝心のアメリカ市場でよもやの大苦戦である。日本ではなおさら一般受けしにくいコンテンツなだけに、先行きが不安なスタートといえる。 脳以外、人工的な義体で生きている少佐(スカーレット・ヨハンソン)。義体が珍しいものではないこの時代でも彼女の能力は群を抜いており、彼女が所属する公安9課でも不可欠な戦力となっていた。9課を率いる荒巻大輔(ビートたけし)も彼女を高く評価し、今日もサイバーテロ集団と対峙するのだった。 士郎正宗による原作漫画とも、押井守らによるアニメ版とも距離を取った内容のハリウッド実写版。もはや主人公の名前すら違うわけだが、
「わたしは、ダニエル・ブレイク」90点(100点満点中) 監督:ケン・ローチ 出演:デイヴ・ジョーンズ ヘイリー・スクワイアーズ 世界中で起きている福祉現場の悲劇 日本では、数%に満たぬ生活保護不正受給問題をことさら大きく扱いたがる人々が目立つ。小田原では「生活保護舐めんな」とのメッセージが書かれた自作ジャンパーやマグカップを担当職員らが作って人事異動の記念品にしていたが、この職員を擁護するネット世論が幅を利かせている。 いつからこの国はこんなに寛容の精神がない国になってしまったのか。嘆いている人もきっと少しは残っているだろう。そんな人に「わたしは、ダニエル・ブレイク」は、この上ない肯定感と自信を与えてくれる傑作である。 59歳のダニエル・ブレイク(デイヴ・ジョーンズ)は、長年大工として生きてきた。だが心臓病でドクターストップがかかり、職を失ってしまう。やむなく国の援助を求め福祉事務所を訪
「ハードコア」90点(100点満点中) 監督:イリヤ・ナイシュラー 出演:シャールト・コプリー ダニーラ・コズロフスキー 創意工夫を感じられる新鮮な主観映像 POV映画は数あれど「ハードコア」の斬新さは映画史上最高と言ってよい。イリヤ・ナイシュラー監督は初のPOV映画といわれる「湖中の女」(46年 米)を始め、過去作品を徹底的に研究したのだろう。それらを凌駕するクオリティのものを作り上げ、ここで世に出した。これぞまさに責任ある生産者の鑑、下町の良心的な職人のような映画監督である。 ヘンリーは奇妙な実験室ような場所で目が覚める。目の前には愛妻のエステル(ヘイリー・ベネット)がおり、自分に機械の手足を装着しようとしている。どうやらサイボーグ手術を受けているようだ。だが声帯を取り付ける直前、謎の超能力者軍団の襲撃を受け、妻を奪われてしまう。声と生身の肉体を失った代わりに超人的な身体能力を得たヘン
「ラ・ラ・ランド」55点(100点満点中) 監督:デイミアン・チャゼル 出演:ライアン・ゴズリング エマ・ストーン 一般人の感覚とズレた業界人が過大評価 アマチュアの映画ファンは「これはボクのために作られた映画だ!」と感じた時、盲目的なまでに絶賛しがちである。我々プロはそういう映画評は見ればすぐにわかるし、自分が書くときはそうならないよう、気に入った作品ほど距離を置いて冷静にみつめる癖がついている。 しかし「ラ・ラ・ランド」は一部、いやそうとうな数のプロたちのそうした習性を突き破ってしまった点で、特筆すべき作品といえるだろう。 女優志望のウェイトレス、ミア(エマ・ストーン)は、ジャズバーでピアニストのセバスチャン(ライアン・ゴズリング)と出会う。決して素敵な出会い、ではなかったが彼らは再会し、夢を追う過程の中で互いの距離を縮めてゆく。 ツイッターその他で私は本作を平凡と評したが、他の人たち
「日本と再生 光と風のギガワット作戦」75点(100点満点中) 監督:河合弘之 取り残されてゆく日本 変化を体感できるドキュメンタリー映画ほど観客が熱中するものはない。まして社会そのものを変える意欲に満ちた映画ともなればその興奮たるや想像に余りあるが、日本でそこまでの影響力を映画が持つことは少ない。その、数少ない映画の一つになろうというのが、反原発訴訟の中心弁護士、河合弘之監督による作品群である。 その3作目となる本作は、これまでの脱原発に加えてその代案としての「自然エネルギー」を徹底的に分析する。批判だけならだれでもできる、では原発をなくしたあとの未来はどうあるべきか。それが監督が描こうと試みた主題である。 この手の反原発モノは腐るほどあるから、いいかげん見る側も飽き飽きしているかもしれないが、さすがは異業種監督。この映画は最初の1秒目から、凡百の反原発映画との違いを見せつける。いきなり
「サバイバルファミリー」90点(100点満点中) 監督:矢口史靖 出演:小日向文世 深津絵里 現代人なら大いに共感できるテーマ 「なんらかの原因で"電気"を失ったら、日本の都市生活者はどんな運命をたどるのか」それをある平凡な一家の視点で描いたシミュレーションムービー。 いい企画というものは、こんな風に1行の説明を聞いただけで「見たい」と思うものだ。 と、なぜそんなことを最初に書くかといえば、日本映画にはそういう当たり前の映画があまりに少なすぎるからだ。ましてオリジナル脚本のそれとなれば、ほとんど皆無といってよい。 東京で暮らす鈴木家。父の義之(小日向文世)は仕事一筋で亭主関白気味。母の光恵(深津絵里)、息子の賢司(泉澤祐希)、娘の結衣(葵わかな)の4人家族は特別仲がいいわけでもないが、トラブルもなく平凡に暮らしていた。そんなある朝、あらゆる電化製品が使えない事態に遭遇する。どうやらご近所も
「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」75点(100点満点中) 監督:ギャレス・エドワーズ 出演:フェリシティ・ジョーンズ ディエゴ・ルナ ヒーローは無名 昨年から始まったディズニー版スター・ウォーズは、隔年で本編3部作が公開される合間に、スピンオフ3本の公開を挟む形でとりあえず6年間続く予定になっている。「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」はそのスピンオフ第一作となる。 皇帝とダースベイダーら帝国軍は最終兵器デススターの完成を目の前にしていた。反乱軍は、その危険性を証明するため、過激すぎて袂を分かったかつての仲間ソウ・ゲレラ(フォレスト・ウィテカー)に連絡を取る必要があった。そこで彼らは、ソウのもとでかつて暮らしていたジン(フェリシティ・ジョーンズ)にコンタクトを取るのだった。 さて、このジンという女性がヒロインなわけだが、彼女はデススターの開発の中心人物で科学者ゲイレ
「われらが背きし者」75点(100点満点中) 監督:スザンナ・ホワイト 出演:ユアン・マクレガー ステラン・スカルスガルド 中高年男性でも楽しめる娯楽作 元MI6の作家ジョン・ル・カレ原作のスパイサスペンス「われらが背きし者」は、彼の小説の最近の映画化の例に漏れず、非常に見応えのある大人向けの傑作エンタテイメントに仕上がっている。 大学教授ペリー(ユアン・マクレガー)は妻とモロッコに休暇にやってきた。そこで知り合った妙にきっぷのいい男ディマ(ステラン・スカルスガルド)に後日、夫婦で誘われたペリーは、そのあまりにゴージャスなパーティーに圧倒される。そしてその場で彼はディマに、彼がロシアンマフィアの金庫番であること、組織に命を狙われていること、家族を救うため、秘密が入ったメモリスティックをMI6に届けてほしいことを頼まれる。 どこかの国の人気コミックと違って、ジョン・ル・カレの映画化作品に外れ
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