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大そうじへの備え
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私は日々、ウェブメディアやSNS、書籍、講演などを通して医療情報との関わり方について発信しています。 誤った情報を信じたために健康被害を受けてしまう人を少しでも減らしたいからです。 度々例に挙げていますが、「がんが消える」などと宣伝して高額な商品を売り、数十億円を売り上げた企業が摘発される、といった事例は後を絶ちません。 >>「がんが消える」を信じてしまう患者、医師とのすれ違いが起きる理由 病気で不安な患者さんの、藁をも掴むような思いを利用する。許されざる行為です。 私たちがこうした被害から身を守るには、医療情報を適切に解釈する力が必要です。 今回は、宣伝等で実際によく見るグラフの落とし穴について解説します。 見た人の解釈を特定の方向に誘導するグラフは多くあるためです。 自覚のないまま、真実を見誤らないよう気をつけなければなりません。 グラフの印象は簡単に変えられる まず、以下のグラフを見
医療デマにだまされ、適切な治療機会を奪われる人は後を絶ちません。 「がんが消える」などと効果を宣伝し、健康食品やサプリで数十億円を売り上げた会社が摘発される事例も相次いでいます (1, 2)。 私たちはこうした方々を少しでも減らすため、日々情報発信をしています。 こうした活動に注目してくれたNHKが、最近「フェイクバスターズ 」という番組を二度に渡って作り、私も番組内で話す機会を得ました。 こちらのサイトをご参照ください。 さて、この記事では、医療デマから身を守るために知っておいた方がよい7つの言葉を紹介します。 言葉を覚えることが大切なのではなく、「よく陥りがちなポイントを知っておく方がいい」という意図です。 (心理学の用語については一部専門外の内容を含むため、もし専門的見地から見て間違いがあればご指摘ください) チェリーピッキング 自分の意見を誰かに信じてもらうため、その意見を裏付ける
以前知人から、こんなことを言われた経験があります。 「医学は他の分野と比べると全然進歩していない。未だにがんは治せないままだ。こんな状況には絶望してしまう」 確かに、その通りです。 初期の段階で治療できたがんはともかく、他の臓器に転移したような進行がんの場合、今の医学の力で「治す」ことは難しいケースが多いでしょう。 「治す」という言葉が、 「薬を飲むことも、病院に通院することも一切なく、医療から完全に解放される状態」 を意味するのであれば、です。 しかし一方で、数ヶ月で亡くなっていたようながんの多くが、治療を継続すれば「年単位」で長期的にお付き合いできる病気になっています。 ここで重要なのが、 医学の進歩には、「ある病気を『治せる』ようになる」段階と、「ある病気を『慢性疾患にできる』ようになる」段階がある ということです。 「治らない」病気が多い点では、医学はまだまだ発展途上なのは間違いあ
先日、朝日新聞に掲載された書籍の広告に批判が殺到し、それを受けて同社広報部が、 「媒体として十分な検討を行うべき」だった と公表しました。 本件では、広告された書籍の内容に医学的な誤りがあり、読者に健康被害を与えかねないとの懸念から、Twitterで複数の医師がその危険性を指摘。 この情報が広く拡散され、結果として新聞社が公式に声明を発表した、という流れでした。 私もこれまで、新聞やテレビといった影響力の大きなメディアで医学的に誤った情報が発信された際、その誤りをウェブ上のフォーム等を通して何度も指摘したことがあります。 しかし、レスポンスがあったことは一度もなく、今回の対応には大変驚いています。 Twitterでは、医師をはじめ多くの専門家たちが、パトロール隊のような役割を果たしています。 ネット上で誤った情報が発信された時に、専門家らが注意喚起を目的にこれらを取り上げ、それが拡散した結
9月29日、渋谷ヒカリエで「知って、届けて、思い合う〜やさしい医療がひらく未来」というイベントを開催しました。 SNSやウェブメディアで情報発信を行う医師(医学研究者)らと編集者のたらればさん、朝日新聞withnewsの方々を中心に開催したトークイベントです。 大手メディア関係者の方々も多く参加され、医療の情報発信を考える上で、実りの多い企画になりました。 イベントの詳細や雰囲気は、Twitterで「#やさしい医療情報」のハッシュタグを振り返ると伝わりやすいと思います。 あるいは、登壇者の一人である病理医の市原真先生(ヤンデル先生)がまとめられたnoteを読まれるのもよいでしょう。 この記事では、イベントを振り返りつつ、私が情報発信について考えることを綴ります。 「不安」がビジネスになる現代 2019年8月、ある健康食品販売会社が、「がん細胞が自滅する」などと効能を宣伝し、がん患者に健康食
みなさんは、がんの標準治療についてどれほど理解されていますか? 多くの臨床試験の結果を背景に、最も高い効果が期待できる治療を「標準治療」と呼ぶ、ということを知っている人は、このブログの読者には多いと思います。 一方で、がんだと診断されてネット検索し、あまりに多くの「がん治療」が出てきてパニックになってしまう、という方も多くいます。 つまり、 ①標準治療の意味を理解していて、自分ががんになったら標準治療を迷わず受ける、と考える人 ②標準治療のことはよく知らず、高いお金を払えばもっといい治療が受けられるのではないかと迷ってしまう人 がいる。 これは多くの医師たちが認識しています。 懸命にがん治療について啓発し、②のタイプの人を①のタイプにしたい、と考えている医師は多くいるでしょう。 しかし、これらのタイプに加え、 「標準治療の意味を十分に理解してはいるが、標準治療を迷わず受けるとは言えない人」
2019年版「白い巨塔」が、5夜連続で放送されました。 原作は50年以上前の小説ですが、原作の雰囲気をそのままに、舞台を現代に変えて作られた作品です。 今回の財前五郎(岡田准一)は、「腹腔鏡の名手」であり、かつ「肝胆膵の若き権威」という設定。 原作小説の財前は胃がん手術のスペシャリストで、特に胃の入り口、噴門部の胃がん手術を得意としていました。 当時、この部位の胃がんは診断も手術も難しいとされていたためです。 ところが、技術の進歩により、現在は噴門部の胃がんでも多くの外科医が安全に手術できるようになっています。 また、胃がんに対する腹腔鏡手術は広く普及しており、財前を「新しい技術で世界的に名を知られた外科医」とするには、原作の設定のままでは無理がありました。 一方、肝胆膵領域、特に膵がんの腹腔鏡手術となると話は別で、ごく一部の慣れたスタッフが揃った病院でしか行われていません。 ドラマ中でも
夜中や休日に突然体調を崩したらどうしますか? 夜間・休日には病院はあいていません。 したがって救急外来のある病院に行くことになります(救急車を呼ぶ場合でも、そういう救急病院や休日診療所に運ばれます)。 では、救急外来と平日の一般外来は何が違うのか、ご存知でしょうか? 救急外来の仕組みは、意外と知られていません。 期待した医療が受けられず、怒って帰る人はたくさんいます。 今回は、救急外来に行く前に知っておいてほしいことをまとめます。 ほとんどの病院に救急医はいない 世の中の大半の病院に救急外来「専属」の医師はいません。 医療ドラマのように救急の専門家が多くいて、全患者を救急医が診療しているのはごく限られた施設だけです。 では誰が診ているのでしょうか? 多くの場合、各科の医師が持ち回りで診ています。 こういうシステムを「各科相乗り型救急」と呼びます。 我が国の多くの病院はこのタイプの救急医療を
私が医学部の学生時代、手術見学をして最初に驚いたのが、外科医が執刀時に「メス!」と言わなかったことでした。 医療ドラマのイメージで、外科医が手術を始めるときは必ず「メス!」と鋭く言い放って、器械出しナースからメスをサッと受け取るものだと思い込んでいたからです。 ところが実際には、 「じゃあ始めます。メスください」 でした。 正直言って、「ドラマより全然かっこよくないなぁ」と残念に思ったものです。 もちろん「メス」と道具名だけ言う外科医もいますが、私を含め多くの外科医は、最初は丁寧に、 「メスください」 「メスお願いします」 と言って丁寧にメスを受け取って皮膚を切ったのち、 「はい、メス返します」 と言って丁寧に返します。 メスは、皮膚が驚くほど抵抗なくパックリ切れる危ない道具なので、他のどんな道具よりも丁寧な受け渡しが求められます。 他の道具なら、外科医が道具名だけを言い放って手を出せば器
【2024年10月最終更新】 多くの学会や公的機関が、患者さん向けに役立つ医療情報ページを作成し、インターネットで無料公開しています。 しかし、その多くはGoogle検索しても容易にたどり着くことができず、困っている方も多いのではないかと思います。 そこで私は今回、こうした役立つページをまとめる作業を行うことにしました。 Twitterを通して多くの医療従事者のご協力をいただいたおかげで素晴らしい情報を多数得ましたので、ここにまとめておきます。 随時更新していきますので、他にも役立つページがあれば、ぜひTwitter等からコメントいただけますと幸いです。 なお、中にはPDFも多くあり、ページ内で目的の情報に行き着くのが難しいものもあります。 その場合は、 Windowsなら「Control+F」 Macなら「Command+F」 でページ内検索が可能です。 iPhoneであれば、いつものよ
「教授の執刀を希望したのに、実際に執刀したのは別の医師だった—」 とある病院で、有名教授に執刀を依頼したにもかかわらず、実際には別の医師が執刀したとして、患者側が1億円の損害賠償を求めて提訴したというニュースがあった。 この事例では、術前に外来で教授が執刀を約束したことと、術後15日で患者が亡くなっていることが事態を複雑にしている。 実際私の外来でも、 「◯◯先生に執刀をお願いします」 と希望されることはある。 だが、一般論としては、誰が執刀するかは病院側に任せてしまった方が患者さんにとっては得策である可能性が高い。 その理由を説明したいと思う。 「執刀医」の定義とは? まず、執刀医を強い希望で指定する患者さんは、「執刀医」という言葉の定義に関して少し誤解していることが多い。 中には外科医が一人で行う手術もあるが、そもそも多くの手術は3〜4人といったチームで行われている。 一つの手術には様
(参考:「臨床検査のガイドラインJSLM2015/日本臨床検査医学会」より引用) これは、「CA19-9」という腫瘍マーカーの陽性率(異常値となる割合)を、ステージ(進行度)別に見たものです。 まず、胃がん、大腸がんでは特に、病期(ステージ)が早い段階の方が陽性率が低い、ということが分かると思います。 一方、最も進行したステージ4であったとしても陽性率は60〜80%程度。 つまり、10人に2〜4人は進行がんでも腫瘍マーカーは基準範囲にとどまることが分かります。 血液検査で腫瘍マーカーを測定して、数値が基準範囲に入っていたとしても、「がんではない」とは言い切れないのです。 早期発見に役立たないだけでなく、進行していてもなお発見が難しいのであれば、やはり「がんかどうかを調べるツール」としては、精度が不十分です。 むろん、ここまで読んで、 「腫瘍マーカーが正常ならともかく、もし異常値が出て進行し
病気のリスクの考え方 私は日頃から、病気のリスクに関して、医師・患者間にコミュニケーションエラーが生じやすいと感じています。 下図は私が持つイメージで、左が医師、右が患者さんの捉え方です。 医師が病気のリスクを考える時の重要なポイントとして、 ・病気には数え切れないほどのリスク因子がある ・リスクには、リスクの度合いが高いものと低いもの、というように「リスクの程度」に差がある ・現在まだ分かっていない「未知のリスク」が多くある ・現在リスクだと思われているものが、実は「リスクではない」と将来的に判明する可能性がある という4点が挙げられます。 具体例を書いてみます。 肉類の摂取が大腸がんの発症リスクになる、という報告があります(Asia Pac J Clin Nutr. 2011;20(4):603-12.)。 もし肉が好きな患者さんが大腸がんと診断され、この結論だけを知ったらどう思うでし
外来には、検査を希望してやってくる患者さんがたくさんいます。 「症状があるから診てほしい」ではなく、「〇〇という検査をしてほしい」という動機です。 中には、私たち医師が診察して「特別な検査は必要ない」と判断しても納得されない方が多く、結局希望通り検査をすることもあります。 「検査が必要かどうか」「もし必要ならどんな検査を行うべきか」は、専門家でないと正しく判断できません。 検査にはリスクを伴うものも多いため、リスクより得られるメリットの方が大きい場合にしか、その検査を受ける意義はありません。 この点で、「検査を受けるべきかどうかは診察した医師に任せるべきだ」と言えるでしょう。 他にも、検査に関して患者さんが誤解しやすいポイントがいくつかありますので、紹介しましょう。 検査は診察に勝るという誤解 検査を希望して病院にやってきた方は、何も検査されることなく診療が終わると、「何もしてもらえなかっ
症状一覧を見る場合は以下のボタンをクリックしてください。 症状リストへ 症状チェックリストの使い方 病院で自分の症状がうまく説明できずに困ったことはありませんか? 「大丈夫」と言われて帰ってきたものの、あとで、 「あのことを言い忘れたけど、言わなくて大丈夫だったんだろうか」 と不安になった経験はないでしょうか? もちろん、うまく症状を説明できない患者さんから上手に情報を引き出すのが我々医療者の仕事です。 しかし、そのために患者さんは病院でいつも質問攻めにされることになります。 予想外のことを突然たずねられてうまく答えられないということもあるでしょう。 ただでさえ、病院に行って医師と話すのは心理的ストレスを伴う行為です。 まして、辛い時に自分の症状を正確に説明することなど難しくて当然です。 しかし、もし何を質問されるかが事前に分かっていたらどうでしょうか? 病院に着くまでに、あるいは待合で順
外科治療に関わる外科医以外の職種には何があると思いますか? 麻酔科医や看護師は簡単に思いつきますね。 それ以外はどうでしょうか? 外科系の医療ドラマを見ていてよく思うのは、「治療に関わる職種が現実よりかなり少ない」ということです。 もちろんこれをリアルにすると登場人物が増えすぎて、筋書きが分かりにくくなるためでしょう。 しかし読者の皆さんには、「外科治療には多くの職種の人たちが関わっている」ということを是非知っておいていただきたいものです。 外科治療は、外科医や麻酔科医、看護師だけでは成立しません。 今回は医療ドラマではあまり描かれることのない、手術前後に関わる外科医以外の大切な職種を簡単に紹介してみます。 ※私が専門とする消化器・一般外科を想定して書きます。「手術」は他にも様々な外科医が行うので、領域によっては他の職種が関わることもあります。 理学療法士(PT) PTは、手術前後のリハビ
日本航空(JAL)と全日空(ANA)には「医師登録制度」があります。 2016年に開始された制度で、事前に機内にいる登録医師が把握され、急病人が発生した際に客室乗務員がスムーズに医師に診療行為を依頼できます。 乗客にとっては、機内のドクターコールによって不安感を抱かずに済む、という利点もある制度です。 この制度が登場した当初、私も親交のある外科医の中山祐次郎先生が丁寧な考察をYahoo!ニュースですでにされており、この制度の是非や改善点に言及されています。 あれから2年が経ちました。 果たして現在、医師はこの制度に登録すべきでしょうか? 私は幸い、これまでドクターコールに遭遇したことはありませんが、依然として不安の残るこの制度をリサーチし、現時点で得られた情報をもとにまとめておきたいと思います。 医師登録制度とは何か? JALでは2016年2月から、ANAでは2016年9月から医師登録制度
みなさんは医師と話をしていて、「自分の気持ちがなかなか分かってもらえない」と感じた経験はないでしょうか? 何となく不親切な医師に対し、不安を抱きながら通院を続けている人もいるかもしれません。 しかし、実は私たち医師も同じ感覚を持つことがよくあります。 私たちも、「患者さんに自分の気持ちがなかなか分かってもらえない」と思うことがよくあるのです。 なぜ医師と患者は分かり合えないのでしょうか? 私がこれまで患者さんを見てきて、最もよく食い違うと考えるポイントを4つ挙げてみたいと思います。 患者はn=1の事象を重視する 外来で患者さんから、 「自分と同じ癌の治療をしている友達が、この民間療法で癌を治したと言っていました。だから自分も同じ治療を受けたいです」 「この抗がん剤を使った私の職場の同僚が、強い副作用が出て治療が続けられなくなりました。だから同じ治療は受けたくありません」 「私と同じ胃がんだ
喉に魚の小骨が刺さったままとれない 水を飲んでも喉が痛い 唾を飲むとチクチクとした違和感がある そんな経験は誰しもあるでしょう。 骨が刺さったまま取れなかったらどうしよう ひどい病気に発展したらどうしよう 見えない部分だけに、誰しも不安になって当然です。 喉に魚の骨が刺さり、救急外来に来られる方は非常に大勢います。 最近ではインターネットでいろいろ解決策を調べ、間違った対処法で症状を悪化させて来る方も多くいます。 「喉に魚の骨が刺さる」というのは、非常に頻繁に起こる病態です。 これほどよく起こる現象というのは、必ず医学的に繰り返し研究され、正しい対処法が確立されていて当然です。 たとえば、21年間、737人の「喉に物が詰まった(咽頭異物)患者」を徹底的に解析した研究もあります。 (そのうち690人(93.6%)が魚の骨でした) そこで今回は、喉に魚の骨が刺さったときの医学的に正しい対処法を
「ブラックペアン」の治験コーディネーターの描写が現実と著しく乖離し誤解を招くとして、5月2日に日本臨床薬理学会が抗議文を発表しました。 この時いくつかのネットニュースも取り上げ、大きな話題になりました。 さらに今度は、医療機器の治験に関わる医療機器産業連合会が5月21日、ブラックペアンに対して批判的な文章をHP上で公開。 「現実と大きくかけ離れる描写があり、大変な病と闘っている患者の不信感をあおる心配がある」と指摘したことが報じられています。 →TBS『ブラックペアン』に医療団体が続々と抗議/J-CASTニュース これまでの医療ドラマでも、医師の視点から見て「ありえない」と思うシーンはいくらでもありました。 フィクションですから、現実と乖離しているのは当たり前。 にもかかわらず、なぜ今回ブラックペアンだけが医療団体からこのように抗議されてしまうのでしょうか? このブログで私は医療ドラマに関
ドラマ「ブラックペアン」での治験コーディネーター(CRC)の描写に批判的な声が急激に広がっています。 治験に関わる患者さんの立場からも、臨床に携わる医療関係者からも怒りの声が高まり、日本臨床薬理学会がTBSに抗議する事態に発展しています。 Facebookに掲載された抗議文はかなりの勢いでシェア数が増えており、その抗議文の中では私のブログ記事も引用されています。 私がドラマ関連記事を書く時はいつも、「ドラマを楽しんだ方が不快にならないように」とかなり気を遣うので、引用された記事も批判的な意見に多くを割いたわけではありません。 「医者がドラマにムキになって目くじらを立てている」などと思われるのは本意ではないし、そもそも私は医療ドラマは好きで、楽しく見ている立場です。 ドラマを楽しむ方々を興ざめさせてしまうような重箱の隅をつつく粗探しもしたくはありません。 しかし問題は大きくなっていますし、私
天才外科医、渡海征司郎はとにかくカッコいい。 ピンチになると、猫背でゆらりとオペ室にやって来て、凄まじい技術で窮地を救う。 「修復するよー」 などと普段は脱力感をただよわせるほど穏やかだが、時に声を荒げて現場をピリッとさせる。 そして過去に負った心の傷が陰となり、彼をより魅力的にしている。 まさに「オペ室の悪魔」と呼ぶにふさわしい。 そういえばかつて私の周りにも、彼と全く同じ特徴を備えた外科医がいた。 同じように猫背でゆったり手術室にやって来て、手術中は穏やかだが突然後輩に声を荒げて怒鳴る。 おかげで彼の前では若手が萎縮し、なかなか上手く手術ができない。 普段はやや根暗で、患者さんへの説明はあまり上手くない。 決して真面目なタイプではなく、空いた時間にはよく居眠りをしている。 渡海と全く同じである。 ところが残念なことに、彼は「陰気」「短気」などと陰口を叩かれ、オペ室ナースには「オペ室の悪
以前「病院に行く前に!注意すべき服装、受診時に必要なもの」の記事でも書きましたが、病院に行く時は服装に注意が必要です。 特に女性の場合、服装によっては聴診器を当てるのに非常に苦労することがあります。 女性の方々の中にも、 聴診される時はブラジャーをとった方がいいのか? 服は胸の上まで全てめくりあげた方がいいのか? 服の上から聴診器を当ててもちゃんと聴こえるのか? といった疑問をお持ちの方はいらっしゃるのではないでしょうか? 今回は、こうした聴診にまつわる疑問について書いてみましょう。 聴診器を当てる場所、聴く音 私たち医師が聴診器を使って聞いているのは、主に肺の音と心臓の音です(肺音と心音)。 (腸の蠕動音を聞くためにお腹に聴診器を当てることもあります) 肺音を聞いて、肺炎や喘息など呼吸器の異常がないかどうかを確認したり、心音を聞いて心雑音がないかどうかを確認したりします。 聴診器を当てる
医師監修記事でも信用できない ご存知のように、最近の健康系メディアは「医師監修」が流行りです。 しかし本書は、この仕組みにも疑問を投げかけます。 朽木さんは実際に、健康情報サイトの記事を監修した医師を取材しています。 その医師が言うには、送られてくる記事の質があまりに低く、運営者が医療情報の取り扱いを軽視している、と言わざるを得ないものだったようです。 WELQがそうだったように、最近の健康系メディアは、「数撃ちゃ当たる」とばかりに大量の記事をネットの海に投下して検索結果の上位を狙います。 しかし何千、何万という膨大な記事を量産し、その質を「医師監修」で維持できるのか、という疑問があります。 質の低い医療情報は、読み手の健康被害につながる危険性があります。 朽木さんは本書で、 「1PVはただの数字ではなく、一人の命と同義」 (※1PV =ウェブページが1回閲覧されること) と書いています。
法医学がテーマのアンナチュラルでは、毎回様々な死因が登場した。 このブログでも、各話に登場した死因を毎週解説することで、法医学の世界を紹介してきた。 しかし最終回はこれまでで唯一、誰も死ぬことはなく、伏線を綺麗に回収して見事なハッピーエンドとなった。 よって最終回を医療面で解説するなら、テーマとしては「薬物中毒に対する救急医療」となるだろう。 特に今回出てきた、もしかすると聞き慣れないかもしれない「エチレングリコール」。 これは日常生活においては意外に身近な物質である。 第9話とも実はつながっている、今回も「わかると面白いポイント」について解説してみよう。 今回のあらすじ(ネタバレ) UDIの中堂(井浦新)の恋人、夕希子を含む複数の女性を殺した疑いのある高瀬が警察に出頭する。 しかし高瀬は、死体損壊は認めたものの殺害は否定。 女性は自分の目の前で体調不良を訴え、自然に亡くなったのだと主張す
今回は「手術できないがん」とはどういう意味かを解説します。 タイトルには「胃がんや大腸がん」と書きましたが、食道がん、肝臓がん、膵臓がん、胆道がんなど、私が専門とする消化器がん全般に同じことが言えますので、そのつもりでお読みください。 (もちろん他の領域のがんも多くは当てはまります) 最近は、病気や症状に関して調べたいことがあれば、多くの人はGoogleなどの検索エンジンを利用すると思います。 たとえば、「胃がん」とセットでよく検索されている言葉を調べてみると 「症状」「検診」「スキルス」などがあります。 その中でも目立つのが 「手術できない」や「手術できない場合 余命」などです。 「手術できないがん」は余命の短い末期がんだという恐れがあるからでしょうか。 しかし本当は「手術できない」という表現は適切ではありません。 私たち外科医にとって、実は「手術できないがん」はほとんどありません。 つ
道具の渡し方は本当? オレンジ湯たんぽさんのおっしゃる、「ビニールの袋をバリッと音をさせて開けて渡す」というシーンですが、象徴的な場面を第6話で見ることができます。 倉庫内で若い男性の意識レベルが低下し、藍沢(山下智久)がその場で穿頭(頭蓋骨に穴をあける処置)を行いましたね。 この場面で介助についたのが、元オペナースの経験もある冴島看護師(比嘉愛未)です。 ビニールの袋に入った道具をバリッと音を立てて開けながら、次々とすごいスピードで藍沢に道具を渡していましたね。 あれが最も正しい清潔な道具の渡し方です。 あの場面でのポイントは、 ということです。 道具は患者さんの患部に触れる部分なので、介助する看護師は素手ではさわれません(感染のリスクがあります)。 一方、医師は清潔な手袋をして患者さんの処置にあたっているため、清潔な道具には触れても、清潔でない外側の袋に触れてはいけません。 たとえは悪
※個別の症状・治療に関するご相談、ご質問にはお答えできません。 ※Googleのコンテンツマッチングシステムにより、本サイトにはランダムな内容の広告が自動で表示されます。 ※本サイトにおける主張は私個人のものであり、所属団体とは一切関係ございません 【書評、メディア情報】 ☆TBSラジオ「安住紳一郎の日曜天国」にて紹介・著者出演(2024/7/14) ☆ニュートンムック『科学名著図鑑第2巻』に選出(2024/5/8) ☆NEWTON 2024年2月号『科学の名著』に選出(2023/12/28) ☆ダ・ヴィンチwebで書評公開(2023/11/27) ☆産経新聞書評欄で紹介(2023/10/8) ☆PRTimesで紹介(2023/9/13) ☆聖教新聞「文化」にて紹介(2022/4/21) ☆週刊女性 2022年2/8号にて紹介(2022/1/30) ☆産経新聞「装丁入魂」にて紹介(2022
これまでの解説記事でも書いてきたように、コードブルーは現役医師から見ても非常にリアルな描写が特徴である。 だが今回の第6話は、ずいぶんクサい展開に加え、ややストーリーにも既視感が否めない。 緊急を要する場面では突然語りのシーンが入るなど、残念ながら得意のスピード感も失われた。 医療ドラマでは、今回のように「医師とは」「医療とは」という語りモードに陥ると話が陳腐になりがちに思う。 今回も、患者さんとの距離感や、「落胆から成長へ」というテーマに関する語りシーンでは、微妙な解釈に何となく違和感を覚えてしまう。 というわけで今回は、いつも通りみなさんが疑問に思ったかもしれないポイントを前半で解説し、後半は今回のテーマ「落胆の向こう側」について私の持論を述べたいと思う。 足の切開はそんなに難しいのか 冷凍倉庫内で荷崩れ事故が発生し、毎度のごとく救急医たちがドクターヘリで現場に急行する。 だが落雷によ
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