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2015-06-20 第9回 短編小説の集い参加作品 「雨宿り」 【第9回】短編小説の集いのお知らせと募集要項 - 短編小説の集い「のべらっくす」こんにちは。何時もお読みいただき、ありがとうございます。 暑くなったり少し冷えたり。梅雨はもうすぐあけるんでしょうか? 今回は、過去作品を少し手直ししました、 少し短めのお話です。 「雨宿り」 下町の紫陽花がそろそろ花を開こうとしている。江戸の町にも、梅雨前のどんよりとした雲が広がり始めていた。繁華な町でも、雨が降れば足元は泥田のようにぬかるんでしまう。 「お前さんに頼んでおくと、間違いないねぇ」 日本橋の、薬種屋太田屋の主人が真っ白な美しい壁の前で、溜息をついた。仕事をやった、左官職人の卯吉は、にこりともせず、頭を下げる。年の頃は三十ばかり。火事の多い江戸で、大工と左官は人気の商売だ。卯吉は若いが腕がいいと、贔屓が多い。 「お代は手代に届けさせ
novelcluster.hatenablog.jp 「花闇」お読みいただき、ありがとうございました。 今回は、未来。 難しいお題でございますが。 この素晴らしい世界 波の音が激しくなると、冷たい風がやってくることを、少年は知っている。海が荒れる前に、冬を越すための魚をとって、小さな畑にあるさつま芋の収穫をすませてしまわなければ。古びた毛布から体を引き抜くと、裂けた壁の隙間から覗く朝日に目を細める。粥を煮る匂いがする。もう起き出した父が、缶詰の鍋で朝飯を作っている。少年の名前は、アキといったが、もう、その名を呼んでくれる人は父しかいない。その父も、先年、母が風邪をこじらせあっけなく死んでしまってからは、急に寡黙になってしまった。 「今日はさ、魚を取りに行くよ!」 アキは大きな声で父に言うと、コンクリートの剥落した階段を一気に駆け上り、建物の屋上を目指した。このなんだかむうとした匂いの場所か
2015-03-29 「花闇」 (第6回短編小説の集い 参加作) 【第6回】短編小説の集いのお知らせと募集要項 - 短編小説の集い「のべらっくす」novelcluster.hatenablog.jp 初参加させていただくことに。何時ものような話だけれども。三人称にて。 「花闇」 小さな村の外れにある、まるでその地を見守るような桜の木は、身を大きく捩った太い幹をしていた。一度、落雷に引き裂かれたというが、それでも枯れることはなく、二股の大きな木となって、村を見下ろす。枝は薄紅色に染まり始め、あともう少しもすればこぼれんばかりの花を咲かせるに違いない。枝をよく見れば、小さく固い蕾が時を待っていた。 夕闇の迫る頃、その木の根元で一人の女童が声を押し殺して泣いていた。派手な紅色の小袖を着て、唇と目元に紅をさしているが、まだ愛らしい顔(かんばせ)には、幼さがある。ひーひー、とまるで苦しむ小鳥のような
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