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インタビュー
idsc.nih.go.jp
国立公衆衛生院疫学部 簑輪 眞澄 1.はじめに 消防署は,普段は防火活動を行なっているが,火災が起これば消火に従事し,火災がおさまれば火災の原因を究明する。保健所等における感染症対策も同様であり,感染症等が発生した時にはその原因の究明が必要である。 疾病の集団発生の原因等を究明する調査は流行調査outbreak investigationと呼ばれる。このinvestigationという語は犯罪捜査にも使われる言葉であるが,流行調査はいわゆる犯人探しのために行なわれるのではなく,次の集団発生を予防するために行なわれる。しかしその結果は,民事上あるいは刑事上の裁判にも用いられるかもしれない。 流行調査は,大きく病因の追求と疫学調査に分れるが,病因の追求(感染症の場合には病原体の検索)は別に説明されるであろうから,主として疫学調査について概説する。 2.疫学方法論のあらまし 疫学とは,人集団にお
Disclaimer : 推奨する消毒剤の例は、世界でこれまでに得られた知見に基づき、エンベロープ*をもつ ウイルスに対する消毒の「一例」として作成したものです。実際にはこれを参考に、各施設における実情に合わせてご判断ください。また、適切な消毒剤についての情報は、SARSに関する最新の知見と入手可能な情報に基づき、新しい情報が集まるにつれて今後も改定されていきます。 SARSコロナウイルスはエンベロープ*を有するウイルスである。 *エンベロープ(envelope) ウイルス粒子の一番外側にある膜。脂質2重層に、糖タンパクが挿入された構造をとる。消毒剤を作用させたときこれを持つウイルスの方が持たないウイルスよりも消毒剤で感染力がなくなりやすい。 1. 加熱滅菌可能なもの
WHOの世界的インフルエンザ準備計画における現在の警戒フェーズ フェーズ記載の2009年更新版において、WHOは、新たな勧告とアプローチを既存の国レベルのインフルエンザ準備対策計画に盛り込み易くするため、6つのフェーズによる方法を維持した。パンデミックフェーズのグループ化と記述は容易に理解しやすく、より詳細に、観察可能な現象に基づいて改訂している。フェーズ1から3は収容能力を増やし対策計画の実効性を含む準備に関連づけ、フェーズ4から6は対策と緩和策に関する必要性を明らかに示すものである。さらに、パンデミック第1波の後の期間は、パンデミック後の回復活動促進を詳しく述べている。 現在のパンデミック警戒のWHOフェーズは5である そもそも、インフルエンザウイルスは継続的に動物の間、特に鳥類で循環している。このようなウイルスはパンデミックウイルスに理論上進化をするかもしれないが、フェーズ1では、動
現在のところSARSコロナウイルス感染症は2003年9月8日、シンガポールでの実験室内での感染者を最後に患者は確認されていない。今後、SARSが再流行するかどうかは不明であるが、(1) 既存のコロナウイルス感染症は冬季に流行することが多い。(2) SARSコロナウイルスは熱には弱いが、低温では長期間生存することがわかっている。 (http://idsc.nih.go.jp/others/sars/update56-data.html)などの理由により、今冬のSARSの再流行に備えておく必要があり、インフルエンザワクチンの接種などSARS及びその他の呼吸器感染症を含めた対策について、WHOの見解などを感染症情報センターのウェブサイトから紹介している(http://idsc.nih.go.jp/others/sars/index.html)。 SARSコロナウイルスへの感染の最終的な確認のため
<資料>麻疹が死因として報告された死亡数、1950~1999(昭和25~平成11)年 (Vol.22 p 288-288) 厚生省「人口動態統計」 今月の表紙へ戻る IASRのホームページに戻る Return to the IASR HomePage(English) [email protected] ホームへ戻る
カンピロバクター感染症とギラン・バレー症候群 ギラン・バレー症候群(Guillan-Barre Syndrome)は1919年にGuillanとBarreおよびStohlによって記載された急性突発性多発性根神経炎であり、神経根や末梢神経における炎症性脱髄疾患である。発症は急性に起き、多くは筋力が低下した下肢の弛緩性運動麻痺から始まる。典型的な例では下肢の方から麻痺が起こり、だんだんと上方に向かって麻痺がみられ、歩行困難となる。四肢の運動麻痺の他に呼吸筋麻痺、脳神経麻痺による顔面神経麻痺、複視、嚥下障害がみられる。運動麻痺の他に、一過性の高血圧や頻脈、不整脈、多汗、排尿障害などを伴うこともある。予後は良好で、数週間後に回復が始まり、機能も回復する。ただし、呼吸麻痺が進行して死亡することもまれでない。ギラン・バレー症候群の15~20%が重症化し、致死率は2~3%であると言われている。ギラン・バ
デング熱の主要な媒介蚊はネッタイシマカであるが、現在わが国には分布が認められていない。一方、第二の媒介蚊であるヒトスジシマカ(図1)は第2次世界大戦中に、沖縄、長崎、大阪等で数万人規模のデング熱の流行に関わっている。2002年にハワイの100人規模の流行、台北における数十人規模の流行にも関わっている。近年、インド洋島嶼国、インド、東南アジア等で流行しているチクングニア熱の主要な媒介蚊はヒトスジシマカで、この流行は、2006年に検出されたウイルスの変異によって、ヒトスジシマカ体内での増殖活性が著しく高まったことが原因である。2007年に北東イタリアの小さな村で起こった突然のチクングニア熱の流行もヒトスジシマカが媒介蚊で、約300人の患者が発生し1人が死亡した。 この場合、1人の患者が原因で流行が起こったことが重要なポイントである。わが国の状況は、イタリアと同様に媒介蚊の生息密度が高いことから
(Vol.25 p 182-183) 新潟市では2003年12月下旬より、小中高校で麻疹の発生が報告されており、市報や教育委員会からの通知で、未接種児童・生徒に対する予防接種の勧奨、麻疹に対する知識の普及に努めてきた。新潟市の感染症発生動向調査上の小児科定点からの報告では、教育委員会の報告に見られる2003年末の流行状況は把握されず、2004年においても第9週の7件(定点当たり0.70)をピークに、その後は、週0~3件の報告で、第21週現在も週1件程度の報告である(図)。また、基幹定点からの成人麻疹の報告は、新潟市近傍の保健所で第13週に1件のみであった。 このような流行状況のなか、5月11日、麻疹罹患後に急性脳炎で死亡した成人女性例の届出があったので、この症例の経過について報告する。 症例は28歳の女性で専業主婦である。子供2人(5歳・2歳)は、近所のかかりつけ小児科医(A医院)で麻疹の
ウエルシュ菌(Clostridium perfringens )は、ヒトや動物の大腸内常在菌であり、下水、河川、海、耕地などの土壌に広く分布する。ヒトの感染症としては食中毒の他に、ガス壊疽、化膿性感染症、敗血症等が知られているが、本稿では最も多発するウエルシュ菌食中毒を中心に記載する。 ウエルシュ菌食中毒は、エンテロトキシン産生性ウエルシュ菌(下痢原性ウエルシュ菌)が大量に増殖した食品を喫食することにより、本菌が腸管内で増殖して、芽胞を形成する際に産生・放出するエンテロトキシンにより発症する感染型食中毒である。 疫 学 わが国におけるウエルシュ菌食中毒事件数は年間20~40件(平均28件)程度で、それほど多いものではない。しかし、1事件あたりの平均患者数は83.7名で、他の細菌性食中毒に比べて圧倒的に多く、大規模事例の多いことが分かる(表)。本菌による食中毒の発生場所は、大量の食事を取
2回接種で(新制度)の接種費用 と定義される。 まずベースケースとして表1の諸仮定の下で、INBは約35億円(90%CI [3.4, 80.7])である。また、感度分析として、麻疹風疹混合ワクチン接種費用を5,000円とすると、INBは平均的に約56億円、9,000円では約14億円である。2回接種のそれぞれの接種率を2回とも80%とすると約57億円、2回とも94%とすると11億円となる。1歳時接種の休業日数を1回接種、2回接種ともに1日、就学時接種の休業日数を0.5日とすると21億円、1歳時接種の際の休業日数を3日、就学時接種の休業日数を1.5日とすると49億円である。 求められたINBから感度分析を行った範囲では、平均的には新制度は政策的に有効である。また、ベースケースでは信頼区間も正のINBをもたらす。つまり今回の改正によって、麻疹に関しては、社会に費用以上の便益がもたらされている。
1994年8月,1カ月前に感冒症状があり,発熱と左上肢のしびれ感ならびに右上肢の筋力低下を主訴とした21歳の女性が来院した。病歴や家族歴などに問題はない。入院後の頭部CT像では径1~2cmのring enhanceされる境界明瞭な腫瘤陰影が,またMRI像では同じ部位がガドニウムでring enhanceする嚢胞性病変が多発していた。軽度の好酸球増多(3.4%)をともなう白血球増多(9,700/mm3)とlgE値の上昇(390IU/ml)があったことから,寄生虫感染を疑い,患者血清が国立公衆衛生院寄生虫室に送られ血清検査に供された。その結果,条虫とくに有鉤条虫抗原に対して陽性であった。数回の駆虫によっても腸内からは成虫は得られていない。この間上肢のしびれ感や筋力低下は徐々に軽減し,また患者が開頭手術を拒んだため,化学療法に切り替えpraziquantel(Biltricide,Bayer)の
感染症の話トップページへ 2001年第46週(11月12日~18日)掲載 ◆乳児ボツリヌス症 1976 年、米国において最初の乳児ボツリヌス症の例が報告された。乳児ボツリヌス症は、食品中に含まれる毒素による一般的なボツリヌス食中毒と異なり、ボツリヌス菌芽胞を生後1 年未満の乳児が経口的に摂取した結果、腸管内で菌が発芽・増殖して産生した毒素により発症する。腸管内での菌の増殖が、便の検査によって確認される。生後2週目以前の乳児における感染報告例は少なく、母乳(初乳)に含まれる成分が菌の定着・増殖を抑制している可能性がある。 疫 学・病原体 国内では、1986 年の千葉県での初発例以来、ハチミツが主要な原因食品として注目されてきた。この初発例では、患者の便から分離されたものと同型のClostridium botulinum A型菌が輸入ハチミツから検出され、原因食品と断定された。この症例を重
従来、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium )はウシ、ブタ、イヌ、ネコ、ネズミなどの腸管寄生原虫として知られてきたものであるが、ヒトでの感染は1976年にはじめて報告された。1980年代に入ってからは後天性免疫不全症候群(AIDS)での致死性下痢症の病原体として注目され、そ の後ほどなく、健常者においても水様下痢症の原因となることが明らかとなった。 英米両国では1980年代中頃から頻繁に、水系汚染に伴う集団発生が報告されるようになっている。その中で、1993年に米国ウイスコンシン州ミルウォーキー市では、40万人を超える住民が本症に罹患する未曾有の集団感染が起こっている。わが国では、1994年に神奈川県平塚市の雑居ビルで460人あまりの患者が発生し、1996年には埼玉県入間郡越生町で町営水道水を汚染源とする集団感染が発生し、8,800人におよぶ町民が被害を被った。したがって
参考:セアカゴケグモに咬まれた場合の症状と対応 (Vol. 18, No. 9: 1997年9月号) はじめに:1995(平成7)年11月に大阪府下で多数のセアカゴケグモが発見され、毒グモということで大きな社会問題になった。発見直後から生息調査、毒性試験等が実施され、セアカゴケグモの生態や人に対する影響について、その一部が明らかにされた。形態や毒素成分の解析から、大阪府下に生息しているセアカゴケグモはオーストラリア由来であるとほぼ断定された。オーストラリアでは毎年数百名がセアカゴケグモに咬まれており、臨床症状や治療法に関する研究は非常に進んでいる。もしこのクモに咬まれた場合には、オーストラリアでの経験がそのまま生かされると考えている。生息調査の結果、セアカゴケグモはすでに大阪府に定着したと思われ、今後、人がこのクモに咬まれることが十分に考えられる。ここにセアカゴケグモに咬まれた場合の症状と
麻疹は麻疹ウイルス(Paramyxovirus科 Morbillivirus属)によっておこる感染症で、人から人へ感染します。感染経路としては空気(飛沫核)感染のほか、飛沫や接触感染など様々な経路があります。感染力はきわめて強く、麻疹の免疫がない集団に1人の発症者がいたとすると、12~14人の人が感染するとされています(インフルエンザでは1~2人)。 不顕性感染(感染はしても発症しない=症状がでない)はほとんどなく、感染した90%以上の人が発症します。発症した人が周囲に感染させる期間は、症状(Q1-[2])が出現する1日前(発疹出現の3~5日前)から発疹出現後4~5日目くらいまでで、学校は解熱後3日を経過するまで出席停止となります(麻疹は、学校保健安全法に基づく第二種学校感染症に指定されており、学校をお休みしても、欠席扱いにはなりません)。なお、感染力が最も強いのは発疹出現前のカタル期(Q
1.緊急提言について 「風疹流行にともなう母児感染の予防対策構築に関する研究(班長:平原史樹横浜市立大学大学院医学研究科教授)」班において、この度、「風疹流行および先天性風疹症候群の発生抑制に関する緊急提言」(以下「緊急提言」という。)が取りまとめられた。 *当該研究は、厚生労働科学研究費補助金新興・再興感染症研究事業「水痘、流行 性耳下腺炎、肺炎球菌による肺炎等の今後の感染症対策に必要な予防接種に関する研究(主任研究者:岡部信彦・国立感染症研究所感染症情報センター長)」の分担研究として実施しているもの。 「風疹流行および先天性風疹症候群の発生抑制に関する緊急提言」 → PDFダウンロード(20ページ/116 KB) (注)P13に掲載の各地ブロック相談窓口(2次施設)は変更されています。 →最新版はこちら(2011年10月6日更新) 2.緊急提言の内容 以下の3章で構成されている。 (
感染症の話トップページへ 2003年第18週号(2003年4月28日~5月4日)掲載 ◆狂犬病 狂犬病は、狂犬病ウイルスを保有するイヌ、ネコおよびコウモリを含む野生動物に咬まれたり、引っ掻かれたりしてできた傷口からの侵入、および極めて稀ではあるが、濃厚なウイルスによる気道粘膜感染によって発症する人獣共通感染症である。狂犬病は4 類感染症全数把握疾患に定められており、診断した医師は7日以内に保健所に届け出る必要がある(註:その後、2003年11月施行の感染症法一部改正により、直ちに届け出ることとなった)。 疫 学 世界保健機関(WHO)によると、全世界で毎年3万5,000~5万人が狂犬病によって死亡している(図1)。狂犬病はアジアでの発生が大部分で、アジア、アフリカでは狂犬病のイヌから多く感染している。また、南米では、吸血コウモリによる家畜の狂犬病が経済的な被害を及ぼしている。北米およびヨ
(Vol. 32 p. 109-111: 2011年4月号) 2010年6月~2011年2月までの期間に、群馬県と栃木県の県境地域、いわゆる両毛地域と、その近郊の市中医療機関で6例のテニア属条虫による感染事例が検出され、原因種はいずれも国立感染症研究所寄生動物部第二室(以下、感染研)においてアジア条虫(Taenia asiatica )と分子同定された。ここに、発症の状況から種の同定、治療に至るまでの経過概要を報告する。 症例1 患者概要:41歳、男性(国籍:日本)、会社員、群馬県桐生市在住。最近1年以内の海外渡航歴は無い。自宅でのペット飼育歴も無い。 食歴:2009年の年末から2010年6~7月頃にかけて、近在の食肉加工業者より豚の肝臓と胃(いわゆるガツ)を数回購入し、非加熱のまま食した。同食品は同居する妻と子供(6歳)も食したが、発症は本人のみであった。 主訴および経過:2010年9月
A1 アシネトバクターは土壌や河川水などの自然環境中に生息する環境菌です。健康な人の皮膚などから見つかることもありますが,通常は無害です。アシネトバクターには多くの種類があり、人の感染症例からはアシネトバクター・バウマニが最も多く検出されます。通常、感染症の流行は集中治療室の患者やその他の重症患者で起こり、医療機関の外で起こることは滅多にありません。多剤耐性アシネトバクターは、通常のアシネトバクター感染症の治療に使用する抗菌薬がほとんど効かなくなっている菌のことです。日本での定義は、カルバペネム系、フルオロキノロン系、アミノグリコシド系の抗菌薬全てに耐性を示す株とされています。
感染症の話トップページへ 2002年第21週号(2002年5月20日~5月26日)掲載 ◆ 先天性風疹症候群 免疫のない女性が妊娠初期に風疹に罹患すると、風疹ウイルスが胎児に感染して、出生児に先天性風疹症候群(CRS)と総称される障害を引き起こすことがある。風疹のサーベイランスやワクチン接種は、先天性風疹症候群の予防を第一の目的に考えている。風疹については感染症週報2001年第29週(通巻第3巻第29号)に既出である。 疫 学 風疹の流行年とCRSの発生の多い年度は完全に一致している。また、この流行年に一致して、かつては風疹感染を危惧した人工流産例も多く見られた(図1)。風疹は主に春に流行し、従って妊娠中に感染した胎児のほとんどは秋から冬に出生している。流行期における年毎の10 万出生当たりのCRSの発生頻度は、米国で0.9 ~1.6 、英国で6.4 ~14.4 、日本で1.8 ~7.
1. マイコプラズマ感染症の特徴と診断 Mycoplasma pneumoniae (マイコプラズマ)感染症は、幼児期から学童期にみられるポピュラーな感染症であり、急性気管支炎や肺炎が主な疾患である。15歳以下の入院肺炎例(903例)の原因微生物を網羅的に調べた私どもの成績では、マイコプラズマ肺炎は細菌感染症の19.2%を占め、平均年齢は6.5歳(2~12歳)である。 マイコプラズマ感染症は,i)学童期に多いこと、ii)38℃台の高熱と乾性咳嗽が強いこと、iii)血液検査所見としては WBCは10,000 cells/μl以下、CRPは5 mg/dl以下の場合が多い。血沈(ESR)は亢進していることが多い。 マイコプラズマは一般細菌と異なって培養が難しく、しかも時間を要するため、培養検査はほとんど実施されなくなっている。ペア血清による抗体価上昇の確認のほかに、現在ではIgM抗体検査(キット
感染症の話トップページへ 2001年第51週(12月17日~12月23日)掲載 ◆ペスト ペストは、腸内細菌科に属する通性嫌気性のグラム陰性桿菌Yersinia pestis に起因する全身性の侵襲性感染症で、ノミやエアロゾルを介して伝播する。感染ルートや臨床像によって腺ペスト、肺ペスト、および敗血症型ペストに分けられる。 臨床症状 1 )腺ペスト 腺ペストはヒトペストの80~90%を占め、ペスト菌含有ノミの咬傷や、稀に、感染したヒトあるいは動物への接触により、傷口や粘膜から感染する。侵入部位にほとんど変化を起こすことなく、近くの局所リンパ節に伝播する。リンパ節は壊死、膿瘍を形成し、クルミないしアヒルの卵大に腫大する。その後、リンパ流、血流を介して脾臓、肝臓、骨髄を経て、心臓、肺臓など全身に伝播して敗血症を起こす。 臨床症状としては、通例3~7日の潜伏期の後、40℃前後の突然の発熱
Mycoplasma pneumonia cases reported per sentinel weekly [定点当たり報告数]
感染症の話トップページへ 2003年第4週号(2002年1月20日~26日)掲載 ◆エルシニア感染症 エルシニア感染症は腸内細菌科に属するYersinia 属菌を原因菌とする感染症の総称である。Yersinia 属には現在11菌種が分類されているが、ヒトに対して病原性を示すのはYersinia pestis 、Yersinia pseudotuberculosis およびYersinia enterocolitica である。エルシニア感染症という呼称は一般的に、下痢などの食中毒様症状を主徴とするY. enterocolitica とY. pseudotuberculosis による感染症を示す。 疫 学 Y. enterocolitica による感染症としては、1972年に散発下痢症患者から初めて本菌が分離されてから現在までに、14例の集団食中毒の発生が確認されている。患者数が最も
東北地方太平洋沖地震によって発生した津波は、福島県、宮城県、岩手県、青森県など太平洋沿岸の多くの地域を襲い、4県合わせた被災面積は約400km2に達しました。地表面に存在したほぼ全ての構造物を押し流し、その結果として、想像を超える瓦礫の山が形成されました。この津波被害で特徴的な点は、漁港周辺において、多数の海産物の冷凍貯蔵施設が破壊され、推定数千トンの魚介類が津波によって内陸地域に押し流され、また、相当量の魚介類が冷凍庫内で腐敗したことです。これら腐敗した魚介類を好んで餌とするハエ類が大発生し、5月中旬から大きな問題となりつつあります。このような自然災害において、初夏から晩秋にかけて、衛生昆虫類がどのように発生し、実際、感染症の発生に関わる可能性があるのかを以下に概説します。 ハエ類には、瓦礫の中の生ゴミ、津波で広範に押し流された魚介類、有機物の多いヘドロ、打ち上げられた海藻、動物の排泄物
1984年6月14日から6月28日にわたって発生した熊本県三香株式会社製造の真空パックからしれんこんに起因するボツリヌス中毒は9月26日厚生省集計で,表1に示すごとく13都県市にまたがり,患者31名,死者9名に達する大事件となった。 疑いの患者を含めると6月9日にさかのぼり,2県市,患者5名,死者2名がさらに加わる。 原因食品,患者から検出された毒素および菌はすべてA型であり,1976年の東京都2名の事例に次いでA型としてはわが国で2回目である。 この事件への対応は6月24日(日曜)に宮崎県から熊本県に,熊本市の化学及血清療法研究所保有のボツリヌス治療用血清緊急輸送協力依頼があったことに始まる。翌25日には患者4名の共通喫食食品に株式会社三香製造からしれんこんがあるとの情報が入り,また,長崎県でも千葉血清に治療用血清を手配していること,同じくからしれんこんを食べているとの連絡を得て,ただち
麻しんは「はしか」とも呼ばれ、麻しんウイルス( Paramyxovirus 科 Morbillivirus 属)によって引き起こされる感染症で、39℃前後の高熱と、咳・鼻汁・目の充血(カタル症状)、耳介後部から始まって顔面、体、四肢へと広がる赤い発疹を特徴とする全身性疾患です。麻しんウイルスに対して免疫を持たない者が感染した場合、典型的な臨床経過としては10~12日間の潜伏期を経て発症し、カタル期(2~4日間)、発疹期(3~5日間)、回復期へと至ります。発生頻度は低いものの、麻しん脳炎(麻しん患者1,000人に1人)や、罹患後7~10年の期間を経て発症する亜急性硬化性全脳炎(SSPE、麻しん患者10万人に1人)などの重篤な合併症になったりします。また麻しん肺炎は比較的多い(麻しん患者10人に1~2人)合併症で麻しん脳炎とともに2大死亡原因といわれていますが、先進国であっても1,000人に1
感染症の話トップページへ 2004年第13週号(2004年3月22日〜28日)掲載 ◆E型肝炎 E型肝炎は、従来、経口伝播型非A非B型肝炎とよばれてきたウイルス性の急性肝炎で、その 病原体はE型肝炎ウイルス(HEV)である。E型肝炎の致死率はA型肝炎の10倍といわれ、妊婦 では実に20%に達することがある。また、日本、ヨーロッパ諸国、北米大陸においては非A非B 肝炎といえばC型肝炎を意味するが、発展途上国では事情が異なり、大部分はE型肝炎である といわれる。E型肝炎はアメリカ、日本、ヨーロッパ等の先進各国では散発的に発生し、その大 半は輸入感染症と考えられてきた。しかし最近、アメリカ、日本において全く渡航歴の無いE型 急性肝炎患者がみつかるようになってきたことから、従来、非流行地と思われる地域にもHEV は既に土着していると考えられる。 疫 学 HEVはアジアにおける流行性肝炎の重要
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