人は、一日何回決断をするだろうか? もちろん、些細な決断である。朝起きて何を着るか、朝食に何を食べるか、どのメールを先に返信するか。些細とはいえ、その数、実に1日35,000回にも及ぶ。これは驚くべき数字だ。というか驚くべきだ。私たちの脳はこの膨大な決断の連続によって消耗し、気づかぬうちにパフォーマンスを低下させているのだから。 心理学者ロイ・バウマイスターによれば、決断を繰り返すことで意志力は徐々に摩耗し、時間が経つにつれて最適な選択ができなくなる。この現象は「決断疲れ(Decision Fatigue)」と呼ばれ、企業の経営者やプロの投資家の間でも広く認識されている。例えば、裁判官が午前中に下す判決は午後よりも寛容であるという研究がある。これは、長時間にわたる判断の繰り返しが、後半の意思決定の質を低下させるためだ。 一般の生活でも決断疲れの影響は無視できない。仕事から帰宅した後に、夕食