社会人1年目の、10月も終わりの頃だった。新卒で配属された内勤の部署から媒体の部署への異動を、僕は当時の上司から言い渡された。 それは、コミュニケーションプランニングの仕事を志望して入社した僕にとって、青天の霹靂だった。 深夜まで続く会食、初ラウンドで234という壊滅的なスコアを叩き出したゴルフ、まともにやり合えば確実に利害が対立するスポンサーとメディア、そして何より、自分の長年のトラウマだった「スクールカースト的価値観」との対峙(参照:僕が「スクールカースト」から解放された日。)。異動して最初の頃は、僕にとってネガティブなこれらの要素が絡み合い、仕事のできなさにボコボコにされ、自分でも「このままだとおかしくなってしまうかもしれない」と危惧していた。 そんな瀕死の僕を救ってくれた小説がある。 多くの人は、小説をエンターテイメントとして読むだろう。僕もそこに異論はない。ただ時として、小説は人