ヒカシュー、佐久間正英、初音ミク――。英字新聞「The Japan Times」で、日本の音楽シーンやサブカルチャー関連の話題を書きつづけている、イアン・マーティン(Ian Martin)という記者がいる。
彼は1978年ブリストル生まれの32歳。2001年に来日し、2005年からJapan Timesに寄稿を開始した。同時に、ポストパンク/ニューウェーブ系レーベル「Call And Response Records」(レーベル公式サイト)を始め、彼自身もパフォーマーとして参加している。
彼と我々は興味を持っている対象が近いらしく、取材でも何度か顔を合わせていた(関連記事)。彼が日本のシーンをどう見ているのか、なぜ日本のシーンに注目しているのかを、ぜひ一度聞いてみたかったのだ。
ところが待ち合わせの場所で改めて顔をあわせ、大変なことに気づいた。うっかりしたことに我々は通訳の手配を忘れていた。彼は日本語の聞き取りはできるものの、ほぼ話せない。僕らも英語の聞き取りは雰囲気で何となくわかるものの、片言でしか話せない。
つまり英語しか話せない英国人記者に、日本語しか話せないインタビュアーが取材するという、かつてない無謀なチャレンジの結果がこの記事だ。最初はどうなるかと思ったが、なんとか話が通じてしまうから、やはり音楽は素晴らしいとしか言いようがない。
日本のフェスは音楽の地獄
―― Japan Timesの記事を読みましたよ、ヒカシューの(記事はこちら)。
イアン ぼくは日本のニューウェーブミュージックが好きなんですよ。でも、ロックインジャパンフェス、カウントダウンジャパンフェスに行ったことはあるけど……あれはミュージック・ヘル。ひどいですね。
―― 音楽の地獄! ぶははははは!
イアン フジロックの一番オススメはヒカシューでした。初日のメインアクトだったと思います。一番小さなステージだったけど。とはいえ、日本人の一番大きなステージは……ホーリーシット。いただけないですね。
―― イアン最高! でもどうして日本のニューウェーブなんですか?
イアン ぼくはPLASTICSが真の日本のニューウェーブだと思ってます。彼らはコメディアンのようで、ライトな感じを受けますが、実は怒りや残酷さがあり、とても深い。それに対しPOLYSICSはもう少しパーティバンドというか……とても楽しいんですが、70~80年代のニューウェーブみたいな知的なシャープさを感じられないんですよね。
―― ステージ衣装やライブパフォーマンスはそうですね。
イアン 巻上公一さんもそうですよね。彼はとても音楽的に刺激的で、面白いことを考えています。演技派のパフォーマンスが素敵です。パンクスだと、日本にはFRICTIONや突然段ボールという、ぼくも大好きなパンクパンドがいます。でも、UKではそんなに知られてない。UKはパンクスが台頭しているから似たようなバンドがいるからかな。だからこそ、日本のニューウェーブが僕たちにとって新鮮なんです。
―― なるほどなあ。でもイアンさんが日本に来た理由は?
イアン 大学で日本の映画を学んでいたのがきっかけでした。村上春樹の「ねじまき鳥クロニクル」を読んだとき、ここにいたい! とね。ああいうミステリアスな女の子が好きなんです。ぼくの妻はそんな子じゃないんですけど。
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