主権者の育て方(スウェーデン編)
- 2017/10/28
- 09:00
ノルウェーでは選挙中、小学生が候補者を質問攻めにする。
— 若者憲法集会 (@wakamono_kenpou) 2017年10月3日
>「子どもたちは、”あなたの政党は難民のために、何をするのか”、と聞いてくる。大人は年金や税金など、自分たちの生活に関わることばかり気にしているのにね」https://t.co/YR4BbTnCF4
私たちの暮らしは全て政治に関わっているから、私たち主権者はいつだって政治的意思表示する権利があるのだということ
私たちの出番は選挙だけ、それが終わったらシーズンオフになる、というのは間違いであること
日本人は、この当たり前のことを実感する機会が与えられないまま、大人になります。
子どもが政治にかぶれるなどケシカラン、寄るな触るな黙ってろ、と遠ざけるのが教育だと思われています(こちらも参照に)
それなのに18歳になったらいきなり投票しろ、と言われるのです。
しかもその18歳が高校生だったら、実質学校の監視下でしか政治に関われません。(こちらを参照)
ある意味凄いですね、上にいる権威が監視し、権威が許した範囲内でしか政治活動の自由がない「主権者」って、果たして主権者と言えるのでしょうか。
「自民党の言うところの民主主義」がすんなり浸透し、選挙が終わったらあとはお上に丸投げという、いかにも日本的な「おまかせ民主主義」の原因のひとつはこれでしょう
以前スウェーデンの教育のエントリーで、スウェーデンでは子どもの頃から政治参加する教育をしていることを書きましたが、良記事がありましたのでご紹介します。
●日本の子供はバカにされている。若者の投票率が低い理由をスウェーデンと比較してわかったこと。
http://www.huffingtonpost.jp/2017/10/16/young-generation_a_23245487/
「18歳選挙権」が導入され、2度目の全国規模の国政選挙となる衆院選が10月22日に投開票される。初回、2016年の参院選では、盛んな呼びかけにもかかわらず18歳と19歳の合計投票率は46.78%と低水準だった。
今回の選挙では、批評家の東浩紀氏が「積極的棄権」に賛同する人の署名を集めるなど、政治に対する厭世観がさらに広がっているようにも見える。
そこでハフポスト日本版は、投票行動について興味深い国際比較の研究をしている明治大学の鈴木賢志教授に話を聞いた。
スウェーデンの国政選挙(2014年)の30歳未満の若年層の投票率は81.3%。同じ年の日本の衆院選の若年層投票率は32.6%と大きな差がある。しかし、一方で、内閣府の意識調査で「政治に関心がある」と答えた若者の割合は、むしろ日本の方が高かったのだ。
「政治に関心が薄い、でも選挙に行く」とは、いったいどういうことなのだろうか?
鈴木教授はスウェーデンの若者の高い投票率を引き出している教育に着目。小学校高学年相当の社会科の教科書を紐解いた著書も出版している。日本とスウェーデンの若者の、何が違うのか?そしてその比較から鈴木教授が「日本の子供はバカにされている」と指摘する、その理由とは?
――スウェーデンの若者の投票率が日本より高い、一番の理由は何でしょうか?
「エフィカシー」です。つまり、政治に関心があるというより、「自分が投票したら社会が変わる」という意識です。
内閣府が2013年に実施した若者の意識に関する調査で、「あなたは、今の自国の政治にどのくらい関心がありますか」という質問がありましたが、「非常に関心がある」「どちらかといえば関心がある」を合わせて政治に「関心がある」という若者の割合を比べてみると、日本がスウェーデンを上回っているのです。
一方、「『私個人の力では政府の決定に影響を与えられない』と思いますか」という質問に対して、日本では「そう思う」「どちらかといえばそう思う」という若者が多いのですが、スウェーデンでは少数派でした。
例えば、スウェーデンには、学校選挙という制度があります。
――学校選挙、どんな制度ですか?
投票日の前の2週間、中学校と高校相当の学校で、実際の選挙と全く同じ政党、同じ投票用紙で、投票するんですよ。
――同じ政党、同じ投票用紙ですか。
しかもその結果は、全国的に集計されて、本当の投票結果が出たすぐあとに公表されます。
――日本でも学生が「模擬投票」をする取り組みはありますが、架空の政党・候補者ですよね。
それで、何になるというのでしょう。日本の子供だってバカじゃありません。架空の名前を書かされても何も面白くない。本当の選挙で問われるのは、自民党や公明党にこのまま政権を担ってもらいたいのか、それともその他の政党なのかって話じゃないですか。スウェーデンでは、それをきちんと子供たちにも問うています。
――そう考えると、日本の子供たちはある意味「バカ」にされている気がしました。
そうだと思いますね。「子供扱いされている」と言えるかもしれません。
――子供扱いされている。
子供扱いされた結果、どういう大人になるのでしょうか。
18歳で選挙権が付与されることになりましたが、私の教えている明治大の学生たち、日本でそれなりの大学だとは思うのですが、日本のそれぞれの政党のことをどのぐらい理解しているのか疑問です。
「安倍首相は憲法を変えようとしている、だから、革新、だから『左翼』なんですね」と理解している学生もいるぐらいです。
普通の大人の人々だって、「あの人かっこいいから」「かわいいから」と、投票しているんじゃないですか?
――なるほど...投票に行く、行かないの前にそもそも知らないという問題もありますね。
要するに、教育で教えていないんですよ。例えば「右」とか「左」って何?っていうことさえ。教育ではタブーですよとなっていますよね。現実ではなく、一般的な制度しか教えません。
――スウェーデンでは教えているのでしょうか。
高校に各政党の若者組織の関係者がやってくる授業があります。若者目線で「自分たちの政党はこういうことを言っている」というのを解説するんです。
ただ、中立性には気を配らなくてはいけないので、申し出があった、一定以上の規模の政党の来校は基本的に受け入れる決まりになっています。時間的な制約や先生の負担の大きさの点で問題になっていたりはするのですが、基本的に政党が学校に来ることを悪いことだとは考えていません。
日本だと、中立性を保つために、一切呼ばないとなるのが普通ですが。
――学校に、政党が来て話をするというのは、ちょっと考えられないですね。
僕は、8年前の選挙の前に、現場を見たことがあります。体育館で子供たちが座っていて、政党の人々も革ジャンみたいなのを着て、「お前ら、俺はこの政党から来たんだけど、どう思ってる?」みたいな問いかけをしていましたね。
生徒側からはヤジが飛んだりもしました。「ふざけんなーお前の政党は間違ってる」みたいな。モノを投げる生徒もいて、そういう中で、「でも、うちの政党はこういうことを考えてるんだ」と話していました。
――日本だったら、先生が青くなってしまいそうです...。
そもそも、中学生・高校生にもなると、政党の若者支部に入っている子も多いです。
ある中学校相当の社会の授業で、インタビューの課題を与えた学校も見ました。ある社会問題に対して各党ではどういう意見を持っているか、それぞれ調べましょうという内容でした。
そこからも、すごくて。「詳しく知らないけれど隣のクラスの子が党員だから聞いてみよう」とか。その子が支持している政党以外の党が割り振られて、渋々やってる子もいましたね。
日本では選挙権のない18歳未満は選挙運動が禁止されていますよね。でも、スウェーデンはそんなレベルじゃないですよ。ある政党の若者支部の党員の子が、ほかの学校に行ってチラシを配ったりもしているんです。
(後略)
スウェーデンで行われるガチな模擬投票は盛り上がるでしょうね。社会は自分たちが参加することで成り立つんだと実感するでしょう。たしかコスタリカでも選挙年齢に満たない若者、子どもの模擬投票があったと記憶しています。
日本では「政党の名前を挙げたり、改憲など世論を二分するような問題を取り上げたりすること自体が『政治的』と見なされないか心配」と戦々恐々なので、架空の政党への模擬投票でごまかすのが精一杯かも・・・教育現場では、「教育の自由」とは正反対の、政権に忖度せざるを得ない暗黙の圧力や恐怖を背後に感じるのだと思います・・民主主義社会ではそんな威圧は存在しないはずなんですが・・。
さて、模擬投票するなら、当然学校では各政党の主義主張、政策を事前に子ども達に見せるわけですが、ひとつ興味深いことが。
高校教員が、主権者教育の一環で『政党名を伏せて』各党の主要公約を読ませ、比較させたうえで模擬投票させたところ、共産党と公明党がそれぞれ第一、第二党になったと書いていた。驚くのは、生徒たちに実際の政党を明かした時、共産党の政策を「これは自民党だ」と思って投票した生徒がいたらしい。
— 向川まさひで (@muka_jcptakada) 2017年10月25日
以前私もブログで、政党名で偏見を持たないようにするために政党名を伏せて、各政党の主張や政策を見せ、どれが一番良いか選ばせるアンケートをとったらどうなるだろうか興味がある、ということを書いた覚えがあります。
この高校での模擬投票結果を見て思うことは、本来ならメディアがもっとも伝えなければならない各政党のスタンスや政策、そしてそれが単なる選挙用のセールストークなのどうかの吟味を、有権者に伝えていないんだな、ということ、そして有権者も、各政党のスタンスや主張を知ろうとメディアに情報を請求していないのではないか、ということです
(ってなことを前にも書いたことあるな、と思って探してみたら書いてました)
ご紹介した記事にはまだつづきがあります
全文を掲載したい所ですが・・・続きはリンク先でお読みください。
(ちなみに、私は、鈴木さんの著書をアマゾンでポチりました^^ 届くのが楽しみです)
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