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今回紹介いたしますのはこちら。

「マル勇九ノ島さん」第1巻 木佐貫卓先生 

秋田書店さんの少年チャンピオン・コミックスより刊行です。

木佐貫先生は12年に別名義でチャンピオンの漫画賞を受賞、デビューした漫画家さんです。
その後秋田書店さん系列の雑誌でいくつかの作品を発表したのち、16年より週刊少年チャンピオンにて本作の連載を開始。
めでたく単行本刊行となりました!!

そんな本作は、勇者をお話の中心に据えたコメディです。
が、物語の主役が優者なのかと言うと決してそう言うわけではありませんで……


HSC。ヒーローサポートカンパニー。
それは様々な世界でそれぞれ奮闘している、勇者の支援を仕事としている会社です。
勇者、ではなくそのサポートに回る支援役。
地味な役回りのような感じもありますが……やはり、勇者と言う憧れの存在を助けられるという仕事にやりがいを感じるものも少なからずいるのです。
フィオ、と言う天人類と呼ばれる種族の少女もその一人。
彼女は幼い日に偶然勇者と出会った時、こんな質問を投げかけていました。
どうやったら私も優者様みたいな立派な人になれますか、と。
そして勇者は彼女の頭を優しくなでながらこう答えたのです。
自分の正義を裏切らないことだ。
……それ以来彼女は、勇者の言葉を胸に抱きながら頑張り続けてきました。
そして頑張り続けた結果、このHSCに入社することができたのです!

今日は入社式。
高鳴る胸の鼓動を抑えながら、会社に向かっていますと、その途中の街頭テレビでHSCのコマーシャルを放送していました。
思わず目を奪われてしまうフィオですが、その時同じようにCMを食い入るように見つめているぼさぼさ髪の眼鏡の青年がいることに気が付きます。
同好の志かと思ったフィオ、おそるおそるこのCMいいですよね、と話しかけますと……男性はこんな感想を返してきました。
至極滑稽。
会社のよさそうなところやきれいごとを並べるのはCMの定石ではあるが、業務の内容をあいまいにしすぎていて駄目だ、と扱き下ろすのです!!
こんなCMに引っかかるのは頭の中がお花畑のバカだけだ、とまで言い放つその男性に、そのCMに胸打たれて入社したフィオは誰がお花畑だと憤慨!
入社式の日になんて気分の悪い人ですか!!と怒るのですが……その男性は、フィオが天人類だと聞いて全然違う方向に話を持っていき始めました。
天人類、つまり天使ならば
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エロい格好はどうした、これは譲れない!!
……確かに天使と言うと、なぜかわかりませんがエロスな格好をしていたり、裸になんかよくわからない布一枚だったりというイメージがあるような……
フィオは男性にセクハラメガネと一発頭突きをかました後、あれは冠婚葬祭用の礼服だし、人間界の会社であるHSCの入社式には人間界用の礼服を着てきている旨の説明を行います。
が、そこで男は一転して真面目な表情を浮かべ、世界を股にかけるHSCなんだから、自分の世界の礼服に自信を持て、ほかの世界の新人はそれぞれの世界の礼服を着てくるぞ、と返してくるではありませんか!!
確かにそう言われてみれば納得できるような……
ありがとうございます、あなたは……?と彼にお礼を言いつつ名前を尋ねますと、男はさっそうと立ち去りながら名乗るのです。
九ノ島竜一。
ただのお節介なリーマンさ。

入社式では、みんな人間のスーツを着ていました。
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露出度の高い恰好に赤面するもの、場違いだと冷ややかな視線を注ぐもの、あっけにとられるもの……
そんな視線を浴びながら、彼女はもう……あのヤロー!!とはらわたを煮えくり返らせるしかありませんでした。
とはいえそんなことは大多数の人に取って関係のないこと。
どんどん入社式は進んでいきまして、HSCの若きエースともいえる本間総一郎の説明によって様々なこの会社の構造やら理念やらが説明されていきます。
聞き入ってしまうばかりのフィオでしたが、そこで彼女の背後に座っていた、いかにもできる女と言う感じの新入社員、ヴァル=フレイヤが物おじせず質問を投げかけました。
今日もらった社員証、所属される課の名前が書いていないのだがどういうことか、私は本間さんがいる営業1課以外はいる気はない、と。
すると本間は、こう答えたのです。
皆さんがどの課に入るかは、今から実施する最終試験によって決定します。

フィオの最終試験は、あろうことかフレイヤと一緒の組でした。
何とか緊張をほぐそうと話しかけるフィオですが、フレイヤは天界の礼服でのこのこやってきたフィオを恥さらしと言って相手にしません。
お前みたいなおふざけに足を引っ張られるなんて冗談じゃない、とさんざんなことを言ってくる彼女に、フィオも反論しようとしたものの……そこで最終試験が始まってしまいます。
そこに広がっていたのは、二本の道に分かれた崖、のような仮想空間。
待ち構えていた本間によれば、人生は選択の連続、世界を背負う仕事をするものが時にしなければならない選択をここでしてもらおう、とのこと。
伸びている片方の道の先には、「家族」が。
もう片方の道には、「勇者」。
そしてその両方に向けて、弓をたがえるものがそれぞれ一人ずついます。
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もどちらかしか選べない状況になった場合、君たちならどっちを救う?
……突然強いられた選択を前に、戸惑いうろたえるフィオ。
ですがその時、フレイヤは全く迷うことなく、歩き始めたのです……!!


というわけで、勇者支援の道を歩み始めたフィオ。
ですが彼女の行く道は、いきなり困難の連続のようです。
出だしから九ノ島と言う謎の男にからかわれて大恥をかき、そのおかげで入社初日以前の段階で各方面からの信用はがた落ちとなってしまったことでしょう。
フレイヤにも見下げ果てられてしまったわけですが、そのうえやってきてしまったのがこの究極の選択です!
家族と勇者。
勇者支援業としてはここで勇者を選ぶのが正解……に見えはするものの、どうなのでしょう。
フレイヤはともかくとして、自分の正義を曲げないという言葉とともに人生を歩んできたであろうフィオに取って、迷いなく勇者を選ぶ、などと言うことはできないはず。
彼女はいったいどのような選択をするのか、そしてそれは一体どのような結果を招くのでしょうか?

そして入社式が終わった後はいよいよ勇者支援業の本編がスタート!
様々な世界の様々な優者を支援するわけなのですが、一番最初に担当することになった勇者からしてとんでもない癖ものでした。
魔王と戦わないばかりか、ギャンブルで大儲けしながら豪遊し続けるというアレすぎる勇者……!
そんな勇者にフィオたちはどのように接していけばいいのか、そしてその勇者に秘められた真実とは!?
コメディタッチながら、裏に存在するドラマも注目の一冊になっているのです!!


今回はこんなところで!
さぁ、本屋さんに急ぎましょう!!