月刊全労連・全労連新聞 編集部

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【座談会】「忙しい労働者はくだらないキャンペーンには付き合わない」「10分間の始業時全員ストライキに効果はあるのか?」 耳が痛いのと同時に、たくさんの学びがある労働組合職員による座談会

座談会参加者

北海道勤医労 佐賀正吾さん
京都市職労 永戸有子さん
生協労連おかやま 内田和隆さん


編集部:この座談会では、ゆにきゃん(ユニオン・キャンプ)に参加をして、コミュニティ・オーガナイジング(以下、CO)に出会って、どのように運動に生かしているのかを中心にお話を伺いたいと思います。


 まずは自分がどのようにCOに出会い、どうやって組織でいかそうとしているのか、してきたのかということについて、お話しをいただければと思います。

 

「あなたにお願いしたいのは、人前で話すことじゃなくて、人前で話す人を探すことなんだよ」

 

佐賀:自分が働きだしたのって、高校を出て、就職できなくて、非正規で今の組合のある職場で働きはじめたんですよね。当時はすごい虚しさしかなくて、時給も870円で給料日前はもやしばっかり食べていて、「何者にもなれないなあ」っていう気持ちがすごい強かったんですよね。そんな中でなんとなく労働組合にも加入して、なんとなく毎日過ごしてたんですけど。


 組合の会議に出ると、委員長とか書記長みたいな人がぐいぐい引っ張っていて、リーダーシップをすごい感じて。学習会の講師をしたり、大会の切り盛りしている様子とかを見て、「いやぁ、こういうことはできないよなぁ」と思ってたんです。当時400人ぐらいの規模の支部の組合員だったんですけど、そのとき「役員やんないか?」って声がかかったんですよね。


 「人前でしゃべれないし、頭も悪いんで」と断ったんですけど、そこで声をかけてくれた堀内さんっていう先輩が、「あなたにお願いしたいのは、人前で話すことじゃなくて、人前で話す人を探すことなんだよ」ということを言われたんです。それで心がすごく軽くなったというか。「ああ、なるほどな。自分は何者にもなれないけど、例えば、弁護士にはなれないけど、弁護士と友達にはなれるよな」という感覚をもって。うちは単組で2800人いるんですけど、そこで28歳で専従になりました。32歳で書記長になって7年目になります。


 専従になって何をやりたかったかっていうと、「集団の力で変化を作りたかった」ということと、労働組合の力で自分が非正規から正規になれたので、「組合の力をもっといろんな人に知らせたい」いうことですね。それから組織化にこだわった活動をできないかなっていうのを思っていました。


 そんな中で、2015年に布施(全労連事務局次長)さんたちとオーストラリアに視察に行ったときに、COの手法で組織化している実践例を聞いて、それが東京でも学べるということでワークショップを受講しました。実行力のある労組にするっていうことと、力を集団化するっていうことが、COの学びとしてとらえているポイントです。

編集部:「集団的の力で変化を作りたい」、「実行力のある労組にしたい」というときに、活かせそうだと思ったポイントはどこですか。

佐賀:これをやるために一人ひとりとつながるみたいな、「関係構築」でしょうかね。その重要性を感じたのは、オーストラリアにおけるキャンペーンで、保育園で組織化して半年で8000人の組合員を増やしたという話を聞いたときに、「こういう実践方法があるんだ」って衝撃を受けましたね。だからいつか、札幌でやりたいと思っています。

キャンペンーン用の動画撮影をする佐賀さん

北海道勤医労 佐賀正吾さん

役員任せじゃない、主体的な運動をつくるチャンス

 

編集部:印象的な事例から学んでおられますね。次は永戸さん、お願いします。

永戸:私の場合は2019年の8月にCOJ(コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン)のフルワークショップに、市職労から3人が参加をしたんです。それが一番最初の出会いです。

 最初はあまり消化できなかったんです。でも、市職労でやっていた非正規職員の「ツナごえ(つながろう・声をあげよう)」のとりくみが思い起こされて、「これ私たちやってたやん」って思ったんです。「ツナごえ」は、2020年に公務の非正規職員が会計年度任用職員の制度に移行するにあたっての危機意識からとりくんだもので、2018年くらいから「こんなに制度が大きく変わるのを、当事者が知らないままいるっていうのは絶対あかんわ」って思って、当事者も入った4人ぐらいのチームを作って、知らせていくのにどんな形のニュースがいいかとか、どういうふうにしたらいいのかっていうのを、いろいろ言い合いながら作り上げていって。嘱託員全員に個別の送付をして、一方的に送るだけじゃなくって話も聞かな、っていうことで、組合員でない人も含めて職場ごとに説明会やって、来てもらったりとか。


 いよいよ制度が決められる大詰めの時には、そういう運動の中で出会った人たちにスピーチをしてもらおうと、人事課の部屋の前の廊下で正規職員も含めた集会をやって、そこで非正規の嘱託員の方が10人連続でどんどんスピーチをしていくっていう場を作って、人事課の担当者が壁越しに聞いているみたいな。そしてそれが、結果に大きな影響を与えました。


 そういう中で当事者のすごい力を感じて、フルワークショップを受けたときに、私たちは本当に試行錯誤でやってきたけれども、それを理論化、体系化したものがここにあるんや! みたいな感じでの受け止めだったんです。だから私たちの運動と違うものじゃ全然なくって、必要なものだというふうに受け止めました。


 そのあとに介護保険の嘱託員の業務委託と、130人の雇い止めの方針が出されて、それに対する運動の中でも当事者からは雇用に対する思いと業務に対する誇りっていうのが話の中ですごい出てきて、それをアピールすることで、介護事業者であったりとか、いろんなところにも賛同が広がっていくっていうのも経験をしていて。そういう2つの運動から、当事者抜きで運動っていうのはありえへんなっていうのは実感していたんです。


 そこから2021年かな、ゆにきゃんにコーチとして参加するようになって、COの全体像がより見えてきて。これは本当に組合で活かしていきたいなっていう思いがより一層強まりました。


 スケジュール闘争ってよく言いますけども、本当にどうこなしていくかみたいなことになりがちやし、どこまでそれがみんなの「これはなんとかしないと」っていう思いに基づいたものか確信を持ちきれない。そういうモヤモヤをCOのメソッドを使って見直せるかなって思ったんです。組職するっていうのは、組合に加入してもらうというだけでなく、運動を組織していく、大きくしていくっていう視点だとか、当事者の資源を活かすっていう視点がすごく大事だし。役員任せでみんな主体的に参加できないなあ、っていうところを変えていく大きなチャンスだって思いました。

京都市職労 永戸有子さん

編集部:実は先日、ある単産の中央執行委員会でCOの話と演習をやってみたんですが、委員長が「これ昔から先輩の頃からやってきたことだってことがわかった」と言ってくれたんです。「それを体系化したことがわかった」と。そういう発見っていうか、ひろがりがあるといいですよね。最後に内田さんお願いします。

 

制度を勝ち取るだけじゃなく、いかに当事者をエンパワーメントできるか

 

内田:自分の話をすると、例えば有休申請して、「友達の結婚式で、ゴールデンウィークに式があるから行きたいです」っていう申請をしたら、生協は祝日関係ないんで、上司が「いや、ありえんわ。わしが、自分の世代のときも、なんぼも断ってきたで」みたいなことを言われて、「ですよね~」って笑いながら引っ込めて、あとで別の職場の人にグチりまくるみたいな。


 一方で労組の専従の人は本当に華々しくて、春闘の方針とかを喋る時は、「正しいことをちゃんと堂々と言うんだ。いけんことはいけんって言うんだ」とすごくきらきらしてて、憧れてて。だから、入り口は強いリーダーシップへの憧れなんです。「正しいことができない自分はなんでダメなんだ」と思う一方で、労働組合の人たちは正しいことを言っている、そこに近づきたいと思って。「おお、来い来い」っていう感じで専従になりました。


 ただいざ専従になってみると、強いリーダーシップを体現したような組合だったわけです。執行部、書記局が強くて、そのリーダーシップで勝ち取ってきたと。ただ生協自体の売り上げが伸びない時期で、強い腕力で企業内交渉をしても勝ち取れないということが続いて。その中で問題を解決してくれない労組なんて意味がないみたいな声も広がって、かつての求心力がどんどん落ちていく状況に僕は飛び込んでいったんです。そんな中でどうやれば当時の先輩専従みたいに、びしっと言って、弁が立って、人を巻き込めるのかなって模索していて。


 そんなときにちょうど同世代の他県の労組の方々が、COについて語ってるのをネットでみて関心を持って、2016年にフルワークショップを受けたんです。その中で学んだのは、当事者が真ん中だっていうことと、関係構築ってこうやってやればいいんだ、一対一ってこうやってやればいいんだってことがわかったのが、一番最初の入り口かな。


 あと、人に心に訴えて共感を広げる、これを体系化してるんだっていうのがわかって、それに救われた感があって。「自分はセンスがない、どうやればいいんだろう」と思っていたのが、「手順があって、技術として後天的に習得できるんだ」と。「学べば成長できるんだ」と、すごく救われて希望になった。それが最初の気づきで。


 あともう一つは、どうやれば求心力を持ちながら組合運動をできるんだろうって思ったときに、ちゃんと話をして、みんなの要求をつかみ、要求化して団交していくっていうのを、対話をベースにみんなの気持ちを高めながら進めていく道筋が見えたことですね。


 例えば、有休の取得率を引き上げるためにどんなことをやってきたかというと、経営側に有休申請したら断るなと詰めて、「もちろんそうします」と言質を取って、「みんな、言質取ったよ。ちゃんと申請してね」と言って終わるんですよね。
 それはつまり、職場の力関係とか、申請できない精神的なものとか、そういう障害を取り除くことではなくて、制度で保障したからあとはよろしくねっていうことで、当事者のエンパワメントという視点がないんですよね。


 かつて自分は有休申請して断られて「わかりました」って言ってる側だったんですが、それが何が障害になっているのかを分析して、当事者をエンパワメントする必要があるんだと。強く叱咤すればみんなが取得するようになるんじゃないんだな、と。その発想で物事を組み立てなきゃなあと気付いてきたみたいな。

 

失敗と成功

 

編集部:ありがとうございます。 いろいろ聞きたいことはありますが、次は周りの変化も含めて、みなさんの周囲で起こっていることを教えてください。

 

佐賀:ぼくはCOを学んでオーストラリアも経験して、これはもう、早く日本の実践で成功させなきゃダメって思いがめちゃくちゃあって。結構失敗してるんですよね、キャンペーンを。例えばコンビニ店員を組織化しようとして、時給1500円にするんだっていう戦略的ゴールを勝手に自分が作ってしまって、それに合わせてコンビニを回って、組合員を増やすんだみたいな仮説をたてたんですけど、思いっきり失敗してしまって。


 メディアには出たんだけど、それだけみたいな。コンビニ店員の何人かと対話したんですけど、それ以上は広がらなかった。で、ちょっとこれダメだなと思って、しばらくチャレンジしなくなったんですよね。


 その後コロナ禍での労働相談で、子育てしてるんだけど、休校助成金を会社が使ってくれないっていう労働相談が3件くらい立て続けに来たんですよね。団体交渉をやるんですけど、会社が「絶対払わない」っていう感じで。じゃあどうする?といったときに、ふとCOのことを思い出して、「じゃあキャンペーン戦術やってみますか」みたいな感じになって。3ヵ月くらいの短期決戦で「子育て緊急事態宣言」っていうのをやって、実際に制度が変わったっていうのがあります。100人を組織して、ツイデモで「トレンドに入って制度を変えよう」っていう流れだったんですけど、その中で自民党の議員も動いたりして、制度が変わったんです。その経験はすごく大きいなと思います。 


 その流れでキャンペーン的にやるとこうなるんだっていうのが分かって、自分の単組でもストライキは効果的な戦術をとるようになりました。

 

編集部:なるほど。

 

佐賀:うちの組合は42ヵ所の支部があるんですが、その中の一つの支部が独自の要求で署名を集めたり、活発な取り組みをやっていて。そこは非正規の加入が続いていますね。


 今やってるキャンペーンでは、ケア労働者の4万円賃上げ署名を単組発でやったんですけど、オンラインで2万筆集まりました。それはもう提出して終わるんですけど、今後の動きを看護師の同志を4人集めて、夜な夜なオンラインミーティングをやってキャンペーンのタイムラインを作っているところですね。

 

COのメソッドは運動の進め方のよりどころ

 

編集部:ありがとうございます。続けて永戸さんお願いします。

 

永戸:はい。キャンペーンとしてやっていることと、ちょっとCOを意識している取り組みと両方をお話ししようと思います。まず、キャンペーンでいうと、今取り組み始めたのが、ちょっと画面共有をさせてもらいます(図1、2)。

図1

図2


 これは京都府職労連、大阪府職労、京都市職労の三者で立ち上げた「33キャンペーン」です。COJのフルワークショップで、そこに参加していたコアなメンバーが集まって、定期的に集まりをもってたんです。コロナでリアルな次の開催ができなくなったけれど、でも、せっかくつながっているので、COの実践に向けたトレーニングしたりということも含めて、集まりを持ってたんですよね。


 そういう中で、保健師の働き方がもう2年続けて長時間労働させられてきた実態に対して、何とかしたいっていうことがみんなの思いにあって、この「33キャンペーン」を立ち上げたんです。


 今年の8月までに、「公務だからといって青天井の労働時間っていうのは許されへん」と「規制をちゃんとさせろ」っていうのと、それには人員が必要なので、その財政措置を取らせようっていうのを目標に、オンラインも含めて署名を集めていこうっていうことなんです。そして、タイムラインも考えて。


 これも、それぞれの単組から2人ぐらいずつ出てチームを作って、オンラインの会議で4時間くらい集中してわーって作って。それ自体すごいなって思ったんですけども。今は5月15日のスタート集会が終わって次のところに向けて動いているところです。


 その集会に向けての話をすると、長時間労働で苦しんでいる当事者を意識して、保健師もそうやし、それから本庁の職員でもちょっと前に、公務の仕事にやりがいを持っていた若い子が、「こんな苦しい状況やったら、好きな仕事が嫌いになってしまう、それが辛い」みたいな話を聞いたことがあって、それをぜひ喋って欲しいなって思いました。結局その人は集会には出られなかったので代読してもらったんですけれども、彼女がいうには、自分の気持ちを振り返って文章化することで、その時には言えなかった、辛さとか自分の思いとかの整理ができて「よかったです。ありがとうございました」ってお礼を言ってもらえたんです。そういう当事者の力を発揮してもらうっていうことを意識したことが、本人にとってもよかったということも嬉しかったですね。


 これとは別に市職労の中で、保健師をつなぐことや保健師の働き方を改善しようとか、公衆衛生行政をよくしていこうっていう目的でキャンペーンをやっています。職場ごとにバラバラになっている保健師をつないでいくっていうことを意識してやっていく中で、保健師からの組合に対する信頼もすごく増えてきたように感じています。それは、新採さんへの組合説明会の時に先輩保健師が自信をもって組合のことを語る場面に出会うと、このとりくみが信頼されることにつながっているんだな、保健師を元気にすることにもつながっているな、と思います。


 あとは会議の持ち方を工夫しようっていうのに取り組み始めているところです。運動の方向性とか立ち位置については、自治体労働者でいったら民主的自治体労働者論がよりどころなんですよね。でも、その運動の進め方っていうもののよりどころはこのCOのメソッドかなっていうことを、常々感じているところです。

 

編集部:ありがとうございます。最後にキーワードで「運動の進め方のよりどころ」とありました。会議の持ち方の変化はどんなことを工夫してるんですか?

 

永戸:それまでは本当に報告中心で「意見ありませんか」…しーん。「じゃあ次に」みたいな。で、時間だけかかるみたいな。

 

編集部:あるあるですね。

 

永戸:大阪府職労の小松さんに、どうやってますかって教えてもらいながらですね。報告はぎゅっと縮めて、みんなで話し合いたいことをしっかり定めておいて、小グループで意見を出し合ってもらうようにしたし、そんな中で自分自身の思いっていうのを出してもらいやすいように、工夫をし始めたところかな。まだまだですが、みんなが参加している会議になってきつつはあるかな。

 

10分間の始業時全員ストに効果はあるのか?

 

編集部:ありがとうございます。じゃあ次は内田さんお願いします。

 

内田:ストライキの話がありましたけど、岡山の単組はストライキを構えてやっているんです。ただ事業と生協労働者は、生協運動を発展させる両輪だということで、事業を止めるようなことはしないというふうにしてきているんです。


 そうすると規模は事業に影響が出ないっていうのが基本で、例えば10分間の始業時全員ストを配置して、「それって意味あるの?」っていわれるんですね。直接的には意味ないですよね、だって経営的に止めないから。でも意味はあるんです、と。なぜなら、経営者がほかの県の生協の経営者から白い目で見られるから。ストライキもコントロールできないような労務管理してるのかっていうふうに見られるんです。

 

編集部:なるほど。

 

内田:そういう語り方をずっとしてきたんだけど、説得力がないなと思いながらも、ずっと言ってきたんですよね。そこでCOでは経営者が本当に何を欲していて、何が関心事項で、何を傷つけられると譲歩する余地があるのかっていうのを、パワー分析、マッピングでやるじゃないですか。その視点で考えたときに、「あ、そうか。生協の経営者っていうのは、生協の理念であるとか、社会的な企業であるということに誇りを持っていて、社会的名声が傷つくことが嫌だし、職員も社会的な企業であるということに誇りを持っていて、そうでない経営をされることがすごく嫌なんだ」と。で、「社会的企業じゃないじゃん、これって」っていうことを示していくと、経営者も嫌だし、職員も気持ちが離れていくと。職員の求心力を失っていくっていうことは経営者にとっても怖いんだということが、僕の中で整理ができて。つまり、10分のストライキでも、あるいは別のやり方でも、社会的な名声を傷つける恐れがあるっていうような行動ができる規模だったら、事業は止めなくても十分効果があるんだって考えたときに、スト戦術の自由度が広がったというか。


 執行部だけの指名ストで配達は止まりません、でも街頭にでますよ、と。「こんな暴利をむさぼって、職員に還元できんってひどくないですか」っていう横断幕を作りますよって。横断幕作って団交に持っていって「これでストしますよ」みたいなことをしてみるとか。規模じゃなくて効果的に配置すれば、相手の弱点をつけるんだってことがちゃんと整理ができて。そのことで一定の合意ができて、2018年に7年ぶりのスト決行に繋がりました。それまでは職場から「どうせ威勢のいいことを言っても、最終的に腰折れするんでしょう」と言われていたんです。


 もちろん職場にも相応の覚悟を求めます。指名ストで職場から一人抜けたら、その分みんな忙しくなりますよね。配達がちょっと遅れるとか、倉庫の人が抜けたりとかして。「こうこうこういう理由で、と話をしてもらわないけんよ」ということも言い、討議の形としてみんなにも覚悟を求めつつ、合意して、「よしやるぞ」っていうことでやった感じです。


 ただそれがCOで学んだことによる効果だっていうふうに思っている人はものすごく限られています。しかし、スト戦術が変化して、ストを改めてやる組織にはなったのと。ストには意味がない、ストなんてしんどくなるだけだと前向きじゃない人が多かったんだけど、今となってはどうやったほうが効果があるっていう議論が出てきたっていうのが、職場の変化かなというふうに思います。

 

忙しい労働者はくだらないキャンペーンには付き合わない

 

編集部:ありがとうございます。大変な変化だと思います。今後さらに活かしていくために、みなさん個人として、また組織として思っていること、全労連に対する要望も含めて最後にお願いします。

 

佐賀:あんまり焦りすぎないことだなとは思っていますね。やりたい気持ちにせかされるんだけれど。なんでそう思うかっていうと、専従者の仕事が何かっていうのを、オーストラリアに行った後からすごい考えさせられて。COのキャンペーンとも絡むんですけど、潜在的なリーダーを探して、そのリーダーとトレーニングをしてキャンペーンをやるっていうのは、本当に時間がかかるんですよね。焦らず積み重ねるしかないかなって。


 あともうひとつ、これもオーストラリアで聞いたことですけど、「忙しい労働者はくだらないキャンペーンには付き合わない」ということ。結果を見たときに、何でだろうって頭を抱えるんじゃなくて、このキャンペーンはくだらなかったんだって割り切るしかなくて。


 戦略から発信するようなキャンペーンは、同志が巻き込めないからやらないですね。例えば、サウンドデモやったら人が集まるんじゃないかみたいな仮説でやったとしても、なかなか実現しない。それよりも、同志の困難から出発するキャンペーンが力を持っているということですね。目的と手段がつながっていないものは、忙しい労働者には付き合ってもらえないし、意気が上がらないなっていうところですよね。


 それを考えたときに、最初の一歩がすごい大事だと思ってて。「これを実践するにはどうするか」っていうキャンペーン戦術。「何をやろう」っていうことじゃなくて、「誰と何をやるか」っていうことが大事で、その誰っていう人が出てこないうちはなかなかキャンペーンをやろうとしてもできないなあっていうのが実感なんですね。


 あと上部団体に求めるものはっていうことなんですけど、組織を再定義する必要があるっていうのはずっと思っていて。日本の労働組合って単組に権限があるので、上部団体があれやれこれやれって言ってもなかなか難しい側面があるので。もう上部団体は割り切ってトレーニング機関に徹するとか。本当に労組の全体を変えるんだったら、上部団体に妥結権限とかスト権が必要だし。ない現状の下では、トレーニングを保障する機関に徹するというのがいいのかなって。


 あとは、キャンペーンをやる組織に予算を付ける仕組みがあるといいなと思っています。大会とか、中央委員会はキャンペーンのプレゼン大会みたいになるといいんじゃないのかなって。そこでみんないいよねって思ったキャンペーンに投資しますみたいなのがいいんじゃないかな(笑)。

 

何度も学べる場を/「スケジュール闘争」にCOの手法を取り入れるには

 

編集部:第一歩を誰と何をやるかをみつけなきゃだめだということは考えさせられます。次は永戸さん。

 

永戸:COを学ぶ人を増やす、そういう場がたくさん欲しいな。全体を学んでいる人同士だからこそ、こういう手順で、この考え方は、という共通の認識でキャンペーンを進めていくっていうことができる、それは大きい。


 それから私は何回もコーチに行ってもわからんことがいっぱいあって、だから何回も学べる場が欲しいなあっていうふうに思ってます。それでいうと、コーチ養成のフルワークショップはぜひしてほしいと思っています。

 

編集部:ありがとうございます。これまでゆにきゃん参加者の交流会をやっています。お互い学べる機会として1回じゃダメという要望が強いです。深めたい人のチャンスはぜひ作っていこうと思っています。内田さんお願いします。

 

内田:苦い経験で言うと、なんかちょっと元気のいい若者が出てきたら、すぐに台本作ってメーデー発言してもらうとか、ただデモを歩いてもらって、みんなから認められたっていう感覚でどんどん引きずり込むみたいなのがあるじゃないですか。そういうことじゃなくて、ちゃんと覚悟をもって、ステップを踏んでもらうことが必要で。


 例えば団体交渉でちゃんと発言してもらえるように整えていくとか。団体交渉で経営陣と対峙するところで発言する前に、要求論議の時に模擬団交発言みたいなことをやって、覚悟を深めていく。そういうステップをどんどん作っていくことで、覚悟を持ち、リーダーシップを発揮してもらうっていうことが必要だと思う。それが一つ。


 もう一つは、上部団体にはありとあらゆるスケジュールでそういうことをちゃんと意識してやって欲しいなっていう思いがあって。一つの成功体験として、3月に県の春闘共闘の決起集会があったんですけど、そこでなぜ春闘をがんばるのか、なぜ労働組合が頑張っているのか、なぜ最賃を上げたいのかっていうことを、当事者が発言ができるようにしようとしたんです。いつもは単組でこんな労働条件を勝ち取ったといった活動報告が中心で、その職場のことを知らない人にとっては「よくわかりません」みたいなことになりがちで。ちゃんと思いを、当事者がなぜやりたいのかっていうことを、要は「セルフ」を発言できるようにしようよっていう問題提起をしたんです。


 その議論は県労の常任幹事会で昨年11月ぐらいからやってたんですね。10月末のゆにきゃんにうちの県労連の常幹、執行部も何人か参加していたので、こういう発言を作りたいんだ、こういうふうにしてほしいんだっていうイメージも伝わった手応えがありました。決起集会当日は、そのゆにきゃん参加者の一人だった保育士の方の発言が、ゆにきゃんの学びを活かしたセルフを意識したもので、それがすごく良くて。ほかにもうちの単組の女性が、自分の家庭環境も踏まえて勝ち取りたいんだっていう思いを話してもらったんですよ。それが呼び水になったのか、ほかの発言者の内容も良くて、それで感動的な「よしやるぞ」っていう空気になったんですね。


 10月の中国ブロックゆにきゃんによって発言できる機会が用意され、職場のリーダーとして頑張ってほしいって思う人を結び付ける舞台を整えることができたっていうことで、そういう連動性が今後も生まれてほしいと思います。

 

編集部:みなさんのお話で深まりました。今日は本当にありがとうございました。

 

全員:ありがとうございました。

 

( 月刊全労連2022年8月号掲載 )

 

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