雑草の言葉

一粒万倍

2014/04/23
農業 6
「わずか一粒の種も蒔けば万倍の粒になる」という意味のこの言葉は、小さな物事も伸びれば非常に大きくなる事、または、わずかなものでも粗末にしてはいけないという意味の例えとしても使われます。今回の記事はそのような比喩ではなく言葉そのままの意味「一粒の籾を蒔けば、万倍の米になる」で考えます。この言葉を改めて噛みしめたのは、野口種苗研究所の野口勲さんの著書からです。一本の稲穂には100粒くらいしか籾がつかないので、実際は一粒100倍くらいかな?・・・と思っていましたが、それは稲作の経験のない者の不勉強でした。なんと一本の芽は、成長すると分決(株別れ)をして茎の本数が10本以上(はじめを1本だけにすると、50本以上にもなり得るとの事です。)にもなり、それぞれの稲穂が100粒くらいの籾をつけるのだそうです。だから、一粒万倍とはいかなくても、一粒1000倍以上には普通になるそうです。田植えをしたことがなかったので知りませんでしたが、はじめから何本もの苗をまとめて植えるのだとばかり思っていましたが、実際は植えてから後に株別れするとは新鮮な驚きです。
ちなみに野口のタネのHPによると、菜っ葉の種は、一粒から約一万倍に増えるそうですから、それこそ字面通り一粒万倍です。

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米1粒から一つの稲穂ではない・・・という事実を知って意外だったので、前置きが長くなってしまいましたが、本題に戻ります。稲は一粒万倍とまでは行かなくとも、一粒蒔けば1000粒以上の粒にもなるわけですから、実った稲のごく一部を来年用に回し、9割9分9厘を食用に出来るわけです。稲に限らず、多くの野菜は、来年の為の種用に少し残せば残りは食用に出来たのです。種を食するのでなければ、全部食べても種は残せたのです。種はそのようにして昔から延々と遺伝子を受け継いできたのです。樹木になる実なら、毎年種を蒔かずとも何年間も実がなり、食べられました。・・これが自然の摂理であり、ごく普通の日常でした。
ところが、農家以外の多くの人が知らぬ間に、そんな「普通のこと」ができないような世の中に進んでいるのです。F1品種が流通するようになり、種は自家採種するものから、業者から買うものに変わりました。商用の為に雄性不稔のいわゆる奇形種を増殖させています。そして、まだ実用化されていないとは言え、遺伝子組み換えで、ターミネーターテクノロジーやら、トレーターテクノロジーやら、とんでもない種が作られています。狂った未来を描いたSF映画が現実のものとなりそうな危険が迫っています。

一粒万倍ならずとも、一粒で1年で仮に100倍になるとしても、2年で1万倍、3年で百万倍、4年で1億倍です。・・・これはある意味、指数関数的増加の危険性も示していますが、一方、簡単に盛り返す事も出来ると言う事です。現在日本では、固定種は風前の灯状態です。大規模農家の殆どはF1品種を栽培し、固定種は、一部の有機農家などの小農、家庭菜園をやっている人々が細々とやっていると言うのが現状です。固定種の専門店も、日本に野口種苗一軒だけです。(他にも固定種を扱っているところはあるようですが、固定種の専門店ではないようです。)健全な固定種が絶滅していくのは非常に悲しい事です。是非とも固定種を守るべきです。今すぐにでもF1品種から固定種に切り替えれば、「一粒万倍」ならぬ「一粒百倍」の固定種はどんどん増えて、数年で日本中の畑に実る事でしょう。風前の灯の固定種も、確かな情報を広め、法律を整備するだけで十分に間に合うでしょう。そのような正常な社会に戻るべきです。
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Comments 6

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東京珈琲

世界遺産

富士山が世界文化遺産に登録されましたが、登山者が増え逆にゴミが増えるのではと思います。観光客が落とす銭しか興味がないのです。
そんなものを世界遺産に登録するよりも先祖が代々選別してきた優れた野菜の種を登録すべきです。
農家が固定種を作るというのも大切ですが、固定種は形が不揃いだったり日持ちしなかったりしますので、消費者が知識を持つことも大切です。F1の見た目に騙されない事、地産地消することです。固定種が売れるようになれば作る農家もさらに増えるでしょう。
この季節になると種を蒔きたくてウズウズします。蒔く種を見て毎回関心します。こんな小さい粒が何もない土から食べられる野菜を錬金術のように作るんだと。
当分は種蒔く事もないので少し寂しいです。

2014/04/23 (Wed) 14:01

guyver1092

短期的利益と長期的利益

 F1種は、短期的には利益は大きいのは間違いなさそうですが、隠れた危険は、言われている以外にもあるかもしれませんね。
 少なくとも、大手のアグリバイオ企業に己の生殺与奪の権利を与えてしまうことに他ならないのに、短期的利益をちらつかされると、ほとんどの人がなびいてしまっているのでしょうね。

2014/04/23 (Wed) 20:42

雑草Z

Re:世界遺産

>先祖が代々選別してきた優れた野菜の種を登録すべきです。

なるほど、考えた事はありませんでしたが素晴らしいアイディアですね。確かに各地方に存在する固定種は、かけがえのない遺産です。その地方だけでは無く、世界にとってかけがえのないものとなるでしょう・・・近い将来、危機的状況から世界を救う事になるかも知れませんね。(複合的危機回避は困難ですが・・・)

>固定種は形が不揃いだったり日持ちしなかったりしますので、消費者が知識を持つことも大切です。

大量に使用する業者には、形や大きさが揃っているのは便利でしょうが、一般家庭では気にしないと思います。・・・業者に踊らされている面もあるのでしょう。
ところで、固定種は「日持ちがしない」と言うこともあるのですか??

>こんな小さい粒が何もない土から食べられる野菜を錬金術のように作るんだと。

トマトや蕪(菜っ葉)の種は、ゴマ粒のようで、双葉も本当に小さいですよね!?・・・種の数では無く、種から育つ植物の成体の体積、質量を考えれば、正に「一粒万倍」以上でしょうね。
 野菜は苗を買って来て植えるのではなく、種から蒔いて育てるべきですし、本来はその種も自家採種すべきですね。・・・だからこその固定種。

2014/04/26 (Sat) 08:24

雑草Z

Re:短期的利益と長期的利益

世界中の多くの人間が、短期的利益に群がるのが、現代文明の大きな問題点でしょうね・・・と言うよりも、問題の全てとも言えそうです。

>短期的利益と長期的利益

は、改めて考えなければならない大問題ですね。記事にもすべきです。

>大手のアグリバイオ企業に己の生殺与奪の権利を与えてしまうことに他ならない

本当に危険な行為ですね。遺伝子組み換えなんてその最たるものです。SF小説の世界のような事が現実に起きている恐怖・・・。

2014/04/26 (Sat) 08:30

東京珈琲

日持ち

〉〉ところで、固定種は「日持ちがしない」と言う こともあるのですか??

F1は日持ちするように作られていますから、F1より固定種は日持ちしないものもある、という意味です。葉物、いわゆる軟弱野菜は柔らかい方が食感としては美味しいですから、美味しいものを選別すると柔らかくなります。柔らかいと日持ちしなくなります。F1は店頭に長く綺麗に並べるという点を改良するので固くなり日持ちするうになります。
固いのは化学肥料で一気に成長させるからというのもありますね。旬ではない野菜も固くなったりします。旬ではない野菜は大抵F1です。

2014/04/27 (Sun) 11:16

雑草Z

Re:日持ち

    東京珈琲さん

 固定種とF1の違い、お詳しいですね。

>F1より固定種は日持ちしないものもある、という意味
>F1は店頭に長く綺麗に並べるという点を改良するので固くなり日持ちするうになります。

なるほど、それなら固定種でも日持ちを目標に固い種を選別していくと日持ちも長くなりますね。

今日の野菜はF1のほうが優れている・・・と、プロパガンダされていますが、それはF1で品種改良されていったからであって、固定種も選別しながら品種改良を続けていたなら、もっと優れた・・・味もよく、日持ちもする・・種も作れたでしょうね・・・・そもそも、固定種は種を採取して蒔けばまた同じ品種が生える・・・と言う(当たり前の事ですが)時点で、F1に勝ってますよね。

>固いのは化学肥料で一気に成長させるからというのもありますね。

なるほど、確かにそういうことも言えましょうね。・・・そして、化学肥料で一気に成長させるから、大きいけれど、味が薄い=美味くない・・・と言うことも起こるのでしょうね。

>旬ではない野菜は大抵F1です。

なるほど、参考になります。また固定種とF1に関する色々な情報を教えて下さい。


2014/04/27 (Sun) 22:30
☘雑草Z☘
Admin: ☘雑草Z☘
無理に経済成長させようとするから無理に沢山働かなければなりません。あくせく働いて不要なものを生産して破局に向かっているのです。不要な経済や生産を縮小して、少ない労働時間で質素にゆったり暮らしましょうよ!「経済成長」はその定義からも明らかなように実態は「経済膨張」。20世紀に巨大化したカルト。
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