日毎に敵と懶惰に戦う

酒と食い物と美術と旅と横浜…などの記録。Twitterやってます @zaikabou

サントリー美術館『小田野直武』、立川高島屋『川瀬巴水』、埼玉近美『日本におけるキュビスム』

1月4日、今日が仕事始めの人も多いかもしれませんが、わたしは今日までお休みです。がんこちゃんのエピソード0が凄いという話を聞いて、というかネットで見まして。NHKの動画配信で見る。

兄弟か食べてる食料のキューブが藤子・F・不二雄のSF短編集のカンビュセスの籤を思い出させたり、砂になった兄さんを掃除するロボットが火の鳥のロビタを彷彿とさせる造形だったり、ナウシカ的な世界観を思い起こさせたり、かなり“わかって”やってるなー、感がありました。

10時過ぎに出掛けて、とりあえず初詣、自宅すぐ近くの成田山別院

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伊勢山皇大神宮は、仕事始めの日らしい混雑

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しかし、うちの氏神様はあくまでもお伊勢さんではなく、境内にある子之大神のほうなので、そちらに詣でるのです

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そういや、去年、ここで撮ってアップした写真が元で、不思議なインスタレーションに"ナンパ”されたなー、などと思い出す 

さて、本日はどこを廻ろう。実は青春18きっぷが2回分残っており、1回分は出雲に行った時に使う予定だけれど、1回分が余る。なので、どうせ都内に往復するだけで1000円くらいかかるのだから、今日使ってしまおう、と。

桜木町駅で日付を入れてもらい、まずは有楽町まで。日比谷線に乗り換えて六本木に向かい、マクドナルド始めな昼飯。そしてミッドタウンへ

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サントリー美術館『小田野直武と秋田蘭画』を見る。

年に1度か2度、新しい知識や見識が拡がって、自身の知識体型と複雑に絡まって取り込む快感を味わえる展覧会があるんだけれど、これはまさにそれだった。解体新書の挿絵を担当した、というところからはじまり、平賀源内、本草学、南蘋派、博物図譜と各藩主…江戸中期の歴史周りをも絡めて極めて興味深い展覧会。

小田野直武と秋田蘭画は、数年間花開いた後に突然終焉し、そして歴史からも忘れられる。平賀源内の末路などと合わせて考えると、当時の幕府内部の権力闘争とも深く関係があるんだろうなと。ともかくにも、見逃さなくて良かった。

江戸絵画は昨今大ブームになっているけれど、このあたりについて全然知らなかったな、と思いながら見ていて、昨年、目黒区美術館『色の博物誌』でみた国絵図もあまり知らなかったし、江戸時代の文化は重層的だなあ。

そしてこれだけの画家なのに、地元、秋田県立近代美術館所蔵品が存外少ないのだな、と。1930年頃には、平福百穂が見直していたようなのだが。 横手市の秋田県立近代美術館には行ったことが無い。秋田市の秋田県立美術館にはリニューアル前に行って、藤田嗣治『秋田の行事』を見たね。

近代美術館にも、リニューアル後の美術館にも、いちど、行きたいものですね。

さてさて、美術館を出まして、大江戸線に乗って新宿へ。六本木に来てから、立川の川瀬巴水展がもう始まっていることを思い出しまして、行くなら青春18きっぷを使っている今日だな、と。新宿から中央特快で25分ちょい、立川へ。 

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立川には「くるりん」というキャラクターがいたのか、知らなかった。そして立川高島屋へ。妙に天井が高く広々としていて、建物の規模の割りにエスカレーターが立派で、共産圏のデパートみたいだな、と思いつつ8階まで

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立川高島屋『川瀬巴水展』は、状態の良い川瀬巴水の新版画が140点あまりで見応えがあり、雨や雪や夜の表現でもそれぞれに異なって描き分ける川瀬巴水の面白さなど、存分に楽しめる内容だった。特に今回、初刷りが数十点、後刷りは100点以上展示販売されており、実際に購入できるところも素晴らしい。

ちなみに川瀬巴水作品、初刷りなら40〜100万、小作品なら5〜10万円で購入できるし、同じ版木を使った後刷りなら、5万円以下で手に入るのでわりと手が届く範囲。すでに初刷り芝増上寺の作品など、早々に売れてしまった作品もいくらかあるらしい。この機会にいかがでしょう。

今回の川瀬巴水展には、電通が戦前に発行していた月刊誌の表紙に使われた作品もあり、日本的な背景にサンタクロースがいたり面白い。ポストカードを購入。

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今回、大量のポストカード、川瀬巴水ラベルの多摩地区醸造元5社の展覧会限定日本酒、額装されたクリアファイルだの、お土産も充実していたのだった。

ただ…川瀬巴水は、電柱や電線や近代的な橋や、寺社を背景に車とか、様々に近代的なものも描かれているのも面白さの重要な部分だと思うのだが、新版画協会の会長が冒頭の挨拶文ではやたらと日本のこころを強調したり、伝統的な風景の作品ばかりフューチャーしたがるのが気に入らない。

立川を出て、また中央特快にのって、ついでだから少し遠方の美術館に行っておこうか…と、中野を過ぎたあたりで、埼玉県立近代美術館のことを思い出す。新宿で埼京線、赤羽で京浜東北線に乗り換えて北浦和まで。

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埼玉県立近代美術館『日本におけるキュビスム』を見る。1910〜20年代、1950年代と、日本でキュビスムの影響を受けて作品が数多く製作された2つの時代のムーブメントを、33人もの作家の作品を並べて見せる興味深い内容。キュビスムとは縁のなさそうな画家も多く、ピカソのインパクトの強さを物語る。

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一時的にキュビスムに影響された作品を作った作家も多く、これだけ作品が生み出されながら、その後の日本の美術の潮流にあまり影響を与えていない部分を含めて、ほんとに「流行り」だったのだな、という感じがあり。日本全国の美術館から多数作家の作品が集められていて、美連協が良い仕事した、という構成だった。

そんなこんなを含めて、埼玉県立近代美術館らしい、地味ながら良い仕事感がある丁寧な展覧会だった。作品のキャプションも非常に詳しく、読みでがある。コレクション展では「絵画と彫刻の間」というキュビスム展とセットに相応しい特集もあり、合わせて見ておきたい内容。

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すっかり日も暮れて

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商店街の横内酒店は本来は水曜定休なのだけれど、正月明けで臨時営業。花陽浴はぜんぶ売り切れでしたけどね。まんさくの花を購入。

北浦和から京浜東北線、浦和で上野東京ラインに乗り換え。今日こそは「かどや」に行こうかと思ったけれど、曳舟、押上、いずれにしても乗換えが面倒だし、バス路線も適当なものが無い。ちょっと心が折れまして、そもそも、築地は明日からなんだから今日は肴もイマイチだろう、と。

そのまま電車に乗り続けて横浜に出て、関内へ。年明け本日よりの関内『千花庵』にて、お酒は竹鶴、おでん、かもねぎ

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と、ややあってご近所さんも来て、一緒に小酒宴。蕎麦で〆て、さらにアンテナアメリカにはしごし、7連休は終わったのでした。この7日間の平均歩数は18,000歩くらいですね、よく歩きました。

在華坊(@zaikabou)/2017年01月04日 - Twilog