読書感想:魔剣少女の星探し 十七【セプテンデキム】

 

 さて、時に画面の前の読者の皆様は戦う女の子はお好きであろうか。長期シリーズとしては、プリキュアシリーズも戦う女の子、のお話であるし、最近だとリコリコこと、リコリス・リコイルも戦う女の子のお話である。激しい戦いの場を潜り抜ける女の子達、というのは一種美しさを持っているかもしれない。と言う訳でこの作品も、戦う女の子達のお話なのだ。

 

 

 

といってもこの作品、コンセプト的には「ファンタジー×リコリス・リコイル×剣豪小説」というとんでもないミックスぶりな訳なのだが。しかし、この作品は筋が通った面白さがあるのである。

 

世界に一つだけ存在する大陸を四等分する四つの大国、北方連邦国、東方大公国、南方王国、西方皇国。この国たちが、二千年以上争い合って、何の前触れもなく争いが終わったこの世界。

 

「もはや魔剣一本で功成り名を遂げ、家を再興するような時代ではない」

 

この戦争の主役となったのが、それぞれ超常的な力を持つ「魔剣」。だが戦後、四つの国が結んだ条約により魔剣使いの数と質に制限がかけられ、制限を超えた魔剣は召し上げられ。魔剣を手放せぬ者や罪人たちは大陸中央の緩衝地帯、唯一魔剣を携帯できる街、セントラルに集う。この都市に南方王国からやってきたのが主人公であるリット(表紙)。十七の刀身から成る魔剣、「十七」を駆る彼女が、師匠でもある母親から託されたのは魔剣使いとして名をあげる事。だが最早そんな時代は終わってしまった。道に居た魔剣使いからも、泊まる事にした宿屋の看板娘、ミオンにも諭される中。はぐれの魔剣使いによる襲撃事件に遭遇、更には賊として勘違いされ何とか誤解は解いたら、襲撃の原因となったはぐれの魔剣を見せられ、所有権を巡る決闘裁判に出ることに。

 

「踊りましょう?」

 

そこに現れたのは、こちらもひょんな事から決闘裁判に出ることになった北方連邦国の貴族の娘、クララ。重さと軽さを自在に操る魔剣、「山嶺」を操る彼女とまるで踊るように戦う中、感じていく楽しさと気づく母の言葉の意味。だがそこへ魔剣を狙っていた賊の一人、ソフィアが襲撃をかけてきて。二人がかりで何とか止め、魔剣は守るも、衝撃の内容を教えられる。

 

「このままだと世界が滅びるかもしれないんだ」

 

それは決闘裁判で争われていた魔剣は、七つの厄災と魔物の軍勢を追い払って聖なる門を封じるのに使われた「鍵の魔剣」の一つ、という事。にわかには信じがたい話、しかしそこでリットもクララも何故かあらぬ疑いをかけられて逃げる事となり。ミオンに保護され、まずはお互いの事情を話す事にする。

 

魔剣戦争を裏で操っていた「結社」と呼ばれる組織の一員だったソフィア、複雑なお家事情を抱えたクララ、実は母親に秘密があったリット。それぞれ訳あり、と分かり、友情が芽生え。

 

「なんか嬉しいね、そういうの」

 

それぞれ、魔剣戦争の終結に運命を狂わされた彼女達。共に「一蓮托生」、の身として何かの儀式をしようとしている黒幕を追う。だがその中、儀式は行われ魔物の軍勢が襲来、更には七つの厄災の一つ、「傲慢」が不完全な形ながら顕現してしまう。

 

「わからないでしょう。ならば覚えておきなさい」

 

鍵となるのはソフィアの魔剣の力、そこまで届かせるのはクララの魔剣の力。だが「傲慢」は魔剣の力が通らぬ。ならばそこまで切り開くのはリットの剣。母より受け継いだ天下の剣。

 

「今日から、わたくし達は三人で一つ」

 

そして新たな日々が始まって。三人で作った新たなギルド。この三人に、実は魔剣使いなミオンも加えて四人の、いずれ伝説となる英雄譚が幕を開けるのだ。

 

正に王道無敗、大胆に真っ直ぐ、心踊るこの作品。文句のつけようがないファンタジーを見てみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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