“奇跡の薬”から一転した薬
ステロイドは、Mayo ClinicのE.Kendall、Basel大学のT.Reichesteinによって分離・精製が行われ、これをMayo ClinicのP.Hench博士がリウマチ治療に臨床応用されました。 1948年当時にリウマチで寝たきりとなり苦しむ患者さんにコーチゾン(ステロイドホルモン剤)を内服させたところ、翌朝にはベッドの横でダンスを踊っていたという、この逸話が当時のニューヨーク・タイムズ新聞に“奇跡の薬”として取り上げられました。当初はリウマチに対する高い有効性が報告されたことも相まって、P.Hench博士は1950年にノーベル医学生理学賞を受賞しました。
リウマチに悩んでいたフランスの画家R.Dufy(1877-1953)はこのニュースを聞き、大西洋を渡り、Mayo Clinicでコーチゾンによる治療を受けました。しかし、彼はその後ステロイド潰瘍と思われる消化管出血で死亡することとなりました。
リウマチの関節痛に対するステロイドの効果以上に、糖尿病、全身性浮腫、肺炎などの感染症、骨粗鬆症、胃潰瘍、精神的症状などのステロイドの副作用が際立つようになってしまい、“奇跡の薬”から一転し、一時的に痛みから解放された後“死を早める薬”の扱いになってしましました。
P.Hench博士達は、リウマチで苦しむ方々に対し、何とか効果的な薬をお届けしたい一心で、研究・臨床に没頭されておりました。ただ、当時にはその薬理作用や副作用に関する研究が十分なされなかったため、そのような扱いをされてしまい、本当に無念であったと思います。
ステロイドの適切な使用方法
ステロイドは、疾患によってはその投与によって疾患活動性が抑えられ、通常に近い生活を送れ、今でも重要な治療薬であることには疑う余地はありません。
現在でもステロイドによって、コントロールされている多くの疾患がありますが、ステロイド投与の適否・投与量については慎重に判断されており、極力副作用に悩まされないよう配慮がなされています。
リウマチに対するステロイドの使用は
●症状が極めて高く、MTXや生物学的製剤などの効果発現までの期間限定
●妊娠・授乳中など他の薬剤を使用できない期間限定
など、その使用期間が決まって使われるはずです。
たとえステロイドを一時的に飲むことはあっても、漫然と内服し骨粗しょう症をはじめとする副作用に悩まされてはいけません。
ステロイドの副作用
骨粗しょう症、感染症、糖尿病、胃潰瘍 など
やむを得ない方を除き、リウマチ治療でのステロイドは減量~中止していかなければならない薬です。
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