ゆかりごはんの縁結び -読書記録-

とにかく面白い小説が読みたい…!

2024年 最高の小説ランキングbest50(初読本のみ)

どうも、ゆかりごはんです。

2024年の読了本はちょうど200冊。その中で、個人的に面白かった初読本を50冊ほど紹介したいと思います。年末の暇つぶしにでも読んでいただけたら幸いです。

 

50位 ハサミ男/殊能将之

美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。3番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する羽目に陥る。自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。「ハサミ男」は調査をはじめる。精緻にして大胆な長編ミステリの傑作! 【2005年公開映画「ハサミ男」原作】(講談社文庫)

連続美少女殺人鬼、通称・ハサミ男の正体は
鋭利に磨かれたハサミを死体の首につきたてる殺人鬼。通称・ハサミ男がねらった美少女が殺された。しかも、ハサミ男の手口で――。圧倒的知力に満ちた傑作長編。

 

日本中を震撼させた伝説のミステリ長編作品が50位にランクイン。間違いなく傑作ではあるのだが、今年の読了作品はかなりレベルが高かったため、50位という結果に。

「どんでん返し」が凄い作品と聞いていたので、全てを疑いながら読み進めていたのだが、見事にひっくり返された。いやぁ、やられたなぁ。可能な限り情報を入れずに読んでほしい傑作ミステリ。

 

49位 手作り雑貨ゆうつづ堂/植原翠

祖母が大切にしていた鉱物の本に触れると――パワーストーンに宿る精霊が見えるように!?

「一瞬で私の心を晴れやかにしてくれるおばあちゃんはきっと、魔法使いだ!」

小さい頃から祖母が営む手作り雑貨店が好きで、いつか祖母のように想いのこもった雑貨を作ってみたいと思っていた詩乃。
念願叶って大手雑貨メーカーの商品開発部に就職した。
しかし、とある事情で会社を辞めることにした彼女は、気分転換のために自身の原点である祖母のお店『手作り雑貨 ゆうつづ堂』に行くことにした。
そこで、祖母が大切にしていた鉱物の本をレジカウンターで見つけてページをめくると――パワーストーンに宿る精霊が見えるように!?
想いのこもったパワーストーンには精霊が宿り、“小さな一歩を後押ししてくれる”。

パートナーになった白水晶の精霊・フクと共に、祖母の大事なお店を守っていくあたたかな物語

 

仕事を辞めて祖母の雑貨屋を切り盛りする女性が、お客様や天然石の精霊たちと触れ合うことで成長していく、ハートフルストーリー。とにかく精霊たちがキュートでチャーミング。読んでいるだけで、汚れ切った心が洗われていく感覚が味わえる。

仕事で疲れた人、心が荒み切った人、何か嫌なことがあって落ち込んでいる人、そんな人こそ手に取ってみてほしい。文句なしの名作です。おススメ。

 

48位 アガシラと黒塗りの村/小寺無人

「裏山の神社で見つかった古文書を解読してくれ」
親友から依頼を受け出向いた先は、巨人伝説の残る奇妙な村だった…


古文書オタクの黒木鉄生は、大学時代の親友・八重垣志紀に頼まれ、村で発見された「沼神文書」と呼ばれる古文書を解読するために巨人伝説が残る農村を訪れた。村に到着したその夜、セイタカ様と呼ばれる巨大な地蔵の前で、議会議員の息子・島田光男が殺害された。さらに2日後には、こしかけ山と呼ばれる場所で八重垣の義妹・咲良の幼馴染が首を吊った状態で見つかる。
「沼神文書」の解読作業を進める黒木は、村と村人の秘密、2人の死の真相に迫ることになり…。第2回黒猫ミステリー賞受賞! 一気読み必至の民俗伝承ミステリー。

 

黒猫ミステリー賞を受賞した傑作民俗学ミステリ小説が48位にランクイン。デビュー作とは思えない完成度を誇り、民俗学ミステリの入り口としておススメしたい、文句なしの傑作。

理性では理解し難い風習にゾワゾワとした違和感、まさに民俗学ミステリでしか味わえない感覚。あぁ、たまらない。コーラを片手に本作を読むことを強くおススメします。

アガシラと黒塗りの村

アガシラと黒塗りの村

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47位 黒牢城/米澤穂信

祝 第166回直木賞受賞!

本能寺の変より四年前、天正六年の冬。織田信長に叛旗を翻して有岡城に立て籠った荒木村重は、城内で起きる難事件に翻弄される。動揺する人心を落ち着かせるため、村重は、土牢の囚人にして織田方の智将・黒田官兵衛に謎を解くよう求めた。事件の裏には何が潜むのか。戦と推理の果てに村重は、官兵衛は何を企む。デビュー20周年の集大成。『満願』『王とサーカス』の著者が辿り着いた、ミステリの精髄と歴史小説の王道。

 

あの天才ミステリ作家・米澤穂信先生が描く時代劇ミステリ小説が面白くない訳がない。時代小説を読むのは本作が初めてだったのだが、とにかくストーリーが面白すぎて、古風な文体も全く苦にならないまま一気読みしてしまった。

今年は米澤穂信先生の作品を多く読了したため、この後のランキングで何度も「米澤穂信」の名前が登場するのだが、どうか勘弁願いたい。だって、この先生が書いた小説って超面白いんだもん…。仕方ないよ。

 

46位 でぃすぺる/今村昌弘

『屍人荘の殺人』の著者が仕掛ける
ジュブナイル×オカルト×本格ミステリ

小学校最後の夏休みが終わった。小学校卒業まであと半年。
ユースケは、自分のオカルト趣味を壁新聞作りに注ぎ込むため、“掲示係”に立候補する。この地味で面倒だと思われている掲示係の人気は低い。これで思う存分怖い話を壁新聞に書ける!……はずだったが、なぜか学級委員長をやると思われたサツキも立候補する。

優等生のサツキが掲示係を選んだ理由は、去年亡くなった従姉のマリ姉にあった。
マリ姉は一年前の奥神祭りの前日、グラウンドの真ん中で死んでいた。現場に凶器はなく、うっすらと積もった雪には第一発見者以外の足跡は残されていなかった。犯人はまだ捕まっていない。

捜査が進展しない中、サツキはマリ姉の遺品のパソコンの中に『奥郷町の七不思議』のファイルを見つける。それは一見地元に伝わる怪談話を集めたもののようだったが、どれも微妙に変更が加えられている。しかも、『七不思議』のはずなのに六つしかない。

マリ姉がわざわざ『七不思議』を残したからには、そこに意味があるはず。
そう思ったサツキは掲示係になり『七不思議』の謎を解こうとする。ユースケはオカルト好きの観点から謎を推理するが、サツキはあくまで現実的にマリ姉の意図を察しようとする。その二人の推理を聞いて、三人目の掲示係であるミナが冷静にジャッジを下す……。

死の謎は『奥郷町の七不思議』に隠されているのか? 三人の“掲示係”が挑む小学校生活最後の謎。
こんな小学6年生でありたかった、という思いを掻き立てる傑作推理長編の誕生です。

 

小学生であるが故の行動制限がある中で、マリ姉の死の謎を明らかにすべく事件の闇に切り込んでいく3人組にハラハラドキドキさせられた作品。『七不思議』を解き明かしていく過程も楽しめたし、予想の裏の裏をかいた結末も見事。

僕はあまり本格系のミステリ作品が得意ではないのだけれど、今村昌弘先生のミステリ作品は何故か楽しんで読めてしまう。不思議だ…。

 

45位 滅びの園/恒川光太郎

ある日、上空に現れた異次元の存在、<未知なるもの>。
それに呼応して、白く有害な不定形生物<プーニー>が出現、無尽蔵に増殖して地球を呑み込もうとする。
少女、相川聖子は、着実に滅亡へと近づく世界を見つめながら、特異体質を活かして人命救助を続けていた。
だが、最大規模の危機に直面し、人々を救うため、最後の賭けに出ることを決意する。
世界の終わりを巡り、いくつもの思いが交錯する。壮大で美しい幻想群像劇。

 

最高に面白い伝説級のSF群像劇小説。単巻で読みやすいにもかかわらず、内容はかなりハードなSFであり、極太なプロットを簡潔にまとめ切った恒川先生の手腕には惚れ惚れするばかりである。

恒川光太郎先生といえば、日本ホラー小説大賞受賞作である『夜市』が最も有名で人気だとは思うのだが、個人的には本作のような異世界SF作品の方が好み。SF初心者にもおススメ。

 

44位 ひゃっか!全国高校生花いけバトル/今村翔吾

かるた、書道、なぎなた、次は……生け花!
花を愛する女子高生・春乃と大衆演劇の花形・山城貴音のコンビが頂点を狙う!
シリーズ累計30万部突破「羽州ぼろ鳶組」で大注目の著者が贈る青春ドラマ!

都内に住む普通の高校二年生、大塚春乃。彼女は昨年の「全国高校生 花いけバトル」決勝を見て以降、この大会に出ることが目標になっていた。香川に住む花屋だった祖母を喜ばせたい一心で始めた生け花だったが、祖母の地元で行われるこの大会で活躍する姿を見せられれば、大好きだった祖父が亡くなり落ち込む祖母を元気づけられると思ったのだ。
しかし、高校生にとってはマイナーで敷居の高い「生け花」をやってくれる友人はなかなかおらず、二人一組での出場が義務付けられているため、春乃はそこから躓いてしまう。そんな中、参加者を捜していた春乃の前に現れた転校生・山城貴音。父が大衆演劇の座長だという彼は、その修業で華道を習っており、春乃が勉強を教える代わりに大会に出てくれるというのだが……。
高校生たちの花にかける純粋な思いがきらめく、極上の青春小説。

 

近頃、『イクサガミ』シリーズで大注目されている直木賞作家・今村翔吾による、熱血青春生け花ストーリー。花の描写が丁寧で美しく、文章から美麗な生け花作品が次々と飛び出してくる。

もちろん、青春物語としても至高の完成度を誇っており、日本一を目指す男女コンビの熱意と成長と愛情に心が震える極上のエンタメ小説。万人におススメできる傑作。読んでない方は是非手に取ってみてほしい。

 

43位 成瀬は天下を取りにいく(成瀬シリーズ)/宮島未奈

2020年、中2の夏休みの始まりに、幼馴染の成瀬がまた変なことを言い出した。
コロナ禍に閉店を控える西武大津店に毎日通い、中継に映るというのだが……。
M-1に挑戦したかと思えば、自身の髪で長期実験に取り組み、市民憲章は暗記して全うする。
今日も全力で我が道を突き進む成瀬あかりから、きっと誰もが目を離せない。
2023年、最注目の新人が贈る傑作青春小説!

 

今更紹介するのも憚られるほどの大ヒット小説。本屋大賞を見事受賞し、文字通り天下を取った成瀬シリーズが43位にランクイン。

世間では、成瀬の変人的な魅力にスポットが浴びせられがちだが、個人的には島崎が本シリーズのMVPだと思っている。2作目『成瀬は信じた道をいく』もめちゃくちゃ面白いので、1作目しか読んでいない方は2作目も読むべし。

 

42位 私のクラスの生徒が、一晩で24人死にました。/日向奈くらら

教室で起こる猟奇殺人。五感を恐怖で震わせる衝撃のホラーサスペンス登場!

二年C組の問題の多さには、呆れますね――教頭の言葉が突き刺さる。また私のクラスの生徒が行方不明になった。これでもう四人だ。私はその失踪にあの子が関係しているのではないかと恐れている。宮田知江。ある時から急に暗い目をするようになった女生徒だ。私は彼女の目が恐い。でもそんなことは、これから始まる惨劇に比べれば些細なこと。なぜなら私は、夜の教室で生徒24人が死ぬ光景を目にすることになるのだから……。
イチゴミルク好きという著者が描く、一通のメールから始まる死の連鎖。
「リング」「らせん」の鈴木光司氏推薦――「この恐ろしさは、ねっとりしている 鈴木光司」
新しいホラーサスペンス「嫌ホラー」誕生。

 

タイトルに偽りなし。マジでいきなり生徒が24人死ぬところから始まる、超絶イカれたホラーサスペンス小説。先に言っておくが、万人受けは絶対にしない。

正直言って真相はかなり無理があり、矛盾も多々見受けられるため、好き嫌い別れる迷作ではあるのだろうが、疾走感のあるグロ描写が大好きな僕にとってはたまらない作品だった。

 

41位 この素晴らしき世界/東野幸治

真面目でど天然な愛すべき西川きよし師匠。ダウンタウン浜田さんに耳たぶをいじられるほんこんさん。何もかもが用意周到、嫉妬が原動力の山里亮太君。本気で客にキレてるのになぜか許されるメッセンジャー黒田君。突然渡米、スケールのでかいバカっぷりで突き進むピース綾部君。「水曜日のダウンタウン」で話題の還暦バイト芸人リットン調査団。常にどこかふざけてる女・ガンバレルーヤよしこ。ホノルルマラソンで驚異的なリタイアをしたトミーズ健さん。やることすべて無茶苦茶、乱だらけの極楽とんぼ加藤。
……吉本歴30年超の「日本一心のない司会者」が、底知れぬ芸人愛と悪い笑顔で、吉本(と元吉本)芸人31人をいじり倒す!

 

下劣で腹黒な芸人:東野幸治の視点から芸人の生き様をまとめた、抱腹絶倒必至の最強娯楽エッセイ。関西育ちで芸人好きな僕の感性にぶっ刺さる超絶爆笑本。

芸人という皮を被った異常者たちが織り成すイカれたエピソードの数々に、僕の腹筋はなすすべもなく崩れさった。とにかく笑いたい人におススメ。

 

40位 硝子の塔の殺人/知念実希人

雪深き森で、燦然と輝く、硝子の塔。
地上11階、地下1階、唯一無二の美しく巨大な尖塔だ。
ミステリを愛する大富豪の呼びかけで、
刑事、霊能力者、小説家、料理人など、
一癖も二癖もあるゲストたちが招かれた。
この館で次々と惨劇が起こる。
館の主人が毒殺され、
ダイニングでは火事が起き血塗れの遺体が。
さらに、血文字で記された十三年前の事件……。
謎を追うのは名探偵・碧月夜と医師・一条遊馬。
散りばめられた伏線、読者への挑戦状、
圧倒的リーダビリティ、そして、驚愕のラスト。
著者初の本格ミステリ長編、大本命!

 

完成度が異次元の本格ミステリ小説。ミステリ好きのミステリ好きによるミステリ好きのための小説であり、隙あらば超有名ミステリ作品の小ネタが挟まってくる。

トリックは自力で解けたため、「こんなもんかぁ」と思っていたら、最後で見事にひっくり返され驚愕。本格ミステリが苦手な僕でも超絶楽しめたので、普段ミステリ小説を読まない人にもおススメしたい。文句なしの傑作。

 

39位 ヨモツイクサ/知念実希人

「黄泉の森には絶対に入ってはならない」
人なのか、ヒグマなのか、禁域の森には未知なる生物がいる。
究極の遺伝子を持ち、生命を喰い尽くすその名は――ヨモツイクサ。

北海道旭川に《黄泉の森》と呼ばれ、アイヌの人々が怖れてきた禁域があった。
その禁域を大手ホテル会社が開発しようとするのだが、作業員が行方不明になってしまう。
現場には《何か》に蹂躙された痕跡だけが残されてた。
そして、作業員は死ぬ前に神秘的な蒼い光を見たという。

地元の道央大病院に勤める外科医・佐原茜の実家は黄泉の森のそばにあり、
7年前に家族が忽然と消える神隠し事件に遭っていて、今も家族を捜していた。
この2つの事件は繋がっているのか。もしかして、ヨモツイクサの仕業なのか……。

本屋大賞ノミネート『ムゲンのi』『硝子の塔の殺人』を超える衝撃
医療ミステリーのトップランナーが初めて挑むバイオ・ホラー!

 

知念先生の作品が連続でランクイン。北海道を舞台とした旋律のバイオホラー作品であり、グロい!怖い!キモイ!がぎゅうぎゅうに詰め込まれた大満足な一冊。

構成も巧みで、ラスト付近のある1ページで脳が震えるほどの衝撃を受けた。これは天晴。グロ耐性があり、刺激に飢えている人に超おススメ。

 

38位 満願/米澤穂信

死にたい人たちのあいだで、随分評判らしいのよ。

磨かれた文体と冴えわたる技巧。この短篇集は、もはや完璧としか言いようがない――。驚異のミステリー3冠を制覇した名作。

「もういいんです」人を殺めた女は控訴を取り下げ、静かに刑に服したが……。鮮やかな幕切れに真の動機が浮上する表題作をはじめ、恋人との復縁を望む主人公が訪れる「死人宿」、美しき中学生姉妹による官能と戦慄の「柘榴」、ビジネスマンが最悪の状況に直面する息詰まる傑作「万灯」他、「夜警」「関守」の全六篇を収録。史上初めての三冠を達成したミステリー短篇集の金字塔。山本周五郎賞受賞。

はい出ました。米澤穂信作品の中でもかなり人気のある、最強で最高のミステリ短編集。もうね、これを読まずにミステリ短編は語れませんよ。マジで面白い。

ただ、個人的には『柘榴』という短編だけ少し苦手なので、総合順位としては38位となってしまった。女性同士のドロドロ話って、胸が苦しくなるからちょっと苦手なんですよね…。

 

37位 失はれる物語/乙一

乙一の里程標(マイルストーン)として屹然と立つ短篇集!

事故で全身不随となり、触覚以外の感覚を失った私。ピアニストである妻は私の腕を鍵盤代わりに「演奏」を続ける。絶望の果てに私が下した選択とは? 珠玉7作品に加え書き下ろしの「ウソカノ」を収録!

 

切なさの余韻を感じさせる短編集。すべての話において、決定的な何かが失われていく。とにかく切なくて、読んでいて苦しい。だけれども、読後感は決して悪くなく、心が何かで満たされた感覚が残る。

短編とは思えないほどの満足感が得られる傑作短編集。乙一作品の入り口として、本作を強くおススメしたい。

 

36位 ZOO/乙一

何なんだこれは。

 

連続乙一作品。あらすじはなぜかコピペできなかったので、帯に書いてある書評から持ってきた。正直何を読まされているのか途中でわからなくなるのだが、とにかくめちゃくちゃ面白い。

グロい話から笑える話、感動できる話からサイコパスによる奇行話まで、ありとあらゆるジャンルの短編が詰め込まれており、乙一先生の才能が余すことなく発揮されている傑作短編集。読まなきゃ損。

 

35位 かにみそ/倉狩聡

それは聡明で無垢で愛おしい、蟹。日本ホラー小説大賞優秀賞受賞の話題作!

全てに無気力な20代無職の「私」は、ある日海岸で小さな蟹を拾う。
それはなんと人の言葉を話し、小さな体で何でも食べる。
奇妙に楽しい暮らしの中、私は彼の食事代のため働き始めることに。
しかし私は、職場で出来た彼女を衝動的に殺してしまう。
そしてふと思いついた。
「蟹……食べるかな、これ」。
すると蟹は言った。
「じゃ、遠慮なく……」
捕食者と「餌」が逆転する時、生まれた恐怖と奇妙な友情とは。
話題をさらった「泣けるホラー」。

 

日本ホラー小説大賞優秀賞を受賞した中編ホラー小説。図書館で表紙を見かけて一目惚れした作品。

表紙はかわいらしいが、内容はかなりシリアスでグロテスク。だけれども、漂う雰囲気は切なくて物悲しく、ラストは少しホロリと来る。ホラーが苦手な人でも間違いなく楽しめる傑作ホラー。

 

34位 冷蔵庫のように孤独に

14歳の時、ピアノを嫌っていた美咲が出逢ったのは、老齢の父と住むピアノの先生だった。彼女は、発想記号を理解する時は空き地に捨てられた冷蔵庫を思い浮かべればいいと不思議なことを言う。ピアノを好きになる美咲だが、先生には暗い過去があるようで……

 

1枚の冷蔵庫の写真から始まる、温かくも切ないヒューマンドラマミステリ。表紙も綺麗で美しく、部屋に飾りたくなる小説。

心理描写がとにかく繊細で、過去の自分を抱えながら、前に一歩踏み出そうとする主人公の姿に感動。冷蔵庫を軸としたミステリ要素も見事。自分らしく生きることの大切さを学べる作品であり、多くの人に手に取ってほしい大傑作。

 

33位 バスタブで暮らす/四季大雅

22歳女子、実家のバスタブで暮らし始める。

「人間は、テンションが高すぎる」ーー

磯原めだかは、人とはちょっと違う感性を持つ女の子。
ちいさく生まれてちいさく育ち、欲望らしい欲望もほとんどない。物欲がない、食欲がない、恋愛に興味がない、将来は何者にもなりたくない。できれば二十歳で死にたい……。

オナラばかりする父、二度のがんを克服した母、いたずら好きでクリエイティブな兄、ゆかいな家族に支えられて、それなりに楽しく暮らしてきたけれど、就職のために実家を離れると、事件は起こった。上司のパワハラに耐えかね、心を病み、たった一ヶ月で実家にとんぼ返りしてしまったのだ。

逃げ込むように、こころ落ち着くバスタブのなかで暮らし始めることに。マットレスを敷き、ぬいぐるみを梱包材みたいに詰め、パソコンや小型冷蔵庫、電気ケトルを持ち込み……。さらには防音設備や冷暖房が完備され、バスルームが快適空間へと変貌を遂げていく。

けれど、磯原家もずっとそのままというわけにはいかなくて……。

「このライトノベルがすごい!2023」総合新作部門 第1位『わたしはあなたの涙になりたい』の【四季大雅×柳すえ】のコンビで贈る、笑って泣ける、新しい家族の物語。

 

タイトルも表紙も僕好みすぎるラノベ作品。上司のパワハラに心を壊された主人公が、実家のバスタブの中で暮らし始める物語。

自分らしく生きることの重要性、家族や友達の大切さを学べる温かい作品であり、現代社会に生きづらさを感じている人のもとにこそ届いてほしい小説。気になる方は、是非手に取ってみてほしい。

 

32位 恋に至る病/斜線堂有紀

僕の恋人は、自ら手を下さず150人以上を自殺へ導いた殺人犯でした――。

やがて150人以上の被害者を出し、日本中を震撼させる自殺教唆ゲーム『青い蝶』。
その主催者は誰からも好かれる女子高生・寄河景だった。
善良だったはずの彼女がいかにして化物へと姿を変えたのか――幼なじみの少年・宮嶺は、運命を狂わせた“最初の殺人”を回想し始める。
「世界が君を赦さなくても、僕だけは君の味方だから」
変わりゆく彼女に気づきながら、愛することをやめられなかった彼が辿り着く地獄とは?
斜線堂有紀が、暴走する愛と連鎖する悲劇を描く衝撃作!

 

自殺教祖サイトを運営する殺人鬼を彼女に持つ男の葛藤を描いた物語。題材としてはありがちではあるのだが、とにかく話の転がし方が上手で、読者の判断に委ねるラストも本作品においては最高と言わざるを得ない。

実は本作が初斜線堂先生作品であり、これを機に他の作品も何冊か読んだのだが、本作が断トツで一番面白かった。やっぱりミステリアスでサイコパスな女性って良いよね…。

 

31位 〔少女庭国〕/矢部嵩

卒業式会場に向かっていた中3の羊歯子は――暗い部屋で目覚めた。隣に続くドアには貼り紙が。“下記の通り卒業試験を実施する。ドアの開けられた部屋の数をnとし死んだ卒業生の人数をmとする時、n-m=1とせよ”。ドアを開けると同じく寝ていた中3女子は無限に目覚め、中3女子は無限に増えてゆく……。

 

ここに来て、ようやく矢部嵩先生の作品がランクイン。超絶ド級の問題作を生み出し続ける唯一無二の天才作家が繰り出す、地獄を体現した最高で最低の超絶劇薬本。

少女たちが生き延びるには、協力し合うしか道は残されていない。しかし、食料や道具は"少女"で補うしかない訳で…。文体も独特で読みづらく、暴力描写も最高にグロいが、読んでいる間は快楽物質がドパドパ出てくる不思議な作品。おススメは…できないかも笑

 

30位 夜は短し歩けよ乙女/森見登美彦

「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」は、京都のいたるところで彼女の姿を追い求めた。二人を待ち受ける珍事件の数々、そして運命の大転回とは? 山本周五郎賞受賞、本屋大賞2位の傑作、待望の文庫化!

 

偏屈でどうしようもない大学生を書かせたら右に出るものはいない天才作家・森見登美彦先生が織り成す、キュート?でポップ?な全力おバカ恋愛小説。

訳の分からないキャラたちが、訳の分からない世界観で、訳の分からない行動を取る、訳の分からない作品であり、頭の中を訳のわからないエンタメ成分で満たしたいという欲求をお持ちの方に全力でおススメしたい作品。

 

29位 屍人荘の殺人/今村昌弘

神紅大学ミステリ愛好会会長であり『名探偵』の明智恭介とその助手、葉村譲は、同じ大学に通う探偵少女、剣崎比留子とともに曰くつきの映画研究部の夏合宿に参加することに。合宿初日の夜、彼らは想像だにしなかった事態に遭遇し、宿泊先の紫湛荘に立て籠りを余儀なくされる。全員が死ぬか生きるかの極限状況のもと、映研の一人が密室で惨殺死体となって発見されるが、それは連続殺人の幕開けに過ぎなかった。――たった一時間半で世界は一変した。究極の絶望の淵で、探偵たちは生き残り謎を解き明かせるのか?! 予測不可能な奇想と破格の謎解きが見事に融合する、第27回鮎川哲也賞受賞作。

 

『でぃすぺる』に続いて、2作目の今村昌弘作品がランクイン。今村昌弘作品の原点にして、最高にエンタメしている本格?ミステリ小説。

超絶危機的な状況で推理を披露しているシーンで笑ってしまうが、トリックや構成は見事としか言いようがない。有栖川有栖先生が絶賛したのも頷ける超傑作。できればネタバレなしで読んでほしいが…もう難しいだろうなぁ。

 

28位 かがみの孤城/辻村深月

学校での居場所をなくし、閉じこもっていた“こころ”の目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。 輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。 そこにはちょうど“こころ”と似た境遇の7人が集められていた―― なぜこの7人が、なぜこの場所に。 すべてが明らかになるとき、驚きとともに大きな感動に包まれる。 生きづらさを感じているすべての人に贈る物語。

 

もはや貫禄すら感じる名作家・辻村深月先生の代表作。面白すぎて、次の日は会社の会議で進捗報告義務があったにもかかわらず、徹夜で読み切らされてしまった罪深き傑作。

ちなみに、本作はかなり世間の評価が高く、あたかも万人受けするかのように宣伝されてはいるが、その実かなり人を選ぶ作品であると僕は思っている。いじめにトラウマがある人は、途中で読むのが辛くなるかも…。

 

27位 誰が勇者を殺したか/駄犬

勇者は魔王を倒した。同時に――帰らぬ人となった。

 魔王が倒されてから四年。平穏を手にした王国は亡き勇者を称えるべく、数々の偉業を文献に編纂する事業を立ち上げる。
 かつて仲間だった騎士・レオン、僧侶・マリア、賢者ソロンから勇者の過去と冒険話を聞き進めていく中で、全員が勇者の死の真相について言葉を濁す。
「何故、勇者は死んだのか?」
 勇者を殺したのは魔王か、それとも仲間なのか。
 王国、冒険者たちの業と情が入り混じる群像劇から目が離せないファンタジーミステリ。

 

今年のラノベ界の顔と言っても良い傑作ライトノベル。旅の仲間の証言を基に、勇者の死の真相を暴いていく人情ミステリ作品。

人間不信の天才たちが、才能0だが超努力家な勇者にほだされて心を通わせていく過程に涙した。王道に弱いんだ、僕は…。ちなみに、後書きに書かれている作者の思いも激熱なので、是非最後まで読んでほしい。

 

26位 俺ではない炎上/浅倉秋成

外回り中の営業部長・山縣泰介に緊急の電話が入った。「とにかくすぐ戻れ!」どうやら泰介が「女子大生殺害犯」であるとされて、すでに実名、写真付きでネットに素性が晒され、大炎上しているらしい。
SNSで犯行を自慢していたそうだが、そのアカウントが誤認されてしまったようだ。誤解はすぐに解けるだろうと楽観視していた泰介だが、成りすましは実に巧妙で誰一人として無実を信じてくれない。会社も、友人も、家族でさえも……。
ほんの数時間にして日本中の人間が敵になり、誰も彼もに追いかけられる中、泰介は必死の逃亡を続ける。

 

今最も勢いのある作家・浅倉秋成先生が紡ぎだす、身に覚えのない殺人の犯人に仕立て上げられた男と、彼を取り巻く事件関係者たちが織り成す群像ミステリ作品。

テンポ/構成/キャラ/伏線、全てがハイレベルでエンタメ成分マシマシの超絶傑作。想像の遥か上を行く真相ではあるが、無理筋に思わせない作者の筆力に脱帽するしかない。

 

25位 六人の嘘つきな大学生/浅倉秋成

成長著しいIT企業「スピラリンクス」が初めて行う新卒採用。最終選考に残った六人の就活生に与えられた課題は、一カ月後までにチームを作り上げ、ディスカッションをするというものだった。全員で内定を得るため、波多野祥吾は五人の学生と交流を深めていくが、本番直前に課題の変更が通達される。それは、「六人の中から一人の内定者を決める」こと。仲間だったはずの六人は、ひとつの席を奪い合うライバルになった。内定を賭けた議論が進む中、六通の封筒が発見される。個人名が書かれた封筒を空けると「●●は人殺し」だという告発文が入っていた。彼ら六人の嘘と罪とは。そして「犯人」の目的とは――。

 

連続浅倉秋成。豪華キャストで実写映画化もしている傑作エンタメ就活ミステリ作品。多面的な人間を一面だけで判断してしまう、人間の愚かさを逆手に取った展開が特徴で、極上のエンタメ成分を摂取できる。

この先生が書く小説って、とにかくプロットが緻密で、ネタバレをくらわずに初見で読んだ時の衝撃が半端ないので、興味のある人はネタバレをくらう前に今すぐ読んでほしい。

 

24位 むらさきのスカートの女/今村夏子

近所に住む「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性のことが、気になって仕方のない〈わたし〉は、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で働きだすように誘導し……。

『こちらあみ子』『あひる』『星の子』『父と私の桜尾通り商店街』と、唯一無二の視点で描かれる世界観によって、作品を発表するごとに熱狂的な読者が増え続けている著者の最新作。

第161回芥川賞受賞作。

 

芥川賞受賞作にして、テンポが良くスラスラ読める純文学。正直言って意味は全然わからないのだが、なぜか文章から目が離せなくなり、気づけば最後まで読まされてしまった。

基本的にヤバ目の人しか出てこないので、イカれた人物たちがワチャワチャやってるのを遠くから眺めたい人におススメ。…そんな人いるのか?後半に載っている作者のエッセイも超面白いので必読。

 

23位 ミリは猫の瞳のなかに住んでいる/四季大雅

これは「僕」が「君」と別れ、「君」が「僕」と出会うまでの物語だ。

★第29回電撃小説大賞《金賞》受賞作★
☆読書メーターOF THE YEAR2023-2024 ライトノベル部門第2位☆

瞳を覗き込むことで過去を読み取り追体験する能力を持つ大学生・紙透窈一(かみすきよういち)。退屈な大学生活の最中、彼は野良猫の瞳を通じて、未来視の能力を持つ少女・柚葉美里(ゆずのはみり)と出会う。
猫の瞳越しに過去の世界と会話が成立することに驚くのもつかの間、『ミリ』が告げたのは衝撃的な『未来の話』。

「これから『よーくん』の周りで連続殺人事件が起きるの。だから『探偵』になって運命を変えて」
調査の過程で絆を深める二人。ミリに直接会いたいと願う窈一だったが……
「そっちの時間だと、わたしは、もう――」

死者からの手紙、大学の演劇部内で起こる連続殺人、ミリの言葉の真相──そして、嘘。
過去と未来と現在、真実と虚構が猫の瞳を通じて交錯する、新感覚ボーイミーツガール!

デビュー作『わたしはあなたの涙になりたい』(小学館ガガガ文庫刊)は『このライトノベルがすごい!2023』(宝島社刊)新作部門1位を獲得。
超大型新人が電撃小説大賞の看板を引っ提げて繰り出す衝撃作!

 

『バスタブで暮らす』で先ほど紹介した四季大雅先生が送る、電撃小説大賞受賞作。恋愛要素とミステリ要素が混ぜ合わされ、緻密なプロットと衝撃の展開で味付けされた極上の大傑作ラノベ。

世間では賛否両論ある作品らしいのだが、僕はかなり楽しめた作品であり、ラノベだからと敬遠してはもったいない作品の筆頭である。一風変わった恋愛ミステリ作品を読みたい方は必読。

 

22位 可燃物/米澤穂信

余計なことは喋らない。上司から疎まれる。部下にもよい上司とは思われていない。しかし、捜査能力は卓越している。葛警部だけに見えている世界がある。
群馬県警を舞台にした新たなミステリーシリーズ始動。

群馬県警利根警察署に入った遭難の一報。現場となったスキー場に捜査員が赴くと、そこには頸動脈を刺され失血死した男性の遺体があった。犯人は一緒に遭難していた男とほぼ特定できるが、凶器が見つからない。その場所は崖の下で、しかも二人の周りの雪は踏み荒らされておらず、凶器を処分することは不可能だった。犯人は何を使って〝刺殺〟したのか?(「崖の下」)

榛名山麓の〈きすげ回廊〉で右上腕が発見されたことを皮切りに明らかになったばらばら遺体遺棄事件。単に遺体を隠すためなら、遊歩道から見える位置に右上腕を捨てるはずはない。なぜ、犯人は死体を切り刻んだのか? (「命の恩」)

太田市の住宅街で連続放火事件が発生した。県警葛班が捜査に当てられるが、容疑者を絞り込めないうちに、犯行がぴたりと止まってしまう。犯行の動機は何か? なぜ放火は止まったのか? 犯人の姿が像を結ばず捜査は行き詰まるかに見えたが……(「可燃物」)

連続放火事件の“見えざる共通項”を探り出す表題作を始め、葛警部の鮮やかな推理が光る5編。

 

「このミステリーがすごい!」第1位、「ミステリが読みたい!」第1位、「週刊文春ミステリーベスト10」第1位と、ミステリーランキングで見事三冠に輝いた傑作ミステリ短編集。

大掛かりなトリックや仰々しい演出は一切登場せず、静かに淡々と描かれる警察たちの奮闘劇は重厚で骨太。現実的なトリックなのに、完全に意識の外からやられる感覚が堪らない。最高の読書体験が味わえること間違いなし。

 

21位 DINER ダイナー/平山夢明

ほんの出来ごころから携帯闇サイトのバイトに手を出したオオバカナコは、凄惨な拷問に遭遇したあげく、会員制のダイナーに使い捨てのウェイトレスとして売られてしまう。 そこは、プロの殺し屋たちが束の間の憩いを求めて集う食堂だった―― ある日突然落ちた、奈落でのお話。

 

魅力的な殺し屋たちが織り成す、拷問と殺戮に塗れた極上のエンタメ小説。藤原竜也主演で実写映画化もされている超人気作品。

しょっぱなからグロアクセル全開で、文体もかなり癖があるため、かなり人を選ぶ作品であるのは間違いない。ただ、僕の好みにはドストライク。大変美味しい絶品だった。読了後、ハンバーガーが食べたくなる。

 

20位 地雷グリコ/青崎有吾

ミステリ界の旗手が仕掛ける本格頭脳バトル小説!

射守矢真兎(いもりや・まと)。女子高生。勝負事に、やたらと強い。
平穏を望む彼女が日常の中で巻き込まれる、風変わりなゲームの数々。罠の位置を読み合いながら階段を上ったり(「地雷グリコ」)、百人一首の絵札を用いた神経衰弱に挑んだり(「坊主衰弱」)。次々と強者を打ち破る真兎の、勝負の先に待ち受けるものとは――ミステリ界の旗手が仕掛ける本格頭脳バトル小説、全5篇。

 

今年最も話題になったであろう超絶傑作本格頭脳バトル小説。誰もが知っている遊びをベースとしたゲームが展開され、ルールの裏をかいてかいてかきまくる熱い攻防戦に心を震わされた。

直木賞受賞とまではいかなかったが、数多のランキングを独占しており、その面白さは折り紙付き。幼少期からライアーゲームやカイジを見て育ってきた僕世代にはたまらない大傑作。なんで本作が本屋大賞にノミネートすらされなかったのか、いまだに疑問に思っている。これだから本屋大賞は…(小声)

 

19位 塞王の楯/今村翔吾

どんな攻めをも、はね返す石垣。
どんな守りをも、打ち破る鉄砲。
「最強の楯」と「至高の矛」の対決を描く、究極の戦国小説!

越前・一乗谷城は織田信長に落とされた。
幼き匡介(きょうすけ)はその際に父母と妹を喪い、逃げる途中に石垣職人の源斎(げんさい)に助けられる。
匡介は源斎を頭目とする穴太衆(あのうしゅう)(=石垣作りの職人集団)の飛田屋で育てられ、やがて後継者と目されるようになる。匡介は絶対に破られない「最強の楯」である石垣を作れば、戦を無くせると考えていた。両親や妹のような人をこれ以上出したくないと願い、石積みの技を磨き続ける。

秀吉が病死し、戦乱の気配が近づく中、匡介は京極高次(きょうごくたかつぐ)より琵琶湖畔にある大津城の石垣の改修を任される。
一方、そこを攻めようとしている毛利元康は、国友衆(くにともしゅう)に鉄砲作りを依頼した。「至高の矛」たる鉄砲を作って皆に恐怖を植え付けることこそ、戦の抑止力になると信じる国友衆の次期頭目・彦九郎(げんくろう)は、「飛田屋を叩き潰す」と宣言する。

大軍に囲まれ絶体絶命の大津城を舞台に、宿命の対決が幕を開ける――。

 

『黒牢城』とともに直木賞に輝いた、最強の楯・石垣職人と最強の矛・鉄砲職人による誇りをかけた戦を描いた激熱時代小説。

500ページを超えるボリュームにもかかわらず、全く飽きさせないその筆力は流石としか言いようがない。終盤の展開には思わず涙を流してしまった…。やっぱり王道って最高だ!全人類に読んでほしい超絶傑作。

 

18位 白夜行/東野圭吾

愛することは「罪」なのか。それとも愛されることが「罪」なのか。
1973年、大阪の廃墟ビルで質屋を経営する男が一人殺された。容疑者は次々に浮かぶが、結局、事件は迷宮入りしてしまう。被害者の息子・桐原亮司と、「容疑者」の娘・西本雪穂――暗い眼をした少年と、並外れて美しい少女は、その後、全く別々の道を歩んでいくことになるのだが、二人の周囲に見え隠れする、幾つもの恐るべき犯罪の形跡。しかし、何も「証拠」はない。そして十九年の歳月が流れ……。伏線が幾重にも張り巡らされた緻密なストーリー。壮大なスケールで描かれた、ミステリー史に燦然と輝く大人気作家の記念碑的傑作。

 

犯罪者の内面は一切描かずに、周囲の人々の視点から事件の真相と犯罪者の異常性を書き表したノワール小説。恥ずかしながら初めての東野圭吾作品であったのだが、めちゃくちゃ面白かった。

800ページを超える分量から放たれる物語は、まさに芸術そのもの。薄暗い白夜の中を彷徨う犯罪者の逃避行に心を震わされる。文句なしの超絶大傑作。

 

17位 春季限定いちごタルト事件(小市民シリーズ)/米澤穂信

そしていつか摑むんだ、あの小市民の星を。

小市民を目指す小鳩君と小山内さんのコミカル探偵物語

小鳩くんと小佐内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある高校1年生。きょうも2人は手に手を取って清く慎ましい小市民を目指す。それなのに2人の前には頻繁に奇妙な謎が現れる。消えたポシェット、意図不明の2枚の絵、おいしいココアの謎、テスト中に割れたガラス瓶。名探偵面をして目立ちたくないというのに、気がつけば謎を解く必要に迫られてしまう小鳩くんは果たして小市民の星を掴み取ることができるのか? 新鋭が放つライトな探偵物語。

 

アニメ化もされている名作ミステリ作品・<小市民>シリーズが16位にランクイン。同著者の代表作『氷菓』シリーズに似た作風ではあるが、こちらのシリーズの方が話が重めであり、大抵の加害者は逮捕されてしまうし、基本的にバッドエンドである。

本シリーズで個人的に一番好きな作品は『秋季限定栗きんとん事件』。放火というド級の重犯罪を取り扱っており、結末を含めて僕好みの傑作だった。本シリーズは既に完結しており、今年で全て読み終えたので、来年はアニメを楽しんでいこうと思っている。

 

16位 紗央里ちゃんの家/矢部嵩

祖母が風邪で死んだと知らされた小学5年生の僕。叔母夫婦の家からは従姉の紗央里ちゃんの姿も消え、叔母たちの様子はどこかおかしい。僕はこっそり家中を探し始める。第13回日本ホラー小説大賞長編賞受賞。

 

来た来た来たぁ!超絶ド級の問題作にして、最高で最低で上品で下品な特級呪物本。ただ従姉の紗央里ちゃんの家に主人公が訪れるだけの作品なのに、めちゃくちゃ怖いしめちゃくちゃグロい。

出てくる奴らが全員狂人であり、文体も独特で気味悪く、最初から最後まで異常たっぷり。日常と非日常の境界線を破壊する、不気味でクレイジーな世界観にどっぷりと浸りたい人におススメ。

 

15位 タイタン/野﨑まど

今日も働く、人類へ

至高のAI『タイタン』により、社会が平和に保たれた未来。
人類は≪仕事≫から解放され、自由を謳歌していた。
しかし、心理学を趣味とする内匠成果【ないしょうせいか】のもとを訪れた、
世界でほんの一握りの≪就労者≫ナレインが彼女に告げる。
「貴方に≪仕事≫を頼みたい」
彼女に託された≪仕事≫は、突如として機能不全に陥った
タイタンのカウンセリングだった――。

アニメ『バビロン』『HELLO WORLD』で日本を震撼させた
鬼才野﨑まどが令和に放つ、前代未聞の超巨大エンターテイメント。

 

鬼才・野﨑まど先生の作品が満を持してランクイン。野﨑先生が本作で扱うテーマは「仕事とは何か」。心理学者がAIとのカウンセリングに取り組み、不具合を修正しようと試みる中で、「仕事」の定義がどんどん深掘りされていく。

もちろん、大筋のストーリーも重厚で面白く、SF初心者でも間違いなく楽しめるであろう大傑作となっている。野﨑まど先生の作品の中では一番とっつきやすい作品かもしれないので、初めての野﨑まど作品としてもおススメしたい。

 

14位 ぼぎわんが、来る/澤村伊智

幸せな新婚生活を営んでいた田原秀樹の会社に、とある来訪者があった。取り次いだ後輩の伝言に戦慄する。
それは生誕を目前にした娘・知紗の名前であった。原因不明の怪我を負った後輩は、入院先で憔悴してゆく。
その後も秀樹の周囲に不審な電話やメールが届く。一連の怪異は、今は亡き祖父が恐れていた“ぼぎわん”という化け物の仕業なのか?
愛する家族を守るため秀樹は伝手をたどり、比嘉真琴という女性霊媒師に出会う。
真琴は田原家に通いはじめるが、迫り来る存在が極めて凶暴なものだと知る。はたして“ぼぎわん”の魔の手から、逃れることはできるのか……。

“あれ”からは決して逃れられない――。綾辻行人・貴志祐介・宮部みゆきら絶賛の第22回日本ホラー小説大賞〈大賞〉受賞作!

 

綾辻行人・貴志祐介・宮部みゆきといった大先生たちが絶賛した、日本ホラー小説大賞受賞作。デビュー作にして、実写映画化も果たした大ヒットホラー小説。

前半は"ぼぎわん"の恐怖に叩きのめされ、後半では激熱能力バトルに興奮しっぱなし。ホラーをエンタメに昇華させた能汁出まくりの超絶傑作であり、ホラーが苦手な方にもできれば読んでほしい作品。ちなみに、本シリーズはまだ本作しか読めていないので、来年以降に続きを読んでいきたいと思っている。

 

13位 氷菓(古典部シリーズ)/米澤穂信

大人気シリーズ第一弾! 瑞々しくもビターな青春ミステリ!

何事にも積極的に関わらないことをモットーとする奉太郎は、高校入学と同時に、姉の命令で古典部に入部させられる。
さらに、そこで出会った好奇心少女・えるの一言で、彼女の伯父が関わったという三十三年前の事件の真相を推理することになり――。
米澤穂信、清冽なデビュー作!

 

今更語るまでもない、米澤穂信先生の鮮烈なデビュー作。京都アニメーションでアニメ化もされた超人気作ではあるが、原作はいまだに完結しておらず、多数の氷菓難民を生み出している罪深きミステリシリーズ。

どの作品も異常なまでに面白いのだが、一番好きな作品を選ぶとすれば『クドリャフカの順番』である。文化祭を舞台とした連続盗難事件の謎を追いつつ、古典部4人の群像劇を高レベルで書ききった大傑作であり、『氷菓』で止まっている人は本作までは絶対に読んでほしい。

 

12位 GOTH/乙一

連続殺人犯の日記帳を拾った森野夜は、未発見の死体を見物に行こうと「僕」を誘う……人間の残酷な面を覗きたがる者〈GOTH〉を描き本格ミステリ大賞に輝いた乙一の出世作。

 

本格ミステリ大賞を受賞した乙一先生の出世作にして、問題だらけの劇薬小説。謎の行動力を見せるサイコパスと、猟奇的事件の犯人たちとの心理戦を描いた連作短編集。

短編の完成度は極上であり、どんでん返し/叙述トリック/伏線回収、何でもござれ。異常者vs異常者。作者vs読者。さぁ、君も一緒に乙一の掌の上で踊ろうじゃないか。

Goth: Volumen Unico

Goth: Volumen Unico

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11位 姑獲鳥の夏(百鬼夜行シリーズ)/京極夏彦

この世には不思議なことなど何もないのだよ――古本屋にして陰陽師(おんみょうじ)が憑物を落とし事件を解きほぐす人気シリーズ第1弾。東京・雑司ヶ谷(ぞうしがや)の医院に奇怪な噂が流れる。娘は20箇月も身籠ったままで、その夫は密室から失踪したという。文士・関口や探偵・榎木津(えのきづ)らの推理を超え噂は意外な結末へ。

 

もう今更紹介する意味もないであろう、読む鈍器と呼ばれるほど極太な怪奇ミステリシリーズ。個人的には1作目の『姑獲鳥の夏』が一番好み。

本シリーズを一文で表すと、「壮大で重厚な超絶怒涛のバカミス作品」である。とんでもないバカミスではあるのだけれど、伏線と物語の緻密さが正気の沙汰ではなく、骨太で極上のエンタメ小説に仕上がっている。

キャラ小説としての側面も兼ね備えており、出てくるキャラが皆個性的で、あなたにも推しができること間違いなし。まだ本シリーズに触れていない人は、『姑獲鳥の夏』だけでも良いので読んでみてほしいと思う。

 

10位 向日葵の咲かない夏/道尾秀介

夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。

 

ついにベスト10に突入。道尾秀介先生の代表作であり、言わずと知れた大ベストセラー小説。全体的に雰囲気は暗くテーマも重めだが、内容が面白すぎてページを捲る手が止まらなかった。

所々違和感があって、「これどういう事?」と思いながら読み進めていたら、終盤で全ての謎が繋がってびっくり仰天!すげぇぇぇぇぇ!一筋縄ではいかないラストも僕好みで最高だった。問答無用の超絶大傑作。

 

9位 最後にして最初のアイドル/草野原々

“バイバイ、地球――ここでアイドル活動できて楽しかったよ。"

第4回ハヤカワSFコンテスト特別賞
第48回星雲賞(日本短編部門)
第27回暗黒星雲賞(ゲスト部門)
第16回センス・オブ・ジェンダー賞(未来にはばたけアイドル賞)

SFコンテスト史上初の特別賞&「神狩り」以来42年ぶりにデビュー作で星雲賞を受賞し、SF史に伝説を刻んだ実存主義的ワイドスクリーン百合バロックプロレタリアートアイドルハードSFの表題作をはじめ、ガチャが得意なフレンズたちが宇宙創世の真理へ驀進する「エヴォリューションがーるず」、異能の声優たちが銀河を大暴れする書き下ろし声優スペースオペラ「暗黒声優」の3篇を収録する、驚天動地の草野原々1st作品集!

 

表紙詐欺な超展開グロ百合ハードSF作品。スケールは宇宙時空を超え、トンデモ理論で大風呂敷を広げに広げ、最終的には爽快に丸く収まり綺麗に着地する。ナニコレ。最高すぎるだろ。

とてつもなくグロいし、設定もぶっ飛びすぎて取っ付きにくいので、間違いなく人を選ぶ作品だが、僕のような倫理観をかなぐり捨てたエンタメ作品を追い求める読書中毒者にとっては至極の一冊。本作を面白いと思える人と、お酒を交わしながら感想会をしたい。

 

8位 魔女の子供はやってこない/矢部嵩

ある日へんてこなステッキを拾った縁で、キュートな魔女と友達になった小学生の夏子。だが2人が良かれと思ってしたことが、次々血みどろ事件に発展していき──。ホラー界の鬼才が放つ、世紀の問題作!

 

あらすじで既に「世紀の問題作」と書かれているが、まさしくその通りであり、恐らく今まで僕が読んできた小説の中で最もイカれている作品である。かろうじてホラー小説という体裁をとってはいるが、その実遊び心満載のナンセンス作品であり、笑って良いのかわからないような下品でグロいブラックユーモアが連発される。

そんなポップでキュートでシュールでグロテスクな変態向けのプリキュアではあるのだが、全編を通して伝えたいメッセージは真っすぐでシンプルであり、心にスッと入ってきて謎の感動を引き起こす。無茶苦茶やっているようで伏線回収は完璧にこなしており、ラストの風呂敷の畳み方は見事。異常に完成度の高い作品である。

余談ではあるのだが、『地雷グリコ』でその名を轟かせた青崎有吾先生も本作を推薦しており、特に本作の4話目を世界一怖い小説作品として挙げている。個人的にも4話目が一番好きなので、とりあえずその話だけ読んでみるのもありかも。いや、やっぱり全編読んで。

 

7位 777(殺し屋シリーズ)/伊坂幸太郎

殺し屋シリーズ最新作。世界で最も不運な殺し屋、ふたたび!!

あの世界で一番不運な殺し屋が、また騒動に巻き込まれる――。『マリアビートル』では新幹線から降りられなかったが、今度は東京の超高級ホテルから出られない……!?

伊坂幸太郎、2年ぶりの完全書き下ろし。殺し屋シリーズ最新作。

 

待ってました!超人気作家・伊坂幸太郎先生による殺し屋シリーズ最新作『777』がついにランクイン。もうね、大好き、このシリーズ。殺し屋たちがドンパチぶつかり合う痛快小説であり、エンタメ度が高すぎて、読んでいるだけで快楽物質がドピュドピュ出てくる。

抜群のハラハラ感と疾走感はこれまで同様素晴らしい。それに加え、本作はラストの小粋な演出が最高なのだ。正直言って、終わり方はこれまでのシリーズで一番好きかもしれない。まだ本シリーズに触れていない人は、『グラスホッパー』から読み始めてみることを強くおススメする。(『マリアビートル』から読むのはダメ!)

 

6位 儚い羊たちの祝宴/米澤穂信

夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」。夏合宿の二日前、会員の丹山吹子の屋敷で惨劇が起こる。翌年も翌々年も同日に吹子の近親者が殺害され、四年目にはさらに凄惨な事件が。優雅な「バベルの会」をめぐる邪悪な五つの事件。甘美なまでの語り口が、ともすれば暗い微笑を誘い、最後に明かされる残酷なまでの真実が、脳髄を冷たく痺れさせる。米澤流暗黒ミステリの真骨頂。

 

もう何作このランキングにランクインしたか分からない天才作家・米澤穂信先生における、ホラーミステリ短編集の最高到達点。「脳髄を冷たく痺れさせる」という売り文句通り、心の底から震え上がる短編5編を収録している。

ひたすらにゾクゾクする描写が連発され、オチで全てがひっくり返る。これほどまでに極上の文学作品を5編も堪能できるなんて、なんと贅沢な一冊であろうか。読んだこと無い人は、今すぐ本作を手に取るべきである。

 

5位 [映]アムリタ(アムリタシリーズ)/野﨑まど

『バビロン』『HELLO WORLD』の鬼才・野崎まどデビュー作再臨!

芸大の映画サークルに所属する二見遭一は、天才とうわさ名高い新入生・最原最早がメガホンを取る自主制作映画に参加する。
だが「それ」は“ただの映画”では、なかった――。
TVアニメ『正解するカド』、『バビロン』、劇場アニメ『HELLO WORLD』で脚本を手掛ける鬼才・野崎まどの作家デビュー作にして、電撃小説大賞にて《メディアワークス文庫賞》を初受賞した伝説の作品が新装版で登場!
貴方の読書体験の、新たな「まど」が開かれる1冊!

 

天才・野﨑まどのデビュー作にして、ライトノベルの皮を被った超絶ド級の劇薬シリーズが5位にランクイン。とにかく読んで、としか言いようがないネタバレ厳禁/ジャンル不明の大傑作であり、記憶を消してもう一度読み直したいシリーズの筆頭である。

今年のベスト5に入った作品なのだから、まだまだ紹介文を書きたい気持ちはあるのだが、もう何を書いてもネタバレになってしまうので、何も書くことが思いつかない…。本当に後悔はさせないので、とにかく読んでほしい。

 

4位 涼宮ハルヒの憂鬱(涼宮ハルヒシリーズ)/谷川流

「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」高校入学早々ぶっ飛んだ挨拶をかましたえらい美人、涼宮ハルヒ。誰もが冗談だと思うこの言葉が大マジだったことを、俺はのちに身をもって知ることになる。ハルヒと出会ってしまったことから、気づけば俺の日常は非日常になっていて!?ライトノベルの金字塔が、豪華解説つきで襲来!

 

ライトノベルにして一時代を築いた、平成オタクのバイブル的な作品。もちろん名前は聞いたことはあったのだが、内容を全く知らないまま一作目を読了。そして無事ハルヒワールドにドはまりし、二か月かけて既刊を全て制覇してしまった。あぁぁ、ハルヒロスだぁぁ…。

読む前はほのぼの日常系作品かと思っていたのだが、その実ゴリゴリのド級ハードSF作品で驚愕した。構成も素晴らしいし、キャラも個性的で愛着が湧くし、タイトルも完璧。長門Love。読まず嫌いしていた過去の自分をぶん殴りに行きたい。朝比奈さん、タイムスリップの準備をよろしくお願いします。

本シリーズで最も面白い作品は、間違いなく『涼宮ハルヒの消失』である。4作目にして、これまで積み上げてきた伏線を全て惜しみなく開放した集大成なので、面白くない訳がない。映画の方はまだ見れていないので、これから見るのが楽しみである。

 

3位 プロジェクト・ヘイル・メアリー/アンディ・ウィアー

地球上の全生命滅亡まで30年……。
全地球規模のプロジェクトが始動した!

グレースは、真っ白い奇妙な部屋で、たった一人で目を覚ました。ロボットアームに看護されながらずいぶん長く寝ていたようで、自分の名前も思い出せなかったが、推測するに、どうやらここは地球ではないらしい……。断片的によみがえる記憶と科学知識から、彼は少しずつ真実を導き出す。ここは宇宙船〈ヘイル・メアリー〉号――。
ペトロヴァ問題と呼ばれる災禍によって、太陽エネルギーが指数関数的に減少、存亡の危機に瀕した人類は「プロジェクト・ヘイル・メアリー」を発動。遠く宇宙に向けて最後の希望となる恒星間宇宙船を放った……。

『火星の人』で火星の、『アルテミス』で月での絶望的状況でのサバイバルをリアルに描いた著者が、人類滅亡の危機に立ち向かう男を描いた極限のエンターテインメント。

 

現代SF小説の最高到達点。エンタメ濃度が高すぎて、脳が快楽物質に溺れる感覚を味わえる至高の海外SF小説。

もちろん大筋のストーリーも面白すぎるのだが、何と言っても研究員たちの試行錯誤が詳細に描かれているのが僕好みで最高。僕自身も大学・大学院ともに物理化学を専攻してきたゴリゴリの理系なので、演算や検証を繰り広げるシーンがぶっ刺さり。もうたまらん。

とにかく言えるのは、こんなにも素晴らしい小説をネタバレなしで読めた自分は、本当に幸せ者だと思う。SFを普段読まない人も一度は読むべき超絶傑作。映画化も楽しみ。

 

2位 人生を変えたコント/霜降り明星せいや

せいや(霜降り明星)の17年来の夢、叶う! 半自伝小説ついに完成!!

ある朝、机がひっくり返っていた。
いじめは急にはじまった。
それでもイシカワは高校を休まなかった。
奪われかけた青春を
コントで取り返す文劇祭(ぶんげきさい)、まもなく開演!!

「どん底から這い上がった人のほうが絶対に強い!」

僕が一番大好きな漫才師・霜降り明星。M-1チャンピオンになる前から応援していたコンビであり、今でもラジオは毎週欠かさず聞いているし、ユーチューブも霜降りチューブはもちろん、粗品チャンネルもイニミニチャンネルも欠かさず視聴している。そんな僕の憧れの芸人・せいやが放つ、自身が高校生の時に体験したいじめをテーマとした半自伝小説が本作『人生を変えたコント』である。

本作ではとにかくいじめの描写が胸糞悪く、いじめによって崩壊していく自身のメンタルや家族の描写が本当に苦しい。だからこそ、ラストの文化祭で放った「人生を変えたコント」の威力が凄まじい。ラストシーンを読んでいるとき、笑いながら泣いている自分に気づいた。こんなにも感情を表に出しながらのめり込めた小説は初めてである。

せいや本人は「学生の課題図書として採用されたい」と言っていたが、本当に課題図書としてこれ以上の本はないと言えるレベルの大傑作である。もちろん、霜降り明星を知らない大人の人が読んでも楽しめることは僕が保証する。超絶おススメ作品。

 

1位 エヴァーグリーン・ゲーム/石井仁蔵

「王様のブランチ」で紹介後、大評判!!
【選考委員、絶賛の嵐! 第12回ポプラ社小説新人賞受賞作!!】
世界有数の頭脳スポーツであるチェスと出会い、その面白さに魅入られた4人の若者たち。
64マスの盤上で、命を懸けた闘いが繰り広げられる――!

「勝つために治せよ、絶対に」
小学生の透は、難病で入院生活を送っており、行きたかった遠足はもちろん、学校にも行けず癇癪を起してしまう。そんなとき、小児病棟でチェスに没頭する輝と出会う――。
<年齢より才能より、大事なものがある。もうわかってるだろ?>
チェス部の実力者である高校生の晴紀だが、マイナー競技ゆえにプロを目指すかどうか悩んでいた。ある日、部長のルイに誘われた合コンで、昔好きだった女の子と再会し……?
「人生を賭けて、ママに復讐してやろう。」
全盲の少女・冴理は、母からピアノのレッスンを強要される日々。しかし盲学校の保健室の先生に偶然すすめられたチェスにハマってしまい――。
「俺はただ、チェスを指すこの一瞬のために、生きている。」
天涯孤独の釣崎は、少年院を出たのち単身アメリカへわたる。マフィアのドンとチェスの勝負することになり……!?

そして、彼らは己の全てをかけて、チェスプレイヤー日本一を決めるチェスワングランプリに挑むことに。
チェスと人生がドラマティックに交錯する、熱い感動のエンターテイメント作!

来た来たぁ!今年ベストNo.1小説!エンタメ成分MAX!ガチで面白い!最高!うおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!

ふぅ…。少し興奮してしまった。落ち着こう落ち着こう。本作は、チェスに人生を救われてきた4人の若者たちが、文字通り命を懸けて日本一を決める全国大会に挑む熱血物語である。本作の素晴らしい点を挙げればキリがないのだが、あえて1つ挙げるとすれば、登場人物にめちゃくちゃ感情移入できる点である。主人公となる4人の若者は以下のような事情を抱えている。

・200万人に1人の難病を抱えた男子小学生

・いじめを止めようとして報復にあった男子高校生

・生まれつき全盲で、母親から見捨てられた少女

・少年院を出て、アメリカのマフィアグループに属する男性

そして、彼らが生きる支えとしているもの、それが「チェス」なのである。

1章から4章までは、1人ずつ彼らの人生を緻密に描いていき、5章で全員がチェスワングランプリで激突する。彼らが背負っているものを考えると、本当に全員に勝ってほしい。そう思わざるを得ない。しかし、勝負の世界は甘くない。すべての試合において、ちゃんと勝敗は決する。最後は誰が勝つのか、緊迫感や興奮や緊張が頭の中でグチャグチャになり、読んでいる間は脳汁が止まらなかった。

「チェスってあんまり興味ないんだよねぇ~」というそこのあなた、前知識など必要ないからさっさと本作を読むのだ。本当に面白い創作物の前では、ゲームの知識の有無などどうでも良いことだ。それは『ヒカルの碁』が証明している。安心して本作を手に取ってほしい。今年はこんな傑作に出会えて本当に幸せだ。

 

今年は以上。来年もよろしくお願いします。