よこむむの電子工作記

電子工作や修理日誌です

PCエンジンにHDMI出力を追加する

今回のご依頼は、RGB出力を追加したPCエンジンDUO-Rをスキャンコンバータに接続できるようにする改造です。

RGB出力追加とスキャンコンバータについて

PCエンジンのRGB出力追加とは、従来のビデオ信号とステレオ音声に加えて、RGB映像出力を追加する改造のことを指すことが多いように思います。AVマルチ入力のついたSONYのブラウン管ベガに接続することができ、昔懐かしい柔らかい映像を楽しむことができるため、レトロゲーム好きの間では流行している改造です。

ただ、ブラウン管は場所を取りますし、ブラウン管テレビを新品として入手することは不可能であるため、これからレトロゲームの機材を揃えていく場合には、液晶テレビまたは液晶モニタを使うことになろうかと思います。

 

但し、いまどきのHDMI入力のある液晶テレビへPCエンジンを接続する場合は、RGB出力追加に加えて、更に一手間の改造が必要です。

 

それは、HDMIスキャンコンバータという、RGB映像をHDMIへ変換する機材(アップスキャンコンバータとも言います)へ対応するために、映像の同期信号をPCエンジン本体から取り出す改造が必要であることです。もちろん、従来のケーブルを使ってAV出力をすることも可能ですし、RGB映像機器への接続も可能です。全部入りの贅沢な改造と言えるでしょう。

 

ところで、RGB出力に造詣が深い方なら、同期信号ならばビデオ信号から分離すれば良いのではないの?と思われるかも知れませんが、実はスキャンコンバータが受け付けるRGB映像信号のフォーマットは、RGBS(RGB+CSync)やRGBHV(RGB+HSync+VSync)、またはRGsB(Sync on green)のいずれかであることが殆どです。PCエンジンのビデオ信号は非常に特殊であり、同期分離してもCSyncとは波形が異なるため、ビデオ信号で代用できると言い切ることはできないのです。個人的な実験で試してみる分には良いのですが、依頼品や商品となると、これは許容されないと思います。

改造の内容

前置きが長くなってしまいましたが、まずはPCエンジンにCSync出力を追加する手順を紹介します。ざっと概要を挙げただけでも、それなりのボリュームがあります。

  • 内部の映像チップからCSync信号を取り出す
  • CSyncアンプを取り付ける
  • AV端子の+5Vピンを浮かせてCSyncと繋ぐ 

もちろん、改造の前に本体メンテナンス+RGB出力の動作確認はできていることが前提です。

それでは、実際の改造の模様をレポートします!

状態を確認する

まずはカバーを開けて状態を確認します。

セオリー通り、RGBアンプ(THS7314)が実装され、HuC6260からはRGB信号が取り出され、AV端子は8ピンに交換されています。更に、バックアップメモリのFRAM化+バンク追加の改造が入っています。

今回は、AV端子を取り外して+5V端子を浮かせ、そこからCSync信号を出力します。

そのため、基板を取り外す必要があり、まずはFRAMのバンク切り替えスイッチを取り外します。

スイッチを取り外すと、この通り、基板を取り外すことができます。

CSyncアンプを組み立てて取り付ける

今回使用したビデオアンプ(THS7314)は3チャンネルのビデオアンプのため、追加でもう1チャンネルのビデオアンプを追加します。

今回使用するのは、LM1881Nというビデオ信号から同期信号を分離するICです。

ビデオ信号でなくCSync信号を単純に増幅するためのアンプとして使えることが経験的に分かっています。

このICを使って組み立てたアンプモジュールが次の写真です。

基板は秋月電子で販売されているユニバーサル基板を使っています。

AV端子を取り外して改造する

次に、AV端子を取り外して未使用ピン(結果的に)だった+5V端子を浮かせます。

AV端子を取り外すには、基板を裏返してAV端子のハンダを吸い取ります。ハンダ吸い取り線を使うよりは、ここではAmazon等で手に入るハンダ吸い取り器を使うと凄く簡単に取り外すことができます。一台あればいろいろな用途で使えますし、これは電子工作屋としては必須の道具と言えます。

AV端子(DIN8ピンコネクタ)を分解して+5Vピンが基板に触れないようにカットします。

改造したAV端子は、基板にハンダ付けする前に+5Vピン(CSyncピン)へ線材を取り付けておくのがポイントです。基板に取り付けた後ですと、線材を半田付けするのが困難になります。

CSyncアンプを実装して配線する

先ほどAV端子から取り出した線材をCSyncアンプの出力へ半田付けします。 また、+電源とGNDも配線します。RGBアンプから取り出すと良いでしょう。

HuC6260のCSyncピンから信号を取り出す

HuC6260の44番ピンからCSync信号が出ていますので、これを取り出してCSyncアンプに取り付けます(写真では黄色の線材)。

0.8mmピッチの半田付けを伴いますので、それなりの道具が必要です。道具さえあれば、特に難しい作業ではありません。 私が使っている道具を紹介します。

…まずは、何と言ってもハンダゴテ。gootという聞き慣れないメーカーですが、ハンダゴテ関係界では日本を代表する太洋電気産業のブランドです。温度を調整可能(これは必須と言えるでしょう)で、昔の鉛入りハンダ~近年の鉛フリーハンダにも対応できます。交換用のコテ先も簡単に手に入ります。これを買っておけば、まず間違いなし。

そしてもう一つ、電子工作には欠かせないハンダ吸い取り線です。ハンダ吸い取り器では対応できない細かい作業にも対応できます。これも必須の道具といって間違いないでしょう。

動作確認をしてみる

そしていよいよ動作確認をしてみます。 仮組みした状態でスキャンコンバータも接続し、電源を入れます…

Yes! 見事に映りました。

ゲームデモを暫く流してみましたが、画面の揺れ(同期がずれる)などの症状はありませんでした。

一旦、これで改造は完了です。

スキャンラインについて

液晶ディスプレイで、ピッキピキに四角いドットを見ていると目が疲れてくる方もいるかと思いますので、その際はスキャンコンバータの「疑似スキャンライン」という機能を使い、ブラウン管のように柔らかい映像でゲームを楽しむことができます。

具体的には、こんな感じになります。

  1. スキャンライン無し

    スキャンライン:OFF

    綺麗ですが、ずっと見ていると目が疲れる方も居るかも知れませんね。

  2. スキャンライン有り(中)

    スキャンライン:37%

    懐かしのブラウン管の映像に近づけた映像です。これだと長時間遊んでも目が疲れません。 昔、コンピュータ雑誌で見たゲーム画面の写真と非常によく似ています。

  3. スキャンライン有り(強)

    スキャンライン:73%

    大画面のブラウン管で映像を見ている感じに近いと思います。

お勧めのスキャンコンバータ

最後に、レトロゲームで遊ぶためにお勧めのスキャンコンバータを紹介します。

お手頃なお値段(1万円強程度)ですが、上位機であるRetro TINK Pro(10万円超)やOSSC(3万円超)と並べて比較しないと分からないほど高画質です。映像遅延も、やはり比較しないと分からない程度の差です。コスパは最高のスキャンコンバータです。

Amazon | GAMEBANK-web.com 【レトロゲーム革命 - RGB21変換ケーブル付属】ODV GBS-C ビデオコンバーター・スキャンコンバーター - フレームマイスターは高価で手が出なかった. SFC/MD/SS/PS/PS2/Xbox/Wiiなどレトロゲームで是非!! 日本語マニュアル/PSE認証済み [SRPJ2525] | エス・アール・プロジェクト(SRPJ) | HDMIケーブル

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ブラウン管派でアップスキャンはちょっと…という方でも、お試しには向いていると思います。

RGB出力+同期信号出力改造承ります!

PCエンジンをお持ちの方で、「私も高画質な映像でゲームを楽しみたい!」という方向けに、改造を承ります。まずはコメントにてご相談ください。

なお、RGB出力追加には、正常に動作するよう整備されていることが前提になりますので、フルメンテナンスも承ります。フルメンテナンスは症状に関わらず均一価格で対応いたします(修理不能な場合は別途ご相談させてください)。

レトロPCやレトロゲームの整備には30年近い経験がありますので、安心してご相談ください。

また、ここまでのものと同等の改造を行ったPCエンジンDUOをメルカリにて出品しています。もし宜しければご検討ください。

jp.mercari.com

それでは、また! 

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