よこむむの電子工作記

電子工作や修理日誌です

PCエンジンにHDMI出力を追加する

今回のご依頼は、RGB出力を追加したPCエンジンDUO-Rをスキャンコンバータに接続できるようにする改造です。

RGB出力追加とスキャンコンバータについて

PCエンジンのRGB出力追加とは、従来のビデオ信号とステレオ音声に加えて、RGB映像出力を追加する改造のことを指すことが多いように思います。AVマルチ入力のついたSONYのブラウン管ベガに接続することができ、昔懐かしい柔らかい映像を楽しむことができるため、レトロゲーム好きの間では流行している改造です。

ただ、ブラウン管は場所を取りますし、ブラウン管テレビを新品として入手することは不可能であるため、これからレトロゲームの機材を揃えていく場合には、液晶テレビまたは液晶モニタを使うことになろうかと思います。

 

但し、いまどきのHDMI入力のある液晶テレビへPCエンジンを接続する場合は、RGB出力追加に加えて、更に一手間の改造が必要です。

 

それは、HDMIスキャンコンバータという、RGB映像をHDMIへ変換する機材(アップスキャンコンバータとも言います)へ対応するために、映像の同期信号をPCエンジン本体から取り出す改造が必要であることです。もちろん、従来のケーブルを使ってAV出力をすることも可能ですし、RGB映像機器への接続も可能です。全部入りの贅沢な改造と言えるでしょう。

 

ところで、RGB出力に造詣が深い方なら、同期信号ならばビデオ信号から分離すれば良いのではないの?と思われるかも知れませんが、実はスキャンコンバータが受け付けるRGB映像信号のフォーマットは、RGBS(RGB+CSync)やRGBHV(RGB+HSync+VSync)、またはRGsB(Sync on green)のいずれかであることが殆どです。PCエンジンのビデオ信号は非常に特殊であり、同期分離してもCSyncとは波形が異なるため、ビデオ信号で代用できると言い切ることはできないのです。個人的な実験で試してみる分には良いのですが、依頼品や商品となると、これは許容されないと思います。

改造の内容

前置きが長くなってしまいましたが、まずはPCエンジンにCSync出力を追加する手順を紹介します。ざっと概要を挙げただけでも、それなりのボリュームがあります。

  • 内部の映像チップからCSync信号を取り出す
  • CSyncアンプを取り付ける
  • AV端子の+5Vピンを浮かせてCSyncと繋ぐ 

もちろん、改造の前に本体メンテナンス+RGB出力の動作確認はできていることが前提です。

それでは、実際の改造の模様をレポートします!

状態を確認する

まずはカバーを開けて状態を確認します。

セオリー通り、RGBアンプ(THS7314)が実装され、HuC6260からはRGB信号が取り出され、AV端子は8ピンに交換されています。更に、バックアップメモリのFRAM化+バンク追加の改造が入っています。

今回は、AV端子を取り外して+5V端子を浮かせ、そこからCSync信号を出力します。

そのため、基板を取り外す必要があり、まずはFRAMのバンク切り替えスイッチを取り外します。

スイッチを取り外すと、この通り、基板を取り外すことができます。

CSyncアンプを組み立てて取り付ける

今回使用したビデオアンプ(THS7314)は3チャンネルのビデオアンプのため、追加でもう1チャンネルのビデオアンプを追加します。

今回使用するのは、LM1881Nというビデオ信号から同期信号を分離するICです。

ビデオ信号でなくCSync信号を単純に増幅するためのアンプとして使えることが経験的に分かっています。

このICを使って組み立てたアンプモジュールが次の写真です。

基板は秋月電子で販売されているユニバーサル基板を使っています。

AV端子を取り外して改造する

次に、AV端子を取り外して未使用ピン(結果的に)だった+5V端子を浮かせます。

AV端子を取り外すには、基板を裏返してAV端子のハンダを吸い取ります。ハンダ吸い取り線を使うよりは、ここではAmazon等で手に入るハンダ吸い取り器を使うと凄く簡単に取り外すことができます。一台あればいろいろな用途で使えますし、これは電子工作屋としては必須の道具と言えます。

AV端子(DIN8ピンコネクタ)を分解して+5Vピンが基板に触れないようにカットします。

改造したAV端子は、基板にハンダ付けする前に+5Vピン(CSyncピン)へ線材を取り付けておくのがポイントです。基板に取り付けた後ですと、線材を半田付けするのが困難になります。

CSyncアンプを実装して配線する

先ほどAV端子から取り出した線材をCSyncアンプの出力へ半田付けします。 また、+電源とGNDも配線します。RGBアンプから取り出すと良いでしょう。

HuC6260のCSyncピンから信号を取り出す

HuC6260の44番ピンからCSync信号が出ていますので、これを取り出してCSyncアンプに取り付けます(写真では黄色の線材)。

0.8mmピッチの半田付けを伴いますので、それなりの道具が必要です。道具さえあれば、特に難しい作業ではありません。 私が使っている道具を紹介します。

…まずは、何と言ってもハンダゴテ。gootという聞き慣れないメーカーですが、ハンダゴテ関係界では日本を代表する太洋電気産業のブランドです。温度を調整可能(これは必須と言えるでしょう)で、昔の鉛入りハンダ~近年の鉛フリーハンダにも対応できます。交換用のコテ先も簡単に手に入ります。これを買っておけば、まず間違いなし。

そしてもう一つ、電子工作には欠かせないハンダ吸い取り線です。ハンダ吸い取り器では対応できない細かい作業にも対応できます。これも必須の道具といって間違いないでしょう。

動作確認をしてみる

そしていよいよ動作確認をしてみます。 仮組みした状態でスキャンコンバータも接続し、電源を入れます…

Yes! 見事に映りました。

ゲームデモを暫く流してみましたが、画面の揺れ(同期がずれる)などの症状はありませんでした。

一旦、これで改造は完了です。

スキャンラインについて

液晶ディスプレイで、ピッキピキに四角いドットを見ていると目が疲れてくる方もいるかと思いますので、その際はスキャンコンバータの「疑似スキャンライン」という機能を使い、ブラウン管のように柔らかい映像でゲームを楽しむことができます。

具体的には、こんな感じになります。

  1. スキャンライン無し

    スキャンライン:OFF

    綺麗ですが、ずっと見ていると目が疲れる方も居るかも知れませんね。

  2. スキャンライン有り(中)

    スキャンライン:37%

    懐かしのブラウン管の映像に近づけた映像です。これだと長時間遊んでも目が疲れません。 昔、コンピュータ雑誌で見たゲーム画面の写真と非常によく似ています。

  3. スキャンライン有り(強)

    スキャンライン:73%

    大画面のブラウン管で映像を見ている感じに近いと思います。

お勧めのスキャンコンバータ

最後に、レトロゲームで遊ぶためにお勧めのスキャンコンバータを紹介します。

お手頃なお値段(1万円強程度)ですが、上位機であるRetro TINK Pro(10万円超)やOSSC(3万円超)と並べて比較しないと分からないほど高画質です。映像遅延も、やはり比較しないと分からない程度の差です。コスパは最高のスキャンコンバータです。

Amazon | GAMEBANK-web.com 【レトロゲーム革命 - RGB21変換ケーブル付属】ODV GBS-C ビデオコンバーター・スキャンコンバーター - フレームマイスターは高価で手が出なかった. SFC/MD/SS/PS/PS2/Xbox/Wiiなどレトロゲームで是非!! 日本語マニュアル/PSE認証済み [SRPJ2525] | エス・アール・プロジェクト(SRPJ) | HDMIケーブル

ODV GBS-C (Amazon)

ブラウン管派でアップスキャンはちょっと…という方でも、お試しには向いていると思います。

RGB出力+同期信号出力改造承ります!

PCエンジンをお持ちの方で、「私も高画質な映像でゲームを楽しみたい!」という方向けに、改造を承ります。まずはコメントにてご相談ください。

なお、RGB出力追加には、正常に動作するよう整備されていることが前提になりますので、フルメンテナンスも承ります。フルメンテナンスは症状に関わらず均一価格で対応いたします(修理不能な場合は別途ご相談させてください)。

レトロPCやレトロゲームの整備には30年近い経験がありますので、安心してご相談ください。

また、ここまでのものと同等の改造を行ったPCエンジンDUOをメルカリにて出品しています。もし宜しければご検討ください。

jp.mercari.com

それでは、また! 

 

86音源の電解コンデンサ交換

前回は「ちびおと」を装着する記事を上げましたが、PC-9801-86音源ボードに遊び甲斐を感じた愛着が湧いてきたので、巷で問題になっている電解コンデンサの劣化問題に対処すべく、メンテナンスを実施してみました。

86音源ボードに実装されている電解コンデンサをイチから列挙して買い集めるのも良いのですが、フリマアプリに交換用部品セットとして出品されていたため、有り難く利用させてもらうことにしました。

このような部品セットは昔から結構出品されていて、X68000の電源モジュールの交換用コンデンサもそうですし、父が使っている無線機(STANDARD C-550)のメンテナンスキットまであったのでびっくりしました。

これは、チップ電解コンデンサを単品で買うよりも安上がりなのと、そもそもまとめ売りが前提で単品では売ってくれない(1個十数円くらいの部品ですし)店もあるので、修理キットは非常に重宝します。

作業実施

そして、届いた次の日に早速作業を行いました。作業時間は動作確認を含めて夕食を挟んで3時間くらいの、割と軽い作業です。難易度も高くはなく、結構遊べる感じです。

まず、86音源ボード上の電解コンデンサを取り外します。ヒートガンを使って、ビャーっと取り外し、はんだ吸い取り線を使って丁寧に古いはんだを除去します。ここまで30分くらい。幸いにも液漏れはしていなかったため、サクサクと作業できました。

次に、パッドの上にはんだペーストを乗せていきます。勘というか適当というか、適量で。

そして、説明書に書かれた一覧を見ながらコンデンサを基板に載せていきます。86音源ボードの場合、33μFのコンデンサが16V品と25V品の2種類があるので、間違えないように載せます。径も同じなので注意が必要です。

そして、ヒートガンを使ってビャーッと半田付けします。一番小さい4.7μFのコンデンサのデータシートを探してきて半田付け温度を確認しましたが、プリヒート200℃、半田付け温度230℃で5秒以内でした。はんだペーストは189℃品を使っているので、実際のところ3秒くらいで半田付けが完了します。全体で10分もかからず作業完了。隣接しているコンデンサが多いおかげで、作業がかなり捗りました。

動作確認実施

目視で確認したところ、大丈夫そうです。

そしてドキドキの動作確認。

まずはFMPでFM音源+PSG+ADPCMの出音を確認。次にWindowsを立ち上げてPCMの出音を確認。それぞれ問題ありませんでした。マイク入力など、残りの機能はそのうちに確認することにします。

ということで、無事にコンデンサ交換の作業を終えたのでした。

「ちびおと」搭載かつコンデンサ交換済みの86音源ボード爆誕。メンテナンス品だけでもヤフオクで30,000円以上で落札されています。うう、では早速売却…いやまて。

 

重い腰を上げてPC-9821の電源を入れてみた

ちびおとについて

秋葉原のBEEP通販ショップで「ちびおとR」という、PC-9801-86音源ボード(通称86音源)のADPCM機能を有効にしてPC-8801のサウンドボードII相当の機能にするキットが売っていたので、買ってみました。

PC-9821の復活

まずはPC-98環境の復活から取り掛かります。

PC-9821は、倉庫に行く度にいつか電源を入れてみようと思いながらもずっと横目に見て放置されていたものがありますし、ジャンク箱の中に86音源ボードが紛れているのも記憶していました。

ところが問題がみっつ。

  1. PC-98の電源を入れてみたらメモリスイッチがどうのこうのというエラーメッセージが出て起動しない
  2. ハードディスクが動作する気配がしない
  3. 86音源ボードのメインであるOPNAチップが取り外されている(確かレトロPC/ゲーム機の音源チップだけを取り外してコレクションにしたようなw)

もう絶望的な状況で、諦めようかと思いましたが、取り敢えず長い目で試すだけ試してみることにしました。

まずはPC-9821の起動時エラー

多分バックアップバッテリーの消耗が原因だろうと思い、暫く電源を入れたままにして充電することを試みました。

…が、2~3時間ほど放置しておいても充電される気配はありません。きっとバッテリーの寿命(スーパーキャパシタの寿命はおよそ5年)なのだと思い、電池を交換することにしました。PC-9821Xb10/J8はVL2330という充電池を使っているので、同じものを探してみたのですが、廃番になってから30年落ちの電池なんて怖くて手を出せないので諦めて、リチウム電池化することにしました。電池は定番のCR2032です。タブは付いていないので、自分で取り付けます。

タブを取り付けるには、スポット溶接機を使います。レトロPCやゲーム機を修理する場合、1台あると色々と便利で良いので用意しておきたい品物です。

https://amzn.to/47UhsNY

なお、CR2032は充電はできないのでダイオードを入れて充電しないようにします。+側をダイオードのアノードに繋ぎ、メインボード側をカソードに繋ぎます。これでまた少なくとも5年間は大丈夫でしょう。電池のケーブルはオリジナルのものを流用し、電池だけ交換しました(写真)。

電源を入れると、1回目だけはメモリスイッチのエラーが表示されますが、設定後一旦電源を切り、暫くして電源を入れてみると、きちんと設定が保持されているのを確認しました。

ハードディスクが故障している件

これはさすがに修理できないので、ヤフオクでCF-IDE変換アダプタと4GのCFを落札してきました。肝心のデータは、最終バックアップ(2001年頃)のMOが出てきたので、復元してみました(MOドライブはX68000用のものと共通で使えました)。当時を懐かしんで色々と遊んでしまいました。

そして最後の砦、86音源ボード

OPNAチップとDACは記憶通り、当時のコレクション箱の中から出土されました。元通り取り付けてみたら、きちんと動作しました。今やヤフオクで2万円台で取引されているボードをこんなに粗末に扱っていたなんて…さあ、さっそく売却、いやまて。

ついにちびおとRを実装

そして、足早ですが「ちびおとR」を取り付けてみました。OPNAチップの上に被せてはんだ付けをするタイプです。

FM音源ドライバ(FMP)を常駐させると、ちびおとを認識してくれました。

これでサウンドボードII相当(スピークボード相当)の音源になりましたので、色々とデータを物色してきて聴いてみました。FMx6、PSGx3、リズム音源、ADPCMと、今となっては豪華なんだか良く判らない構成ですが、当時のデータ作者の心意気はひしひしと感じました。レトロですげーいい音。これは宝物に加えることにしました。

その他もろもろ改造

ついでに、MSDNのライブラリの中にあったWindows98(SEでないほう)をインストールしてみました。

そして、ヤフオクで32MBのSIMMを4本ほど落札してきて、フル実装128MBに。

CPU下駄も同じく落札し、部品箱の中に転がっていたAMD K6-III/450を乗せて400MHzで動作させてみました。Windows98がサクサクと動きます。これはいい。またそのうちにWin98のゲームなんかもやってみたいなと思いました。

MIDI音源はX68000でCM-64を使っているのですが、SC-55系の音も聞いてみたいと思い、SC-88VLとMU100も落札してきて繋いでみました。SC-55mkIIは相場が高騰しているようなのですが、55マップに切り替えるとほぼ同等の音が出せて88マップも載っているSC-88VLを選びました。記憶だと「ザ・MIDI」という音だったのですが、こんなにいい音したっけか?という感じです。やっぱりレトロPCはいいです。

そんな感じで、割とあっさりとPC-98の環境を復活できました。

さいごに

倉庫の中で発掘されたPC-98関連の品物をフリマアプリに出品しました。
宜しければ覗いてみてください。

懐かしのFM音源ボード(26K互換)もありますし、X68000のスペハリや源平もありますヨ。

https://jp.mercari.com/search?search_condition_id=1cx0zHGsdI-OCiOOBk-OCgOOCgOOBruODrOODiOODrVBD

あと、PC-9821用ディスプレイは、DELLのディスプレイ改造記事で紹介したものを使っています。水平同期24KHzもきちんと表示されていることを確認できました。

yokomumu.hateblo.jp

それでは。

X68000用モニタとしてスクエア型モニタを使う

以前にX68000にDELL P2314Htを接続する記事を掲載しました。

画質や対応周波数には満足しているのですが、フルスクリーン表示をしたときに横長になってしまうのが気になっていました。

また、オリジナルの画面の縦横比は4:3なので、それに近い表示にすると、今度は何も表示されないスペースが出てしまいます。

どれだけ我儘だと言われそうな感じですが、気になるものは気になります。特にグラディウス2などの横シューをやっていると、「画面の端じゃないのに自機が移動できーん!」という違和感を何度も感じました。

そこで、縦横比が4:3に近いモニタを探していたら、DELLのP1914sというモニタがあることを知りました。

ピクセル数は1280×1024で縦横比は5:4ですが、X68000での動作実績もあると聞いて、中古ですが4千円台でフリマアプリに出ているのを見つけて買ってみました。

それで実機に繋いでみると…

  • Humanの画面の縦方向が切れて表示される
  • AFTER BURNER II などの15KHzのタイトルは表示されず

…思惑は見事に外れたのでした。ハズレを引いたようです。

ですが、更に調べてみると、どうやらモニターのファームウェアにある「プリセットテーブル」を書き換えることで、特殊な周波数に対応できるらしいのです。

早速試してみることにします。ライトな電子工作なので、元X68000ユーザとしてはお茶の子さいさい(?)ですね。

書き込みにはROMライターが必要です。Amazonにもあることを確認しました。数百円で購入できます。

それで作ってみたのがこのケーブル。

VGAケーブルはディスプレイを買ったときに付いてきたものを活用しています。そのため、出費はディスプレイ本体の分と、ROMライターの分だけです。

書き換えの手順は先のブログにある手順を参考にすると簡単にできます。

そしてドキドキしながらHumanを起動…

うぉぉぉ、きたー!画面一杯に表示されているところなんか、当時のCRTモニタを使った感覚に似ていて感動です。

早速ゲームを起動してみます。

フルスクリーンで表示しても、縦横比的に違和感が無いところが良いです。

このモニターの良いところは、デジタル入力も付いているのでPCの外付けモニタとしても活用できるところです。

やはり整備品も潤沢に出ていました。現役のX68000ユーザーで、ライトな電子工作ができる方は、入手しておいて損は無いモニターだと思いました。

そうして、ほぼ理想に近い形で実機を使える環境を手に入れる事が出来たのでした。情報を公開してくださっているブログの管理者様には大感謝です。

X68000用モニタとしてDELL P2314Htを使う

巷でX68000シリーズと相性が良いと言われている液晶モニタDELL P2314Htの中古を買ってみました。

今まではX68000用としてXPC-4やOSSCといったスキャンコンバータを使用していましたが、前者はソフトによっては相性問題が結構があるのと、後者は画質の面で不満がありました。

また、以前に三菱電機のRDTシリーズも使った事があるのですが、かなり古いものなのでガタが来ていたり、Humanの画面で縦方向がどうしても欠けて表示されてしまうという問題もあり、結局放出してしまったという経緯もあります。

ただ、DELL P2314Htはモニタの個体差があり、当たり外れもあると言われているので不安は不安でした。

で、届いたP2314Htを開梱し、早速動作確認。接続は勿論アナログRGB接続です。たまたま信号レベルが同じというだけでVGAでも何でもないX68000のRGB出力をVGAポートに繋ぐ…少し違和感もあります。

Humanを起動すると、、、あらら、やけに右に寄って表示が切れてしまっています。

水平位置の調整でも真ん中には来ません。…でもそれは想定範囲内。

先人の知恵を借り、fu.xを起動して自動調整を試みようとします…が、そもそもfu.xを起動した時点で画面中央にきちんと表示されていて調整する必要はありません。

ならば、ということで、Humanからswitch.xを起動してP0(パレット0番:背景色)を青色に設定してみます。

変更するとこんな感じ。

うお青っ!。

そしてモニタの自動調整を試みます。

すると、こんな感じに。

やや下寄りですが、左右中央に表示されるようになりました。垂直位置は数ドットのずれなので、画面調整で何とでもなります。

そして試しにmmdsp.xを起動。

右に数ドット寄って切れていましたが、全然調整範囲内。画質も良く文字もくっきりと見えます。感動的過ぎます。

他にもAFTER BURNER2や、XPC-4ではうまく表示されなかったSPACE HARRIERなど15KHzの画面モードも試してみましたが、調整次第で画面中央にきちんと表示されていました。

ということで、噂も伊達ではありませんでした。先人および人バシラー(ワシもか)に感謝です。今後、X68000用のモニタとして愛用していくことになります。

中古品は掘り出し物で偶に出てくる程度ですが、整備品ならば在庫も潤沢で中古+2000円くらいで美品を入手できるようです。整備品にしとけば良かったなー。

9/6追記:予備として↓の整備品も購入してみました。同じように調整可能でした。置き場所も兼ねて(?)会社に持って行って使っています。

ちなみにX68000/PC9801シリーズのアナログRGB端子は、VGAコネクタとは形状が異なるため変換アダプタが必要です。↓のアダプタは、PC本体に装着し、VGAケーブルでモニタと接続するタイプです(オス/メスが逆のコネクタもありますのでご注意を)。

他にもレトロPC (PC-9801シリーズ、PC-8801シリーズ、MSXシリーズ)でも動作報告が寄せられており、レトロPCのファンなら一台は持っておきたいディスプレイです。

 

PCエンジンDUO修理とRGB出力追加

入手した故障品の動作確認

PCエンジンDUOの故障品を入手したので修理してみました。 今回入手したものは外装はなかなかの美品。

動作確認をしてみると、Huカードは起動するものの、音声が片チャンネルしか音が出ないのと、CD-ROM2をセットしてRUNボタンを押すとCDが高速回転して読み込みません。この状態から修理+RGB出力追加を行なっていきます。

フルメンテナンス実施

まずは外装と基板のフルメンテナンスを行います。 フルメンテナンスの詳細については前回の記事を参照のこと。

yokomumu.hateblo.jp

メンテが終わって電源を入れると、映像は問題無く、音声も両チャンネル出るようになったものの、音声に「ガサガサ」とノイズが乗っています。基板に触ると更に大きい音でノイズが出る感じです。

音声にノイズが乗る不具合の修理

そう言えば、電解コンデンサのパッドの導通チェックをしたとき、1ヶ所だけ最初はテスターが反応しなくて、プローブを強めに当てたら導通したので断線無しと判断した所がある事を思い出しました。もしかしたら、実は断線しかかっていたのかもと思いました。

試しに該当箇所の電解コンデンサを取り外して、パッド周辺の配線を改めて断線チェックしたところ、赤丸の箇所が断線していました。

写真ではどう見ても正常なのですが、テスタで当たると断線しています。メンテ前、ここのコンデンサは派手に液漏れしていました。以前に修理した機体でも同一箇所で断線が見つかったので、結構あるあるなのかも知れません。その時はCDオーディオだけ音声が出ないという不具合で、原因が判るまで半日くらい掛かった💦ので、よく覚えています。

そこで、ビアからパッドにジャンパを飛ばしてみました。パターンのレジストを削ってはんだ付けをすると、少し力を加えただけでパターンごと剥げるリスクがあるので、近傍のビアにジャンパを突っ込んで半田付けするのが安全です。

そして再度電源ON。 Yes! 綺麗に直っていました。

CD-ROMドライブのメンテナンス

そしてお次はCD-ROMドライブの修理。

…と、その前にドライブメカのメンテナンスをします。

古いグリスがはみ出ていると固着する恐れがありますので、拭き取っておきます。

古いグリスが残っている状態(飴色)

余ったグリスを拭き取った後

そして、試しに音楽CDセットしてみると、ディスクは回転するものの、「キュルキュル」という音がするだけで読み込みませんでした。そこで、CD-ROMドライブのサーボのゲインとオフセットの調整をします。

オシロスコープを使って調整する方法もあり、最初の頃はアイパターンを見ながら調整していましたが、古いものなのか、完璧には調整できないようです。何回も調整しているうちに勘所が分かってきたので、最近はオシロスコープは使っていません。

フォーカスオフセット(VR102)の調整

まず、フォーカスオフセット(VR102)の調整を行います。いつもだと反時計回りに少しづつ回すと、ある所でディスクを読み込むようになります。そして更に少しづつ回していき、一番安定する所に調整します。安定すると、ディスクを読み込む時に小さな「グググッ」という音がします。ピックアップの動きを見ていると、左右に振動(サーボの初期化動作でしょうか?)をしているようです。

フォーカスゲイン(VR104)の調整

ピックアップを交換した場合は、ここでフォーカスゲイン(VR104)も調整することがあります。それ以外では結局元の位置に落ち着く場合が殆どなので、調整する必要は余り無いように見えます。

E/Fバランス(VR101)の調整

そして次にE/Fバランス(VR101)というパラメータを調整します。サーボの制御強度のようです。

オーディオCDをセットし、プレイヤーの画面が表示された所でディスクは回転している状態になりますが、この時に「コココ...」という小さな音がすると思います。この音が一定間隔でない場合、調整を行います。

時計回り/反時計回りどちらかに少し回すと、音の間隔がはっきりと一定になる箇所(かなり範囲は狭い)があります。

そして、ここまで調整するとオーディオCDは再生できるようになっている筈です。

トラックゲイン(VR103)の調整

ピックアップを交換した場合は、ここでトラックゲイン(VR103)も調整することがあります。それ以外では結局元の位置に落ち着く場合が殆どなので、調整する必要は余り無いように見えます。

負荷テストの準備

そして、最後に負荷を掛けて、テストをします。ここまでの調整が完了していることが前提になります。

まず、CDの最外周まで曲が収録されているプレス盤の音楽CDを探し出してCD-Rに焼いておきます。

負荷テストの実施

CD-Rの最初のトラックの再生を開始し、途中で今度は最終トラックの曲を再生します。IIボタンを押すと、トラックを選ぶ画面が出てきます。

すると、ピックアップは最外周近くまで移動し、曲の再生を始める筈です。この時、ピックアップが何度も往復して迷っているような動作をする場合、E/Fバランス(VR101)の調整を追い込みます。本当に微妙な調整です。

そして、最初のトラックと最後のトラックの再生を3〜4回ほど繰り返してみます。実際に試してみると判ると思いますが、結構ピックアップが迷うことがあります。最終から一つ前のトラックですら再生できない場合を除いて、許容範囲だと思います。

最終確認!

そして、ある程度正常に再生できるようになったら、今度はプレス盤の音楽CDをセットして同じことを試します。殆どの場合、完璧に再生できるようになっている筈です。

最後にゲームCDでも動作確認を行います。私は「らんま1/2」と「GRADIUS II」で動作確認をしています。いつも同じソフトで動作確認をすると、読み込みが遅いと言った機体毎の傾向が判ります。今回の機体は全く問題なく絶好調に動作します。

以上で修理は完了です。 次にRGB出力追加を行います。

RGB出力追加

今回はPCE用の既製品のビデオアンプモジュールと同期信号セパレートIC(LM1881N)を使ったRGB出力追加を行います。

以前の記事ではTHS7374を使ったRGB出力追加を行いましたが、今回は既製品のRGBアンプモジュールを使いました。

スキャンコンバータとしてODV GBS-Cをターゲットにします。もちろんOSSCでも動作実績がある組み合わせです。

同期信号について

スキャンコンバータをターゲットにする場合は、WEGAなどのRGB映像機器とは異なり、コンポジットビデオ信号を複合同期信号の代わりに使うことはできません。

海外の映像機器でRGB信号に同期信号を乗せるには、RGBS(CSync)か、RGsB(Sync on Green)か、RGBHV(HSync+VSync)が一般的だからです。

どうやら、コンポジットビデオを同期信号として使う機能はオマケ程度に付いていると考えた方が良さそうです。相性が良くなく、画質が著しく低下します。

そのため、LM1881Nという同期信号セパレートICを使って複合同期信号の増幅とインピーダンスの整合を行います。

ちなみに、私がフリマアプリに出品しているSCARTケーブルは、同期信号として複合同期信号(CSync)を使いますが、RGB21ピンケーブルの方は、国内映像機器向けに同期信号としてコンポジットビデオ信号を使っているものを出品しています。購入される時に念のため確認してみましたが、ちゃんと理解された上で購入してくださいました。判っている方には釈迦に説法でした🥶

RGBアンプモジュールの実装

気を取り直して作業を開始します。 AVコネクタの交換までは以前の記事と同様に作業を行います。

yokomumu.hateblo.jp

PCE(TBG)用のRGBアンプモジュールは、写真のようにHuC6260の上側のスペースに収まるようサイジングされているようです。

THS7314を使ったRGBアンプモジュール

HuC6260からRGB+S(CSync)を取り出す方法は前回のRGB出力追加と同じです。見た目は?ですが、ルーペを使って粛々と作業します。

LM1881Nの方は、データシート通りに結線します。負荷抵抗は75Ωです。

そして動作確認し、問題無いことを確認後、シリコンで配線を固定します。

配線をシリコンで固定したところ

RGB出力追加の効果を実証

スキャンコンバータのHDMI出力をキャプチャした画像を載せておきます。色は鮮明ですし、ピクセルのにじみもありません。

R-9の勇姿

英雄伝説IIより

英雄伝説IIより

英雄伝説IIより
SCARTケーブルについて

今回、PCエンジン本体とスキャンコンバータを接続するSCARTケーブルは、従来の単線ではなく、RGB各ラインがシールドされている高級タイプを使っています。そのため、このような画質を実現できました。ゲーム機というよりはPCと同じ画質です。

修理品の出品決定!

今回修理と、RGB出力を追加した品物は、上の画像をキャプチャしたスキャンコンバータ(ODV GBS-C)やSCARTケーブルも同梱しフルセットでフリマアプリにて出品しています。

もし宜しければご覧いただき、購入を検討して頂けると幸いです(^^)

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PCエンジンDUO RGB出力追加~その5~

前回の記事では、RGBアンプの回路図や、SCARTケーブルの作成方法について紹介しました。

今回は、高画質化と量産化?に向けて同軸SCARTケーブルを作成しましたので、紹介したいと思います。

VGAケーブルだったらそのへんに使わなくなったものがゴロゴロ転がっていそうなので、MOTTAINAI精神全開で研究してみたいと思います。

 

前回の記事では愚直に同軸ケーブルを束ねてSCARTケーブルを作成しましたが、VGAケーブル(のケーブルだけ)を流用できるんじゃないか、というのが今回の記事の趣旨です。

 

まず、家のどこかにあったと思われるVGAケーブル。探してみたところ、早速見つかりました。

スリムなケーブルですが、テスターで当たってみたところ、全線結線タイプでした。行けるかも。

ということで、まずはケーブルの様子を確かめるために斬首します。

根元からチョキン

被覆を剥いてみたところ

テスターで当たってみたところ、RGB信号は二重シールドされている3本の線があり、その他は単線になっています。フレームグランドと信号GNDはちゃんと分離されていました。

信号線のピンアサインはこちらの記事が参考になります。

I2C用の線はもちろん使わないので、音声用として流用しようと思います。CSyncは、そのままHSync/CSync線を使います。

今回は、DIN8ピンコネクタ側から結線してみます。まずは、被覆を25mm程度剥いてから、シールド線を10mm分折り返します(フレームGND用)。

次に、二重シールドされたRGB信号線のシールド線も剥いて束ねます。

次にDIN端子のGNDピンへ、RGBのシールド線と信号GND線を束ねて接続します。

他のピンへ接触しないよう、熱収縮ケーブルで絶縁しておくと良いでしょう。

次に、各信号線を接続します。

そしてコネクタの金属フレーム部分を取り付けます。フレームグランドはペンチでカシメてシールド線に圧着します。

そしてもう片方のフレームも取り付け、ケースに収めます。

おお、何だかそれっぽくなりました。

次に、SCARTコネクタ側を加工します。まずは、被覆を40mm程剥いてからシールド線を束ねます。

そして信号線とグランド線、音声信号線を粛々と結線していきます。

ケースに収めるとこんな感じになります。

そして組み立ててからPCエンジンとスキャンコンバータを接続し、電源ON!

Yes!ちゃんと映りました。

最後に、SCARTコネクタのケーブルを引っ張ってしまっても壊れないように固定します。黒色のホットボンドをケースの両側に流し込み、鯛焼きのように合わせて接着します。

そして完成したケーブルがこちら。

もちろん画質もチェックします。

同軸ケーブルを束ねた時と画質は変わらないように見えます。更に映像を掲載します。

コントラストの高いシーン

白飛びもしていないようです

ということで、実験は完了しました。

あとは時間を見つけて量産?したいと思います。

残ったパーツは分別してリサイクルへ

最後まで読んで下さり有り難うございました!

なお、ここまでの記事と同様のフルメンテナンスを行ったPCエンジンDUOをフリマアプリにて出品しています。宜しければご覧頂き、購入も検討して頂けると幸いです(^^)

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