権田保之助ん家

権田保之助に関する情報を掲載

私と権田保之助・速雄氏との出会いから今日まで

石川県能登地方を震源とする地震・津波・火災による甚大な被害が発生して1年が経ちました。被災された地域の復興、被災された皆さまに一日も早く安心した生活が戻ることをお祈りいたします。

権田保之助の次男速雄氏が亡くなって今日でちょうど6年が経ちました。速雄氏と出会ってから亡くなるまでのことが脳裏に蘇ってきます。

私と権田保之助・速雄氏との出会いから今日までを振り返ってみました。
主な出来事などを以下に記載します。

〇1993年:権田保之助の親族から権田保之助の人柄などを伺いました(以下に記載)。この内容が権田保之助を如実に表していると思います。
・ドイツ語学者だった。
・誰でも教育は平等だと考えた。
・学者ずらは嫌いだった。
・押し付けるのが嫌いだった。
・楽しもうという考えだった。

〇速雄氏は趣味で銅版画教室へ通い、銅版画教室の作品展示会が年1回開催され、作品展示会へ出向いて速雄氏と交流しました。速雄氏の銅版画は地味な色合いの味わい深い作品でした。

〇2015年:速雄氏が主体となって編纂して1974年~1975年に出版された「権田保之助著作集第一巻~第四巻」を少し読んでみました。
・「大正時代の活動写真(映画)の映写時間を通常の2時間半から1時間19分に早回しして、1日3回の興行を4回に増やした」など具体的な記載で面白いと思いました。
・浅草と活動写真に対する権田保之助の愛情を感じました。

〇2016年:江戸東京博物館の常設展「大正時代の民衆娯楽コーナー」で権田保之助が調査して記録した「浅草社会地図」の復元地図を見ました。1923年(大正12年)の関東大震災前の浅草の街の貴重な記録だと思い興味を持ちました。この復元地図は、速雄氏も参加していた「日本人と娯楽研究会」が復元したものです。日本人と娯楽研究会は1982年(昭和57年)~1986年(昭和61年)に「権田保之助研究」誌 第1号~第4号を発行しました。
(関連記事)
 私にとっての権田保之助
https://yasunosukenchi.hatenablog.com/entry/2019/02/17/234928

〇2016年:神田神保町の古本屋で権田保之助の著書「民衆娯楽論」を見つけて購入しました。不思議な出会いを感じました。

〇速雄氏は2016年秋頃から体調を崩し、この頃から速雄氏との交流が深まりました。

〇2017年:権田保之助研究の第一人者を速雄氏から紹介いただき、交流を始めました。

〇2017年:権田保之助が蒐集した「おもちゃ絵」を1961年に速雄氏が有楽町にある酒井好古堂へ売却したことを伺い、翌日、酒井好古堂へ伺いました。以降、酒井好古堂の店主と交流を続けています。
(関連記事)
 「おもちゃ絵」の話
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 おもちゃ絵について
https://yasunosukenchi.hatenablog.com/entry/2022/09/19/211653

 初めておもちゃ絵の文化的価値を見出し体系的に分類した権田保之助
https://yasunosukenchi.hatenablog.com/entry/2022/09/19/180659

〇2019年1月1日、速雄氏は熱海の病院で亡くなりました。享年98歳でした。

〇2019年:淡路町のワテラスで開催された古書市で偶然手にした「おもちゃ絵」の本に権田保之助がおもちゃ絵を蒐集していたこと、大正7年の展覧会でおもちゃ絵を出品していたことが記載されていました。
淡路町のワテラスは権田保之助が大正時代に通った浮世絵専門店「酒井好古堂」と映画館「シネマパレス」があった場所です。これには驚きです。

〇2019年:権田保之助が蒐集した「おもちゃ絵」の実物に出会いました。驚きです。
(関連記事)
 権田保之助のおもちゃ絵に出会いました
https://yasunosukenchi.hatenablog.com/entry/2019/10/14/131946

〇2020年:1915年(大正4年)~1920年(大正9年)に酒井好古堂が発行した浮世絵研究誌「浮世絵」に権田保之助が「おもちゃ絵」に関する論文を複数回寄稿していることから、浮世絵研究誌「浮世絵」を購入しました。権田保之助がおもちゃ絵を体系的に分類していることの詳細について知ることができました。

〇2022年:研究会「権田保之助スタディーズ」が発足し研究会に参加しました。従来の論考に縛られない若手研究者の豊かな着想、優れた情報収集力に感動しました。

〇2023年:速雄氏が2012年に法政大学大原社会問題研究所へ寄贈した「権田保之助資料」が整理されて公開され、4回に亘って資料の一部を閲覧しました。権田保之助に関する貴重な資料だと思います。
(関連記事)
 未公開の「権田保之助資料」が公開されました
https://yasunosukenchi.hatenablog.com/entry/2023/02/10/223657

 大原社研で「権田保之助資料」を閲覧しました!
https://yasunosukenchi.hatenablog.com/entry/2023/03/31/194142

 大原社研で再度「権田保之助資料」を閲覧しました!
https://yasunosukenchi.hatenablog.com/entry/2023/05/03/213532

〇2023年:「忘れられた娯楽研究家 権田保之助」がAmazonより出版されました。
(関連記事)
https://yasunosukenchi.hatenablog.com/entry/2023/12/19/221821

振り返ってみると、不思議なご縁で今日に至っているように感じます。
そして「銅版画」から始まり「木版画」の浮世絵、おもちゃ絵に至っていることに気づきます。「銅版画」も「木版画」も「複製美術」。権田保之助の著書「美術工芸論」が思い出されます。

今日は速雄氏の命日。
この文書を速雄氏に捧げます。

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