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【メルカリ小説】ご近所さんの青春の漫画雑誌を引き取ったわけだが・古新聞を出品したら飛ぶように売れてわろた2話

「タンスの上とかにね。ずっと置いてたんやけど、この際、捨てることに決めたん。いつまでも捨てられへんでしょ。」

「分かる分かる。」

「でも、読み返してみると、青春やったなーって。」

「私も、赤毛のアンとか。実家から持ってきたの、ずっと読んでたわぁ。」

秋になって役目を終えた、ベランダの家庭菜園の土をいじっていたら、ご近所さんの話が聞こえてきた。思ったほど育たなかった、ゴーヤやキュウリの枯れた葉やツルを細かく刻んで、土の中に混ぜる。どれくらい効果があるかは分からないが、肥料になってくる。

ご近所さんの奥さん二人の話を聞いていて、「断捨離ってこうやって行われるんだな」と思うと同時に、「捨てるんだったらメルカリで売れないかな?」と思った。実際、古新聞以外にも実家で行き場を失っている食器とか、読まなくなったマンガなども出品していた。

アピールポイントが見つけられなかったり、売れ残った古新聞などは、食器などを発送する時に梱包材として使っているが、食器などはそこまで売れるわけじゃないし、マンガや本なども、そこまで多く出品してない。メルカリを始める前に、廃品回収に出してしまった。

ベランダで聞いた井戸端会議の様子からすると、赤毛のアンって名前も出ていたし、本とか、古い雑誌を処分しようという話だと思う。青春ってのは、気になった。自分が子供の頃のことを思い出した。私が子供の頃は、当然、ご近所さんも、私の母親も今より若かった。私が10歳の頃、何歳くらいだったんだろうか。30代だとしたら、今の30代と当時の30代の感じ方は違う気がする。

昔、近所の奥様方同士で漫画雑誌の回し読みが行われていた。あれは、誰が買ってきたのを、どういうルールで回していたのかは分からないけど、私はその様子を見て、「大人の女の人も漫画を読むんだな」と思っていた。ほとんどの少女漫画は、私の興味の対象ではなかったのだけど、「バツ」だったか「エックス」だったかの4コマ漫画は、内容がシュールで過激で、後年になって単行本を買ったんじゃないかと思う。もうブックオフで売ってしまったが。

植木鉢がわりの発泡スチロールの箱の中の土をシャベルで、ほじりながら、昔のことを思い出していた。まだ、建て替える前の家で、前のベランダは鉄骨の上にあって、サビサビだった。建売り住宅だったはずだけど、どういうコンセプトだったんだろう。私の記憶の中に、鉄骨が新品だった様子はない。

私の家もボロだったけど、日本全体が泥臭く、貧しかったのだと思う。JRの駅のホームもタバコの吸い殻だらけだった。インターネットもなかったし、パソコンも普及してなかった。携帯電話も当然ない。でも、今はインターネット、スマホなどこそ普及しているけど、貧しさというのは、私の生まれた頃に戻っているような気はする。

メルカリに出品している新聞などは、ファンが買っていると思うけど、たまに激安に設定している食器類などが売れると、買った人は生活に困っているのかな?と思う。私も、生活には困っているのだけど。


「新聞以外にも、古い雑誌とか、漫画があるんやけど、良かったら売ってくれへん?お金とか、いらんから。」

古新聞を持ってきてくれたご近所さんが、そんなことを言った。古い雑誌や、漫画、青春の本なのかな?と思った。

「売れへんかったら、廃品回収に出してくれて構わんから。」

新聞以外にも商品が欲しかったし、ベランダで声が聞こえて時に「売れないかな?」と思っていたので、ありがたく頂戴することにした。量が多いので、空のダンボールを用意して、玄関先まで出してもらって、箱詰めしながら、家に運び込んだ。家庭の匂いってあると思う。ご近所さんの家には、上がったことはないけど、玄関先は、どこか懐かしい匂いがした。それは、建て替える前の、あのボロの家の中の匂いに似ていた気がした。私の頭の中に、ぶわっと昭和が広がった。

ご近所さんの青春の品々は、かなりの古い少女漫画や、少女漫画雑誌だった。表紙などが色あせていて、仮に売れ残ったとしても、ブックオフなどでは買取りは不可なんじゃないかと思う。マーガレットとか、フレンドとか、雑誌の名前は知っているけど、漫画の方は知らないモノが多かった。ネットで検索してみても、Twitterやブログで感想を述べている人はいるけど、電子書籍化などされてないモノも多かった。

状態も良くないので、送料に100円だけの値段をつけて出品してみた。昔の少女漫画は、5巻以内で終了しているものも多かったようで、完結作品はセットにした。雑誌類はピーアールポイントがわからないので、表紙を飾っている(知らない)作品を商品ページのタイトルにキーワードとして入れることにした。

思っていたよりも、はやく購入された。発送後に購入者がメッセージが来た。性別が女性であること以外は、ハンドルネームが「おさんどん」ぐらいしか分からないのだけど、おそらく私よりは年上で、漫画の元の持ち主のご近所さんよりは年下なんじゃないかと思う。メッセージによると、子供の頃に好きだった漫画らしく、ブックオフなどに行く度に探していたらしい。娘さんにもメルカリで探して貰ったりして、私の出品に辿り着いたらしい。

ご近所さんが、次に古新聞が売れた時に、この間もらった漫画雑誌が売れたことを話した。嬉しそうな、寂しそうな表情だったように思う。

「誰か分からない、私からしたら知らん人になるけど、私が好きだった漫画を買ってくれた人がいたんやねえ。」

その言葉が印象的だった。なんとなく、「青春」という言葉を添えて、何か言いたくなったのだけど、野暮に思えすぎたので、ぐっと我慢した。ご近所さん達と、特別親しくしていた訳じゃあないけど、やはり、私の頭の中で、ぶわっと昭和の空気が広がった。

メルカリの漫画の出品を見ていると、人気作の「鬼滅の刃Ⅳ」に関するものが多いが、私が出品したレトロな漫画も、そこそこ売れている。ご近所さんは、終活を意識した断捨離を始めているが、青春の思い出を追い求める人もいるらしい。私から漫画を買った人も、あと10年、15年すれば、青春を思い出しながら、断捨離するのだろうか。その時は、メルカリに出品するのだろうか。そんなことを考えた。

ご近所さんから貰ったのは、古い漫画と雑誌だったけど、他にもまだまだ売れるモノがあるのじゃないか?と思った。「他にもいらないものはないですか?」と聞くのは、あまりにも現金的だと思ったので、折りを見て、相談しようかと思った。

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