大学院卒ニート、しやわせになりたい。

働かないで、アフィリエイトとか、ユーチューバーで幸せになりたいです。

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【小説】余命幾ばくもないので失恋した相手たちに会いに行った。わろた。

近い内に死ぬ。

余命幾ばくもないらしい。具体的な病名を書こうかと思ったが、こんなブログだから、余計な炎上をしそうだから、それを避けるために病名は匿名だけど、長年避け続けていた健康診断を受けたら、結果が出た。精密検査を要する。

その精密検査も無視を続けていたのだけど、今回ばかりは、無視しなかった。それが良かったのか、悪かったのか分からない。ステージは、レベル7に達していたとのことだった。

余命は、二ヶ月。

延命治療などは存在しない。二ヶ月という期間が長引いたり、短くなったりはあるかもしれない。入院しないと二ヶ月という期間が短くなることは確からしい。もう、自殺などを考えなくても、ジャンプを8週読むぐらいの時間で、死ぬことが分かった。最終回まで読めないマンガがほとんどだ。

入院しないことも考えたが、両親が「入院してくれ」と泣いて頼んだ。二ヶ月すれば、自堕落で無軌道な息子が、この世から消え去る。彼らも安心しているのじゃないか?と思った。最後は、世間体を気にしているのじゃないだろうか。今までなら、そんな嫌味を行って、母親を悲しませることが多かったが、自分の死が目前に迫っていることを考えると、そんなことでもめるのも、バカらしくなった。

どうせ死ぬなら、自分の臭い部屋で死ぬか、病室で死ぬか……病院の方が、事情を知らない医者や、看護婦さんがいて、少しは優しくしてくれるかもしれない。

入院する前に、私の人生で振られた人、失恋した相手に会いに行くことにした。

頭の中に、三枚の……三葉の写真がある。3本の映像フィルムとも言える。大学生の時に、初めて告白なるものをして、失恋して、思えば、それがよくなかったのかもしれない。失恋の悲しみも慣れてしまうと、「言わないままで終わるなら、言った方がいい」のような、やけっぱちの根性に繋がってしまうというか、無理な告白なぞしなければ、美しい思い出に終わったかも知れない。それらを全てブチ壊してしまった。

一人目の子は、既に結婚して、子どももいた。学生時代の人間関係は、途絶えていたと思っていたが、どこかで私のことを知ったらしく、なんというか、優しく接してくれた。お互い、あの頃は年をとったはずだが、印象は全然変わらなかった。とても、子持ちとは思えなかった。

彼女に失恋したことは、実は、私の中で既に、過ぎ去ったことになっている。もしも、何かの間違いで、彼女と付き合えることになったら……まあ、付き合うけど、「付き合わない」という選択もできるのじゃないか?と思えた。

彼女のことは、今でも魅力的だと思うけど、しかし、失恋のことは、既に自分の中では済んだことなんだと分かった。彼女は、私の余命のことなどは話題には出さなかった。しかし、私が久しぶりの再会を終え、別れの挨拶をすると、彼女は、急に言葉を失い、ポロポロと涙を流した。

私は、その涙に触れることはできない。学生時代の人間関係の連絡網は、ちゃんと機能していたようだ。私の余命のことを疑うような話題はでなかった。だから私は、ただ「ありがとう」と言い、帰ることにした。

ああ、学生時代の気持ちが戻ってきた。彼女は、私を選ぶことはなかったが、それで良かったんだろう。自分の無軌道ぶりを考えると、あのような涙を流す女の子は、ちゃんと幸せにならないといけないのだと思った。

他府県だけど、旅行がてら行くことにした。

酷い別れをした。本当に酷かったと思う。先日、自分が死んだ後に、部屋に恥ずかしいものが残らないように、大掃除をした。そしたら、彼女との思い出の品が出てきた。渡せなかったプレゼント。いや、渡したけど、なんだかんだで帰ってきたプレゼント。

私は、彼女の近況を知らない。連絡先も住所も知らない。一度だけ、フェイスブックの友達候補に並んでいたことがあったけど、ブロックしてしまった。私が、二度目の失恋をした女の子。黒髪で、目がぐりっと犬のように可愛い。

もう死ぬと思うと、彼女にも会いたくなった。関係性が悪くなったので、彼女の周囲の人間、共通の知り合いも、私と彼女の取次はしてくれないのでは?と思ったが、電話番号は聞くことが出来た。「今どき、LINEですよ?」と言われたが、私は、LINEはパチンコ屋の情報収集にしか使っていない。

電話をかけると、彼女は恐る恐る電話に出た。今どき、間違い電話なんて珍しいかもしれない。話してみると、「先輩から電話がかかってくるかも知れない」と連絡があったようだ。気を回してくれたのか、警戒を促したのか、分からなかった。余命のことは、既に知っていたようだ。

電話で、まずは謝罪をした。とてもみっともないことかもしれないが、心に引っかかっていた。未練とは違うかもしれないが、心の中のしこりを取り払っておきたかった。それは、とても身勝手な考えかもしれないが。

会って話したいと伝えた。子供の送り迎えとパートがあるから、そのお昼休みに会うことになった。本当は、昔を懐かしんで、居酒屋ででも飲みたかったのだが、子持ちの主婦を誘ことは、憚られた。話せる時間は、一時間もないだろうか。

彼女の印象も学生時代と大きく変わらなかったが、なんというか、私の知らない一面が、年を経て、表面化していたように思えた。それは、「お母さん」というよりは、「おばちゃん」というモノに近い雰囲気かもしれない。おばちゃんと言うには、彼女はまだ若い気がするが、同一直線上にいるように思えた。

嬉しかったのは、彼女の良さが失われてなかったことだろうか。最近のお笑いのことを話したり、趣味の絵画……というよりは、イラストという感じだが、それも続けているらしい。娘さんの話も聞いた。母親、家族というよりは、友達という関係性のようだ。あえて、旦那の話はしなかったのだけど、彼女からしてきた。旦那も、私よりは、若かった。聞きたい話ではなかったが、誠実そうな男らしい。ただ、別に聞きたい話ではなかった。

時間は、あっという間に過ぎた。彼女は職場に戻らないといけないので、話を切り上げて、もう一度謝罪をして、感謝の言葉を伝えて、帰ることにした。別れ際に、彼女が言った。

「いろんな人に、会いに行ってるんですか?」

その言葉が、私にチクリと刺さった。単純な質問で、他意はないのかもしれないが、「ううん。君は特別」などと答えられるわけもなく、「うん。一ヶ月後に入院だから、その間に可能な限りね」と、ウソをついた。学生時代、一方的に彼女との関係を遮断した私だが、彼女に最期に言った言葉はウソとなってしまった。

仕方がない。後悔はない。仕方がないけど、悲しくない訳じゃない。

3人目の彼女は、ただ謝罪がしたかった。

一番最新の失恋。ザ・ラスト・失恋。人生の中で、一番、酷い失恋。何が酷いかと言えば、失恋というより、一方的に関係性をぶっ壊した部分にあるのかもしれない。後悔していた。謝罪したい。一番後悔している。だから、会って、まずは謝罪したかった。

彼女の連絡先は全て削除して、SNSも全てブロックしていたのだけど、ブロックを解除して、そして、一つだけ削除しておかなかった、フリーメールのアカウントへ向けて、メールを送った。もしも、届かなかったら、共通の知り合いに連絡をしようかと思った。

返信は、日をまたぐことなく、すぐに届いた。わりと絵文字が使われていたことに違和感を覚えたが、返信の内容は、「知り合いも誘って遊ぼう」という内容だった。彼女らしい。とても、彼女らしい。

私は、自分の死を前にして、しんみりと自分の過去の過ち、傷、失恋に浸りたかった。彼女には、心から謝罪したかった。それらは、叶うことはなかった。結局、複数人で会うことになり、回転寿司を食べにいくことになった。

「食べたいもんないっすか?」と聞かれて、「回転寿司」と答えた。「廻る最後の晩餐」みたいな冗談は言うことはなかった。ビールを飲もうと思ったが、彼女に止められた。「体に毒ですよ」と言った。言葉は選んだのだろうけど、選びきれてない感じが……彼女らしい。

二人で過ごす時間も、謝罪する時間もないままに、飲み会は終了した。別れ際は、少ししんみりしたが、余命二ヶ月の男との飲み会とは思えなかった。それが、彼女と最期に過ごした時間となった。

他に、会いたい人がいないわけではなかったが、私の人生最後の冒険を終え、入院することになった。悔いがないわけじゃあないが、心残りも少ない。後は、残された時間を、どのように過ごすかを考えつつ、自分の死を待つだけである。

本当は、ワンチャン狙っていた。

あー!もう!俺、死ぬんだよ!!!最期の最期ぐらい、漫画のような、めっちゃくちゃなことが起きるのじゃないかと思っていたのに!!!ギンギン。ギンギンZ。ちくしょぅ!最期の最期まで、プライドが邪魔をしたんご!!!!!

それじゃあ、みなさんさようなら。ばいなら。来世でも、よろ四股しこ。どすこ~い。